
数あるブログの内、時折PVが急激にはね上がる回があります。その内容はというと、
ミラージュXYVYXでありまして。
どうやら、WEBニュースの話題に取り上げられるとここも引っ掛かる、そんな構図の様子。XYVYXは、カルトに近い希少な存在であることは疑いようもなく、深夜ファミレス(昨今の情勢ではこれも実現不可能で)系の話題にはもってこいではあります。
ちなみに余談に過ぎませんけれど、XYVYXの紹介に一年でカタログ落ちとあるのは、きちんと裏取りされているのかなと。私の中では、81マークIIはカローラの年間販売台数を上回ったことがあるに続く、読み捨ての対象認定です。
閑話休題。
それならば、同じ希少系属性としてこちらはいかがでしょう、ということで。
売る方は少数覚悟での販売ではないはずですが、タイトルだけでその姿を直ぐに連想できるかというと、私も含めて怪しい筈。同じ時期のランサーなら、エボと絡めつつで思い出せるとなるのですけれど。
そういう意味では少し前に取り上げた
エテルナに近くもありますが、こちらを改めて見直してみるのも面白いかと思います。
それでは今回は早々にカタログのご紹介に入っていきます。
今回取り上げるのは、ミラージュ4ドアの中から、95年モデルとして94年10月に発行されたものとなります。
この画像を見て、ああそういえばこんなのがあった、そういう方が多いのではないでしょうか。ランサーと兄弟車でありながら、ボディパネルの大半は勿論、屋根の高さまで変更するという贅沢な成り立ちです。
低めのウエストラインに乗るキャビンの高さがやや気になるランサーと比較すると、こちらの方がプロポーションは整っているように思います。キャビンのデザインはシグマとの相似形を連想させられるもの。低い屋根と寝かされたCピラーは、リヤヘッドクリアランスへの影響となりますが、パッケージングよりもデザインを重視した選択。
開発過程では、4ドアハードトップも検討されたものの、4ドアセダンで発売されることに。ボディ形状は変われども、ランサーとの差別化もありデザイン重視は一貫となっています。
セダンに対して室内スペースの要求が減った昨今にあっては、逆に今に通じるものがあったりしますね。
紹介文では、グリーンガラスの採用が書かれています。
それまでは、中級グレード以上にブロンズガラス、下級グレードにブルーガラスという使い分けがされていましたが、この時以降グリーンガラスに統一。ガラスメーカーの要望に沿った形であり、種類も減らせての一石二鳥。同時期の日本車でも見られた変更となります。
メイングレードと想定される、VIEサルーンです。当時の東京地区の新車価格(以下の価格は全て同じ)は、151.3万円(AT)。
カローラだとSEリミテッド(150.3万円)、サニーだとスーパーサルーン(147.9万円)に相当します。
これらライバル車との比較では、フルオートエアコン、カセットステレオ、キーレスエントリーが標準となっていて、装備は充実しています。
先行した100系カローラが割高感から初動販売が想定を下回ったことを見た三菱は、ミラージュ/ランサーの価格設定を慎重に行っています。モデルイヤーの変更で仕様を充実させることに伴い、表示価格の競争力は失われたものの、装備なら負けない、そんな設定となっています。
リヤビューも2ドアや3ドアとの共通性を持たせた、ランサーとは全く異なるデザインとなっています。
それまでVIEエクストラと名付けられていたグレードは、95モデルに替わる際に新たにVIEサルーンSと名付けられることになりました。
この変更では、新たにVIEサルーンとエンジン(キャブ→ECIマルチ)やシート関係(ハイトアジャスタ、リヤシートピロー、リヤセンターアームレストの標準化)が共通にされると共に、マップランプ、リヤガラスアンテナ、タコメーター、フットレスト等の追加が行われています。逆にセンターロックとキーレスエントリーは標準からOPに変更。これで、お値段は5万円UPですからお得。
VIEエクストラだとカローラのLXリミテッドやサニーのEXサルーンと近くなりますが、VIEサルーンSでは、VIEサルーンからいくつか省いたくらいの成り立ちですね。
お買得が何よりのアピールだった時代という事で、VIEエクストラが抜けた穴には、翌年VIEセレクションが追加されて、価格訴求が行われることになります。
この世代で比較的有名なのは、世界初であり空前絶後ともなった、この1600 V6ですね。今や1500は3気筒に主力が移りそうなことからすれば、隔世の感は拭えません。
何がスゴイって、お高い仕様に限られた設定ではなく、主力となるVIEサルーン系でも選択できたこと。外観上は14インチホイール(VIEサルーンのみアルミ)とデュアルマフラー、(VIEサルーンではリヤスポイラーも)が数少ない識別点となります。お値段はVIEサルーンで177.5万円。25万円ほどの追加でV6が味わえるなら悪くない選択に思えますが、実際はあまり売れませんでした。
+100ccで税金と保険が増え、燃料もプレミアムとそれ以外のランニングコストも増えますしね。
ロイヤルはさらに、パワーシートの追加とオーディオ&エアコンの機能が充実して、お値段198.8万円。小さな高級車とは言えるものの、スカイラインやセフィーロの一番お安いのにも手が届きそうな価格ともなれば、指名買い以外は難しかったでしょうね。
実はATのみと思っていたら、VIEサルーンSのみMTも選択可能でした。ロイヤル共々、今となってはカルトカーに類されるのでしょうね。
ラグジュアリーに翼を伸ばす一方で、スポーティ系にも手を抜かないのが当時の三菱ならでは、と言えます。
20バルブで160馬力のカローラとVTECで170馬力のシビックが何度目かの激しい戦いを繰り広げる中、MIVECで175馬力を叩き出しクラス最強の座を奪取しています。それだけでも充分スゴイのに、可変排気量を加えたMIVEC-MDまで搭載。もっともこちらはMTのみの受注生産ですから、スペック訴求が主目的だったのでしょう。
元々MDは、ミラージュIIとランサーフィオーレで初搭載された機構ですから、新エンジンの開発に際して、もう一手加えたくなる気持ちは理解するのですけれど。V6といい、技術屋さんがいい意味で先走っていた、そんな感があります。
MOMOとRECAROが付くサイボーグRは、ランサーには設定の無いミラージュのみの仕様となるようで、そのお値段はロイヤルを上回る199.7万円。MDサイボーグはMD無より3万円高の179.7万円でした。ロイヤルとサイボーグR、目指すところは全く違うと言えども、一番高いの持って来いという注文だと、どちらを選ぶべきか悩ましい選択かもしれませんね。カルト加減も甲乙つけがたく。
メカニズムや安全装備の紹介です。
マルチリンクが何やら素晴らしいサスと思われた時代という事で、リヤのみですが採用されています。今となっては贅沢な機構ですね。
ATも油圧制御が殆どだった時代に、電子制御式を採用。同じく商品力のある言葉だったファジー制御も1500とV6に取り入れられています。
安全装備はカタログの片隅だった時代から始まり、この時期には欠かすことのできない装備にまで昇格しています。ABS・エアバッグ・ドアビーム等、当時求められた装備が何かご理解いただけるかと思います。
エンジンはこれまで紹介したものの他にも、1500キャブ、1500リーンバーン、1300キャブ、2000ディーゼルターボと本当に多彩でした。ライバル車が採用した新技術は漏らさず追随する的な印象もあって。ランサーにはあったツインカムターボは、結局こちらには搭載されることはありませんでした。
バリエーションの一覧とボディカラー、シートの紹介頁です。
ビジネスユースを想定した廉価グレードとしてVIEもありました。不思議とランサーの廉価グレードは記憶に残っていても、こちらの廉価グレードは残っていなくて。カープラザという後発の扱い店の関係か、室内空間あたりに理由を求めるのですけれども。
ボディカラーはホワイト、ブラック、シルバーの定番以外にも中間色に優しい印象を受けるカラーが揃っています。セダンというボディ形状ながら女性に好まれそうな領域なのかなと想像。4ドアハードトップなら、意外と健闘したのかもしれませんね。
インテリアカラーは既に統合が進んでいて、グレーとブラックがグレードにより使い分けられています。
メーカーオプションとディーラーオプションの紹介頁です。
メーカーオプションは上級グレードに装備を近づけるための設定、ディーラーオプションはやや指向をかえるためというのが、大括りでの分けでしょうか。
標準やMOPとは異なる形状のリヤスポイラーの設定があるのが興味深くです。レスオプションが選べないと仮定すると、標準装備の場合は納車前に外して別部品に付け替えるになりますよね、これ。。。

最後に主要装備と主要諸元をやや大き目のサイズで貼っておきます。
微妙な違いを読み取っていただければ、幸いです。
といったところで、いかがだったでしょうか。
記憶の片隅に押しやられつつ車種という事で、今回取り上げるにあたり、改めて読み返したところ、再認識させられることが多々ありました。
一つ一つの要素を、当時の定番車種であるカローラやサニーと比較した時、ミラージュが見劣りする部分て、ほぼ見当たらないんですよね。三菱がライバル車に負けないよう、相当に仕様を精査していたことが伝わっても来ました。
それで、当時売れたのかというと、決してそうとは言えない存在。それがこのミラージュ4ドアだと思います。本文でも書いたとおり、仕様によってはもはやカルトな域だと思うのです。
売れなかった理由を考える時に、思いつくのは、生い立ちとここまでの経緯なのかな、なんですよね。ミラージュは元々ハッチバックが先行していて、セダンは初代の途中から追加されたボディ形状。
ランサーはミラージュよりも前に登場していたものの、販売の都合等で途中からミラージュに合流していて。
この代の一つ前で、ようやくミラージュが3ドアと4ドア、ランサーが5ドアと整理されたものの、この代ではミラージュとランサーに別ボディの4ドアを備えるという複雑さに回帰。先代ミラージュの4ドアは、ミラージュよりもランサーの方が近いともなれば買い手が混乱しても仕方なく。
これまでも何回か書いたとおり、イメージが一貫しないクルマというのは、一時の人気を集めはしても、中々定番とはならないだろうなとは。
もう一つは、この時期の三菱の特徴でもあるのですが、何でもかんでも一つの車種に盛り込み過ぎて、車名から連想させるものが確立しなかったのも、きっと原因。ファミリーユース主体はいいとして、ラグジュアリーもスポーティもと手を拡げれば、買う方は何を選べばいいのか混乱するのも間違いなく。
その点、初代由来のラリーイメージとギャランVR4のハイメカニズムを融合させたランサーは上手くやれたものの、確たるイメージを持たなかったミラージュ4ドアは結局その影に隠れる形となってしまいました。
元は同じクルマですからね。コロナクーペとカリーナED、ギャランとエテルナ、ディアマンテとシグマ等、同じような事例は他にもあるのですが、クルマというのは少しの違いが大きな差となって表れる恐さを持つ商品だとつくづく思います。
この世代のミラージュで真っ先に思い出すのは、私も含め恐らくこの2台だと推測するのです。
ミラージュ3ドアFとミラージュアスティ。
クルマにおける価格破壊の先駆け的存在であり、サニールキノMM、ファミリアES、50カローラII3兄弟等、ミラージュに明らかに追随したクルマ達を生むきっかけともなりました。
時代が不景気だったということも大きいですが、お買得は大きな武器となる、そんな実例という事で。
同時期のエテルナ同様、兄弟車との並立で成功を収められなかったミラージュ4ドアは次世代でランサーとのバッジエンジニアリングとなります。クルマの造りとしても、進化は見られるものの、それ以上に合理化が進んだ印象が強くなります。
間違いなく一番三菱がやりたいことを自由にやれた時代。そんな背景を感じながら、このミラージュに注目してみる。それは、カルトとして楽しむ以外にも意味あることだと思うのです。