
今回は、少し前から掲載する機会を待っていた話となります。
降りてから、今年の夏で2年が経過しますが、このクルマへの想いは、今でも私の中で特別な位置を占めています。人生の半分近くを一緒に過ごしてきたクルマですし、憧れていた期間も含めればそれ以上となるのですから。
掲載にあたり、改めてこのプレスリリースを眺めてみると、このクルマが登場した時の記憶は今でも鮮明なのだなと再認識したりします。自分の人生の中では、決して良かった時期とは言えないのですが、そんな時期にあってもこのクルマはとても輝いて見えたのです。
登場してから、間もなく27年になろうとしていますから、リアルタイムで体験しているのは30代以上となるのでしょうが、年代を超えてこのクルマを好きな全ての方に贈ります。
はじめに、ということで当時の主査だった渡辺 忠清氏が、開発に込めた思いが記されています。このクルマのファンなら一読の価値があります。
右下には渡辺氏が、マークIIハードトップと共に写っています。
今では数少なくなってしまいましたが、ガラスを下したサッシュレスドアというのは、改めてカッコいいよなぁと思います。
開発のキーワードである「持つ誇り」は、高品質で高級感のあるスタイルと室内からということで内外装が先に紹介されていきます。
各ボデーのデザインへのコメントはあえて省略します。
各ボデーのセグメントとしては、マークIIのセダンとハードトップを両脇に置いて、その真ん中にチェイサーとクレスタを配したというのは当時の記事等でも見受けられた内容です。
ボデーシルエットの比較では、明らかにキャビンの大きいセダンを除けば、ほぼ同じパッケージングということが判ります。
ABC各ピラーのラインを上方に仮延長すると1点に収束する富士山型のキャビン、またCピラーはリヤホイールハウスと6の字の関係を結ぶ。何れも日本の美意識の反映なのです。
インテリア関係の紹介です。
シート機能としては、フロントには格納式アームレスト、リヤヘッドレストにはワンタッチ格納機能を採用して快適性を向上。シート表皮はシルキーベルベット調の新素材を採用し、ドアトリムのショルダー部やインパネのロア部にもファブリックを用いる等、新たな高級感を演出しています。
大きく構えたコックピット感覚のインパネ造形に、アプローチ量を低減しつつで面一化されたクラスター。各スイッチ類やレバー類には新形状を投入。
さらに、空調やオーディオも性能アップしているのですから、力の入り具合が想像できるというものです。
X80で最も力の入っている所を問われたならば、私なら迷わず内装と即答します。
もう一つの開発のキーワードは「走る楽しさ」ということで、エンジン、サスペンション、ボデーの紹介となります。
各エンジンの紹介です。
1Gの”GT”と”GZ”がツートップで紹介されています。従来のツインターボに加えて、クラウンに続くスーパーチャージャーの投入という2種類の異なる過給器は、予備軍を含めたオーナー層にとってインパクトのあるものでした。
さらに6気筒のベースエンジンはハイメカ化されて、NAでも2種類のツインカムを持つことに。こちらのグレードは上下関係となっていましたが、トルクカーブで分かるとおり、実は明確に性格が異なっていたのです。
続いてはサスペンションの紹介です。
フロントはマクファーソン方式を踏襲しつつ、リヤはセミトレーリング方式からダブルウィッシュボーン方式に変更。共に新設計となっています。
プラットホームは先代からの流用にも関わらず、足回りを新設計できたのは、このシリーズが人気車だったことが大きいでしょうね。30頁下段にある通り、新設計の効果は大きいものでした。
ボデーは順当な進化という所ですが、ボデー剛性は向上し、振動と騒音は大幅な低減。防錆性能も大幅に向上しています。
さらに各所には見栄え向上技術が惜しみなく投入されているのです。
新装備とありますが、従前からの採用モノや他車からの流用モノが含まれています。
そんな中でも、サイドウィンドゥワイパーにクリアランスソナーという2つの世界初が大きく紹介されています。前者こそこのモデルのみで終わったものの、後者は今に続く装備ですね。
巻末資料には、「マークII・チェイサー・クレスタのあゆみ」ということで、歴代モデルや販売累計台数のグラフが掲載されています。
販売台数のグラフからすると、3代目マークII以降の成長が顕著であり、途中から追加された兄弟車共々、尻上がりに台数を伸ばしてきたことが読み取れます。
最後の頁には各モデルが掲載されています。
さいごに、まとめを少し
当時のトヨタにとって、マークIIシリーズは重要な位置に占めるまでに成長していました。
そのようなシリーズの新型車を開発することは、この時期に起こった激しい環境の変化や同時期と予想されたライバル車の存在も加わって、担当者には相当なプレッシャーだったのは間違いありません。
この世代は、大きなプロジェクトでスタートし、開発陣の総力を以って結実するという、ある種とても恵まれた環境から誕生しているのです。
”はじめに”で記されている「今までにない大きなモデルチェンジでした」というのは、実感から生まれた言葉だったのだろうと想像できます。
その成果として、歴代最高の販売台数という大きな記録が残りました。それだけでなく、200~300万円級のサルーンとして時代の象徴であるような存在感も残したのです。
おそらく今後もこれ以上の存在感を残せるサルーンは登場してこないと思っています。
私自身も、このシリーズに魅せられて、販売台数に僅かながらの貢献をすることとなりました。残念ながら、いつまでもマークIIとはなりませんでしたが、キャッチコピーで使われた「名車の予感」は、時を隔てた今では予感は正しかったと実感できるのです。
※このブログが、あの頃へのタイムマシン、あるいは想像のキーワードとなれたのであれば、とても嬉しく思います。