2007年03月29日
原曲・アレンジと続いて、最後はパロディにも触れてみたいと思います。東方関連の音楽作品においては、シリアスな楽曲だけでなく、荒唐無稽なパロディソングもまた重要なポジションにあると考えられます。実際には原作の内容と無関係な歌詞・世界観を持つ作品が大多数を占めるのですが、しかしある意味ではそういったパロディ作品こそ、客が抱くイメージや妄想を最もシンプルに具現化しているといっても過言ではありません。我々人間という種族は、何か真面目で真剣なものを見るに付け、そこから冗談の種を探してしまうものです。何故ならそれは、現実の息苦しさから逃れるための一つの有効な手段であるからです。幻想郷は息苦しさと全く無縁の世界ですが、それでもまあ「輝夜がニートだったら…」「アリスがツンデレだったら…」などと想像してみれば、いくらか楽しみも増えることでしょう。今回は、そんな風に東方シリーズの世界観を広げてくれる(破壊してくれる)パロディソングを幾つか挙げてみました。
■Help me, ERINNNNNN!!(原曲:竹取飛翔)
あの麗しき「竹取飛翔」が、もはや原型を留めていない形にまで変化した名曲です。ノリが良くて楽しいわりに、スッキリと纏まっています。YouTube等のコメント欄にやたらと顔文字が並んでいるのは御愛嬌ですね。東方シリーズに関連する全ての二次創作物の中でも、永く語り継がれるであろう快作だと思います。
■最終鬼畜全部声(原曲:U . N . オーエンは彼女なのか?)
清く正しい青少年達が感動的な歌と技術を披露するハモネプなどでは到底実現不可能な、それ故に「こちらのほうが素晴らしい」と拍手喝采を贈りたくなる怪作です。音楽のジャンルが何であれ、こういうパフォーマンスを実行できる点にロック魂を感じてなりません。ただ面白いだけでなく、感動もさせてくれるパロディ作品ですね。
■ひれ伏せ愚民どもっ!(原曲:竹取飛翔)
究極の下僕ソング(陽性)です。歌詞が面白く、ヴォーカルの声も可愛いのですが、それよりも実は楽曲のアレンジ具合が素晴らしい良曲です。特にラストの1分30秒間は、ファミコン世代には懐かしい電子音に満ちていて、これが単なるパロディソングではないことを明確に示しています。一曲で二度美味しい珍しい作品です。
■ゆかりんファンタジア☆カオスフル(原曲:ネクロファンタジア)
究極の下僕ソング(陰性)です。一部の日本成年男子の醜悪さを如実に表現した作品でもあります。一切の褒め言葉が似合わない珍曲であり、歌い手の対象キャラクターに対する倒錯した愛情と業の深さには、思わずニヤニヤしてしまいます。有り余るほどの情熱と執念を、全く生産的でない方向にしか発揮できないのだとしたら、それは正しく「罪」だと言えるでしょう。
■これはキモちのいいけーね(原曲:プレインエイジア)
ネタ元のキャラクターが東方シリーズにしては珍しく真面目で良心的であることを考えると、その歌詞の落差が面白い一曲です。そして何より、単純に楽曲としてお洒落に仕上がっている点が素晴らしいと思います。東方関連のパロディとしては、一番上品な曲ではないでしょうか。
■株式会社ボーダー商事・社歌(原曲:ネクロファンタジア)
歌詞のフザケっぷりと楽曲の格好良さが見事に融合した、「これぞパロディ」と言える良曲です。「魔理沙は~」「患部で止まって~」「ウサテイ」の三曲によって東方シリーズの存在を知った私が、初めて意識的に探索・発見し、そして気に入った曲でもあります。東方シリーズに嵌るきっかけが、原作のゲームではなくこのような二次作品であったという点に多少の負い目を感じなくも無いのですが、今や毎日原曲を聴くほどのファンになったので許してもらえるのではないかと思っています。
■宴は永遠に(原曲:御伽の国の鬼が島)
数多ある酒類賞賛ソングと同じく、ひどく能天気な一曲です。しかし、よく聴いてみると歌詞が中々風流で、侘び寂びを踏まえているところに奥深さを感じます。パロディソングの様相を呈しながらも、実は「宴会で大団円を迎える東方シリーズ」の精神性を端的に表現した曲なのかもしれません。これも含めて、IOSYSの作品は本当にレベルが高いと思います。
■行列のできるえーりん診療所(原曲:千年幻想郷)
何をもってパロディとするかは個人の感性によって異なるのでしょうが、私にとってはこの曲もパロディの内に入ります。歌詞が東方の世界では珍しい恋愛物であり、ヴォーカルの声も透き通るようなハイトーンボイスで、何ら笑いを誘う要素は無いようにも思えますが、唯一、某薬師がこれを唄っているかと思うと「ありえないな」という意味で密かに笑みが洩れてしまいます。それを除けば、本当に綺麗な曲と言えますね。
■患部で止まってすぐ溶ける~狂気の優曇華院(原曲:狂気の瞳)
YouTubeやニコニコ動画をよく利用している人であれば、一度は耳にしたことがあるはずの曲です。かくいう私も、以前は東方のことなど何も知らずにこの曲のPV動画を見て「面白いなぁ」と楽しんでいました。あまりに有名すぎて、今では様々な類似品が溢れていますが、「洗練された混沌」という点においてはどれも本家に劣ると思います。ネットで動画を見る時代の、代表的な作品ではないでしょうか。
■魔理沙は大変なものを盗んでいきました(原曲:人形裁判)
もはや語る必要も無いくらいの名曲(迷曲)だと言えるでしょう。一度聴いてしまえば、二度と忘れることができないくらいのインパクトがあります。初めてタイトルを見たときには「ルパンのパクリじゃないか」と思って胡散臭く感じていたのですが、実際に聴いてみると、中身があまりにも無関係すぎたのでつい笑ってしまいました。米米CLUBの「FUNK FUJIYAMA」によって邦楽を聴くようになった私にとっては、原点に立ち返らせてくれたパロディソングでもあります。
上に挙げた作品群は、飽くまでも私が面白いと思った楽曲の一例であり、ネットを探せばこれら以外にも本当に様々なタイプの楽曲が見つかります。中には表に出すのも憚れるようなモノも幾つかあるのですが、そういう幅広さ・懐の深さもまた東方の魅力だと言えるでしょう。東方関係のパロディ作品は、音楽だけでなく動画も充実しているのですが、あまりにも多種に亘り過ぎているので、このブログでは触れないことにしておきます。そもそも、「面白い」と感じるセンスは「美しい」「素晴らしい」と感じるセンス以上に個人間での差が激しいので、いくら「良いですよ」と紹介しても、それが人によっては単なる押し付けになってしまう可能性もありますからね。
東方の世界に興味を持った人がいたら、とりあえずネットで探索してみることをお薦めします。シリアスであれ、パロディであれ、何かしらきっと気に入る作品が見つかるはずですから。
Posted at 2008/10/04 23:56:43 | |
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