セドリックに関しては、生産中止となった10月にも話題としているのですが、その際は自家用のみでしたので、晩年の主役だった営業用のカタログを比較用に最終型の画像を使いつつでアップしてみることにします。
日産は、移転前の銀座本社ショールームで「セドリックセダンのカタログをいただきたいのですが」というと、自家用と営業用の両方が出てくる会社でしたので、この辺りの年代は改良の回数が多いながらも、比較的揃っています。(この点、トヨタは営業用のカタログ確保に苦労するんですよね)
そんな数ある中から選んだのは、1995年(平成7年)8月版。
2015/4/29 画像を全て更新しました。
スタイルの原型は、最終型とほぼ同じになりながらも、晩年と違ってまだまだグレード数が多いこと。少し前に掲載した
130クラウン営業車と比較可能なこと。この辺りが、抽出の理由となります。
細かく見比べなければ、最終モデルと大きくは違わないようですが、既に19年以上前(!)のモデルなのです。同時期の130クラウンは既にネオクラシックに分類されても不自然ではないのですが、こちらはまだの感有。
同じ年数を経過しながらもこの違いは、長期継続生産車ならではの感覚だなと思うのです。
なお、
最終モデルの情報は日産のWebページに残されているようですので、細かな違いが気になる方は比べてみてくださいませ。
余談ではありますが、Webにおける2002年6月から2014年11月までを一緒の扱いにした掲載方法は、長年貢献した車種でありながらも後年テキトーな扱いをされたことを如実に表しているようにも見えます(笑)
(いつもの)長い前段はこのくらいにして、カタログを紹介していきます。
営業車の最上級グレードとなるブロアム(3ナンバー)のフロントビューと中間グレードとなるクラシックのリヤビュー。
自家用同様、この時に3ナンバーを主とした比較的大きな変更がされています。その内容は、
以前に話題にしていますので省略。私的感想ですが、3ナンバーのこの改良は肯定的だったりです。
一方で5ナンバーは、フロントグリル&リヤコンビランプ等小規模の改良。こちらの改良も私的には肯定派。登場時点ではこのリヤビューが、20年近く続くとは予想もしませんでした(笑)
左頁ではブロアムのインテリアのフロントビュー&サイドビューが掲載されています。(下段は、参考用の最終型クラシックSVのインパネ)
個人タクシー需要の多かったグレードらしく、表示灯や料金メーターを参考例として装備しています。オーナータイプインストは1998年の改良時点で一旦設定廃止されますが、後年まさかの復活をすると共に、その後全車このタイプとなります。
右頁は上級グレードの主な装備を紹介
自家用のクラシック以上は、フルオートエアコンが標準装備でしたが、こちらは、後席冷房を含んだフルオートITエアコンとしてオプション設定とされていました。あと、オプション設定とされたエアバッグ内臓のステアリングの意匠も自家用とは異なります。
続いては最廉価グレードとなるオリジナルのフロントビューと、その一つ上級のカスタムのリヤビュー。(下段は参考用の最終型クラシックSV&オリジナルの外観)
実車よりも明らかにローダウンされているように見えますね。
オリジナルの各種モールを省かれたシンプルな装いは、Y31を象徴するもう一つの姿。オリジナルには、対歩行者安全対策前の前回り&黒フェンダーミラー&14インチキャップレスホイールがマストというのは、個人的感想。
この年代は、まだ伸縮式アンテナで電動式の上級グレードは左に、手動式の下級は右に配置されています。
外装とは一転、内装は懐かしい感があるのではないでしょうか。Y31タクシーで真っ先に連想するのは、このブルー内装という方も多いのでは。
左頁ではハイヤータイプインストのスーパーカスタムとタクシータイプインストのオリジナル(各種タクシー装備の参考加装後)が掲載されています。
ハイヤータイプは、オーナータイプとセンタークラスター部分が異なります。
タクシータイプは前代となるY30の外枠を生かしながらアップデートしたもの。
右頁では下級グレードの主な装備を紹介
マニュアルエアコンの画像は、タクシーインパネのタクシーメーター装備前の状態が判ります。
フロントシート灰皿は大型で、禁煙タクシーが普及する前ならではの装備ですね。
メカニズムの解説
安全性の向上が課題になりつつある時期でまだ規制はゆるいこと、基本的に乗せてもらうクルマであることから、この時点では基本的な安全装備のみ。
エンジンは、最後まで残った4気筒LPGのNA20Pの他に、6気筒LPGのRB20P、6気筒ディーゼルのRD28も選択可能。ミッションもコラムATの他にコラムMTとフロアATが搭載エンジン&グレードにより選択可能でした。
タイヤはRB20Pこそ、グレードに応じてサイズ違いのラジアルタイヤが標準でしたが、NA20PとRD28は、6.40-14の所謂”タクシータイヤ”が標準でした。
グレード一覧
ドアミラーが殆どだった自家用と違って、全てフェンダーミラーという辺りが営業車ならでは。
豪華装備の最上級からシンプル装備の最廉価まで全6グレードの構成。最上級と最廉価では同じクルマとは思えないほどの違いですが、これこそがこのサイズのセダンの特徴なのです。自家用は、Y31型の登場当初の時点でスーパーカスタム以上のみとされていたため、最後のフルバリエーションといえました。同じ営業車でありながらも、法人・個人の別、使用地域の違い等により、これら設定モデル全てに需要があったのです。
左画像は、参考までに最終モデルのバリエーション構成。
排ガス対策や安全性の規制強化に加えて、販売台数の減少に伴う仕様の合理化が進んだのが、お解かりいただけると思います。
右画像は、1995年のカタログに戻って、内外装色の設定とAutech扱いだったV6 LPGブロアムの紹介。
ボディカラーは絞られつつありますが、内装色は3色の設定がありました。
V6 LPGブロアムは初見の際、設定が謎だったグレード。こちらはガソリン仕様の改造のため、直6とV6というエンジンの違いの他にも、ステアリングやリヤサス等、下回りの仕様が異なります。営業車は下回りだけなら、Y31よりもY30の方が近い設定なんですよね。
後年V6ブロアムは、直6廃止後しばらくしてから、営業車の下回りと組み合わされて一時的に復活します。
左頁は主要装備一覧表、右頁は主要諸元表
営業車の性格上、細かい要望への対応が必要だったため、オプションも比較的豊富に用意されていました。
最後に価格表を掲載
大洋日産は日通グループに属する現存会社ですね。
官公庁の入札に強かったようで、都内では比較的「TAIYO NISSAN」のステッカーを見かけたように思います。
ということで、営業車全盛期のカタログを掲載してみました。
この時期、後発のクルーと住み分けられていたのですが、無理な統合が行われずで正解だったと思います。この時点では、クルーの方が先に生産中止になるとは予想もつきませんでした。
そのセドリックもコンフォートより一足早くキャブバンタイプに軸足を移す中でつい先日生産が止まってしまいました。タクシーはその時代の街角の景色の一部というのは個人的心象ですが、長い間そんな街角の一部だったクルマの廃止は時代の移り変わりを嫌でも意識せざるを得ません。
営業車の性格上、今あるセドリックも遠からずで徐々に台数を減らしていくことでしょう。それでも、80年代から25年以上も営業車の最前線であり続けた功績は、今からでも大いに称えられるべきだと思うのです。このクルマの後席に乗ったことのない人の方が少ないのでは、とも。
最大の問題は当の製造元がそんな風には、まるで思っていなさそうなことですね。