
AZ-1/CARAの「価値」はどこにあるのか。ガルウィングドア、オールアウタープラスチックボディ、ミッドシップレイアウト、DOHCインタークーラーターボエンジン、ステアリングのLockToLock2.2回転のクイックなハンドリング、軽自動車という世界的に見て特殊なカテゴリに存在することなど幾つかのキーワードが浮かび上がる。
AZ-1/CARAに取ってどれも失うことのできない価値であるが、その中でも最も価値があるのは間違いなく「スケルトン・モノコックフレーム」である。
一般的にクルマの世界で言われているモノコックボディは、主となる力を受け止める為のフレーム構造を持たず、ピラーやルーフ、フェンダーなども応力を受け持つことで剛性の確保と軽量化、生産性をバランスさせている。本来の狙いどころはすべて閉じた形とするのが理想であるが、窓やドアを必要とするクルマではそういうわけにもいかないことから、正しくはセミモノコックと呼ばれる。
スケルトンは骸骨のことで、ジャングルジムのような構造で応力の発生を鋼管で受け止める構造である。乗用車の世界ではスペース鋼管フレーム、マルチチューブラーなどと表現されることが多い。モノコックより剛性の確保が容易で、製作もモノコックと比較すれば容易である。ただし、作業工数が増えるので大量生産には向かない。
AZ-1/CARAはこのセミモノコックとスケルトンの合わせ技のボディを持つ。スーパーレジェッラとも表現できそうだが、こちらはスケルトン(パイプの骨)に対して応力を受け持つ面を加えたものであり、スケルトン・モノコックはモノコックに骨を加えたと構造となる。大量生産向きのセミモノコックに一手間かけてビーム材を補強しているわけである。
15%の高張力鋼板で大断面のサイドシルとセンタートンネルに5本のビーム材を加えることでフロアの剛性を確保し、Aピラーやルーフ前後のフレームを一般的なセミモノコックが見栄えの考慮から施工できないスポット溶接を行っている。またBピラーとCピラーを寄せてリアヘッダーに結合することでロールオーバーバー構造としピラー部の強度・剛性を得ている。プランニング時点で大量に販売するものではないということから可能となった構造だろう。なお、重量は120kg(ホワイトボディで151kg)である。

スケルトン・モノコックを採用したことによって得たものは大きく、ガルウィングドアを現実のものとしたことや、ピラー部のスポット溶接によって剛性を確保できた為、フロントウィンドウ端部のきついカーブが可能となり、まやかしでないガラスtoガラスのガラスキャノピー。応力を外板に持たせる必要がなくなった為の着せ替え可能なオールアウタープラスティックボディ。ボディがプラスチックだから可能となったフロントフードやボディサイドのエアスクープの造型も見逃せない。マツダスピードバージョンやM2 1015などの容易なバリエーション展開もこの構造のおかげであろう。もちろん、高剛性ボディによるクルマの挙動をドライバーへ正確にフィードバックできることは言うまでもないことである。そして何よりも大切な安全性の確保も、強固なキャビンがある故のフロントのクラッシャブルゾーンであろう。
なお、AZ-1/CARAの「スケルトンモノコックフレーム」という表現はカタログに記載もあることからオフィシャルな名称だと思うが、実際にはフレーム構造と区別する為にも「スケルトン・モノコックボディ」もしくは「スケルトン・モノコックシャーシ」の方が適切だと思われる。
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キーワード | 日記
Posted at
2008/01/12 23:20:28