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GTIのようなハッチバックに乗っていると、大型クーペやセダンとはまた違った良さが味わえます。その一つは、車体が手の内に収まるような感覚が得られることから、街中でも山道でも自分の意思通りに操縦できることです。大型クーペやセダンでは車格が大きいため、常に道幅を考慮しながら運転しなければなりません。高速道路ではその大きさがゆとりに繋がるのですが、混雑する市街地や狭い山道ではストレスの原因にもなります。それに比べると、ハッチバックは取り回しが楽なため、路上駐車や対向車に対してもあまり神経質にならずに済みます。私が車に求める能力うち半分を占めるのは「通勤快速」なので、その点GTIは完璧に近いパフォーマンスを発揮してくれます。コスモのゆったりとした感じも良いのですが、それはどちらかといえば通勤よりも休日のドライブにこそ相応しい特性だと言えるでしょう。これまでは通勤にコスモを使っていたわけですが、正直贅沢な感じがして勿体無い気がしていました。今は休日だけ気ままに乗るようにしているので、やっと本来の役目に戻せたのではないかと思っています。一方、GTIは通勤に使っても贅沢な感じがしないので、やはり道具として役立ててこそ真価が味わえる車なのでしょうね。
さて、そういう風に本来なら道具であるはずのハッチバックに対して、過剰な性能を与える習慣がヨーロッパには古くからあります。そもそもは初代ゴルフGTIに由来しているのかもしれませんが、近年のそれ（いうなればスポーツハッチバック）にはメーカー側の遊び心がより強く反映されているような気がしてなりません。道具としても便利で、尚且つ運転しても楽しい。そんな車をヨーロッパの人々は求めているのでしょう。しかし、実際に生産されたモデルも数多く存在する中で、私が特に気に入っていたコンセプトモデル達は全て、陽の目を見ずに消えていってしまいました。そこで、そういったモデルたちを忘れないためにも、三回に渡ってここで取り上げたいと思います。
まず第一回目は、2005年の東京モーターショウで初公開された「アウディ・シューティングブレイク」です。2ドアのコンパクトなボディに、えげつないフロントグリルと初代TTクーペのような丸みを帯びたリヤセクションの組み合わせが、たまらなくキュートであり、また格好良くもあります。雑誌で初めて見た時から現在に至るまで、このモデルの存在は脳裏に焼きついていて離れません。何故生産しないのでしょうか。別に、3.2Lのエンジンも、250psの出力も、クワトロシステムも要りません。このデザインのまま、2.0TFSIを載せて400万くらいだったら本当に理想的だと思います。次期A3はぜひこの「シューティングブレイク」を参考にして設計・生産していただきたいものですね。単なるコンセプトモデルとして終わらせるには、あまりにもよく纏まったスタイルをしていますから…。