マッスルカー・アゲイン

クライスラー300Cはここ最近で最も人気のある「アメ車」だと思われます。提携相手であるメルセデスの先代Eクラスのシャシーを流用しているらしいのですが、そのパフォーマンスに関してはほとんどの媒体で高い評価を得ているようです。300Cは90年代後半から世界中で始まったメーカー再編成の結果として、功を奏した例の一つだと言えるでしょう。現在このセグメントはメルセデス・BMW・アウディなどのドイツ勢によって支配されているのですが、その中でクライスラー300Ｃは一陣の風となることができました。理由としては、確かに商品としての性能・品質が平均以上だったという面もあるのでしょうが、やはりそのマッシブな外観・風貌こそが人気の直接的な要因になったと思います。端正なドイツ車や色気のあるイタリア車、地味で渋いイギリス車や繊細で奇抜なフランス車とも違う、問答無用の力強さと溢れんばかりの「悪」の雰囲気。これが国の違いを超えて300Cの販売台数が伸びている一番の理由であり、同時にこの車のアイデンティティーでもあるのだと思います。アメリカ本国も含めて世界中の人々が抱いているアメリカ製大型セダンのイメージ（大部分はハリウッドの映画によって形成されている）をメルセデス並みの品質で具現化したものが300Cであるとするならば、これは実用性よりもテイストこそが重要な一種のファンカーだと言うこともできるでしょう。個性が強すぎるので万人に似合うわけではないですが、一度乗ってみて鷹揚な悪役的気分を味わってみたいものですね。