ようやく年度内のお仕事も完結となった・・・と感慨深くなる間もなく、明日からは新年度のお仕事が始まることとなります。
まだ、しばらくは多忙な日々は確実で、更新の間隔を開けつつ軽い話を取り上げることとなりそうです。
軽い話ばかりとは書きつつも、今回はかなり珍しい資料ということで若干の補正をさせていただこうという次第(笑)
さて、今回取り上げるのは、このクルマとなります。

カムリ プロミネント
3台の画像はFavCars.comより引用
1987年(昭和62年)4月6日の発表&発売ですから、ちょうど30年前となります。
トヨタ初のV6エンジンを搭載。そのことは従来のFRに加えて、FFでも上級車市場に参戦することを意味してもいました。他メーカーは既に先行している分野でもありましたので、国内の主要メーカーが出揃った形になったとも言えます。
プロミネントのベースとなったのはこちら。

カムリ ZX
半年ほど先行する形で、3代目に進化しています。この後、ほぼ全車に展開されるハイメカツインカムを初搭載して、話題となりました。(以前に取り上げた時の話は
こちら)
FFとは2代目となるこの世代では、先代で感じられた質実剛健さよりも、高級感を意識した作りを特徴としていますから、V6で高級感を訴求するというのは、モデルコンセプトとの親和性も高かったように思います。
トヨタ各車のFF化が進行する中では、全体バランスの点で一クラス上がる必要があったという事情も垣間見えたりはしますが。
比べるとお分かりのとおり、プロミネントはV6を搭載するにあたり、大型バンパーをはじめとして、フォグランプ一体のライトや専用フロントグリル等、4気筒モデルとの差別化を意図した変更がされています。実はこの差別化、国内のみだったりします。

こちらはUS輸出仕様のV6モデル。
国内より1年近く遅れて、2.5L版がグレード追加されています。
プロミネントに流用された大型バンパーは、4気筒モデルと共通であり、V6モデルの区別は控え目なフロントグリルのエンブレムのみとなっています。プロミネントにおける差別化は、車格や高級感を意図したものだったようです。
こと国内市場においては、4気筒で展開していたモデルを6気筒化して一クラス上に参戦させるというのは、それだけ難しかったという見方もできますね。
ここまでが話の前段で、ここからは資料の話に入っていきます。
入手は経路こそ失念しましたが、時期は確か発表前だったはずで、新型車解説書やセールスマニュアルから、手書きで転記したことを推測させる内容となっています。
先ずは、新型エンジンの概要が書かれています。
この少し前から、トヨタのエンジン型式名の枯渇が話題となっていたのですが、ここでついに”VZ”という2つのアルファベットの組合せとなりました。当時、これはすごい驚きだったのを覚えています。この後しばらくは、〇Zという名称が使われていくこととなります。
また”ツインカム24”という言葉が商品力を持っていた時代に、”フォーカム24”というのはやはりインパクトがありました。実は前年に登場したレパードのVG30DEも”フォーカム”が使われていますが、押し出しではやはりこちらかと。
V6としては、他社が先行していてトヨタが最後発となっただけに、その分のアドバンテージを訴える内容となっています。4気筒でハイメカツインカムを搭載した以上、上級の6気筒でも採用するのは、当然の選択。後でも登場する直接のライバル車はシングルカムでしたから、商品力も含めて後出しの有利はありますね。
もっとも、中回転域以上のトルク・出力にアドバンテージを持つ一方で、低回転域では日産のVG20Eが逆転。VGは4年近く前の登場であることからすると、善戦と言えそうです。
ここからは、初のV6ということで、理解を進めてもらうための資料に変わります。
直6の1Gよりもシリンダブロックが150mm以上も短いのですから、V6のコンパクトさが際立ちます。しかも1Gはこれ以上の排気量拡大が難しい設計なのに対して、VZは排気量拡大の余地あり。最終的に3.4Lまで拡大されています。
有利と書かれているショートストロークを採用したのには、そんな事情もあったのでしょうね。
フォーカム24バルブは、先行例がありましたので、ここではFF車とハイメカの組合せで世界初を謳っています。
搭載車種への考慮もあってか、コンパクトであることは重要だったようで、バンク角は60度を採用。ツインカムとなるヘッドもシザーズギヤ駆動を採用することで、バルブ挟角を狭くしています。
同じ4バルブを採用するレジェンドへの意識はかなりあったようで、バンク角に続いて自社方式の有利さが書かれています。狙いは同じところにあって、アプローチが違うということなのですが、双方共に自社が正しいとしていた過渡期にありました。
日産が大々的にV6を登場させた時には、直6が正しいというアピールをしていたような気がするのですが、事情が変わった以上、「今後も発展を続けていくエンジン」に変わるです(笑)。現在は、FR系もV6に一本化されたことからすれば、これが正しかったという見方もありですね。
続いては、他車との比較です。
最初に、各車の価格をMT/AT(単位:万円)の順で掲載してみます。
(引用元:月刊自家用車誌に掲載された東京地区標準価格)
カムリ プロミネント:229.6/239.5
ブルーバード セダン マキシマ ルグラン リミテッド:210.5/219.3
ギャランΣ エクシード エクストラ:-/239.7
当時のこの価格帯は、マークII系やローレルが多数だったことからすると、マイナーな車種が選ばれています。V6を搭載したFFセダンという比較という見方もできますが、ライバル車は共に4年目に入っていた末期モデルでしたので、プロミネントが優位になるのは当然ではあります。
上級となるプロミネントGの比較です。
カムリ プロミネントG:248.6/258.5
クレスタ スーパールーセント ツインカム24:248.6/258.5
ここでは、ツインカムを搭載したパーソナル風味のセダンということでクレスタが登場。このクレスタが存在していたがために、ビスタにはV6が搭載されなかったという事情もあり。
同価格ということで、実際の商談でも比較されることは多かったのではないでしょうか。
いい勝負に見えますが、販売台数としてはクレスタ有利の状況で進んでいきます。
他車との比較の最後です。
マークII セダン グランデ ツインカム24:247.6/257.5
ローレル セダン VG20ターボ メダリスト:-/261.6
ルーチェ セダン ターボ リミテッド:242.8/253.5
レジェンドZi:253.0/261.9
販売の最大多数は220万円前後でしたが、このクラスも需要は多くあり、各車魅力的なモデルが揃っていました。
こうした中で、どの車を選ぶかというのは見解が分かれることと思います。選択肢がかなり減ってしまった現在からすると、ちょっと羨ましくもありますね。
といったところでいかがだったでしょうか。
実はこのプロミネント、父親共々かなり期待をして登場を待っていた一台でした。
父は元来の6気筒派でしたし、私はFFによる室内の広さや少々の降雪時の安定性の高さを買っていたということで、両者の要求を満足させる存在だったのです。
だからこそ、こんな資料を貰って事前学習していたのかな、なんて推測する次第です。
実際に登場してみると、販売上はマークII3兄弟の強さは変わらずでしたし、カムリなら4気筒の方がバランスは良好ということで、特に私の方は2.0ZXがベストに傾いていくことになります。
V6も輸出用の2.5なら、また別の意義も見出せたのでしょうが、当時の国内の税制に縛られた2.0では、重量増で得られる価値は静粛性ぐらいでしたからね。
しかしながら、このプロミネント、カムリのV6とされた国外で大きな成功を収めることとなります。この世代はまだ過渡期の感もありますが、シャシーが新設計された次世代以降、ウィンダムも含めて大きな展開となっていくのです。
カムリがトヨタ内の他車の系譜が途絶える中、今に続く要因となった一つに、このプロミネントがあったことだけは間違いがありません。そのことは、トヨタ自身、登場時点ではきっと想定していなかっただろうなというあたりが、クルマ作りの面白いところでもありますね。