
資料:原子力発電シナリオに対する意見
2012年7月14日放送 NHKスペシャルより
一橋大学大学院 橘川武郎
我々がこの原子力の問題でこれだけいろいろ議論しなければならないのは、危険性と必要性の間にジレンマがあるとこだと思うんですね。
で、必要性だけいって、原子力、危険性を最小化しない限り動かす事は出来ません。
一方危険性だけをいっていれば問題が解決するならば、ここで議論する必要も無いわけです。
一番大事なことは、危険性と必要性のジレンマそのものをなくす事だと思います。
そのためにはたとえば原子力の発電は危ないんですけれども、送電や変電は立派な物がありますから、その原子力発電を、たとえば天然ガスの火力だとか最新鋭の石炭の火力に置き換えていくというような具体的な、原子力からの出口戦略を執っていく必要があると思います。そうゆう対案が必要だと思うんですね。
そのためには、どうしても時間がかかります。したがってある程度減らしていって、その火力がどれくらい進むか、再生がどれくらい進むか、節電がどれくらい進むかということで、またその先に次の世代が中心になって、判断してゆくのが二番目の内容です。
ただ何で減らしてゆくのかってのがあります。
先程から出て来ますが、原子力発電には使用済み核燃料の問題がありまして、直接処分する場合、たとえこう核燃料サイクルを回す場合でも量は減りますが最終的には、最終処分場が必要なんですね。これを見つけることは容易ではありません。
多分新興国は、電力が足りないので、原子力をどんどん建ててきますけれども、そうゆう国を含めて私は人類今世紀の半ばぐらいで、原子力から卒業してゆくのではないかと、まあそうゆう意味で原子力のたたみ方を考えなければならない。
ただ、たたみ方を考えてゆくためには、いろいろな不確実な要素があります。
私はこの(2030年)時点でゼロですとか、ずっと維持していくとか決めうちしてしまうこと自体が無責任なのではないかと考えまして、中途半端なようですが現実的な選択肢2を提案致しました。
東京工業大学特命教授 柏木孝夫
石炭だとか、天然ガスだとかそうゆう選択肢をへずるなと、多くのメニューを揃えておけ、その一つとして維持をするという主張をしています。
ですから選択肢3ということになりまして、たとえば最低20%程度の原子力維持をするという事になります。ですから考え方としては、2030年に向けてですね、或いは2050年に向けて維持をしていくという事になります。
まあ中には、世界はまだ原子力捨ててませんから、この事故を乗り越えて、安全を高めた上で我が国があの、貢献できる国は非常に大きいんじゃないかとゆう風に思っている訳です。
たとえば日本が、原子力を捨てたと、ゆう決断をしますと、もちろん日本の場合にはですね、今全体の原子力の1/8程度を保有しておりますから、ウランの核ポストは長期的に見てかなり下がるだろうと、ゆう風に思うわけです。
下がりますと、もちろんの事ながら、新興国たとえば、中国,インド、え・あるいは韓国。こうゆう国々は、こうゆうその電源を工業国家として選択をしてゆく。
で、一方ですね、今度日本は競争力が、産業部門を代表して物作り国家としては、あの新興国の競争力がきわめて増大してゆくことになりまして、一方日本はどうなるかというと、今度は捨てたということになると、選択肢は減ってゆきますから、社会は、世界はそう甘くありませんで、やはりあの国は原子力捨てたということになりますと、化石燃料に頼らざるを得ないぞという話になりますと、どうしてもこの石炭に代表されるような、化石燃料のコストが高くやはり足元を見られる可能性が出てくると、その時にもし、選択肢を減らさないでいれば、まあそんなに高いことゆうんだったら、原子力の比率を上げるぞということをやれば、やはり国際社会の中で、持続可能な産業活動雇用こうゆう物が出来てくるとゆうふうに、私は思っておりまして、いずれにしましても、私の主張としましては、一エネルギーの選択肢を減らすなと、ゆうのが、これが維持をするという一番大きな目標です。
公聴会 名古屋会場
中部電力勤務の意見番号3番の意見
今回のように原子力発電の必要性について論議になりますと、大抵安全か経済かの2項対立になることが多くございます。
具体的には、経済成長よりも、安全や命の方が大事ですというような論調になります。しかし私は、この二つを全く別のものだとは考えておりません。世界では貧困でなくなっている方が多数いらっしゃいます。クスリや医療技術があっても、お金がないために救えない命がたくさんあります。以前おにぎりが食べたいといって、亡くなった方がいらっしゃいました。これも経済が回って、福祉にお金が行き届いていれば、救えた命ではないかと私は思っています。
昨年の福島事故でも、そうだと考えています。
放射能の直接的な影響で亡くなった方というのは、一人もいらっしゃいません。
それが今後5年10年経っても、この状況は変わらないと考えています。
(ヤジが飛ぶ)
あの・・ 中部電力であることは事実です。しかしこれは疫学のデータから見たら、紛れもない事実です。それは5年10年経てば分かります。
続けさせて頂きます。
じゃあ実質的な福島事故の被害って何でしょうというと、これは警戒等を設定する事によって、家ですとか、仕事を失ってしまったり、あるいは、風評被害ですとか、過剰な食品基準値の設定によって、せっかく作った作物が売れなくなってしまったりと、まあこうゆう事によって、先行きを悲観して、自らの命を絶たれてしまったりですとか、体調を崩してしまったりですとか、生活をただ立ちゆかないということが発生しております。これはまさに、経済的な影響が、安全や命を犯してしまった例であると私は考えています。
私は、経済的なリスクが、命や環境の安全リスクにつながる事としてとらえられていないと言うことを、強く懸念しています。経済が冷え込んで、消費が衰退して、企業の国際競争力が低下してしまえば、福島事故と同じ事、或いはそれ以上のことが、日本全体で起こるとゆうふうに考えています。
そうゆう視点で、私たちは、各シナリオのリスクが、どれだけ享受されているかと問いたいと思います。
放射能の影響に対する過剰反応で、脱原発の論調が席巻しております。しかしながら、報道されている内容に、偏りはないでしょうか。経済的なリスクを完全に無関係だとして、最初から切り捨ててはいないでしょうか。わたくしは各シナリオのリスクを覚悟した上で、国民がそのシナリオを選択するならば、それは仕方がないと考えています。
でもそれで本当にやっていけるのでしょうか。私は無理だと思っています。
たとえば再生可能エネルギーのリスク認識これがどれだけ共有されているのでしょうか。
一般的には、天候に左右されるですとか、或いは出力が低いですとか、電力系統が不安定になるですとか、こういった問題は、共有されているような気がします。
しかし、もっと見逃せない問題がございます。それはお金の問題です。たとえば太陽光発電になりますけれども、0%シナリオの場合、先程の方にもちょっとございましたけれども、昭和55年以降に、建築された一戸建て1200万戸全てに太陽光パネルを設置しなければならない。しかも、そのうち200万戸は、パネルを載せたら、潰れてしまうので、改修が必要な住宅になる。これは資料に有ったとおりである。この、設置や改修の費用というのは先程もございましたけれども、誰が負担をするのでしょうか。皆さんそれをご自分で負担する覚悟がございますか。
もちろん払えない人もいるでしょう。そうゆう方達は、国が補填してくださるのでしょうか。
それは結局税金として帰ってきたりだとか、或いは900兆円を超えるといわれている国債これに更に上乗せをして、結局将来の子供達や孫達の為へのツケとして残ってしまう。こうゆう事になってしまいます。それとも電力会社に払わせるという事を考えているのでしょうか。
しかしそれは、電気料金として結局皆様の所へ帰るということになります。
そうゆう覚悟があるでしょうか。
設備は、永遠に使われると思われているでしょうか。太陽光パネルの寿命20年ぐらいといわれています。あるいは周辺機器の寿命は、10年というふうにいわれています。ということは、10年とか20年のスパンで、これらを廃棄して、或いは再施設するということをやっていかなければならないです。
風力発電は、どうゆうふうかといっても、同じように19兆円ものコストがかかります。経産省の試算では0%シナリオを選択した場合には、家庭の電気料金が、最大2.3倍になるというふうにいわれています。
10%値上げをするということですら、あれだけ大きな反響がある。それが出来るのでしょうか。企業はもっと大変です。電気料金が、1000万円とか1億円かかっている産業はザラにあります。それで国際競争が出来てゆくのでしょうか。電気をこまめに消すとか、冷房を扇風機に替えるとかで、何とかなるというレベルではない事を認識して頂いてるでしょうか。
もっと困った事があります。それではお金では解決できない問題です。
太陽光発電の場合、新築の住戸にこれから全て太陽光パネルをつけることにする事を強制したとしても、2030年に付けられるのは、600万戸程度です。つまり目標の半分この差をどう埋めるのでしょうか。風力の場合は、東京都の2.2倍の土地が必要と、そんな広大な土地をどうやって買収するのでしょうか。そうゆう目処は立っているのでしょうか。
地熱発電の場合は、自然公園ですとか、温泉地の近傍に建てる必要があります。これは、自然公園を破壊したりとか、温泉地のお湯が出なくなっってしまって、温泉を廃業しなければならないそうゆうリスクがあることを皆さんご認識頂いているでしょうか。
水力はどうでしょうか。もう開発の余地はありません。つまり再生エネルギー35%というのは、最初から破綻したシナリオになっています。
結局頼っていくのは、火力発電ということになります。
現在どうなっているかというと、毎日100億円、年間3兆円の資本が火力発電の燃料費として海外へ流出している事を皆さんご存じなのでしょうか。もちろん電力会社の経費を節減せよというご意見もあるでしょう。しかし、火力発電のコストというのは、大半が燃料費なんです。
ですから、電力会社の人件費をゼロにしたところで、自体は殆ど変わらないことをご存じでしょうか。もっと困るのは、お金で解決できない問題です。
今年の初めのように、イランとアメリカがもめてホルムズ海峡が封鎖されるのが、現実になったらLNGの2割石油の9割がストップしてしまうこうなったらお金がいくら積んでもダメだということなんです。
私はとても無理だと思いました。
省エネを頑張るという意見もありますが、そのストーブが販売禁止になるだとか、ガソリン自動車が栄や名駅に乗り入れ出来ないだとか、そういったことを本当にやるつもりがあるのでしょうか。日本国民の全員に徹底できるのでしょうか。私は出来ないと思っています。
最後に公平のために、20から25%シナリオにもリスクがあることを申し上げてお話を終わりたいと思います。
ただしそれは、原子力のリスクではありません。
再生可能エネルギーを25%から30%に引き上げるという前提が入っているというリスクです。これは15%シナリオにもいえる事なんですけれども、程度の差こそあれ、財政負担ですとか、スケジュールが困難であるとか、用地の買収が不可能であるとか、そういった抱えている問題は、0%シナリオと同じなんです。このシナリオも破綻したシナリオなのです。結局最後は火力発電に依存して、中東の情勢が不安なのをヒヤヒヤしながら高い電気料金を払い続けるこうゆう結末はかわらないのです。わたくしは35%シナリオがあれば、35%。45%シナリオがあれば、45%を選択しておりました。それはその方が安全だからです。
提示された選択肢は、他のリスクに比べて原子力のリスクを過大に評価していると思います。このままでは、日本は衰退の一途をたどると思います。国民の皆様の冷静な判断を見たいと思います。
公聴会 仙台会場
東北電力の意見
今日はせっかく当選しましたので、この選択肢に関しまして、会社の考え方を少しまとめてお話をさせて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。
今回のエネルギー政策の見直しは、東日本大震災を契機として、議論がおこなわれてきたと認識しております。当社においても大震災によりまして、太平洋側の火力発電所や、沿岸部の多くの送配電設備などが甚大は被害を受けました。
加えて、昨年7月の新潟・福島豪雨によりまして、水力発電に多くの被害が生じたこともあり、昨年の夏は産業界や東北地域の皆様に対し節電をお願いし、計画停電を実施することなく、夏場を乗り切ることが出来ました。
皆様のご理解ご協力に深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
当社はこれまで、被災した発電設備の復旧や、緊急電源の設置など供給力の確保に、全力で取り組んで参りました。今後も安定供給の確保に向けて、万全を期して参りたいと思いますが、しばらくは厳しい需給状況が続く見通しであります。お客様には無理のない範囲での節電につきまして、引き続きご理解とご協力お願い申し上げます。
今回の議論は、こうした状況も踏まえ、未曾有の災害にも負けず、将来にわたりエネルギーを安定的に皆様にお届けし続けるための方向性を決める大変重要なものと認識しております。
始めに将来のエネルギーミックスのあり方を見極める上での、基本的な考え方について申し上げます。
エネルギーミックスのあり方を考えるに当たっては、我が国のエネルギー自給率が4%ときわめて低く、原油価格の高騰などの様々なリスクに直面していること。
またエネルギー自給率が低い事による社会経済への影響などを十分踏まえる必要があります。
すなわち、我が国のエネルギー政策については、安定供給、環境保全、経済性(3E)これを可能な限り確保していくことが不可欠だと考えます。
また、エネルギー供給する際には、安全性を徹底的に追求する事も重要だと考えます。
従いまして、将来のエネルギーミックスのあり方についての基本的考え方は、
安全の頭文字であるSと、先程の3つのE。S+3Eの同時達成を目指すことが、基本的考え方になると思っております。
基本的考え方に基づきまして、具体的論点に関して4つ4点お話を申し上げます。
1.原子力発電について
東北電力の例で申し上げますと、東日本大震災において、宮城県に立地する女川原子力発電所では、地震発生直後から、止める、冷やす、閉じ込める機能を確保し現在も安全に停止しております。
また、敷地の高さなどの確保などにより、津波被害を最小化するなど安全機能を確保し、震災当時、発電所への避難者の皆様の受け入れもおこなう事が出来ました。
現在、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、当社原子力発電所の安全対策をとりまとめ、順次実施しており、今後も最新の知見の情報収集等に努め、新たな対策を策定し、安全性の確保と、さらなる向上に経営努力を重ねてまいります。
世界最高水準の安全確保に更に全力で取り組みまして、地域から信頼される発電所でありたいと考えております。
原子力発電は、燃料調達の安定性にすぐれ、発電過程でCO2を排出せず、エネルギー安全保障や低炭素社会の実現の観点からも、引き続き必要だと考えております。
将来にわたって安定供給を確保して行く為には、火力発電や、再生可能エネルギーなどと共に、先程申し上げましたような、安全対策を着実に実施し、安全確保を大前提に、立地地域との共生を図りつつ、原子燃料サイクルと共に、原子力発電を今後も一定の割合で活用して行くことが必要と考えております。
2.火力発電について
火力発電は基幹電源としてのみならず、再生可能エネルギーの出力変動に対するバックアップ電源としても重要でございます。
コストや燃料調達の安定性、環境性、付加追従性などを踏まえ、石炭、石油、LNGをバランスよく組み合わせて、活用して行くことが重要と考えます。
3.再生可能エネルギー
再生可能エネルギーは、CO2を排出しない純国産エネルギーでありまして、東北地域は再生可能エネルギーのポテンシャルが高いといわれております。
東北電力企業グループとしても引き続き、再生可能エネルギーの利用拡大に取り組んでまいります。一方で再生可能エネルギーには技術面の課題や、コストが割高であるという経済面の課題があります。
さらに大量導入には、大規模送電線などの増強が必要で、そのために相当のコスト負担が必要になります。
今回の再生可能エネルギーの導入量が適切な規模なのかどうか、これは十分に見極める必要があると考えます。
4.地域経済や生活への影響について
エネルギーは東北地域の経済生活のインフラとして必要不可欠なものであり、エネルギー政策の見直しは、地域経済や地域の皆様の生活に大きな影響を及ぼすものであると考えております。
国の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では、今回の3つのシナリオのいずれかにおいても、電気代が大幅に上昇する上に、経済成長を表すGDPが自然体ケースから減少するなど、産業や経済、国民生活への大きなマイナス影響が試算されております
こうした影響は、地域においても同様に現れてくると思いますが、特に東北地域は、他地域に比べ人口減少のスピードが速くなっております。
加えて東日本大震災により地域経済は、大きなダメージを受けました。被災地の復興も緒に就いたばかりであり、経済基盤の回復には時間がかかります。
またこうした東北の復興を順調に進めていくためには、豊富で低廉な電気の供給が欠かせません。
従いまして、今回のような検討に当たっては、将来展望だけではなく、今ほど述べた東北地方の現状を勘案しエネルギーの安定供給に向けて、経済活動や地域社会への影響国民負担の観点を十分考慮致しまして、東北地域の経済や生活に大きな打撃を与えたりする事の無いよう慎重に御貴論頂きたいと考えます。
個別論点について4つ申し上げてきました。
先に申し上げました基本的な考え方と、4つの論点関する考え方に基づきまして、3つの選択肢のどれか1つを挙げるとすれば、実現可能性や国民負担等の課題が解決されるといった条件が整えば、20から25シナリオが最も当社の考えに近いものとなります。
最後に当社は、安全確保を大前提に、安定供給、環境適合、経済性の同時達成により、東北地域の豊かな暮らしに必要不可欠な電気をお届けする事を使命と致しまして、事業活動を行っております。
今後も、地域のエネルギー効率向上に貢献するとともに、電気の供給を通じて地域の発展に貢献して参りたいと考えております。
意見番号6番
東北エネルギー懇談会理事の意見
まず結論から申し上げたいと思います。今回提示されております、3つの選択しを前提に2030年のエネルギーの姿を考えました場合に、最終エネルギー消費が、19%も下がるというのは、今ほどの話とはちょっと違いますが、大いに疑問を感じますし、再生可能エネルギーを期待も込めて大きく見積もりすぎてはいないのかという印象を強く持ちます。
従いましてあえて選択すれば、20から25のシナリオを、国家のエネルギー戦略として選択することが妥当ではないかと私は思います。
まず福島第一原子力発電所の事故についてでございますが、これは起こしてはならない、大事故でございました。
今回原子力の事故で今なお福島県の方々を中心に、実に多くの方々が、故郷を離れておりまして、避難生活を余儀なくされておりますことにつきましては、心からお見舞いを申し上げたいと思いますし、一日も早く故郷への帰還が可能になりますよう心から願っております。
今回の事故以降、原子力の安全につきましては、このたびの事故を誠に大きな教訓ととらえまして、新しい知見を加え関係機関の指示のもと、30項目にわたります改善が逐次加えられておりまして、各原子力発電所のシビアアクシデント対策が、私は一層強化され、安全は3.11に比較をしますと格段に向上していると自分は考えております。
このことを念頭に20から25のシナリオを選ぶのが客観的に見て、総合的に見て、また中長期的に見て妥当だと思います。
その理由を3つほどお話を申し上げたいと思います。
第1
安全安心の確保を自明のこととしまして、何と申しましても、エネルギーは、これは、安定供給が不可欠でありますから、輸入に依存せざるを得ない国情にありますだけに、多様な選択肢の中から、始めから原子力発電を除く、あるいは、残減させていくということは、私は現実的ではないと考えます。
原子力0の選択肢はもちろんでございますが、将来明確に残減さしていくシナリオもございまして、これは有為な人材の確保の観点からも明らかにマイナスとなってまいりますし、これまで長年積み上げてきました、膨大な基盤技術が失われる事になりまして、エネルギーの長期安定供給の確保という観点に立ってもこれは、私は問題だと思います。
また将来にわたり増大し続けます世界のエネルギー需要でございますが、我が国は残念ながら依然として膨大なエネルギー輸入国である事はかわりがありませんから、原子力の選択肢を外してしまえばエネルギー輸出国との間におけるバーネニングパワー(パーゲニングパワー)をやめることになりまして、結果として高いエネルギーを輸入し続ける事になるのは必定でございます。
こうしたことは、国益を守っていくためにも、是非とも避けていく事が私は必要だと思いまして20から25のシナリオに妥当性があると思います。
その2つめの理由ですが、再生可能エネルギーを開発促進していく事は確かに産業の育成にも繋がりますし、意義がある事と私も思います。
しかも基本的に全量の買い取り制度がスタートしましたので、普及を進めるための確かに経営的な基盤は整いました。
しかしながら、目標とすべき再生可能エネルギーを普及させるとなりますと、実際には天候や地形のみならず風力の場合ですと、風況或いは景観、温泉地との利害関係調整など、思いの外高いハードルがございまして、実際太陽光を除けば、相当程度導入には、時間が実際かかりま事。自然条件に左右されます事から、依然として高いコスト高コストでありますこと。更にエネルギーの質向上にはまだまだ課題が多いことなどがございまして、問題は実に山積をしてございます。
また再生可能エネルギーは、安定電源とはなかなか言いにくい所がございまして、これを実際補完することになりますと、火力発電などによりますバックアップが、実際必要になって参ります。
或いは風力の場合には、新たな送電網の建設が必要になる事も無視できないわけでございます。
よく風力の場合に、ヨーロッパが××ではないかとよく出されます。その通りでございますが、ヨーロッパの場合には国土そのものが、大平原でございまして、天賦の恵みであります偏西風が吹いてございますが、残念ながら我が国は毎年台風に襲われる国土でございまして、風力にそうそう恵まれた地点はございません。
3番目の理由でございますが、温暖化ガスの削減効果が一番高いのがシナリオ20から25でございますし、化石燃料の依存を一番低くするのも同様に20から25でございます。
更に1kwhの発電コスト、送電対策コストにつきましても3つのシナリオの中では、比較優位性があります。
ただし、この20から25のシナリオの中でも資料にございますように、月1万円の電気料金が、このシナリオ20から25の場合でも月1万4千円から1万8千円になるという試算がすでに出されております。将来にわたりまして、税や社会保障の負担が軒並み上がる中、国民が更に負担に耐えられるだろうかという事につきましては、私は少々疑問が残ります。
最後に油断と言う言葉に私は触れさせて頂きたいと思います。話はちょっとずれますが、戦前我が国が、昭和6年9月の満州事変から、昭和16年12月の日米開戦に至るまで、様々な歴史的経過を経て、最終的には1年後の戦局が全くたたないまま、アメリカと先端を開き3年8ヶ月にわたる国民総動員の熾烈な戦いの果てに、壊滅的な敗戦を迎えました。
実に多くの戦闘員。非戦闘員が戦禍に倒れまして、膨大な国富が廃人に喫しました。また関係諸外国にも、多くの戦争の爪痕を残念ながら残しました。いまなお近隣諸国とは、この事が原因で残念ながら外交問題になることがございます。
ご承知のようにこの無謀な大戦に対し、最終的にその引き金を引かせましたのは、アメリカが対日石油輸出禁止に、踏み切ったことから、当時ございました陸海軍の海軍の艦艇、陸海軍の航空兵力の運用が出来ない、油が切れるこの言葉でございまして、まさに油断が、油が切れる油断そのものが考え方によっては最終的に戦争を引き起こしたということに言えるのではないかと私は思います。
翻ってみて、日米開戦の70年前と今とは政治経済も国際情勢も全く異なりますし、我が国は平和国家そのものです。
しかしよくよく目をこらしてみればですね、油が切れるすなわち油断にも近いエネルギーが切れる。エネルギー断、さらには電気が切れる。電断一歩手前の状況にきているのではないかと私は思います。
それだけに国民各層がエネルギーのこれからのエネルギーあり方に関しますシナリオの選択につきまして、3つの選択肢の中で、是非客観的総合的に或いは中長期的にとらえていて頂きまして、20から25のシナリオに多くの国民の支持が集まります事を切望するものであります。