
久方ぶりのセールスマニュアル話となります。
お題は、先代のCクラス後期という何とも力の入りそうなもの。
その一方で、先代とは言えどもまだまだ旧車の域ではないモデルですから、ちょいと緊張してもいたり(笑)
今回取り上げますのは、先代(W204/S204)が2011年にマイナーチェンジした時点のもの。量が多いので、再構成の上で前後編に分けることにします。
この世代は、自分で乗っていることもあって、まだまだ新しい気でいるのですが、数えてみると5年以上の年数が経過していますね。なるほど、認定中古車の主流は現行に移るはずだよなぁと。
とは書きながらも、まだまだ中古車市場では台数の多いクルマでありますし、セールスマニュアルの体ではあるものの、このマイナーチェンジによる変更点を情報として把握しておくというのも、よろしいかもしれません。
なお、今回取り上げるにあたり、以前作成して参考となりそうなものの、リンクを貼っておきます。
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後期のモデル変遷を書いたもの
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後期のボディカラーの変遷を書いたもの
さて、前置きはこのぐらいにして、本編に入っていきます。
最初は見開き
204は、2007年の発売開始以降、好評をもって受け入れられ、長年に渡る好ライバルかつこのセグメントのリーダーとなる、BMW3シリーズ(E90)に近付くことに成功しています。その後、やや販売は落ち着く一方で、アウディA4がB8系以降、新たなライバルとして成長しつつありました。
このマイナーチェンジは、そんなライバル達を見据えてのものとなります。翌年には3シリーズが次世代に進化することが確定もしていましたし。
そんな状況もあってか、それまでメルセデスのマイナーチェンジはあまり大きく変わることはないという通例を破る大幅変更となっています。
詳細は、個別ページを見ていくことにして、ここではグレード別の価格に注目してみます。
今の価格と見比べると、約10%ぐらいはお安い設定と言えそうです。今のモデルとは装備の差がありますし、何より消費税の3%違いがあるわけで、高い・安いの判定は一概には言えませんが。昨今の販売状況を値引きや登録済み未使用車等を加味しつつで考慮すると、できれば、これぐらいの価格であってほしいという思いは持ちつつ。
エクステリアの変更その1です。
フロントマスクはほぼ一新と言っていいと思います。
当時は、存在感を強調する方向に変更された各部の造形に対して賛否が分かれましたが、今ではこれぐらいなら、むしろ大人しいぐらいでしょうね。
ライト類にはLEDが入り込み始めた頃で、ポジショニングライトで個性を主張しています。
ドライビングライトは、前期の途中でLEDが選択可能となっていましたが、更なる改善。デザインアイコンと書かれている割に、205では意匠のみ → それも消されるという経過となってしまいました。
このライト類、私的にはハロゲンの意匠の方が大人しくて好ましく思ったのですが、その機能を買ってバイキセノンを選択しました。セットオプションとなるLEDドライビングライトと合わせて、夜間の視認性に大きく貢献しています。
今はキセノンからLEDに主流が移っていますし、日進月歩の分野と言えますね。
エクステリアの変更その2です。
こちらはリヤ部。
フロントの大幅変更から比べると、変更規模は少なめとなります。
と書いてはみたものの、リヤバンパーのデザインまで手が入っていたのはこの資料で初めて知りました。
ランプ類はフロント同様に、LEDの採用が主眼。昼間はデザインがあまり変わっていないように映っても、夜間は明確に判別可能。これまた、安全性に寄与する部分と言えましょう。
81の時は時代考察の点でLED化に逡巡していて、クルマ替えたらLED化をやろうと思っていたのですが、ほぼ手を入れる必要はありませんでした(笑)
空気抵抗係数は、元からCd=0.27と優秀な値でしたが、更なる改良により0.26に進化。高速域の加速や燃費に貢献しています。
インテリアの変更その1です。
基本レイアウトは前期からの踏襲となりますが、インパネ自体を変えちゃっていますから、こちらも大幅変更と言っていいでしょう。
その主な目的は質感の向上にあります。
以前に
前期をお借りしたことがありまして、乗り比べると解り易いですね。
機能自体は、前期もほぼ同等で十分以上のものがあるだけに、それを効果的に見せる術に長ける様になったという言い方でしょうか。この時期以降、質感の向上というのは今に続く重要なテーマであることを感じます。
この変更で唯一改悪と思えるのは、ハザードの位置です。咄嗟に押せない位置への変更は、安全の点から疑問符を付けざるをえません。
インテリアの変更その2です。
と書きつつも、ここでの変更は、インパネの変更に伴うグローブボックスぐらいです。
この変更で車検証入れが入れられるようになったとされていますが、実際はマニュアルの類が分厚いため、最小限のモノ以外は、トランクサイド行きだったりします(笑)。おそらく、同じような使い方をされている方が多いのではとも。
ラゲッジの容量ですが、リヤシートを倒さない状態だと、特に高さ方向はセダンの方がスペースを稼いでいたりするようです。もちろん倒した際の自由度は、ワゴンがはるかに勝るわけですが。
このクラスらしく、ゴルフバッグの積載方法が掲載されています。横方向の寸法に制約があるため、実際の積載量は限界がある感が否めません。そういえば、現車を買う際、最初に行ったブランドスクエアの説明で、ゴルフをやられますかという質問があったことを思い出します。
リヤシートの可倒は、実は自車にはない機能でして、数少ない不満点の一つだったりします。それで困ったことは殆どないのですが、イザという時に長尺物が載せられるというのは機能の点で大きい気がします。
本当は選択可能なら、選びたかったのですが、自分が買う時には選択不可でした。その点は承知の上だったわけではあるのですが。
メカニズムの変更です。
この頃前面に出されていた、Efficiency(=効率性)が掲げられています。
最大の目玉は、従来の300に代わる350の設定と、4気筒系への7G-TRONIC(7速AT)の拡大採用となります。
350は大幅なパワーアップを伴っていて、この変更を機に4気筒系から離れた感が強いですね。今のC43に近いと言えるかもしれません。
7Gは内外装の変更と共に、私が後期を推す理由となるものです。ギヤのワイド化による効用もありますが、ギヤ間のステップ比が近づいたことで、やや引っ張り気味の印象がなくなっていることやシフトショックが減っていることも挙げられます。この時以降、先日も使ったギヤをあてに行くという言葉が近くなっていますね。
実はこの時点では、ECOスタートストップ機能(アイドリングストップ機能)は新開発となる350のみの採用でした。この後半年ほど遅れて、4気筒系にも拡大採用されることとなります。
賛否が分かれる機能ですが、費用対効果ではなく無駄の抑止の観点で私は積極的に使う方です。ただ止めるだけでなくよく考えられている機能で、今のところ弊害も感じられません。まだ初期なので、再始動時のショックはやや大き目とは言えそうです。
ボンネットは軽量化を目的としてアルミニウム製に変更されています。記載はされていませんが、フェンダーもアルミニウム製(磁石で確認・笑)。一説には、7G搭載による重量増対策ともされていますね。ボンネットを開閉する際に明らかに軽く感じるのはもちろん、旋回時にフロントの軽さを感じさせる要因の一つなのかもしれません。
安全装備に関してです。
メルセデスにとって安全は絶対に譲れない部分だけに、技術の進化に合わせて各種機能が追加されています。
アテンションアシストは各種パラメーターから疲労度を測る機能ですが、通常は静かに寄り添う存在です。自車で35,000kmほど使って、警告を発せられたのは一度のみ。高速のインターで進路を誤り少々ふらついた際に、蛇行と取られたようです。長時間の運転で若干意識レベルが低下していたような気もするので、万が一の時には役立つ機能です。
アドバンストライトは、上に書いたとおり、その多機能を買ってオプショナルで追加。自分的には追加して正解の機能でした。アダプティブハイビームアシストは、効果が認識されて日本車でも採用するところが増えましたが、この時点で採用済。
現在では、ビーム制御はマルチビームやマトリックスヘッドライトといった進化をする一方で、この機能の採用を宣伝している社もあるというのがクルマ業界の実態でもあります。
パークトロニックは付けず、付いているクルマを借りても使わずですので、省略。最新のものは並列駐車まで可能となっていて、進化が著しい分野です。
アダプティブブレーキは、何よりホールド機能を便利に使っています。ストップ&ゴーの多い都内では使う頻度も高く。慣れてしまうと、これがないクルマに乗った時には不便に感じます。その他にも、ドライブレーキやプライミング等の機能があったのは、初めて知りました。大々的に謳わないのは、同様の機能を備えたEクラス(W211)のSBCが大規模リコールに発展した背景があるのだろうと推測するところです。
リヤビューカメラも若干地味目の改良。リヤハイデッキのW204では必須に近い装備です。ここも進化の速い部分で、新型は大画面にもっと鮮やかな映像で表示できるようになっていますね。
メルセデスではCOMANDシステムと名付けられている、AV系の改良です。
何より、前期では格納式だったディスプレイを、インパネの形状変更と合わせて組み込み式とした点が大きいですね。前期のディスプレイの動きは実に巧みで一見の価値はありますが、経年による故障の心配も若干あり。その点、組み込みなら、というわけです。
機能面は、PC同様に最も進化の著しい分野と言えるでしょう。実際、この時にNTG4から4.5に進化していて、末期まで同様とされていますが、自車のナビゲーション画面は色使いが違っていますので、表に出ている以外にも時点変更されている可能性が高く。
4から4.5になって、コピー対策か地図更新の際にパスコードが必要となりました。
機能は増える一方ですが、使い勝手の部分は最新=最良とは限らないのが面白いところ。ナビゲーションのサプライヤーが変わったことで、自分的にはこの世代の方が使い易かったりしますし。
といったところで前編をお送りしてきました。
マイナーチェンジでもこれだけ力が入っていると、実に読み応えがあります。これに加えて、モデルイヤー毎の小変更がほぼ毎年あるのですから、買い時の判定は難しいところです。
その背景には統合制御システムの進化が著しいといった事情があるのでしょう。
もっとも、BMW3シリーズやアウディA4といった、強大な好敵手の存在があるからこそ、これだけ力の入った改良を加えることができるのだとも思います。ライバル車の存在はやはりとても重要なのです。
最初の見開きでお気付きかもしれませんが、前編は改良点を中心にお送りしました。
後編はもう少し深海の領域の解説となりますので、その種に期待される方はお楽しみに(笑)