2012年10月12日
先日、別件でディーラーを訪れた際にVW ・up ! (4ドア)を試乗してきました。本当は先月の末にも試乗が可能だったのですが、その時点で既に二組のお客さんに先を越されていたので、あえて今月に延期したというわけです。周辺地域で私が最初ということであったなら、嬉々としてブログをアップしたのですけどね…。それはともかく試乗後の感想として、率直に言ってup ! は欧州で評価されているほど素晴らしいモデルではないと思いました。
まずエクステリアについては、VW らしくシンプルかつクリーンに纏められていて、なかなか格好良く見えます。特に上級モデルのhigh up ! はアルミホイールも装着しており、フロントバンパーやリヤゲートの個性的なデザインと相俟って、未来的という観さえあります。曲線を多用した有機的なデザインに関しては国産車も悪くないのですが、直線を組み合わせた幾何学的なデザインに関しては、やはり欧州車の方が一枚上手ですね。
次にインテリアについてですが、さすがにポロほどではないにしても、ビートル並には良い質感を表現できています。少し前に知人がフィアットのチンクエチェント(ラウンジ)を購入したので試乗させてもらったのですが、その時に感じたことと同様で、同じプラスチックのパーツでも造形や塗装に拘ることで、ある程度質感を高めることができるのだなと強く認識させられました。運転席の頭上空間は、ポロよりも余裕があります。逆に後部座席と荷室が狭いのは、このサイズの車としては仕方のないことです。よく評論家などが「大人4人が乗車するのに充分な空間」などと書いていますが、ポロの後部座席ですら30分以上は御免被りたいのに、それより狭いup ! が「充分」なわけがありません。リヤは子供用か荷物置きと割り切る方が正解ですね。リヤウィンドーがはめ込み式なのは、あまり気にしなくてもよいかと思います。換気性能では通常の上下にスライドするタイプよりも、こちらの方が優秀なはずです。一つ難点を挙げるなら、エアコンのセンターベントがダッシュボードの上に付けられていることです。これだと、PNDの設置箇所次第では風の流れを完全に遮ることになってしまいます。何か設計上の避けられない理由があったのか、それともデザイナー間の連絡がうまくいってなかったのか、この点だけは謎ですね。
最後に走りについてですが、ここは賛否両論に別れるところだと思います。乗り心地やステアリングの感覚などは同価格帯の国産車よりしっかりしていて、たとえ安くともドイツ車であることを実感させてくれます。問題は、新型のトランスミッションであるASGの変速ショックが大きいことです。MTをコンピューターに制御させているだけのASGは、スマート・フォーフォー(チンクを購入した知人がその前に所有していた)のトランスミッションとフィーリングが非常に似ていて、特に1速から2速に入る時に大きな揺れが発生します。変速する瞬間に軽くアクセルを抜くとか、あるいはマニュアルモードで走るとかすれば、ある程度ショックを打ち消すこともできるでしょう。しかし、そもそも日本においてこの手のコンパクトカーを買う人々が望んでいることは、如何に安楽に運転できるかであって、あれこれテクニックが要求される時点で、このモデルは日本のユーザーに受け入れらにくいと言えます。多少価格が上がっても7速DSGにするか、せめて普通のATでも載せておけば、国産車からの乗り換え客をより多く獲得できるのでしょうが…。他の部分の造りが良いだけに、とても残念でなりません。
結論として、VW ・up ! は基本的に上質でありながら、あまり他人に薦められないモデルだということになります。過去のブログを読んでいただければわかるように、私はup ! に対してあまり良いイメージを抱いてなかったのですが、それが覆されたのは内外装の質感やステアフィールに関する部分だけで、トータルで判断すればやはり国産のコンパクトカーや軽自動車の方がお買い得であると言えます。将来的に完全EV化されカーシェアリング型のシティコミューターとしての役割が与えられたとき、つまり自動車という乗り物に対する概念を変革する任務が達成されたときに、up ! は初めて真の評価を獲得することでしょう。こんな「未完成」な状態で販売を開始するくらいなら、bulli の市販化を実現してくれた方がまだ面白いし、実際に売れるのではないかと思います。
Posted at 2012/10/12 10:30:21 | |
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