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蒼with白苺のブログ一覧

2019年02月21日 イイね!

続・ダブルクラッチとトランスミッションの仕組みについて考えてみた

続・ダブルクラッチとトランスミッションの仕組みについて考えてみた前回のブログ記事(ダブルクラッチの話)の補足と、個人的に理解したことの追記です。
私自身が理解したことを忘れないために書くので、誤りがないことは保証しません。


●今回の内容

・最初に、マニュアルトランスミッションの構造について

・前回書いたダブルクラッチのときのトランスミッションの動作を、図を加えて説明

・ダブルクラッチでない普通のブリッピングのときのトランスミッションの動作について

・ダブルクラッチと普通のブリッピングの実質的な違いから、ダブルクラッチの意味を考察



●マニュアルトランスミッションの構造


↑FR車用の5速MTの概略図。

トランスミッションには、
・クラッチを介してエンジンの回転を受ける「インプットシャフト」
・インプットシャフトと1:1で逆回転する「カウンターシャフト」
・タイヤの回転と連動する「アウトプットシャフト」
の3本がある。

クラッチがつながっていれば、エンジンのクランクシャフトと、インプットシャフト、カウンターシャフトの回転数は同じ。

カウンターシャフトとアウトプットシャフトには、常時かみ合っている4組のギアがある。
(1~3速と、5速。4速はインプットシャフトとアウトプットシャフトを直結するので、ギア(歯車)はない)

カウンターシャフト側のギアは、カウンターシャフトに固定されているので、カウンターシャフトと同じ回転数になる。
アウトプットシャフト側のギアは、シフトノブで選択されたギア以外はアウトプットシャフトと固定されておらず、カウンターシャフト側のギアとかみ合うことで回っている。

各ギアの変速比が、各ギアの下に示した数値の通りとすると(これはS15シルビアのスペックSの例)、例えば3速は変速比が1.308なので、カウンターシャフトが1.308回転するとアウトプットシャフト側のギアが1回転する。
こうしている間、2速も選択されていなければ、カウンターシャフトの1/1.902の回転数で回転しているが、その回転はアウトプットシャフトには伝わらない。

アウトプットシャフトの回転数は、常に「タイヤ回転数×最終減速比」。
当然だが、車が停止していれば、アウトプットシャフトの回転はゼロ。

図中に名前を書き忘れたが、1速と2速の間、3速と4速の間、5速と後退の間にある紫色がスリーブ。シフトノブで選択したギアとアウトプットシャフトを連結する。




↑3速に入れて走行している状態。

スリーブが3速ギアをアウトプットシャフトに固定しているので、
アウトプットシャフトの回転数=3速ギアの回転数。
3速のカウンターシャフト側のギアは、回転数がその1.308倍。

カウンターシャフトの回転数=アウトプットシャフトの回転数×1.308
クラッチがつながっているので、エンジン回転数はカウンターシャフトの回転数と同じ。

エンジン回転数=アウトプットシャフトの回転数×1.308
エンジン回転数=タイヤの回転数×4.083(最終減速比)×1.308(3速の変速比)



●ダブルクラッチを、図を使って考える

3速→2速のシフトダウンの場合。



① 3速に入れたまま、クラッチペダルを踏む(クラッチを切る)

インプットシャフトとカウンターシャフトは、3速ギアを通してアウトプットシャフト→タイヤの回転に同期
(回転数はアウトプットシャフトの1.308倍)




② ギアをニュートラルにする

スリーブがギアから外れ、クラッチも切れているので、インプットシャフトとカウンターシャフトの回転はフリー。(エンジンともタイヤとも同期しない)
インプットシャフトとカウンターシャフトの回転は、放っておけば下がっていき、やがて止まる。




③ クラッチペダルを離す(クラッチをつなぐ)

インプットシャフトとカウンターシャフトの回転はエンジンの回転と同期




④ アクセルをあおる

アクセルでエンジンの回転を上げることで、同期しているインプットシャフトとカウンターシャフトの回転も上げる。3速ではエンジン、インプットシャフト、カウンターシャフトがアウトプットシャフトの1.308倍の回転数だったが、2速にシフトダウンする場合は、これをアウトプットシャフトの1.902倍、つまり、これまでのエンジン回転数の1.902/1.308 = 1.45倍まで上げる必要がある。
(実際にはシフトダウン完了までの時間で落ちる回転を見越して、1.45倍+αの回転数までアクセルをあおっておく必要がある)




⑤ クラッチペダルを踏む(クラッチを切る)

2速にギアを入れるために再度クラッチを切る。インプットシャフトとカウンターシャフトの回転は再びフリー(エンジンともタイヤとも同期しない)になるが、④でアクセルをあおっているので、アウトプットシャフトの回転数の1.902倍に近い回転数になっている。




⑥ ギアを2速に入れる

1速と2速の間のスリーブが2速側に動き、2速ギアをアウトプットシャフトに固定。④でカウンターシャフトの回転をアウトプットシャフトの回転の1.902倍程度にしてあるので、スリーブが固定する直前の2速ギアとアウトプットシャフトの回転はほぼ同一になっている。→シンクロがなくてもギアが入る。




⑦ クラッチペダルを離す(クラッチをつなぐ)

エンジン、各シャフトからタイヤまで同期してシフトダウン完了。



ここまでが、ダブルクラッチについて前回の補足。

単に仕組みの説明をしただけではダブルクラッチの意義がわかりづらいので、通常のブリッピングと比較してみます。



●普通のブリッピングの場合のトランスミッションの動作

これも、3速→2速のシフトダウンで説明



① 3速に入れたまま、クラッチペダルを踏む(クラッチを切る)

インプットシャフトとカウンターシャフトは、3速ギアを通してアウトプットシャフト→タイヤの回転に同期
(回転数はアウトプットシャフトの1.308倍)




② ギアをニュートラルにする

スリーブがギアから外れ、クラッチも切れているので、インプットシャフトとカウンターシャフトの回転はフリー。(エンジンともタイヤとも同期しない)
インプットシャフトとカウンターシャフトの回転は、放っておけば下がっていき、やがて止まる。




③ アクセルをあおる

エンジンの回転は上がるが、スリーブがギアを固定せず、クラッチも切れているので、インプットシャフトとカウンターシャフトの回転は上がらない。(フリーなので、むしろ下がる一方)






④ ギアを2速に入れる

2速ギアは回転が落ちてきているインプットシャフトとカウンターシャフトと同期しているので、スリーブが2速ギアをアウトプットシャフトに固定するとき、アウトプットシャフトとの回転差があり、シンクロがなければギアが入らない。
シンクロが働いて2速ギアに入れば、インプットシャフトとカウンターシャフトはアウトプットシャフトの1.902倍の回転数になる。




⑤ クラッチをつなぐ

アウトプットシャフトの1.902倍の回転数になったインプットシャフトとカウンターシャフトが、③で回転数を上げたエンジンの回転とほぼ同じ回転数になっているので、変速ショックを感じることなくクラッチをつなぐことができる。→シフトダウン完了。




●ダブルクラッチと普通のブリッピングの違い、ダブルクラッチの意味の考察

仕組み的に重要な違いは、ニュートラルにしてアクセルをあおるとき、インプットシャフトとカウンターシャフトがエンジンの回転と同期しているかどうか。

ダブルクラッチの場合:
クラッチをつないでいるので、アクセルをあおると、エンジンを通してインプットシャフトとカウンターシャフトの回転を上げることができる。→カウンターシャフトがシフトダウン後の回転数に備えられる。

普通のブリッピングの場合:
クラッチを切っているので、アクセルをあおっても、インプットシャフトとカウンターシャフトの回転には無関係。むしろ、インプットシャフトとカウンターシャフトの回転はフリーなので、下がっていく。
どう考えても、シフトダウン後のギアを通してアウトプットシャフトと同期できる回転数にはない


ということで、適切な回転数にブリッピングすると変速ショックもなくシフトダウンできるが、実際はインプットシャフトとカウンターシャフトの回転数は制御できず、シンクロに完全に頼っていると言える。

それでも、ここ20年?30年?くらいの車はシンクロが優秀なので、ブリッピングでショックなしのシフトダウンができると、トランスミッションに優しい運転ができていると錯覚してしまう。

シンクロを労わるならダブルクラッチをすべきなのは、現代の車でも変わらない

ただし、ダブルクラッチはやはり高度なテクニックが必要であるし、シンクロがきちんと仕事をしている車ではインプットシャフトとカウンターシャフトの回転を運転者が感じることはできないので、ダブルクラッチの効果を感じられないので、無理に習得しなくても良い技術であると思う。
(やり方を知っておけば、ギアが入りにくいとき等に応用できるかもしれないけど)

私自身、実際にダブルクラッチができるわけではなく、単に仕組みから見て言っているだけです。



●おまけ

このようにトランスミッションの動作が分かってくると、信号待ち等で
・クラッチを切って1速に入れておく
のと
・クラッチはつないだままニュートラルにしておく
のは、
実際は差があることがわかる。

後者はカウンターシャフトはアイドル回転数で回っているので、クラッチを切ってすぐ1速に入れるのにシンクロを働かせる必要がある。
車が停止していて1速に入りにくいと感じたら、クラッチを切って、カウンターシャフトの回転がゼロ(アウトプットシャフトと同じ)になるまで待てば良いことがわかる。

ちなみにmyフィットはアイドリングストップ機能がついていて、
停止→ギアをニュートラル→クラッチペダルを離す(クラッチをつなぐ)と、アイドリングが止まる。
エンジンの回転が止まるので、インプットシャフトの回転も止まる。
クラッチを切るとアイドリングが復活するが、クラッチが切れているのでインプットシャフトは回転しない→1速に入れやすい。
理にかなった動作であると思う。


●おまけ2

本当はS15オーテック(もしくはスペックR)の6速MTで説明したかったけど、5速直結の6速MTの構造が分からなかったので、今回は5速MTで説明しました。

4速直結の場合は、シフトパターンで4速は後ろ側にある→スリーブは前に移動させれば良いので、そのまま直結部分を掴めるけど、

5速直結の場合は、シフトパターンで5速は前側→そのままではスリーブが後ろに移動するので、ミッションの前側にある直結部分を掴めない。

何らかの前後反転機構があるものと思いますが、まだ把握できておらず。。。

Posted at 2019/02/21 17:30:20 | コメント(10) | トラックバック(0) | 物理 | クルマ

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蒼(あお)と申します。 MTがマイカー選びの最優先事項。 現在、マイカーはシルビア(6MT)とフィット(5MT)の2台体制です。(夫の車を除く。) ...
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