
思い出のクルマ編で、クラウン アスリートの創生期となる120前期のカタログを取り上げたところ、エピソードはそっちのけながらも、予想以上に好評でしたので、それなら130のアスリートも取り上げてみることにします。
タイトル画像に掲載した表紙は、矛盾しているようですが、意外とそうでもなかったり、という話を絡めつつで進めていきます。
130クラウン登場から半年ほど経過した、1988年(昭和63年)。
3ナンバーは、初代シーマと激しい販売合戦を繰り広げている真っ只中。5ナンバーも、セドリック/グロリアがグランツーリスモシリーズで独自の市場開拓をされつつある中、初の特別仕様車がリリースされます。
○ハードトップ スーパーセレクト スーパーチャージャー
生産時期:1988年5月 ~ 1988年8月
120後期で追加されたスーパーチャージャー仕様は、当初ロイヤルサルーンのみで、その後特別仕様車としてアスリートが3度発売されています。
130も120後期同様、当初はロイヤルサルーンのみでしたので、お買い得なスーパーチャージャー仕様は、需要を喚起するために必要だったのです。
体裁的には、ベースグレードとなるスーパーセレクトに高級内装のE-Iパッケージを付けて、エンジンをスーパーチャージャーに換装したこととなっていますが、Sパッケージも備えていますので、内容的にはアスリートにかなり近いものとなっています。
もちろん、これだけで話は終わりません。
○アスリート
生産時期:1989年2月 ~ 1989年8月

宿命のライバルであるセドリック/グロリアのみならず、本来身内であるマークII3姉妹までもが、モデルチェンジして、スーパーチャージャーを新規に搭載し、従来以上のライバル関係に。
マークII系がモデルチェンジすれば、クラウンにお買い得な特別仕様を追加して競争関係を煽る(販売店対策を行う)のは、100あたりまで遡れる伝統芸。
ということで、本命のアスリートが登場します。
特別仕様の内容ですが、スーパーセレクト スーパーチャージャーに コンライト(オートライト)と電磁式ドアロックにオート機能が追加されています。その分、シート形状(縫製)はE-Iパッケージから標準グレードに戻されていますが、ドアトリムの品番は同じなので、きっと布地自体は変わっていないはず。
以上のとおり、かなり微妙な関係の特別仕様2タイプなのです。
アスリート登場直後には、ロイヤルサルーン仕様の内装とした、スーパーセレクト特別仕様車も登場しますが、話が複雑になりますので、ここでは略。
○アスリートL

消費税導入&3ナンバーの税金引下げに伴う、拡販戦略グレードとして、3.0DOHCを搭載した”アスリートL”がマイナーチェンジと同時に登場します。
おそらく前年に行われた2代目ソアラのマイナーチェンジ時に追加設定された”GTツインターボL”が命名の源流だと思われますが、これまでのアスリートがスーパーセレクトベースだったのに対し、アスリートLは、一つ上級のスーパーサルーン エクストラ同等の装備&内装だったので、Lを付けたのも納得でした。
もちろんSパッケージも標準装備。
それまでのアスリートが比較的好調に推移してきたこともあって、これは売れると思ったのですが、予想に反して台数が出ませんでしたね。上級内装となるE-IIパッケージを装着すればロイヤルサルーンにかなり近くなって、その割にお買い得だったのですが。
アスリートLが売れなかった一方、好調だったのが同時に追加されたこちら。

それまで標準ボデーだけだったスーパーチャージャーにワイドボデーが追加されています。
ちなみにアスリートLとほぼ同価格でした。以下、東京地区の車両本体価格(消費税抜き)。
・ロイヤルサルーン スーパーチャージャー(ワイドボデー):316.6万円
・アスリートL:314.9万円、(E-IIパッケージ付):321.9万円
(参考)
・3.0ロイヤルサルーン:334.8万円
エンジンを選ぶか、ロイヤルのネームバリューを選ぶかという話なのですが、後者を選ぶ方が多かったようです。
おそらく、実際の商談では、自動車税と任意保険料の差でスーパーチャージャーが選ばれていて、どうせ3.0を選ぶならアスリートLではなくロイヤルまで予算を弾むということだったのでしょうね。
ここが分水嶺となって、翌年追加された2.5では、ロイヤルサルーンのみが設定。さらに、モデル末期の特別仕様車には、スーパーセレクトが使われるのみで、アスリート名が使われることはありませんでした。
2015/5/19 2500スーパーセレクトの画像を追加しました。
○2500 ロイヤル仕様 スーパーセレクト
生産時期:1991年5月 ~ 1991年10月

本来の目的は、モデル末期の販売促進だったと思われますが、140が2500以上で構成されることが決まっていたため、市場観測の役割もあったはずです。
ロイヤルサルーンの内装を持つものの、Sパッケージは装備されていません。
かくして、140以降の同血統にはロイヤルツーリングの名が付けられたことで、130で封印されたと思っていたアスリートの名が、170で復活した時には、その意外性に驚いたものです。
さらに、昨今ではアスリートの販売比率がロイヤルに近付きつつあります。
同名異種の感もありますが、120や130時代のアスリートを知る身としては、元は特別仕様車だったのが、ここまで成長したかと思わざるを得ないのです。
ブログ一覧 |
カタログ話(特別仕様車編) | クルマ
Posted at
2015/05/11 21:19:16