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QLのブログ一覧

2010年02月16日 イイね!

本当にカイゼンすべき部分はどこなのか

先日、トヨタが国土交通省にプリウスのリコールの届出を行いました。北米での混乱が日毎に拡大している最中でも販売台数で快進撃を続けてきたモデルだけに、今回のリコール問題は各方面に多大な影響を及ぼしているようです。ただ私としては、トヨタに対する世間の評価の急落ぶりに多少驚いている反面、このような事態に陥ったことに関しては「仕方ないな」と思っただけでした。それというのも、2006年12月22日のブログを読んで頂ければわかるように、現在露呈しているトヨタという企業の問題点について、私は何となく把握していたからです。2006年といえば生産台数でGMを抜いて世界一位に躍り出ようとしていた頃であり、当時は車関係の雑誌だけでなく経済誌などもトヨタをヨイショする記事ばかり載せていました。私と同じような考えの人達がいくら警鐘を鳴らしたところで、それは「アンチトヨタの戯言」として片付けられるのがオチでした。しかし、あれから3年間、指摘した部分に関して何らカイゼンをしなかったトヨタは、現在このような窮地に追い込まれています。一言で表せば自業自得であり、ゆえに私としては温い憐みがあるだけで、それ以上の感慨は特に無かったりするのです。

私がトヨタを好きになれない理由は主に三つあります。まず一つ目は、日本の企業でありながら日本人を見下しているようにしか思えないところです。特に、レクサスブランドを国内に導入したことは、その傾向を如実に表していると言えます。市販車に興味を持ち始めた90年代中頃、普段街中で見かけるセルシオやアリスト、ウィンダムが、実は北米で多大な人気を獲得しているモデルであり、メルセデスやBMW と競合しているのだと初めて知ったとき、私はトヨタを誇りに思いました。しかも、そのようなモデルを比較的廉価に購入できるわけですから「この国に生まれて良かった」とさえ思ったものです(これはGT-Rやランエボ、インプレッサでも同じことが言えますね)。ところが、やがてトヨタは国内においてもレクサスブランドを展開することを目論見始めました。その根本にあるのは「セルシオなどを選ぶ客はどうせまだ懐に余裕があるのだから、たとえ商品の価格が上がってもそれに見合うだけの高級感を演出できれば、喜んでエクストラコストを払うだろう」という、軽薄な算盤勘定です。優良な顧客から更に金を巻き上げるための装置として、新規のディーラー網を立ち上げる…。そういう姿勢が明らかになった時点で、私はトヨタに不信感を抱くようになりました。
このブログには書いてないのですが、実は以前に一度だけ知人に付き添ってレクサス店へ試乗に行ったことがあります。そのとき対応してくれた営業さんの接客態度は確かにスマートで品が良く、最後まで寛いだ気分で楽しく話ができました。気配りが充分に行き届いていながら、それをなるべく相手に意識させないようにしているという意味では、正しく上質なサービスが提供できていると言えるでしょう。しかし、本来ならそれは接客業の基本であり、レクサス店に限らず全てのトヨタディーラーで行うべきことなのではないでしょうか。顧客の満足度やロイヤリティを高めるためには、会社全体としてハイレベルかつ均質的なサービスを提供し続ける必要があり、全営業社員の接客スキルを底上げするという地道な努力も無く、一部の顧客のみを優遇したところで、会社としての評価の向上には繋がりません。むしろ、勝手にプレミアムブランドを標榜して、それに従う客とそうでない客を選別しているあたり、巨大企業としての驕りが見えて不愉快であるとさえ言えます。「おもてなし」がどうとかアピールしたところで、結局は粗利が大きい高級車を効率良く販売しようとする魂胆がバレバレであり、そうした俗っぽいイメージが付随してしまったことこそ、レクサスが国内で未だに地位を確立できていない最大の要因であると考えられます。
また、トヨタの車造りは基本的に「運転が下手な人でも事故らないように」という方針の下で行われています。「走らない・曲がらない・止まらない」という風にセッティングされていれば、誰だって安全運転を心がけるでしょう。「どんな状況に直面してもドライバーが思うように車をコントロールできれば事故は減るはずだ」というアクティブセーフティの思想を優先させる欧州勢に対し、トヨタの場合は「なるべくアクセルを踏ませないようにする」、もっと言うなら「運転したいと思わせないようにする」ことで安全性を高めようとしています。本来なら運転して楽しい車を造り、消費者に「もっと車に乗っていたい」「もっと運転が上手くなりたい」という意識を持たせることが需要を拡大させるためにも必要なのですが、トヨタはそれと全く逆のことを、ここ十数年間やってきたわけです。現在の日本において自動車は嗜好品としての地位を失い、ともすれば日常生活上の必要悪として認識され始めている気配すらありますが、そういう時代の趨勢を決定付けた責任の半分は、当然ながら最量販メーカーのトヨタにあると言えます(ちなみに残りの半分は、無駄に高い税金や保険料、および質の悪い道路事情にあると思います)。真にリーディングカンパニーとしての自覚を持っているのならば、ただ現状に迎合するのではなく、その一歩先のビジョンを提示し、業界全体を明るい未来へ牽引しようと取り組むはずですが、この会社はシェアの維持と利益の確保に固執するだけで、ハイブリッドシステムの実用化に成功したこと以外では、何も将来の展望を描けていません。トヨタが販売台数で世界一になった時期は、奇しくも国内において普通乗用車の販売台数が減少し、代わりに軽自動車の販売比率が伸びた時期と重なります(全車種を含めた販売台数は当時も今も減少傾向にあります)。つまり、トヨタ一社がいくら儲かったところで、日本の自動車業界全体は発展どころか現状の維持すらままならない状況に陥っているのです。道幅が狭く運転し辛い環境である上に、そもそも大人数を乗せる機会など殆ど無いにも関わらずミニバンばかり希望する日本人の嗜好は、かなりエキセントリックであると言えますが、そのエキセントリックさに追従して無難に商品コンセプトを決めるではなく、「車とはもっと楽しい乗り物なのだ」と消費者を導くくらいの意識を持って開発・セッティングをしなければ、国内における自動車の社会的地位はますます下がっていくことでしょう。「Drive Your Dreams」と意味不明な指図をするのであれば、まずはトヨタが想い描く夢とは何なのか(販売台数で世界一になること以外に何かあるのなら)、それを教えてほしいものです。
そして最後に、個人的に最もトヨタにガッカリさせられる点は、スポーツカーというものの存在価値とそのイメージの重要性に関して、致命的な勘違いをしていることです。これはあのLFAという支離滅裂なデザインのスーパーカーを思い出せば理解できるかと思います。

●「F1参戦記念車」のはずが、「F1断念記念車」になってしまったこと。
●F1で1勝もできず、ニュルの24時間耐久でも大した成績を残せなかったという、極めて情け無いイメージを背負っていること。
●スポーツカー造りを止めて久しいメーカーが提案するスーパースポーツとは何なのか、全く説得力が無いこと。
●過剰なコストにより限定500台しか製造・販売できないこと。つまり、メーカー自ら「無理して造った車」と認めていること。
●それにも関わらず911GT2やF430スクーデリアよりも高いプライスタグを掲げていること。

ホンダはつい最近までS2000を造っていましたし、隙あらばシビック・タイプRのようなキワモノを世に出すべく虎視眈々と市場を伺っています。スバルや三菱はWRCから撤退してもインプやランエボを精力的に改良し続け、マツダはロードスターという貴重品種を大事に守りつつ、またはRX-8というリリーフ役でなんとか場を繋ぎつつ、陰では真のロータリースポーツ復活を目指して地道に努力しています。そして、日産は不況の渦中であってもZを復活させ、その次は末永く楽しめる「駆動産」としてGT-Rを復活させ、現在はその進化・育成にコストと神経を使っています。3年前のブログで私は「F1に巨費を投じるよりも、スープラの後継やコンパクトスポーツの新規開発に予算を当てた方がマシだ」と述べたのですが、その後トヨタが造ったスポーツモデルと言えばIS-Fくらいのもので、何ら状況は進展していません(IS-Fの次にはGS-FやLS-Fなどが出てくるのかと結構期待していたのですけどね…)。他のメーカーがスポーツカー造りを止めないのは、それが自動車メーカーとしての譲れない矜持であると理解しているからです。売れないからという理由でスポーツカー造りを止めてしまうような、内部留保の他には矜持も何も持っていないトヨタが、F1というモータースポーツの最高峰で敗退を続けたのは言わば当然の結果であり、欧州勢から度々冷笑を浴びせられたとしても、それは仕方のないことでした。現場で頑張っていた人達は真にレースを愛していたのかもしれませんが、会社の上層部が単にマーケティング上の理由でしかF1を見ていなかった(つまり、ホンダの真似をしたいだけだった)ことは、そのあっさりとした撤退劇からも明らかでした。そんなメーカーが造る超弩級スポーツとやらに、一体どういう魅力があるのでしょうか。世間的に評価されるスポーツカーは、その多くが素晴らしいスペックと高邁な思想の融合体として成り立っています。スペック面が充分だとしたら、後はLFAに込められた思想とは何なのか、そこにポルシェやフェラーリよりも高い金額を払わせるだけの価値があるのかが、このモデルを評価する上での焦点になるでしょう。まあ、その辺については最初から望み薄ですから、せめて同じ日本人として恥ずかしい思いをせずに済むだけのパフォーマンスを発揮することを切に願いたいですね。

先日開催された東京オートサロンにおいて、トヨタは魅力的なコンセプトカーを幾つも出展していました。社長が交代してからというもの、商品開発の指針としてスポーツ性が重視され始めたことは周知の通りであり、私もこれからのトヨタの変化には少なからず興味を抱いていました。それは、リコール問題が拡大し続けている今も、あまり変わっていません。たとえコンセプトカーの範疇であったとしても、小型車にFRレイアウトを適用するといった遊び心が示せるのなら、このメーカーの未来も捨てたものではないと思えるのです。そもそもリコールとは、今も昔も、国内メーカーも欧州メーカーも関係なく、絶えず起きている現象だと言えます。確かに今回のトヨタの対応には拙い部分もあったかもしれませんが、それらは企業としてのモラルの向上と適切な補償を必死に行えば、いずれ解決できる問題でもあります。
そうであるならば、何故ここまで長々と文章を書いたのか。それはトヨタが抱える問題の本質が、もっと別のところにあると考えているからです。簡単に言うなら、企業としては評価されても、自動車メーカーとしてはハイブリッドという一芸以外評価されていないこと。この点こそが、トヨタの最大の弱点なのではないでしょうか。今回のようなリコール問題に陥ったとき、「トヨタは国内の雇用の面で多大な貢献をしている企業だから必要な存在だ」と擁護してくれる人がいたとしても、「トヨタは素晴らしい車を造ってくれる会社だから無くならないでほしい」と願う人はあまりいないでしょう。その姿はまさしくかつてのGMと同じであり、極めて危険な状態でもあるのです。プリウスはその経済性と先進性が認められて爆発的にヒットしましたが、他の国内メーカーや欧州勢もハイブリッドモデルの量産化が可能になった現在において、果たしてトヨタにどれくらいのアドバンテージが残されているのでしょうか。ハイブリッドモデルやEVが当たり前の時代になったとき、このメーカーは何をもって自社の魅力をアピールするつもりなのでしょうか。その答えは、オートサロンで見せたような変化を続けていけば、きっと見つかるはずです。

今よりもライナップを縮小し、その代わり車種別の個性、およびグレード間の味付けを明確に差別化し、他社の動向に左右されることなく顧客の取り込み・振り分けができるようになること。そして、幾つかの車種に超硬派なスポーツグレードを用意し、ドイツ御三家に対して真正面から勝負を挑むこと。アンチトヨタとしての立場から提案できることは、とりあえずこれくらいですかね。目の前のリコール問題で身動きが取れないのは仕方ないですが、自動車メーカーとして本当にカイゼンすべき点はどこなのか、折角の機会ですからもう少し踏み込んだレベルで考えてほしいところです。
Posted at 2010/02/16 06:35:48 | コメント(0) | トラックバック(0) | | 日記

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