
本日は近所のホンダーディーラーへ行って、CR-Zを試乗してきました。この車に関しては2007年の東京モーターショーでコンセプトモデルが発表されたときから興味を持っていたのですが、先日会社の同僚がディーラーで展示車両を見てきたらしく、しきりに「格好良かった」と言うので、果たしてどれほどのものか確認してきたというわけです。
まず外観についてですが、これはもう本当に格好良いです。ディーラーの玄関に置いてあるのを一目見たときから、心をグッと掴まれてしまいました。ネットやカタログで見る画像と肉眼で見る実物とでは、受ける印象がかなり違います。車両単体で写っている画像などを見ると、リヤ周辺の塊感が強烈で割と重そうな雰囲気すらありますが、実物は全体的にコンパクト、かつフロントもリヤもフェンダーの張り出しの方が目立つため、ボディ後端も「タイトなヒップ」という感じでスッキリと纏まっているように見えます。少なくとも、EF8型CR-Xの外観に魅力を感じる人であれば、CR-Zのデザインも違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。個人的には、荷室のサンルーフと化している水平なリヤウインドウにそそられてしまいますね。できるならリヤのワイパーを外して、フラッシュサーフェイス感をより際立たせたいところです。
インテリアについても特に不満に思えるような部分が無く、プライスなりの質感は充分に確保できています。確かに、デジタルのスピードメーターとタコメーターが同軸に配置された単眼インパネは、鮮やかなブルーのライティングこそ未来的で楽しいのですが、視認性があまり良いとは言えません。また、ハンドルのスポークに付いている各種ボタンやインパネ周辺に集約されている各種スイッチ類も、運転席周りの雰囲気を煩雑なものにしています。ただ、それでも大きな不満を感じないのは、その複雑なデザインが外観の奇抜さとマッチしているからだと思います。実用性よりもアイデアや感性を優先させることは、クーペやスポーツカーを造るうえで真っ当な手法だと私は考えています。そうした観点から見ると、このCR-Zのデザインは、制作上のコンセプトや思想を衒いなく反映させているという意味で、非常に完成度が高いと言えるでしょう。着座位置が低くハンドルが小振りであることも、スポーティな雰囲気を演出するのに貢献しています。頭上空間にあまり余裕が無く、斜め後方の視界が絶望的なのは御愛嬌ですね。車内で寛ぎたい人にはお薦めしません(そもそも、そんな人は最初からこの車を選ばないでしょう)が、圧迫感を覚えない程度の適度なタイト感が好きだという人にとっては、ベストな一台となり得るはずです。
さて、いざエンジンを始動させて路上に出てみると、「これで本当に150ps以下なの?」と思えるほど、力強い走りを披露してくれます。中間加速では我が白兎の方が頼りになるものの、出足の良さだけを見ればそれに負けていないどころか、車重が軽い分だけCR-Zの方が爽快だったりします(もちろんDSGをSモードに入れてしまえば、我が白兎の方が圧倒的に面白いのですが…)。ちなみに今回の試乗車はCVTを搭載している方であり、ドライブシステムはスポーツモードしか試していません。それというのも、ノーマルモードやエコモードを重視するならインサイトを選べば良いのであって、この車を評価する上ではスポーツモードの出来映えこそが肝心であると思ったからです。試乗の途中でアクセルをベタ踏みしてみたのですが、爆発的なパワーこそ得られないものの、何ら痛痒を感じないくらいスムーズに加速します。むしろ、エンジンよりシャシーが勝っているという感覚は、「もっと攻めてみたい」という気分を助長してくれます。グリップの良いタイヤを装着して足回りを自分好みのセッティングに変更すれば、パワーはこのままでも充分楽しめると思いますね。また、ドライバーの着座位置が車体の後方寄りになっていることも良い点の一つです。4座が前提の実用車と2座が前提のスポーツクーペとでは、旋回時や減速時に受けるGの感覚が全然違いますし、少し後ろの視点から前方を広く眺める方が、ボディ全体の挙動を掴み易く操作も楽になります。はっきり言って、この点ではVW ・シロッコよりもCR-Zの方が優れているのではないでしょうか。溢れ出るエンジンパワーで怒涛の如く突進することに愉悦を覚えるのではなく、飽くまでも切れ味鋭く軽快にコーナーをクリアすることに快感を見出す…。かつてのホンダ製FFスポーツカーに与えられていた個性(あるいはそうしたイメージ)は、この最新型のCR-Zにもしっかりと受け継がれているような気がします。
結論として、CR-Zは非常に魅力的なモデルあると断言できます。どんな車に試乗しても、我が白兎に乗ってしまえば「やっぱトータルではこちらのほうが上(好き)だな」と思えるのですが、今回ばかりはそういう気分になれませんでした。何故なら、2ドアクーペとしての格好良いスタイル、軽量なボディ、スポーティなハンドリング、ドライバー優先のシート配置、そして手頃な価格と、ゴルフでは望めない要素(それは私がシロッコに望んでいた要素でもある)を、CR-Zは極めて高いレベルで満たしているからです。仮にVI 型GTI とCR-Zのどちらかを選べと言われても、今の私には即座に返答することができないというのが正直なところです。それぐらい、CR-Zから感じられたポテンシャルは衝撃的でした。
マツダ・ロードスターしかなかった国内の小型スポーツカー市場において、CR-Zは久々のヒットモデルになりそうであり、またそうなって欲しいと思います。もしCR-Zが好評を博せば、他社もこれに追随することは想像するに難くありません。そうなれば国内のスポーツカー市場は再び活況を呈することになるでしょう。CR-Zの発売は時代の分岐点となりえるのか、今後とも注目したいですね。
余談ですが、同乗した営業さんに「CR-ZのタイプRは出ないのか」と聞いたところ、「出ない」と即座に言われてしまいました。また、以前から噂されていた新型ビートも開発が凍結されているそうです(去年はテスト車両を市街地で走らせていたのですが、今はそれも全く行われていないらしい)。営業さん曰く「今回のCR-Zは、長引く不況、およびスポーツカーの人気が壊滅的な現状において、ホンダとして出せるギリギリの答えであり、これ以上の発展性は期待できない」とのことでした。ただ逆に言えばそれは、今後しばらくホンダのスポーツモデルのラインナップはシビック・タイプRとCR-Zだけに絞られるということでもあり、ギリギリの存在であるCR-Zにも走りに振った限定モデルや記念モデルが生産されることは充分に考えれます。より高いスポーツ性能を求める人は、そのタイミングを待った方が良いのかもしれませんね。
Posted at 2010/03/03 02:22:43 | |
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