2009年03月10日
少し前からツタヤがコミックのレンタルに関して「10冊500円キャンペーン」を始めたせいもあって、最近は漫画を読む量が急速に増えています。特に今まで手を出し辛かった長期連載作品が時間的にも金銭的にも読みやすくなったのはラッキーでした。もう暫くはこのキャンペーンを続けて欲しいですね。
この機会を活かすべく、まず最初に選んだのが「ワンピース」でした。この作品については、ずっと以前にアニメを何回か見たことがある(エンディングで幼少の主人公達が砂浜?を駆けていくシーンを見て格好良いと思った記憶がある)だけで、その後は特に気にも留めていませんでした。世間で人気が沸騰していた時期も「大きな作品になったなぁ」と思うだけで、実際に手に取って見ようとはしませんでした。なんとなく初期ドラゴンボールのスケールダウン版というイメージがあって、食わず嫌いになっていたのですね。そんな状態に転機が訪れたのは、何かのイラストでニコ・ロビンの姿を見たときでした。他の登場人物達とは明らかに異質な雰囲気を纏ったこのキャラの存在を知ったとき、私は「ワンピースも毒気を帯び始めたな」と勝手に夢想し、それ以後作品に対して徐々に興味を惹かれるようになったのでした。ここ数年は「いつか読まねば」とずっと思いつつ、巻数が多すぎるのでどうにも気後れしていたのですが、ツタヤのキャンペーンのおかげでやっと踏ん切りが付いたといったところです。まあ、まとめて一気に読むことで作品世界に没頭できるのも後追い派の利点ではあるのですけどね。
全巻通して読んでみて、特に良いと思えた点は二つありました。一つ目は、意外に絵がお洒落だということです。海賊で冒険物ということから、勢い任せの荒い絵柄を想像していたのですが、実際は細部にまで配慮が行き届いたスタイリッシュな作画や構図が多いように思います。背景も手抜きが無く世界観がしっかり反映されていて良い感じですね。キャラクターの造形は突飛なものが多いですが、これもしばらく見ているうちに不思議と違和感が無くなってきたりします。オカマ拳法のボン・クレーなど、最初は「鬱陶しい格好しているな」という風に見ていたのですが、最後の方は「この衣装で無ければボン・クレーではない!」とさえ思えるようになっていました。恐らくは、一人のキャラクターを創作するときに、作者がその髪型や衣装にもしっかりとアイデンティティを込めていて、尚且つそれを最後まで蔑ろにしていないところが好印象に繋がっている理由だと考えられます(このアイデンティティという点については各キャラクターの口癖や喋り方についても当て嵌ります)。漫画であるからには絵で魅せることも大切であり、そういった意味でこの「ワンピース」はとても目を楽しませてくれる作品だと言えるでしょう。
もう一つ、私がこの作品で感心したのは、敗北した悪役にも救いが与えられていることでした。毎回扉絵で展開される敵キャラの後日談は、時間軸の多様化という意味で物語に深みを与えるのと同時に、それまでそのキャラを嫌っていた読者に対して別の視点を持つように働きかけてきます。これは単に作者がキャラクター達に愛着を持っているからというよりも、どんな悪人でも何らかの形で救われるべきという作者の考え方が反映されているからではないでしょうか。また、作品全体に亘ってシリアスさとコミカルさがほぼ同等の割合で配合されていて、ストーリーやキャラにのめり込もうとする(その結果、ある一定の固定観念やイメージに捕らわれかねない)読者に対して、意図的にリミッターを設けているようにも見受けられます。つまり、主義主張を作品に代弁させて読者の共感を得ようとするのではなく、飽くまでも良質なエンターテイメント作品を提示しようとする冷静さが感じられるのです。コマ数やセリフが多い割に週刊連載にしてはストーリーがゆっくり進行していくことも、恐らくは中身の薄い性急な展開を避けて骨太な物語の構築を心掛けているからでしょう。世間的には様々な評価があるようですが、少なくとも私が読んだ限りでは無駄なエピソードは一つも無いように思います。むしろ、これほど長期間に亘ってテンションの高さを維持できている点こそ驚異的と言えるのではないでしょうか。
アラバスタ編の最後でルフィ達が背を向けて腕を突き上げている絵は、最近読んだ漫画のどんなシーンよりも特に感動的でした。また、エニエス・ロビー編で「生きたい!」と叫ぶニコ・ロビンがウソップやチョッパーみたいに鼻水を垂らしている描写には、作者の感情の発露に対する拘りが感じられて思わず唸ってしまいました。キャラクターデザインや舞台設定は奇抜ですが、物語としては少年漫画の王道を行く作品だと思います。他の長期連載物のように打算的にならずに、これからも悠々と続いてほしいものですね。
Posted at 2009/03/10 03:00:20 | |
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