
車検直前ということもあり、特に話題もありませんので、中古車市況話を進めます。
今回はシルビアとなります。これまでは、スカイライン・セリカという、それまでの定番人気車でしたが、こちらは新進の人気車ですね。
シルビアは、初代はその高価格故、中古車市況を形成するほどの台数ではありませんでしたし、2代目は台数はあるものの人気車とはなりませんでしたので、3代目で一気に人気車に駆け上がった形です。
紹介する時期は、前回のセリカの2ヶ月後、4代目の登場直後ですから、1983年夏真っ盛りくらいだと推測されます。3代目は54年3月の登場ということで、2回目の車検を迎えたクルマも多くて、中古車の台数は豊富だったでしょうね。
それでは早速、関東の概況から紹介していきます。
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○現在中古車市場に出回っているのは、初期の54年から55年式であり、高年式になるにしたがい、タマ数が急に少なくなるといった図式になっている。新車販売実績は55年のピーク時は月販5,000台以上も売れていたが、56年は半分の2,500台、57年は2,000台、そして今年に入ってから1,000台強といった推移になっており、このことから高年式車のタマ数が少ないことがうなずけよう。
○新車は110型に関する限り、それほどの人気車ではなかったが、中古車になると様変わりで引っ張りダコなのだ。これほど新車と中古車の人気差があるのも珍しい。中古車は、どこの展示場に行っても平均して安定した人気を保持している。この新車と中古車の人気差は、全体的にタマ数が少なかったことと、価格の落差が大きいためと各展示場では分析している。
○人気の中心は、ハッチバック(以下、HB)2000ZSE-X5速フロアと最上級グレードであり、これだと入荷後すぐに買い手がつくほどの人気ぶりだ。ハードトップ(以下、HT)もまずまずであり、どちらかというとHBの方が人気高といったところ。HBのヤング志向に対して、HTは中年も含めた広い層に人気があるといった配置になっている。
○エンジンは、ノーマルは2000と1800からなるわけだが人気、タマ数とも2000が圧倒しているが、1800は値がこなれているだけに動きは悪くはない。
○ターボは、56年半ばからの登場であり、新車の販売台数が少ないだけにタマ数は極端に少ない。サニー店やモーター店、あるいはスポーツ専門店をたんねんにまわらないとなかなかキャッチできない。ギリギリ140万円割れの気配があるものの、まだまだ高値を維持している。人気はまずまずであり、多少時間がかかるものの確実に買い手がついている。
○ツインカムのRSは、ターボよりまだタマ数が少ない。(中略)200万円を切ったのは、夏場から。しかし、さすがにこの価格では、買い手がつくのに時間がかかっている。新型車は190馬力のターボRSがあるためもあり、旧型RSの値ごなれは、今後急速に進むものと思われる。
○ボディカラーは、ホワイト、レッドが圧倒的な人気だが、これ以外だと多少動きが鈍くなる。このためホワイト、レッドについては、他より2~3万円の価格差をつけている。今回展示場を一巡した限りでは、ホワイトが80%方を占め、あとはレッド、イエロー、ブルーといった配置だった。
○ミッションは、5速車が90%を占め、あとはAT車。人気は、タイプからして5速車が圧倒しており、AT車は敬遠されがち。入荷してもいつまでも展示場をあたためていることが多い。オークションでも、なかなかAT車は買い手がつかない傾向がある。このため価格も5万円程度安い。
○価格は、シルビアHB2000ZSE-Xで54年118万円、55年前期127万円、同後期130万円、56年前期135万円、同後期140万円といった配置であり、モデルチェンジをした割には高値を維持している。HTだとHBより5~6万円くらい安くなる。
○1800だとグッと値がこなれてくる。LS-Xなら54年92万円、55年前期98万円、同後期100万円、56年前期110万円、同後期113万円、57年120万円と2000とは20万円ほど差をつけている。
○ターボは、HB-ZSEで56年140万円、57年150万円。
○展示車をみると、ひとつの傾向がうかがえる。ZSE-Xは、大半がフル装備であり、他グレードもエアコン付、アルミホイールをはいているケースが多いことである。このため表示価格は、思ったより高く感じる。
○今後は、主力の110型の値こなれが月を追って加速されて行くことは必至である。主力年式の54~55年式は、2000ZSE-Xでも100万円割れが実現しそうな雲行きだ。
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スカイライン、セリカと違って、販売期間が短く、かつグレード数が少ないため、解説が微に渡っている感がありますかね。その分傾向は掴みやすいかと思います。
3代目シルビアは、登場当初こそ販売台数が多かったものの、56年辺りから他車に押される形で新車の販売台数が急速に減ってしまうのですが、中古車ではそれと反比例するかのように人気が盛り上がった、珍しいクルマですね。登場直後から、セリカを凌ぐ販売台数となっていたことも相まって、中心となる54~55年式では、前回の2代目セリカと比較すると、人気を反映しただいぶお高めの価格となっています。
人気グレードが、2000の最上級というのは、スペシャルティーカーの性格からしても納得。搭載するZ20Eは、プリンス系のG20を除けば、日産待望の4気筒2000でもありました。
シルビアの中古車の主流は、明らかに3代目でしたが、その前の2代目も少ないながらも流通はあったようです。
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○54年式以前のS11型は、めっきりタマ数が少なくなり、さがすのに苦労するようになった。(中略)価格は、超安値だ。1800LS-GEで54年62万円、53年57万円、52年50万円となっている。タマ数は、中グレードのLS-Xあたりが割合多く、このため前述の価格推移はあと10万円ほど安値感がある。
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こちらになると、3代目の価格とは大きな差となって、同年代の2代目セリカとの比較でも安値の印象が強くなりますね。さらに4代目登場以降は、急速に姿を消していくこととなります。セダン系と違って、価格の割安感で選ばれるクルマではありませんから、それも仕方がなかったのですが。
話を3代目に戻して、関東における専業店の傾向は、次のとおりに書かれています。
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○ディーラーと専業店の違いでみると、いくつかの特徴があげられる。
○タマ揃えは、専業店の方が豊富で展示場の目立つところに置いてある。人気車を選ぶなら専業店の方が見つけやすい。とくに大手の専業店やスポーツ専門店がよい。
○ディーラーはサニー店、モーター店の中古車センターへ行くと必ずといってよいほど発見できる。しかしメイン車は、サニー店はサニー、モーター店はセドリックやローレルであり、シルビア/ガゼールは脇役だから、思ったより少ない。メイン車を優先的に並べ、シルビア/ガゼールは専業店にまかせる傾向があるのかも知れない。(中略)価格表示は、ほぼ同水準と見てよい。ターボもしかり。
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タマ数の状況からすると、下取り車はそのまま展示しつつも、過剰在庫になる前にオークションへ流通させていたというところでしょうか。サニー店はメイン車となるサニーがB11型への代替が順調に進む一方で、新古車が大量発生していましたし、モーター店もセドリックがY30に変わったばかりということで、共にメイン車優先(というかメイン車の消化で手一杯)だった可能性は高いですね。もっとも、購買層が流動的と仮定すると、他車への代替要因という見方もできるのですが。
ここからは、関西の概況です。
これまでとは、うって変わって、明らかに関東とは判断が異なる内容が書かれています。著者不明ながらも、関東と関西で著者が異なっていたのではないかと推測するところです。
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○シルビア人気の根源はデザイン。居住性を云々するクルマではない。だからユーザー層は、あくまでも若い層。極めて移り気な層を相手に、関西で安定的人気を得ているのは注目していい。
○ちょうど、スカイライン、セリカ人気の低下と対照的ですらある。タマ数の多いスカイラインには、販売台数では及ぶべくもないが、注目度は確実に上をいっている。またセリカのここ数ヵ月の落ち込みようは、予想されたとはいえ、かなり大幅ダウンである。「セリカに取ってかわる人気車種といってもいい」とまでいう業者があるほどだ。クセのあるシルビアが、こんな見方をされるまでになっている。
○短期的変動は別にして、強力車種であることは誰もが認めるところ。その根拠は、デザインに次いで価格に求められる。「100万円クラスまでがよく売れる」、「売れる価格帯は110万円までが多い」。売れる目安が100万円、110万円あたりになる年式は54年式である。
○54年式1800LSXが98万円、LSE-Xは103万円。2000ZSE-Xなら109万円がおおよその価格。HBとHTがあるが、まず9割以上がHTである。(1800と2000)どちらもタマ数は選べる程度にはある。展示場によって違うが、平均すれば7~8割を1800が占めている。「カッコで乗る層が選ぶから、1800で十分なのでは」とある展示場はいう。しかし、2台並べておけばどちらを買うか?「10万円程度の差なら2000ZSE-Xだろう」と見る。だから、売れ足も2000の方が早い。
○55、56、57年と高年式になれば、それぞれ順に10万円高と考える。(中略)今、展示場に並ぶ年式は54年が最も多く、約半数を占める。あとは、ほぼ同数ずつ各年式が並んでいる。
○ターボだが、特に目立った人気はない。これは他の車種と全く同じ現象だ。「十分に値ごなれしてるんだが・・・」と首をひねりつつも、なかばあきらめ顔。ユーザーの目は「ターボがどうした?ただ高いだけじゃないの」とつれない。56年式1800ZSEターボで139万円。ギリギリ140万円を切る程度。
○このクルマにAT車というのもピンとこないが、意外と高いのが実情。シルビアで、AT車がほぼ3割を占めている。ガゼールでは、その比率はもっと高くなる。「スカイラインほど5速願望は強くない。むじろ、ファッショナブルに乗りこなす層が多い」という。AT車と5速車の価格差は、ほとんどないか、せいぜい3万~5万円程度である。しかし、売れ行きは、やはり5速車が早いようだ。
○ボディカラーでは、赤人気が圧倒的に強い。展示車では2割程度しかないが、引き合いは群を抜いて多い。常識的だが次いで白。他の色は、お呼びでない。「茶、シルバーなどどうしようもないね」という。ファッション優先クルマだから、他車種以上に色の好みは強い。
○ファッションついでにアルミホイールの装着車。「ほぼ常識になってしまった」というように、8割以上がアルミをはいている。
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以上、関東との違いを興味深く読み取っていただければ幸いです。
新車当時もそうだったんですけれど、やっぱりちょっと派手めのスタイリングがカッコ良かったというのが人気の要因だったのでしょうね。HBは、フェアレディZを意識して明らかに派手好きの若者向けといった佇まいでしたが、HTは、若者だけでなく大人が乗ってもあまり違和感がない、間口の広さがあったように思えて、そのさじ加減は実に絶妙でありました。
80年代初頭にかけて、日産の新型車のスタイリングがあか抜けた契機となったのは、このシルビアですよね。ベースシャシーは、A10バイオレットでしたから、上物がオーバーサイズの感もあったのですけれど、その分アルミホイール&ワイドタイヤを奢ると、また違うカッコよさが醸し出されてきたりもして。そんなことからすると、アルミホイールの装着車が多かったというのも納得なのです。
ちなみに、これは余談ですけれども、中学校の時の担任の先生の弟さんが、これを買われたとかで、時々交換して学校に乗ってきていたんです。ベージュのHBだったのですが、これがある日、ワイドタイヤ&アルミとなりまして。たしか、フロントが205か215/60R14で、リヤは、225/60R14だったかと記憶しています。これでも、ホイールハウスはまだ余裕があったような。方向性云々は別としまして、カッコは良かったです。ご当人は、弟の好みとはいえ、ハンドルがとても重くなったと嘆いてましたけれど(笑)
脱線戻しての当時のお勧めを最後に引用してみます。
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○さて、買い得、狙い目に移る。年式はやはり、最もタマ数が多い54年式。フル装備のZSE-Xにするかどうかは、難しいところだ。1800LSE-Xとは、10万円の差しかないから迷う。価格至上のクルマでないだけに、ここは安定的人気のZSE-Xか。むろんこれは好みである。色は、最も多い白から。ギンギンの走り屋でなければ、迷わずAT車を選ぶ。割安だ。ターボは前述した通り、120万円以下ではない。ここはパス。
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私の3代目ベストも、ここで挙げられている白のZSE-XのATかなと思うところです。
同シリーズ中では、ややアダルト風味の仕様なんですけれど、やっぱりこういうのが好きなんでしょうね(笑)
ちなみに、最後にあるギンギンの走り屋でないというのが、実はシルビアのキーワードだった気もします。セリカ同様に、速くなければという観念から、ターボ・ツインカム・ツインカムターボというパワーウォーズの渦中に入っていくのですが、そのことが、かえってシルビアのキャラクターを難しくしてしまった気がしてなりません。
時代は、シルビアの中古車に見られるとおり、純粋な速さ路線とは別に、豪華さや安楽さが急速に求められるようになっていくんですよね。そこでは、速さは遅くさえなければ十分で、むしろデザインやアクセサリーが重視されるようになります。
そんな観点からすると、前期のみFJを積んだのですが、むしろVGを積んだ方が成功していたかなとも。北米後期ではVGを載せてはみたものの、こと国内となるとレパードやスカイラインとの関係が微妙となりますから、考慮されなかったのでしょうけれども。
なお、3代目シルビアが好評だった理由は、そのまま2代目プレリュードが引き継いだと個人的には分析しております。決して汗臭い感じはなくて、助手席の女性に受けそうなデザインなり豪華さなりを備えているあたりですね。中古車市場には、人気の秘訣が照らし出されていたはずなので、何とも惜しかった感があります。
まぁ、またその次となるS13では、キャラクターを3代目路線に戻して、スペシャルティ市場に再君臨するんですけれども。そんなシルビアは、また走り路線に振られていって・・・このクラスのスペシャルティーカーをどう作るべきなのか、実はかなり難しいお題なのかもしれませんね。