
ここのところ、話題にすることの多い日産グローバル本社ギャラリーから、最新展示車情報となります。
緊急事態宣言期間中とは理解しつつも、横浜はお買い物目的等で出かけることが多いというのは、所謂一つの言い訳。
時折話題にしていた、もう一つのメーカー系大規模展示施設、お台場のMEGA WEBは、7/12以降当面休館のままですし、年末で閉館も確定。さらに代替施設の発表もなしということからすると、今後もこちらを取り上げることが多くなりそうな予感です。
そんなグローバル本社ギャラリーの最新版を、早速ご紹介していきます。
●フェアレディZ-T 2シーター(1977年:S31)
私が物心ついた時のZがこの初代の末期型でした。
Z432と240Zが名高い初代Zですが、当時は既に過去の名車の扱い。両車の中古車価格は台数の少なさも相まって、既にプレミアムが付いていたような。
一方、NAPS導入以降のは、カッコの割に走らないというのが定評。別にZに限ったことではなく、セリカ・スカイラインの両2000GTも大同小異でした。当時の排ガス規制は適合させるだけでも大変で、仕方なかったと言えます。
むしろ生産が続いただけでも御の字と言えそうで。排ガス規制のために、消えたスポーティーカーが多数。オイルショックと排ガス規制のダブルパンチは、暴走族も絡めてスポーツカー=悪の風潮すらありましたから。
当時は、セリカやサバンナと同じカテゴリで認識していたのですが、唯一の専用シャシーの意味を全く理解していなかったと懺悔することしきりです。
ボディサイズは、全長:4,115mm、全幅:1,630mm、全高:1,295mmに過ぎませんから、今視点だとかなりコンパクトに感じます。重量はサイズの割に意外と重くて1,135kgとなりますが、排ガス規制の影響か初期型より100kg以上重くなっていたようです。ここに大排気量の6気筒を積めば、高性能になるのも道理。国内は240こそ導入されたものの、260以降はオイルショックの影響で輸出のみに留まっています。
末期型は、大追跡、大都会PART3、西部警察等、2by2の印象が強いのですが、展示車は2シーターのZ-Tでした。初代の2by2は、リヤオーバーハングを伸ばさず、ホイールベースだけで300mm伸ばしていますので、スタイリング・成り立ち等はやはり2シーターの方が理に適っている感はあります。
Z-Tは、1976年7月の51年規制適合時に新たに追加されたグレードです。カセットステレオ、195/70R14サイズのワイドラジアルタイヤ、アルミホイール等の豪華装備を特徴としていました。
当時としてはワイドな5.5Jサイズのアルミホイールは好評だったようで、次世代にも引き継がれることになります。他車に流用されてもよかったのではと思いますが、Zの専用品だったと記憶しています。
半ば余談ですが、説明ボードを作成された時は、Z-Lと認識されていた模様。グローバル本社ギャラリーのWEBページでは社外アルミで掲載されていることも影響ありかもしれません。Z-Lの説明文で展示後、恐らく指摘が入ったのでしょう。Z-Lという日本語表記部分だけをZ-Tに訂正したことで、今度は英文や説明文との辻褄が合わないことに。
この辺り、作り手側の校正は意外と細部まで至らないことも多く、マニアの方が正確な情報を把握していたりします。本当は両者間に協力関係があるのが理想だと思うのですけれどね。
●ニッサン300ZXターボ Tバールーフ 50th アニバーサリー(カナダ仕様車)(1983年:Z31)
輸出のブランド名をダットサンからニッサンに変更した時期と重なります。ブランド名変更のいきさつについては、結構有名な話かと思いますので、ここでは触れないことで。
それまでの直6・L型に替わり、新たにV6・VG型を搭載した世代です。
日本車は、初代ソアラ以降、パワーウォーズに突入していきますが、ターボの認可でも暴走族への助長云々が言われた時代にあって、スポーツカーとなるZへの搭載は2代目末期まで遅れることになります。輸出仕様には280のターボが追加されたものの、国内のターボは200のみで145馬力。途中改良された280でも155馬力でしたから、このZの3Lターボが誇る230馬力は、かなりのインパクトがありました。
当時、最大のライバルとされていたセリカXXは2.8Lで175馬力。Zが出るまでのトップだったスカイラインRSターボが190馬力だったことからしても、Z31のキャッチコピー「比べることの無意味さを教えてあげよう」は決して誇大とは思えなかったのです。
当時はV6の搭載に合わせてシャシーを一新という記事を多く見かけましたが、実際は先代のシャシーを改良して継続としていますね。ほぼ専用のシャシーを5年で一新するのは、当時でも難しかったろうなとは。
初代と並べると大きくなった感は否めませんが、短い2シーターということもあり、それでも今視点では充分コンパクトに映ります。
当時は北米での規制もあり、車高の低い車はリトラクタブルヘッドランプを備えることが多かったのですが、Zは収納時も一部が見え、ライズアップ時に平行移動する機構とされていました。「それまでのZのイメージをなくさずにやりたい」「ライトを上げた時に夜の見栄えを良くするため」というのが、当時の設計者が語る採用理由となります。
展示車は輸出仕様の左ハンドルで、50周年を記念した特別仕様。
デジタルメーターや光通信ステアリング等、当時の国内仕様には設定のなかったアイテムが装備されています。
その他、国内仕様と異なる点として、ヘッドランプの内側に内蔵したドライビングランプ、オーバーフェンダー等も挙げられます。この辺りは、輸出仕様の部品として国内で販売するショップが存在し、実際に装着したクルマもあったように記憶しています。
今回展示された特別仕様は、3代目Zのキャラクターをうまく表現できているのかなというのは私感。
国内では、この種の表現は中々理解されないと判断されたのか、初期型は2シーターも含めてラグジュアリーに振る一方、1985年に追加された200ZR以降、スポーツへと大きく振れてしまいました。70スープラも同じような変遷を歩んでいたりもしますが、何となく惜しい感はありますね。
●フェアレディZ 2by2 300ZX ツインターボ(1989年:GCZ32)
私的には、一番好きな世代です。
国内デビューは1989年7月となりますが、レクサス、インフィニティとほぼ同時期に先行して発表されていたと記憶しています。
この世代もまた登場した時のインパクトはとても強い物でした。
国内初の280馬力ももちろんですが、長い間初代からの伝統に縛られ続けているように映っていた身には、柵から抜け出したかのようなパッケージングやデザインが何よりの驚きでした。
先代との対比でも僅か5年強で、この変わりようですからね。
3代目は、中盤以降スープラやRX-7の後塵を拝していた感が拭えませんでしたが、この代替わりで完全復活。時期を前後して登場したスカイラインGT-R共々、日産黄金期を代表する2大スポーツカーと断言していいでしょうね。
80年代後半になって、急速に復活した日産。デザインも急速に垢抜けて、脂が一番乗っていた時期だけに、スタイリングは今でも本当に力作だと思います。この少し前に登場したS13シルビアとの相似を意識させるディテールも多いのですが、北米では240SXと並べて売ったという背景も考えれば、なるほどと。
かなりグラマラスになったことから、この世代では2by2もデザイン的に上手く成立させたことを感じます。それまではどうしても2シーターの方がスタイリッシュと言えましたが、この世代では充分迷える範疇に。
当時かなりワイドに思えたタイヤですが、調べたところ、実は225/50R16だったというのが意外な驚きでした。
Zのオマージュというとどうしても初代まで遡ることが多いのですが、私的にはこの世代にもう少し着目があっていい気がしています。
多くの台数を売った北米は、スポーツカーを取り巻く環境が急速に悪化して、残念ながら1996年で撤退。同じ頃経営危機も本格化したため、結果的に長期に渡って売り続ける世代となりました。環境がモデルチェンジを許さなかったというのは、初代にも通ずる部分ですね。
今回の展示は、新型Zが発表されたことに伴う企画ですね。
新型Z、Z35型ではなくZ34型のマイナーチェンジ扱いというのが意外でしたが、この辺りは何かしらの理由が存在するのでしょう。
そのことの是非は問うことなく、今は日産が苦しい状況の中でもZを諦めることなく進化させるを選んだことに賛同し、応援したいと思います。
日本の各メーカー、精神的支柱というかアイデンティティの源というか、適当な言葉が浮かばずですけれど、そんな車種が必ず存在すると思っています。
独断で選抜してしまうと、トヨタはクラウン、三菱はパジェロ、ホンダはシビック、マツダはロードスター。トヨタは最近だとランクル、ホンダもNBOXなんて見解も頂戴しそうですが、何となく言いたいことは理解してもらえそうかなと。
これが日産はZとなるのだと感じます。同様の存在だとスカイラインも浮かぶのですけれど、どうしてもプリンス由来の点が完全には払拭できないような。今回の展示は、そんなことを改めて再認識する機会となりました。
私自身はずっと長い間セダンを見続けてきたこともあって、Zの真価を正しく理解できずできました。スポーツカーというのは、利便性が重視されるマーケットとは相性があまり良くないことも感じます。それでも、スポーツカーは不要とは全く思いません。
そんな冷淡なマーケットにも、途中多少の中断期間こそありましたが、諦めることなく日産流スポーツカーを作り続けた功績は、きちんと評価しなければいけません。恐らくZに魅了されたファンは、ブランドロイヤリティが極めて高いのではないか、そんなことを感じずにはいられないのです。