
今回も書庫から出てきた一冊の話です。
スバルは、だいぶ前に剛力サンバーの550の話(リンクは
こちら)以来でしょうか。
こちらも自宅に投函されていた当時から保管していたパンフレットとなりまして、現在の目線で見ると、さすがに隔世の感があるなぁということで、話題にすることにします。
発行は、1988年(昭和63年)1月となりますので、今から27年ほど前になりますね。
最初の見開きは、当時のフラッグシップである、アルシオーネが掲載されています。
アルシオーネは1985年6月に登場。この時点では、フラット4の1.8Lターボを搭載したVR(4WD)とVS(2WD)の2グレードのみでしたが、1987年7月にフラット6の2.7Lを搭載した2.7VXが追加されています。
スバルの技術アドバルーン的存在でもありましたので、各種の電子制御技術を採用。
主に北米に向けての開発でしたが、国内販売では苦戦を強いられていました。
・1987年の販売台数 : 1,743台(内2.7VX : 578台)
・1988年の販売台数 : 1,037台(内2.7VX : 346台)
(参考価格)
・2.7VX(ATのみ) : 2,929千円
・1.8VR(MT/AT) : 2,340千円 / 2,414千円
・1.8VS(MT/AT) : 1,910千円 / 2,014千円
次は、小型乗用車の主力となるレオーネです。車格的には現在のインプレッサに繋がるシリーズです。先に紹介したアルシオーネもこのレオーネのプラットフォームをベースとして開発されています。
遡るとスバル1100に行き着くこのレオーネは、レオーネシリーズとしては3代目。スバル1100も含めると4代目となります。
この世代は、1984年7月に4ドアセダンが登場。同年10月に5ドアワゴン、翌1985年10月に3ドアクーペが追加されています。
順次のボディバリエーション展開は、形式認定時のトラブルの影響があったようです。
当初の4WDは、パートタイム方式でしたが、この時点までにフルタイム方式に主流を移しています。
70年代までは、フラット4を搭載したFFあるいはそこから展開した4WDというライバル車にはない独創性を持ち合わせていたのですが、80年代に入ると他車のFF転換が進み、さらにこの時点では、他車にも相次いで4WDが追加されたため、長らくレオーネの代名詞だった4WDも独自の機構とは言えない状態となっていました。
・1987年の販売台数 : 34,175台(内クーペ : 529台)
・1988年の販売台数 : 42,031台(内クーペ : 230台)
(参考価格)
・セダンGT/II(MT/AT) : 2,168千円 / 2,256千円
・ワゴンGT/II(MT/AT) : 2,258千円 / 2,346千円
・セダン1800GR(MT/AT) : 1,547千円 / 1,635千円
・セダン1600LG(MT/AT) : 1,169千円 / 1,174千円
続いては、レオーネとレックスの中間車種として1984年2月にリッターカーで登場したジャスティです。
隙間市場だったリッターカークラスをダイハツ シャレードが開拓したことから、他社も追随することとなります。ジャスティは、ニッサン マーチ、スズキ カルタスに続く4番目の参入でした。
開発にあたっては、同社の軽自動車 レックスをベースとしています。このことはジャスティに軽自動車の拡大版の印象を与えることとなり、先行した他車に苦戦することとなります。
登場の翌年となる1985年10月には、4WDモデルに1.2Lの3バルブエンジンを搭載したモデルを追加。さらに1987年1月には自動無段変速機(CVT)に電磁クラッチを組み合わせたECVTを搭載したグレードを追加して話題となりました。現在の日本車の主流となっているCVTの創生期ですね。
ジャスティ自体は、他車のバリエーション追加やモデルチェンジ、さらにベースとなったレックスのモデルチェンジもあって、急速に競争力を失いつつありました。
・1987年の販売台数 : 12,564台
・1988年の販売台数 : 9,054台
(参考価格)
・3ドアLS(ECVT) : 927千円
・3ドアRTサンルーフ(MT) : 1,208千円
続いてはドミンゴです。
ジャスティよりも少し早い1983年10月に登場しています。
スバル初参入のリッターカーは、実はワンボックスワゴンだったのです。
軽商用車であるサンバーをベースに、1.0Lエンジンを搭載して登場しました。ドミンゴでは、フロントオーバーハングを伸ばした程度で横幅を広げる等のボディシェルへの大幅変更はありませんでした。
ジャスティとは違って、ライバル不在状態が続いたため、独自の市場を築いていました。
1986年6月に4WDモデルを1.2Lに換装すると共に、たサンルーフ付にはサンサンウィンドーを追加。さらに同年8月にはフルタイム4WDのGXが追加されています。
(参考価格)
・GX(MT) : 1,420千円
遡ると360に行き着く軽乗用車シリーズ。当時はレックスの3代目でした。
長く続いたRRからのFF換装により、高い評価を得た先代のコンポーネンツは受け継ぎつつ、スタイリングの一新を図ったのが1986年10月になります。
登場後、1987年2月にはビスカス・カップリングを2個使用した4WDのツインビスコフルタイム4WDを、同年6月にはECVT仕様を追加しています。
この頃激しい戦いとなっていたハイパワーウォーズには、ヘッド換装した3バルブエンジンで参戦したものの、ターボで武装するスズキ・ダイハツ・三菱の各ライバル車の後塵を拝していました。
このため、このパンフレットが発行された直後となる1988年3月にはスーパーチャージャー仕様を追加して、再参戦することとなります。
・1987年の販売台数 : 137,566台(内5ナンバー : 20,038台)
・1987年の販売台数 : 191,644台(内5ナンバー : 27,669台)
この頃の軽自動車界は、スズキとダイハツが激しいトップ争いをする一方で、三菱とスバルがセカンドグループを形成していました。
(参考価格)
・コンビViKi(MT/AT) : 598千円/643千円
・5ドアSG(MT/AT) : 801千円/846千円
・コンビ4WDTR(MT) : 812千円
裏表紙は軽商用車サンバーシリーズとなります。
乗用車系とは異なり、初代以来の伝統となるRR方式を継承していたシリーズです。
この時点では1982年にフルモデルチェンジをした世代ですね。
(参考価格)
・トライ フルタイム4WD TSサンルーフ : 1,170千円
・バン ハイルーフ SDX : 746千円
・トラック 標準ルーフ三方開 フルタイム4WD SDX : 779千円
ということで、いかがだったでしょうか。
こうして一通り眺めてみると、現在まで名称を継承しているのは、今ではダイハツからのOEMとなってしまったサンバーのみとなっているのが、お解りいただけると思います。
その他はモデル廃止やモデルチェンジにより名称が変更されているのです。
過去をあまり知らない方だと、同一メーカーとは思えないかもしれませんね。
この頃のスバルは、軽自動車では一定規模を確保しつつも、普通&小型乗用車では厳しい戦いを強いられつつありました。同じく苦戦状態だったいすゞと組んで国外に活路を見出したのが、当時の状況となります。
スバルはこの後、レガシィの登場で一息つきつつ、新たなるパートナーとして日産と提携することとなりますが、その前夜ということで一番苦しい時期だったと言えると思います。
苦境からの新展開を求める際に、それまでの名称を捨ててしまっているのが、大きな変化の主な要因ですが、それ以外にも生き残るためのラインナップ変更等も影響しています。
4半世紀前とはラインナップが大幅に替わったのは、他社も同様ですが、その中でもスバルが一番差が激しいように映ります。それは20世紀末から21世紀にかけて一番激動だったため、と言えるかもしれませんね。
※各車の販売台数は、月刊自家用車誌に掲載された自販連調査の新車販売台数から引用。