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2021年04月25日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(8)

「はぁぁ!? あんたたちまだ付き合ってないの!?」
 そう声を荒げるのは、真琴である。
「パパ上も大概だね。どんだけ奥手なのさ」
 隣に座る結衣も完全に同意していた。

 時は8月中旬。夏休みである。
 ここは、松本市内のとあるカフェ。遙乃、真琴、結衣の三人がお茶をしていた。
 なぜこのような話をしているかと言えば、所謂女子会であり、遙乃の誕生日が9/12であることを聞き、悠夜から何かないのかと話題に上ったためであった。

「でも、毎日一緒にいるようなものですし」
 首を傾げる遙乃。
「いやいや、ダメっしょ」
「いっそすみ姉から告ったら?」
「わ、私からですか」
「思うに、二人とも今の関係に満足しちゃってるんだよ。でもさ、ここでしっかりと繋ぎ留めとかないと、いつの間にすれ違って別れてるなんてこともあり得るよ。お隣さんっていう言い訳が通用するのは大学の4年間だけ。社会に出たら、それも使えなくなる。それでもいいの?」
 結衣は、遙乃に指さしながら話した。
「嫌です。離したくないです」
 遙乃は、目を瞑り、かみしめるように答えた。
「多分ね、パパ上もそれを分かってないんだと思う。女心にニブチンなんだね。他人との関係性を作るのが苦手と見た」
「あ、それ分かるかも。パパ上って、結構人との間に壁を作っちゃうタイプの人だよね。意識的にせよ、無意識的にせよさ。私達ともあまり話さないもんね。すみ姉だけだよ、パパ上とあれだけ親しく話してるの」
 うんうん、と頷く真琴。
 傍から見ると、悠夜はいつも孤立しているように見えるらしい。
「そういうATフィールドが分厚いタイプの人には、ちゃんと直接言わないと通じないよ。お互い一緒にいるのが当たり前になってくると、次第に言葉にしなくても通じるって思うようになっちゃう。でも、実際にはちゃんと言葉にしないと伝わらないんだよ」
 
言葉にしないと通じない。
考えてもみれば、それは当たり前のことだ。
しかし、人は誰しも、お互いの関係性に甘えてしまい、言葉にすることを忘れがちになる。
それを今更ながらに理解した遙乃だった。

「ふむ、この際既成事実作っちゃったら?」
「既成事実?」
「パパ上の誕生日も近いとか言ってなかったっけ。プレゼントは私、ってさw」
「あ・・・///」
「いいねソレw」
 他人事のためか、お互いニッコリの真琴と結衣。
「笑い事ではないですよ・・・」
 それに対し、顔を真っ赤にした遙乃は、頬を抑えて恥ずかしがった。
「パパ上のことだから、それくらいしないと分からないんじゃない?」
「確かに、その辺お堅そうだよねパパ上って」
「でも、そういうのは結婚後にするものなのではないですか?」
 きょとんとしている遙乃。
「昭和かww」
 その様子を見た真琴は、ゲラゲラと笑った。
「そういうものかと思ってました」
「・・・すみ姉も大概だったね、こりゃ」
 あきれて頭を抱える結衣。

「しかし、こうなると打つ手は・・・なんかあるかな」
「あの、名前で呼ぶ、というのはどうでしょう」
 遙乃は、手を上げて提案を出した。
「名前?」
「男の人がどうしているかは分かりませんけど、女の子同士であれば、名前で呼ぶことはそう珍しくないですよね。でも、異性の間柄では違うでしょう?」
「あ、なーるほそ。家族とか、よっぽど親しい間柄じゃないと名前で呼ばないもんね」
「海外位なもんだよね、それ」
 洋物ドラマだと、気軽に名前で呼べ、と出てくるが、日本では名前で呼ぶことは、特別な意味があった。
「ええ。私も、その・・・名前で呼んでほしいです」
「お姉ちゃんから彼女に、か。くぅ~、可愛い!!」
 照れる遙乃の様子に悶える真琴。
「ふむ。なら誕生日プレゼントとしてねだってみたら?」
 真琴と同じように悶えた後、結衣が提案を出した。
「私から要求するんですか?」
「いいじゃん。そうしないと伝わらないよ」
「そうかもですけど、いきなり私から言うのも変な気もします」
 首をかしげる遙乃。
「う~ん・・・。じゃあ、私達からこそっと言ってみる?」
「『そういえば、そろそろすみ姉誕生日らしいけど、パパ上どうするの?』って?」
「あ、それ良い」
「じゃあその線で行こっか」
「おっけー」
 サムスアップを交わす真琴と結衣。
「すみ姉、私達が段取り付けてあげるから、このチャンス逃しちゃだめだよ?」
 真琴は、ビシッと遙乃に対して指をさした。
「ありがとうございます。やってみます」
「あ、お礼はご飯でいいからねw」
 食い意地の張っているやつである。
「ふふっ、分かりました」


上野くんに名前で呼んでもらう事。
それは、特別な関係になることを意味します。
何でもない相手を名前で呼ぶことはしないし、それを許可することも無いからです。
子供の頃ならいざ知らず、大人になって名前で呼ぶことは、それだけ親しいことを示すわけです。
特に親しい友人関係、恋人、家族。
私と上野くんの関係。
敢えて言うならば、"友達以上恋人未満"と言うものなのでしょう。
ほぼ毎日食事を共にしていますし、課題を共にこなすことや、単に遊ぶなどで、どちらかの部屋に居る時間も長いです。
しかし、まだ決定的な一歩を踏み出してはいませんでした。
ようやく手に入れた共に過ごすこの時間を、ひょんなことから崩れてしまうことが怖かったからです。
それに、あの二人が言う通り、今の関係に満足していた所もあったのだと思います。
それだけ、私にとっての上野くんの存在は大きなモノでした。
でも、私も腹を括らないといけないみたいです。
誕生日まで約1か月。
うう、緊張します・・・。
Posted at 2021/04/25 11:23:26 | コメント(1) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年03月29日 イイね!

ahamoに人柱

ahamoに人柱今朝方、スマホの回線をahamoに切り替えてみました。
今までは、ギガホライトの1GBの範疇でやりくりしてました。
WiMAXで通信制限が無くネットができるので、WiMAXでカバーできない所で使えれば良い、と言う考え方です。
接続優先で速度はどうでもいいので、ドコモです。
まあ、家族割が効く、と言うのもありますが。

さて、スマホにしてしばらく経ちますが、正直1GBは心もとないんですね。
仕事で現場に行った時のお昼休みとか、WiMAX結構通じない場所多いんですよ。
ドライブしててもそう。信州はカバー率低いんですね。
山ばっかなのが悪い。
そして、最近WiMAXの機種変しました。
WX03→WX06です。
ただこれ、電池餅悪いし、クレードル使わないとつながりも悪い感じがします。
所詮NECですねえ・・・。
片割れのファーウェイより遥かにマシですが。あんな所の危なくて使えないですから。

話を戻して、ギガライトだと、通話料無料は一切ないですし(要オプション)、使えるのは1GBです。
ahamoとの差額は約1000円。それで5分通話無料と20GBが手に入るなら、家族割無くてもこっちの方が良い。
そんな訳で切り替えようかなと。

さてここで問題が一つ。
ドコモで公表しているSIMフリー端末でのahamo動作確認一覧の中に、我がスマホであるASUS ZenFone6が入っていないんです。
今後動作確認一覧が増えるのかもですが、基本的にドコモでASUSを取り扱っていないためか、社外品一覧にも出てきません。
一応、社外品テスト一覧の中に、一つだけASUSのZenFone5が出ていたので、まあ行けるんじゃなかろうかと。
人柱覚悟で切り替えてみました。


結論を言えば、全く問題なく使えました。
世間ではあまりに加入者が多くてMNP停止などとありましたが、元々ドコモなので、問題なかったですね。切り替え作業もPCからやったので問題なし。

思うのは、この上に表示される回線名。
NTT DOCOMOのままなんですね。
AHAMO表示になってほしいです。変わった実感が無くていけません。
今日一日ドコモ回線でネット使ってみて、ちゃんと20GBと表示のあった回線容量が少し減ったので、ちゃんとahamoとして繋がっていることは確認しました。
通話も会社の携帯(ドコモですけどNE)に掛けてみて、繋がることを確認。

人柱覚悟でしたが、ちゃんとつかえることを確認しました。
使用機種はコレ。
ASUS Zenfone6 edition30(ZS630KL-BK30ASUS)


ASUSユーザーの皆さん、適合確認ほとんど出てないですけど、希望はありますよー!
グレードが違うとはいえ、ZenFone6なら使えると思います。

以上、人柱報告でした。
Posted at 2021/03/29 19:06:12 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記
2021年03月29日 イイね!

浜松燃費チャレンジ

餃子食べたかったんです。


最近のチューニングの総まとめとして、燃費ドライブに行ってきました。
行先は浜松SA




主なチューニング内容としては、以下の通り。
○フレキシブル3点セット
○静電気放電索
○COXボディダンパー
○赤骨(A3、リアロアアームサポート・フロントショックアッパー
サポート)
○エレスタビヒューズフルセット
○静電気除電コーティング剤

浜松SA到着時の燃費は、19.7km/L(241.0km走行)


過去の記録を見ると、この段階で20や21と言った数字が出ているので、燃費はやや落ちていますね。


石松の餃子と季節限定のイチゴクレープが美味しかったです。



信州帰還後の最終的な燃費は、以下の通りでした。


走行距離:555.1km
給油量:32.03L
満タン法燃費:17.33km/L
→カタログ燃費達成率:131.3%
MFD燃費:18.7km/L
→カタログ燃費達成率:141.6%
同じコースで満タン法20km/Lを超えたこともあるので、あまり良い数字ではなかったですね。
恐らくですが、出発時に気温が1度であり、道中木曽路でマイナス3度の所もあったので、気温が主な敗因ではないかなと。
ヒューズ交換時にバッテリーを外し、ECUリセットと再学習が必要になりました。コロナで遠出があまりできず、今まで精々往復80km程度のドライブしか行けてなかったので、学習が進んでいない可能性もありますね。
今回のドライブは、長距離走行による学習も兼ねているので、これくらいの数字が出ればまあいいかな、といった所でしょう。
朝晩暖かくなれば、もう少し燃費は伸びてくれるものと思います。
上記チューニングの多くは、乗り心地改善を目的にしたものなので、そこまで燃費が悪化していないというのはメリットではあります。
エレスタビヒューズや放電索でエンジンがかなりスムーズに回るようになったので、燃費を出せる踏み方を少し再研究が必要になっているようです。
また次回がんばりましょう。
Posted at 2021/03/29 18:45:49 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2021年03月03日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(7)

家に付いた後は、大きな試練が待ち構えていた。

「さて、家着いたぞ」
「ありがとうございます、ゆーやくん」
「家のカギ出せるかい?」
「だいじょーぶでーす」
「ホントかよ・・・」
「ここにありま・・しゅ・・・」
 手提げカバンの外側ポケットを指さした彼女は、これで限界、と言うように眠りに落ちてしまった。
「っておい、寝るにはまだ早い」
「zzz」
 とはいうものの、完全に寝入ってしまっている彼女を放っておくわけにもいかない。
 崩れ落ちそうになる彼女を抱きとめた俺は、彼女のカバンから家のカギを取り出した。
「こんな形で女の子の部屋に入るのは不本意だが、しょうがない。すまん、家入るぞ」
 そう言って、彼女を部屋に連れて行った。

「さてどうしたものか・・・」
 部屋に入った俺は、居間で立ちつくしていた。
 男三人兄弟で育った俺にとって、女性とは、母か祖母しか知らないのだ。
 当然、着替えさせたくてもできるわけがない。
 それに、女の子に触れることも初めてだ。
 小学校の運動会のダンスとかが良い所だろうか。
 そんな状態なのに、彼女の部屋まで抱えて来れたのは、ぜひとも評価していただきたい。
 
「聞こえてないだろうけど、一応先に謝っとく。すまんがさわるぞ」
 そう言ったのは、俺の中での弁明のためだ。
 そのような自己肯定無しに、この状況を乗り切れる気がしない。
 これは、仕方のない事なんだ。
 ひたすらにそう言い続けながらやるしかなかった。

「上着のボタンを留めないでいてくれて助かったよ」
 酔いで暑くなっていたのか、彼女は上着を羽織ってこそいたが、前のボタンを留めてはいなかった。そのおかげで、上着を脱がせるにしてもだいぶ楽だったのだ。
「よし、と。でも、これ以上は無理だよな・・・。このまま寝かせるか」
 上着を脱がせたはいいが、服まで着替えさせるのはとても無理だった。
 すでに今もいっぱいいっぱいである。
 残すは、彼女をベッドに寝かせることのみ。しかし、それには本格的に彼女に触れなければならない。
「すまん」
 再びの弁明の言葉と共に、悠夜は遙乃を抱きあげ、ベッドに寝かせた。

「何とかなったか・・・」
 すやすやと眠る彼女を見て、ようやく一安心できた。
 人生でこれほど緊張したことは無い。
 正直受験より緊張した。

 なぜかって?
 そりゃ、好意ある相手に対して下手なことできるわけがない。
 寝てる間に手を出したと思われて、嫌われるのが一番困る。
 かといって、他に誰も証明してくれる人もいない。
 つまりは、ここでの行動如何によって、俺の今後が決まると言っても過言ではないのだ。

 帰路の彼女の様子を見る限り、今のところは両想いではあるのだろう。
 だが、酔った状態では、それとてどうかは分からない。
 それに、告白するならば、ちゃんとしたシチュエーションでするべきだ。
 こういった相手が正常な状態と言うのは、明らかに相手に不利だ。
 ならば、誠心誠意尽くし、誤解なきように行動するべきだと思う。

「ここまでしかできなくてすまんな。おやすみ」
 そう言って、彼女の部屋の電気を消し、部屋を後にした。


「んんっ・・・あら、ここは」
 目が覚めると、そこは自分の部屋のベッドでした。
 来ていたはずの上着は、壁に掛けられているようで、カバンも机の上にあります。
 私自身は、昨日来ていた服のままですね。
「???」
 クラスのコンパに出たことまでは覚えているのですが、どうやって帰ってきたのか全く記憶がありません。
 そうして混乱していると、携帯が鳴りました。
『あ、出た。起きてたか』
「上野くん?」
 その声は、聞き慣れた上野くんの声でした。
『おはよう。気分は大丈夫かな?』
「え、ええ。大丈夫だと思います・・・」
『それは良かった。昨日の泥酔っぷりは中々だったからね』
「そんなに酔っていたのですか、私」
 泥水と言う言葉に驚きを隠せません。
 そんなにお酒に弱かったのでしょうか、私。
『詳しくは後で話すよ。まずは水分をしっかり取って、着替えた方が良い』
「いろいろ迷惑かけてしまったみたいですね、すみません」
『なに、こういう時はお互い様だよ。俺も飯作ってもらってるしね。玄関にスポーツドリンク掛けてあるから、着替えたらそれも飲んだ方が良いよ』
「いろいろとありがとうございます」
『いえいえ、どういたしまして。それじゃ、また後でね。俺は部屋にいるから、何かあったら呼んでくれ』
「分かりました」
 手を煩わせてしまって申し訳ないという気持ちもあるが、それだけのことをしてくれる彼の好意が嬉しかった。
 
 さて、何はともあれ、このままでは仕方ありませんね。
 まずは頂いたスポーツドリンクを飲んで水分補給をしてから、シャワーを浴びて着替えることにしましょう。


「お待たせしました」
 小一時間ほど後、悠夜の部屋に遙乃が訪れた。
「おかえり」
「あ・・・」
 何気ない悠夜の返しに、思う所があったのか、言葉に詰まる遙乃。
「どしたの?」
「いえ、何でもないです。それよりも昨日ですけど、私何をしでかしたのでしょう」
 それに気づいたのか、悠夜は顔を覗き込みながら訊ねてきた。
 遙乃は、誤魔化すように昨日の様子を聞いた。
「仕出かしたっていうか、酔いつぶれたんだよ。帰り道ふにゃふにゃしてたぞ」
「まあ、そんなことになっていたのですか」
「日野と朝倉が連れて帰れってさ。だから、俺が家まで送ったんさ。あ、勝手に家に上がって悪かったね。うちに寝かせるわけにもいかないし・・・。一応、聞いたらカギを出してくれたから、了承と受け取って入ったが・・・」
「では、上着や布団に寝ていたことも?」
「日野と朝倉が付いてきてくれなかったもんでなぁ。家に着く頃には寝ちゃうし、非常事態ってことで俺がやったが・・・。ふれたり家に上がったこと、すまない。後になっちゃったけど、それだけ謝っときたかった」
 悠夜は、遙乃に頭を下げた。
「そんな、上野くんは私を介抱してくれただけじゃないですか」
「いやまあ、それとて女性にふれるのはなぁ」
 遙乃は、悠夜の肩に手を置きながら答えた。
 それを受けて頭を上げた悠夜は、恥ずかしそうに後頭部を掻いていた。
「ふふっ、上野くんって相当に奥手なのですね」
 クスリと笑う遙乃。
「そりゃ、好きな人相手ならそうもなるさ・・・」
「え?」
 ボソッと呟いた悠夜に気づいたのか、遙のは首をかしげた。
「いや、その、うちは女性と言えかーちゃんとばーちゃんしかいなかったからさ。免疫なんてないよ」
 悠夜は、慌てて取り繕うように答えた。
「そうだったんですね。でも、それを言えば私も同じですよ」
「というと?」
「私一人っ子で、従姉妹とかも居なかったので、男性と言えば父親しかいなかったものですから」
「そっか。それなら俺と同じだな」
「はい。同じですね」
 笑顔を交わす二人であった。

「さて、俺腹減っちまった。飯にしようぜ」
 お腹をさすって、お腹が空いたアピールをする悠夜。
「あ、もうお昼ですね。どうしましょう、何も用意してないです」
 それに対し、遙乃は困ったようにうろたえた。
「実は、寝てる間に、うどん買ってきておいたんよ。それなら食べられるんじゃない?」
「うどんなら消化にも優しそうですね。早速作りましょう」
 腕まくりをして、作る気満々の遙乃。
「いや、もう用意はしてあるよ。あとは、麺を入れて温めれば大丈夫」
 遙のを静止し、キッチンを指さす悠夜。
「すでに作っていてくれたのですか。何から何までありがとうございます」
「ま、飯はいつも作ってもらってるんだ。それくらいやらせてくれよ。それに、うどんなら俺でも失敗しないからなw 野菜切って出汁入れて温めて、うどん入れるだけだしw」
 肩をすくめる悠夜。
「ふふっ。では、ありがたくいただきます」
「おっけー」
 そして二人は、うどんをよそるべくキッチンに向かった。



昨日、名前で呼んでくれていたのは、やはり酔った勢いでだったようだ。
元に戻って一安心というか、さみしいような。
俺を名前で呼ぶのは、実家でもじーちゃんばーちゃんくらい。
男兄弟のせいか、両親までもがにーちゃん呼びなのだ。
まして、同年代では、名前で俺を呼ぶ人は居ない。同性でも、皆名字呼びだ。
やはり、名前で呼ぶことは、特別な意味がある。
だからこそ、名前で呼んでほしい相手は限られる。
昨日、酔っていたとはいえ、彼女に名前で呼ばれて感じたのは、むずかゆさと嬉しさ。
普段呼ばれないからこそ、彼女にこそ呼んでほしい。
そう思った。
元々、俺と彼女は1学年違っていた。
中学高校時代の1年と言う時間差は、思った以上に大きなものだ。
通学の電車、高原学校の班。
共に過ごした時間は、とても短かなものであり、先に卒業を迎えるという事実がその大きな時間差をいやおうなく思い知らせた。
それが今や、入学以来の一ヶ月程で、入学前までに共にしてきた時間を上回るほどに、多くの時間を共にした。
その中で、かつて記憶の彼方に薄れていたはず彼女への思いは、少しずつ俺の心の中で燃え上がり、その火は着実に大きくなっている。
昨日の態度を見る限り、酔っていたとはいえ、多分彼女も同じ気持ちでいてくれているのだろう。
もっとも、俺も彼女も、その気持ちを口にしてはいない。
口にしてしまえば、今の関係が崩れてしまうのではないか。
それが怖かった。
誰かを好きになったことはあっても、付き合うという関係に至ったことは無い。
だから、ここからどう進んで行けば上手く行くのかが分からない。
昨日の介抱だって、分からないからこそ緊張した。
一度は失ったと思った彼女との時間。今一度チャンスが巡ってきたからには、二度と失いたくはない。


うっすら残る記憶。
それは夢か現実か。
その記憶の中で、私は、彼を名前で呼びながら甘えていました。
名前で呼ぶこと。
私にとっては、女の子の友達以外では、一度も呼んだことが無い呼び方。
ドラマやアニメの中では気軽に読んでいる描写があっても、実際に名前で呼べる異性が居るかと言えば、そんなことはありません。
やはり、同性や家族以外で、名前で呼ぶことには、特別な意味があるのです。
なら彼は?
入学して以来のここ一ヶ月、多くの時間を共に過ごすことで、感じている彼からの好意。
それは、高校までの頃と何も変わっていないもの。
でも、まだそれを口にしてくれてはいません。
高校までの頃と変わらず優しい彼の親切と好意を履き違えているだけ?
彼からの好意をもっと目に見える形で欲しいと思ってしまうのは、欲張り過ぎなのでしょうか。
時はまだ4月。
多分、焦らず行くべきなのでしょうね。


つづく
Posted at 2021/03/03 21:10:18 | コメント(2) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年02月17日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(6)

入学から1週間後。
クラスでのコンパが行われていた。
この時期恒例の新歓というやつである。
当時の信大地質では、理学部がかなりの縦社会であるため、上下の学年間の仲が良く、1-2から1-Mコンパまで多種多様に行われていた。
当時の信大理学部では、大きく二つのグループに分かれていた。一つは、理学部A棟を拠点とする数理・物理・化学の各学科のグループ。もう一つは、B棟および増設されたC棟を拠点とする地質・物巡・生物のグループ。要するに屋内を中心とする学科と、アウトドア全開で野外調査を中心とするグループで対立意識があったのだ。そして、それぞれのグループとはいえ、交流はほとんど無い。よって、理学部6学科でかなりの壁がある縦社会となっていたのである。
この日のコンパは、クラスの顔合わせを兼ねたものであり、1年生と教授陣が参加していたものであった。いわば、クラスの親睦会のようなものだろうか。
会場は、松本キャンパス内のあずみホール。松本キャンパスに二つある食堂の内、北側に位置する食堂である。ここでは、申請すればコンパや打上げの会場として使用することができ、またオードブルなども注文することができた。


まずは、乾杯の後に自己紹介から始まった。
信州大学は国立大学の一つであり、様々な学部が揃う総合大学であるため、学科一つとっても全国から集まってきており、その顔触れはさまざまであった。
悠夜達11Sと呼ばれる2011年度入学組では、地元信州が3名、隣県群馬が4名、愛知が4名と比較的多かった。それ以外の県からは1~2人といった具合だった。
座席は特に決まりなく座る形になっており、概ね男子同士、女子同士で固まっていた。ちなみに、女子はクラスの1/3、男子が2/3といった人数比である。
自己紹介は、出席名簿順に行われていた。
この出席名簿順は、概ね前期・AO入試合格組→後期入試合格組となっているが、前期後期の中での順番は、アイウエオ順と言う訳ではなく、よく分からない巡となっていた。
ちなみに、悠夜は前期入試で合格し、遙乃は後期入試で合格している。

「上野悠夜です。群馬出身です」
「虹口遙乃です。群馬県から来ました。」
 各々順繰りに座席から立ち上がって簡単な自己紹介を済ませて行った。
 その後、各テーブルで自由雑談となっていった。
「虹口さん、群馬だと私と一緒だねー」
「私も同じだね」
「あら、朝倉さん、日野さん。同じ群馬なのですね」
 遙乃に声を掛けてきたのは、自己紹介で同じ県出身だと判明した朝倉真琴(あさくら まこと)と日野結衣(ひの ゆい)の二人であった。
「お二人は、群馬のどこからですか?」
 同じ群馬であるならば、知っている高校かと思い、遙乃は訪ねた。
「私はねー、高崎だよー」
「私は桐生だね」
「あら、桐生なら私の居た高校と近いですね」
「そうなの? もしかして○○高?」
「いえ、××高ですよ。ややこしいですが、中高一貫校の方になりますね」
「あそこかー。あれ、上野君も××高って言ってなかった? もしかして同じ?」
「そうなりますね」
 桐生市は、機織り物で有名な群馬県東部の市である。もっとも、今は大分廃れているが・・・。
 それもあるのか、桐生市には学校が多く存在している。群馬大学工学部に始まり、高校が公私複数あった。悠夜達が通っていたのは、その中でも古い歴史を持つ高校が新設した中高一貫コースである。ちなみに、遙乃は4期生、悠夜が5期生である。
「はえー、そうなんだ。同じところから来るなんて珍しいね」
「厳密に言えば、私の方が一つ上ですけどね」
「あれ、そうなの? 上野君のほうが年上だと思ってたよ」
「見た目はまあ・・・。彼、昔からああでしたから」
 割と老け顔である悠夜は、昔から年上に見られることが多かった。落ち着いている風貌から、遙乃も同じだが、悠夜の方が年上に見られやすいのだった。
「そうなのねー。上野クンとよく一緒に居るのは、同じ学校のよしみってやつ?」
「まあ当たらずとも遠からずですね。 元々知合いで良く話していましたから」
「学年違うって言ってたじゃん? どゆこと?」
「学年違うとはいえ、色々交流する機会はあるものですよ」
「部活同じとか?」
「いえ、私は文芸部でした。上野くんは、パソコン部でしたよ」
「それじゃ繋がりないじゃん」
「あ、もしかして付き合ってたとか?」
「そうではないですけど・・・」
「じゃあどゆこと?」
 両手を上げて降参といったポーズを取る真琴。
「その、中学の時の高原学校、所謂林間学校ですけど、それが同じ班だったんですよ。私達の学校では、1年生と2年生が合同で行くので。それで話すようになって、通学の時の電車の中で話すようになっていったんです」
「ほーほー。じゃあ上野君にもいろいろ聞いてみよっかな」
「いいねー。そっちは任せた!」
「おっけい」
 示し合わせたように動く真琴と結衣。
「あ、ちょっと」
「まあまあ。虹口さんはこっちでもっと色々お話聞かせてほしいなー」
 遙乃の静止も間に合わず、結衣が悠夜の居るテーブルに向かっていった。

「ねーねー」
「ん、ああ日野か」
「虹口さんから聞いたんだけどさー」
「向こうのグループね」
 遙乃の居るテーブルを指さす悠夜。
 すぐにそちらを指さす辺り、気にしていたらしい。
「そーそー。で、上野くんって、虹口さんとは同じ高校だったんだって?」
「お、それは初耳。上野、それマジか」
「ん、まあそうだけど」
「ほー。そんなこともあるんだな」
 周りのガヤが反応する。
「一個年上だけどな」
「お前が?」
「ちげーよ。虹口さんの方だ」
「嘘こけwww」
 盛大にツッコミが入る。やはりこちらでも悠夜はかなり年上に見られていたらしい。
「どう見てもお前の方が上だろww」
「うっせえ。お前らと同じ平成4年生まれだっつーの」
 ツッコミ返す悠夜。
「そんなことはどーでもいいんだけどさ」
 それを制止するように、ぐいっと身を乗り出してきた結衣が言葉を発した。
「ん、何だ日野」
「どしたん?」
 ガヤ達も気になったのか、一旦静まる。
「上野君と虹口さんって付き合っちゃってるわけ?」
「は?」
「どーにも虹口さんが上野君見る目が違うように思えるんだけど。それに、よく二人で一緒に行動してるじゃない?」
「言われてみるとそうだな」
「確かに」
 皆思う所はあったらしい。
 同性同士早く仲良くなるのはまだ分かるのだが、異性で一緒に居るのは、何かあると思われるのだろう。
「そりゃ、家が近いってのと、昔からの知り合いってだけで」
「それだけじゃないと思うんだけどなー。実際、どこまで行ったの?」
「何もしてねーよ。飯作ったりしてるだけで」
「「「ご飯だぁぁぁーーー!!!???」」」
 ガヤ達が大いに反応する。
「お、おう」
 それにビビる悠夜。
「何だそれ、詳しく聞かせろ」
「詳しくって、飯作ってくれてるんだよ」
「「「作ってくれてるぅぅぅーーー!!!???」」」
「だから何なんだよ」
 またもや大いに反応するガヤ達に困惑する悠夜。
「だからコイツら一緒に居るのか」
「デキてんだろ、お前ら」
 何人かからはツッコミが入る。
「んなんじゃねーよ。ただの昔からの知り合いってだけで」
「ただの知り合いで飯作るわけねーだろ。まさか、家も行ったのか」
「流石に行くのはな。うちに来てもらって、一緒に作った」
「お前、それで付き合ってないと言っても説得力ねーぞ」
 同感である。

 その頃、遙乃は真琴を中心に質問攻めにあっていた。
「へー、遙乃ちゃん昔は文系だったんだー」
 いつの間にか名前で呼んでいる真琴である。
「ええ。でも、元々やりたいことが見つからなくて、それでモチベーション高められなくて、受験に失敗してしまったんですね」
 気にしていないのか、そのまま答える遙乃。
「それで理転を? めっちゃ思い切ったじゃん。てかそれで地質って、なんでまた」
「上野さんが中学時代から色々話してくれていたので、面白そうだと思ったかr―」
「ほーほー。それで上野くんを追っかけてきたと」
「いじらしいねえw」
「///」
 真琴だけでなく、周りからのツッコミに真っ赤になる遙乃であった。

「向こうの話を聞く限りさ、もう付き合ってるんでしょ、遙乃ちゃんって。ご飯も作ってあげてるって言ってたし」
 悠夜達のテーブルのガヤ達の声は、こちらまで普通に届いていた。
 それ故、ご飯作ってあげているという話も話題に上った。
「そうではなくてですね・・・。だって、上野さんキャベツとレタス千切って食べるとか言い出だすんですもの。流石に放ってはおけないでしょう?」
「そりゃまあ分からなくはないけど・・・てか、上野クンも大概アホだね」
 腕を組んであきれ顔となる真琴。
「む。でも、良いところもあるんですよ、彼」
 それに対し、反応する遙乃。
 ただ、それでは悠夜に対する好意がある、と公演しているようなものである。
「あー、はいはい。遙乃ちゃんが上野くんの事大好きなのはよーくわかりましたよー」
「そんなことは///」
「確定だねこりゃ」
「可愛いw」
 この時、クラス全員に上野と虹口の二人はセット、と言う認識がなされた。

 一次会が終わった後のことである。
「んじゃ、希望者はこの後カラオケに二次会行くけど、どうする?」
 場を仕切っていた梅田和央が誘った。
「遙乃ちゃんどうする?」
「う~ん、ちょっとフワフワしますね~」
 顔を真っ赤にしながらフラフラとしている遙乃。
 どうも、顔が赤いのはさっきの質問攻めだけではない様子だった。
「ダメだこりゃ。帰さないと危ないね」
「じゃあ旦那さん呼んどくか」
「だね。おーい、パパ上ー」
 状態を察した真琴と結衣は、セットと決めつけた悠夜を呼ぶことにした。
「誰がパパだ、誰が!」
 呼ばれて早速答える悠夜。
 見た目と年齢のギャップは、悠夜が大いに気にしている部分であるため、ややキレ気味である。
「まあまあ。遙乃ちゃん帰るって。送っていってあげてよ」
 横に居た遙乃の姿を見た悠夜は、色々と察したらしい。
「む。おい日野、どれだけ飲ませたんだよ」
「いや、普通にほろよい1本くらいだよ」
「全然飲んでねーのにこれかよ・・・」
 どうやら、遙乃は大分アルコールに弱いらしい。
「そう言うパパ氏は全然酔ってないじゃん」
「だからちがうっつーの。俺はアルコール苦手でな。ジュースしか飲んでないから、至ってシラフだ」
「じゃあ問題ないね。私達は二次会行くから、遙乃ちゃんよろしく」
「ふにゃ、ゆーやくん」
「っておい。しっかりしろって」
「ゆーやくんが支えてくれてるから大丈夫ですよぉ~」
「まあ、そんな訳でよろしくねん」
 悠夜に寄り掛かる遙乃を見て安心したのか、真琴は遙乃を託した。
「しゃーない。分かった、じゃあみんなまたな」
「ばいばーい」
「送りオオカミになっちゃダメだよ?」
「するか!」
 余計な一言の多い娘である。

「大丈夫?」
「ふふっ、ゆーやくんがいるからだいじょーぶですよぉ」
 泥酔しているわけではないとはいえ、帰路をふわふわと歩いている遙乃に悠夜は声をかけた。
「おいおい、だいぶ酔ってんな。まあ、信用されてるのは悪い気はしないけどさ」
「ねえ、ゆーやくん」
 とろんとした目で悠夜をみつめる遙乃。
「どした? てか、いつの間に名前で呼んでるんだか」
「だって、なまえでよぶのはとくべつなあいてのことでしょう。おんなのこのあいだならともかく」
「それって・・・」
「ふふっ。もうはなさないですからね。あのときのきもちをまたあじわうのは、もうごめんですもの」
 遙乃は、悠夜の腕に抱きつきながら話した。
「あの時って?」
「おぼえてないんですか?」
「どのことよ?」
「ゆーやくんとはなれてしまったこと。わたしは、ずっとこうかいしていたんです」
「通学のルートの話かい?」
 かつて遙乃は、『受験勉強のために、通学時間を減らしたい』と言って同じであった電車通学の路線を変えたことがあった。
 それが契機になったのか、以来めっきり話すことが無くなってしまい、そのまま卒業を迎えてしまった。
 お互い連絡先を知らなかった悠夜と遙乃は、卒業式の日に一声挨拶をしたのを最後に、完全に交流が途絶えてしまっていたのだった。
「うん。でも、もういちどめぐってきたチャンスですから、もうはなしたりしません」
「そうか」
「ふふふふっ。ゆーやくん、ぎゅー」
「ちょ、コラ」
「ここはわたしだけのばしょだからいいんですよーだ」
「しょうがない人だ」
 悠夜の腕を強く抱きしめながら、遙乃は家路を進んでいく。
 その顔は、笑顔に満ち溢れていた。
 悠夜にとっては、引かれるのは腕だけではなかった。

季節は巡り、いずれ冬は春となる。
別れの季節は終わりを告げた。
並び歩く二人を、ようやく咲き始めた桜の花が見守っていた。

つづく
Posted at 2021/02/17 19:23:07 | コメント(2) | トラックバック(0) | SS | 日記

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「血液検査採血失敗されたw
どうも血管の位置がわかりにくい体質らしい」
何シテル?   11/15 08:43
長寿と繁栄を。 sinano470です。 名前の通り信州人ですが、厳密には移民勢です。 現在愛車は、SUBARU LEVORG。パーソナルネームは...

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