2007年03月27日
世の中には自分の知らない素晴らしい娯楽作品が本当にたくさんあるもので、ふとした機会にそれらの作品に出会ったりすると、「もっと前から知っておけばよかった」とつくづく痛感させられます。今回採り上げる東方Project関連の作品も、私が久々に「しまった!」と思わされた存在で、最近は二次を含む膨大な作品群の消化に日々勤しんでいます。サブカル系の作品にここまで嵌るのは、「新世紀エヴァンゲリオン」以来ですね。とにかく物語の世界観やキャラクターの設定が奥深くて、なかなかに唸らせてくれます。
東方Project関連の作品はシリーズ物として既に長い歴史を有していて、現在では同人市場のみならず一般の市場でもかなりのシェアを形成しているようです。純粋に原作と呼べるものは弾幕系のシューティングゲームの方なのですが、作品世界の実質的な肉付けを受け持っているのは、むしろ漫画や小説等の同人誌、アマチュアミュージシャン達によるアレンジCD、YOUTUBEやニコニコ動画等のムービーの方であり、これら真偽・清濁を内包する懐の深さこそが東方というジャンルの一番の特徴だといえるでしょう。今回は、それらの中でも東方世界の核と言える原曲(ゲーム中のBGM)について触れてみたいと思います。
何故BGMが作品の核なのかというと、原作者であるZUN氏(作曲・作画も担当)自身が「音楽を聞いてもらうためにゲームを作った」とかつて公言したためであり、私もまさしく原曲こそが東方という世界の大黒柱であると思うからです。その楽曲群はかなりの数の上るのですが、以下に幾つか私の好みの曲を挙げてみました。
■おてんば恋娘
ポップな歌謡曲とでも言いましょうか、爽快なリズムと昭和チックな切ないメロディが同居した不思議な曲です。
■上海紅茶館
冒頭の切ないメロディが強く印象に残る曲です。これも何処かしら懐かしい雰囲気があり、同時にタイトルから想起されるような異国情緒も味わえます。錯綜する二つのメロディがやがて合流してサビへと至る、その流れが素晴らしいですね。
■ラクトガール
西洋的なクラシカルさが特徴的な一曲です。紅魔郷の舞台(紅魔館)自体が西洋的であり、この曲はそれを一番忠実に反映したものだと思います。紅魔郷の曲は熱くなれるものが多いですが、それらに比べるとこの曲には割と落ち着いた雰囲気があります。低血圧な熱血、という感じですかね。
■亡き王女の為のセプテット
ゲーム音楽という枠を超えた名曲です。格調の高いメロディといい、抑揚の効いた構成といい、最初から最後まで隙がありません。レーダーチャート風に分析すれば綺麗な真円ができるくらい全体のバランスが良いと思います。「様式美」という言葉が一番似合う曲かもしれません。
■U . N . オーエンは彼女なのか?
こちらはむしろゲーム音楽として最高の部類に入る曲だといえます。どんなジャンルのゲームでも、この曲を使えば少なくとも音楽面では評価されるでしょう。一度聴いただけで確実に憶えられるようなキャッチーなメロディが特徴的かつ最高です。
■人形裁判
この曲を元ネタにしたパロディソングがあまりに有名になりすぎたために誤解されがちなのですが、原曲は少々暗く不安感を煽るような曲だったりします。和のテイストが濃い妖々夢の中では、珍しく西洋的な雰囲気があります。
■幽雅に咲かせ、墨染の桜
シューティングゲームのBGMとしては異様な美しさを誇る名曲です。桜の花のイメージと、そこに含まれる日本的な趣を見事に反映していて、誰が聴いてもほぼ無条件に賞賛できる楽曲となっています。幽霊お嬢のテーマ曲なのですが、彼女の放つ美しい弾幕を見ながらこの曲を聴けば、軽い恍惚状態になれること請け合いですね。
■ネクロファンタジア
好き嫌いを別にして、もし東方シリーズを象徴する曲を一つだけ挙げろと言われれば、私はこれを選びます。強大な力を持ちながらも滅び行く妖怪達の気概や悲哀が全編雄大なスケールで展開されていて、聴くたびに心を打たれてしまいます。何を考えているかわからないスキマ妖怪のテーマ曲なのですが、これは単なるBGMではなく、ひょっとしたら幻想郷に対する彼女の愛着の念を表現した曲ではないか、と個人的に考えています。
■狂気の瞳
サビとそれ以外のパートが明確に分かれているものが多い永夜抄の楽曲群の中で、最もシンプルなのがこの曲です。一瞬の静寂からサビに移る部分は劇的ですらあります。この曲もパロディ化されて有名になっていますが、どんな歌詞を付けてもサビの良さだけは失われないのが面白いところです。
■恋色マスタースパーク
タイトルには「恋」とありますが、実際は少年漫画チックな格好良い曲です。他のテーマ曲が多少なりとも世界観を表現しているのに対して、この曲に限っては完全に白黒の魔法使いのキャラクター性で作られていると思われます。誰が聴いてもそのキャラを思い出すという意味では、最も純粋なテーマ曲だと言えるでしょう。
■千年幻想郷
ネクロファンタジアと並んで、こちらもスケールが大きな一曲です。旋律が和風な分だけイメージは限定されますが、それでもドラマチックな展開でとても楽しめます。幻想郷と対をなす世界である月。そこに込められているのはZUN氏の永遠なるものに対する憧れか、それとも進化の極地で精神文化が停滞した理想郷に対する一抹の皮肉か…。とりあえずは怒涛の如く高みへと駆け上がっていくサビのメロディに身を任せることが肝要ですね。
■竹取飛翔
神様や妖怪をモチーフにしたキャラクターが大勢出演する東方の世界の中で、唯一本人そのものとされているのが「かぐや姫」こと蓬莱山輝夜です。この曲はその輝夜のテーマ曲なのですが、初めてこの曲を聴いたときに私は非常に驚かされました。それというのも、この曲が単に輝夜のテーマ曲として似合っているだけなく、御伽噺のかぐや姫のテーマ曲としても充分通用すると思ったからです。例えば、東方シリーズのことなど何も知らない人にこの曲を聴かせて、「これ、かぐや姫のテーマ曲なんだけど」と言えば、ある程度の人は理解を示してくれるのではないでしょうか。イントロの雅な旋律とサビの繊細で物悲しいメロディは、永遠の時を生きる者の切なさを余すところ無く表しています。これもまた、ゲーム音楽という枠を超えた名曲だと言えます。
■月まで届け、不死の煙
最初に流れるメロディを、アレンジを変えながらひたすら繰り返す曲です。何故同じメロディを繰り返すのか。それはこの曲が逆恨み娘の不死性(殺されてもすぐ生き返る)をテーマにしているからです。普通に聴くと格好良い曲ですが、人間としての感情を保ったまま千年以上も生きてきた彼女の人生に思いを馳せれば、また違った趣が味わえるでしょう。
以上に挙げたものは「気に入った曲の幾つか」であって、これでもまだ全てではありません。他にも好きな曲はたくさんあるのですが、それらはまた別の機会に触れてみたいと思います。
ゲームの音楽(とその世界観)で感動したのは、「ドラゴンクエストIII」「ファイナルファンタジーVII」に続いてこれが三度目になります。いつ何時良い作品と巡り合えるかもしれないこと考えれば、やはり各方面にセンサーを張り巡らせておかないといけないと、今回この東方の件で改めて実感させられました。単にメロディーが良いだけではなく、きちんと世界観が盛り込まれた音楽を聴くことは、小説を読むのと同じくらいの充実感があります。当分の間は、東方関連の楽曲を聴く日々が続くでしょうね。
Posted at 2008/09/25 06:15:27 | |
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