
さて前回の「
南アルプスの秘境を訪ねて 」では、大鹿村で「ここでちょっとトラブル」とか、下栗の里で「ここからがまたたいへん」とか思わせぶりに書いていますが、なんと2日連続でパンクさせました。あり得ない話です。
しかも2回目は走行不能で、とうとうリタイアとなって旅は突然中止になりました。
ディーラーの担当者も「2日連続というのは初めて聞きます」とびっくりしていました。
2日連続でしかも2回とも左前輪ですから、たまたまとは言い難いです。あきらかにドライバーに問題ありですから、原因分析と再発防止が大切です。こんなとき息子娘がいる方だと「免許を返納したら」と言われるのでしょうね。
【1回目のパンク(9月28日)大塩村】
大鹿村の夕立神パノラマ公園まで、標高差1000m近くもある曲がりくねった山道を登って下りてきました。
道の駅「歌舞伎の里 大鹿」で休憩して、さあ早くしらびそ高原の宿に行こうと走り出したら「ポーン」と警告音が鳴りました。

i-Driveに「タイヤ空気圧低下」と警告が出ています。
「ありゃー、やっちまいました。」
だけどびっくりするよりやっぱりと思ったのは、先ほど山道の下りで窓を開けていたら、なんだかタイヤがつらそうな音を出すのに気づいていたからです。「窓を開けると、こんなにつらそうなタイヤの音が聞こえるのか。窓を開けるのは精神衛生上良くないな」なんて暢気なものでした。
すぐに大鹿村役場の駐車場に飛び込んでチェックしましたが、間違いなく左前輪がパンクしています。
幸いなことにアスパラのActiveHybrid3はランフラットを履いています。警告表示にも出ていますが、80km/h以下ならば当分走れます。給油しなければならない時期でもあり、ナビで調べたらこれから向かう松川町にシェルのスタンドがありますので、とにかくゆっくりそこに行きましょう。
以前に天城山の山中でパンクしたときも、対応してくれるところまでなんとか走れるというのがとても心強いと感じました。幸い前を走っているのは岩手ナンバーのダンプカーです。(いま大鹿村はリニア新幹線の工事が佳境で、全国からダンプが集まっているそうです。)
いつもならどうやって抜こうかと考えるところですが、このときばかりはゆっくり付いていきます。
ガソリンスタンドで相談しましたが、「ごめんなさい、うちではランフラットを修理する道具がありません」でしたが、それからこの人はもの凄く親切に、ミスタータイヤマン、タイヤガーデン、オートバックスと次々電話して、「コンチネンタルのタイヤはあるか、ランフラットは直せるか」なんて問い合わせてくれました。コンチは近くに代理店がないのですぐには直せない、ランフラットも今日中になんか手に入らないことがはっきりしました。なんとか、しらびそ高原の宿に行きたいと言ったら、ミスタータイヤマンさんに「ノーマルでいいからすぐに用意して。できれば中古品で」と話をまとめてくれました。電話番号からナビにミスタータイヤマンさんの位置までセットしてくれて、本当に親切の塊です。どうもありがとうございました。

ナビに案内されて、無事にミスタータイヤマンさんに到着。
もう、しっかり態勢を整えて待っていてくれました。
「残念ですが、該当する中古品がなくて新品を手配しました。30分位で届きますが、それでよろしいですか?」と聞かれても、他に選択肢はなく「ぜひ、それでお願いします。」となりました。

これが左前輪の傷です。サイドをバッサリやられていて、これでは修理不能です。
よくこれで走ってこれたと、あらためてランフラットの効能を確認しました。

これが交換したタイヤです。BS プレイズPXⅡ 225/45R18 新品です。
「もう普通に走っていい?」「はい、まったく問題ありません」と確認しました。
写真はしらびそ高原まで走ってから撮ったものです。
新品だから金はかかったし2時間遅れではありましたが、この日のトラブルは一件落着となりました。
【2回目のパンク(9月29日)佐久間湖】
ところがそれで終わりませんでした。
次の日は、早朝から天気に恵まれてしらびそ高原でしっかり写真も撮れたし、下栗の里も行けたしと満足して、あとは152号線で浜松を目指すだけです。

国道152号線は、青崩峠(あおくずれとうげ)のところは未開通で兵越峠(ひょうごしとうげ)に迂回となります。ところが行ってみたら「全面通行止」で「静岡方面には行けません」となっています。「え~っ!そんなこと聞いてないぞ~」と驚いて、なんとかならないかと突っこんでいきましたが、4枚目の「全面通行止」看板を見て、さすがに引返すことにしました。

兵越峠が越えられないとなると、国道418号で天龍村に出ます。そのまま418号を進む手もありますが、152号に戻るならば天竜川沿いに県道1号線を行くのが良さそうです。県道1号線という立派な名前に騙されましたが、進んでみるとこの道はとんでもない道でした。天竜川に沿ってクネクネと進みますが、そのクネクネ具合が半端ありません。とくに佐久間ダムでできた佐久間湖沿いでは、湖に落ちる断崖を丁寧に全部なぞっていきます。途中に集落はまったく無くて、運転しているのも段々疲れてきました。つい先を急いでスピードが上がったようです。

佐久間ダムまでもう少しになったところで、昨日と同じような音が聞こえ始めました。あきらかにハンドルも取られるようになったので、停められるところを探して点検しました。

もう最初から怪しいのは左前輪ですが、ひと目見てペシャンコでした。
「やべぇ、またやった~」と力が抜けました。
そうです、昨日入手できなかったので左前輪だけはランフラットではありません。もうペシャンコで側面の字なんかも消えているほどで、走れないのは明らかです。
43千円した新品タイヤですが僅か1日の命でした。
もうレッカーを呼ぶしかないでしょう。
保険にオマケのように付いているロードサービスを使うので、とにかく保険会社に電話しましょう。
ところが電話をかけてもスマホには「接続できません」と表示されます。あれあれ圏外です。
BMWのエマージェンシーサービスも試みましたが、こちらも繋がりません。
いよいよ困りました。もうほとんど呆然としています。
あとはActiveHybrid3を置いて、電話が繋がるところに行くしかありません。
最後の手段です。通りかかったクルマの前に両手を拡げて飛び出しました。
紅葉マークを付けたクルマが停まってくれて、中からお爺さんが、「どうしたの~?」と降りてきてくれました。
「バンクしたけれど、スペアを積んでいません。レッカーを呼びたいのに電話が繋がりません。電話が繋がる町まで乗せていっていただけませんか」とお願いしたら、ものすごく心配してくれました。昨日のガソリンスタンドに続いて、またも人の情けに救われました。

佐久間ダムを通り過ぎて、飯田線の中部天竜駅まで行ったら、やっと電話が繋がりました。
このロードサービスでは、なんと15万円までの範囲はレッカーを無償で頼めるそうで、沼津までなら大丈夫でしょうとのことでした。
レッカーなんて贅沢なものは、直近の整備工場までかと思っていたら、みなさん慣れている自宅近くの工場まで運ぶそうです。静岡だったら西は大阪、東は埼玉くらいまで可能だそうです。
電話オペレータが「現場に戻ってお待ちください」と言うので、現場では電話が通じないので中部天竜駅にして欲しいとお願いしました。
15時頃にやっとレッカー手配が完了しました。ずっと待っていてくれたお爺さんにお礼を申し上げ、「お名前とご住所を聞かせてください」と言っても「いいよ、いいよ。通りかがりにちょっと手伝っただけだから」と、本当に神様仏様です。神様は「じゃあ失礼するよ」と何も教えてくれずに去っていってしまいました。
「搬入先に連絡しておいて下さい」と保険会社に言われたので、いつものタイヤショップに電話しました。もうここなら電話が通じます。ところが今度は、いくらコールしても出てくれません。慌ててネットで調べたら、なんと定休日です。またまた困ったものです。困ったときのBMW頼みで、今度はディーラーさんに電話して事情を説明しました。何時までなら搬入できるか聞いたら21時までなら大丈夫とのことでした。

レッカーが来たのは17時過ぎです。静岡からこの山奥まで来てくれたのですから仕方がないですが、なんと2時間待ちです。
保険会社に「どれ位で来てもらえるかな?」と聞いたら「平均では40分です」と回答されましたが、平均なんか聞いても何の役にも立ちませんでした。
これからだと積み込み作業もあるし今日中の搬入は際どいので、今夜はレッカー屋さんに預かってもらい、明朝の搬入に変更しました。
変更するには保険屋さんに連絡して承認を得たり、まだまだたいへんです。

現場にレッカーが到着しました。

あらためてタイヤの傷を確認しましたが、随分バッサリいってます。
(紫色はレッカーの照明のせいです)

いよいよレッカーへの積み込み。

積込みが完了して、さあ出発です。

アスパラは天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅に出て、ここから1両で走るディーゼルカーに乗って掛川に出て、新幹線に乗換えて帰りました。
家に着いたらもう22時で、さすがに疲労困憊でした。
いろいろあったし大散財ともなりましたが、この2日間多くの方にたいへん親切に助けていただきました。
心からの親切をたくさんいただいたのが、今回旅行の最大の収穫です。
9月30日に入庫したActiveHybrid3は、翌10月1日に新しいランフラットを履いて帰ってきました。
気になるのでドライブレコーダーの画像を調べていったら、8分前に大きな音が記録されています。どうやらそれが怪しいのではと睨んでいますが、画像では何を踏んだかまでは確認できません。途方に暮れている情けないアスパラも写っておりますので、よろしければご覧下さい。