今年世界遺産にほぼ決定で、益々登山者が増える日本最高峰「富士山」。
もちろん深田久弥の日本百名山のリストにも入っていて、百名山をコンプリートする、百名山登山者ももちろん一度は登る山だ。
この数年前からの中高年登山ブームも手伝って、登山者の増加もうなぎ登りである。
2005年 200,292 人
2006年 221,010 人
2007年 231,542 人
2008年 305,350 人
2009年 292,058 人
2010年 320,975 人
2011年 293,416 人
2012年 318,565 人
夏期の富士山登山者数 関東地方環境事務所発表値
となっていて、そのうち半数以上の55~60%は吉田ルートからのアプローチである。
明らかに2008年にそれまでの20万人前半から、一気に30万人に増えてしまっている。
10年前と比較すると、10万人以上増えた計算だ。
昨年最も登山者が多かった日は、
7月28日(土)11,779 人
8月25日(土)11,639 人
8月 4日(土)11,462 人
8月18日(土) 8,955 人
8月26日(日) 8,654 人
だった。
また、登山ルート別で最も多かった日は次の通り
吉田ルート 8月25日 (土) 6,831 人
富士宮ルート 7月28日(土) 3,185 人
須走ルート 8月 4日(土) 1,639 人
御殿場ルート 8月13日(月) 1,101 人
となっている。
7月1日から8月31日迄の62日間での登山者数なので単純計算で考えると、
八合目以上の登山者の総計を、32万人と仮定する。
1日平均 5,161 人
吉田ルート 60% 3,100 人 ※ 6,831 人
富士宮ルート 25% 1,290 人 ※ 3,185 人
須走ルート 10% 520 人 ※ 1,639 人
御殿場ルート 5% 260 人 ※ 1,101 人
となるが、吉田ルート、富士宮ルートでは、計算平均値の2倍以上、須走ルート、御殿場ルートでは、計算平均値の3倍から4倍になることもある。
登山者が多い日は、土曜、日曜が圧倒的に多く、ついで金曜と月曜だろう事は想像するまでもない。
とにかくこれだけ登る富士山。
残念だが、登山の初心者が大勢やってくる傾向が強く、登山上級者(経験があり健脚な人)は、こんな観光客に毛が生えた富士山に夏にやってくることは少ない。
現実私自身、富士登山は、思っていてから実行するまで15年以上もかかってしまった。
なかなか登らなかったのは、素人登山者が多く、駐車場から混雑するのが必至だったのと、登山費用が結構かかる(以前は富士宮ルートの道路も有料だった)からだ。
実際2010年にようやく登山したが、天気と、自動車の通行規制をにらんでいったが、それでも素人登山者がわんさかいて、登るのには苦労した。
先週、山梨県と静岡県は、観光庁に対して、いわゆる「弾丸登山」の自粛を書面で要請したという。
まあ、健脚で、高所になれた登山者なら問題はあまりないのだろうが、現実素人同然の登山者がいきなり、日帰りで富士山頂を目指すのは、無謀というか、高山病を舐めているというか、はっきり言って無理である。
現実登山道の廻りから、山頂のお鉢の廻りまで至る所に、高山病で苦しみ、倒れている多くの登山者を見た。
はっきりいって、高山病は下山するしか対応策はない。
高山病にならないためには、体調を整え、高山にならすためにも、ゆっくり登る事が成功の秘訣である。
また、富士山は晴れていれば、日差しを遮るものが一切無い。直射日光と紫外線がモロにやってくるし、雲が涌いて天気が悪くなると、高山なので大変寒い。
夜に登る弾丸登山となれば、寒い中歩き続けることになり、とても初心者がおこなう登山では決してない。
だいたい、山登りは、早立ち早着が基本である。日の出と共に登り、遅くとも夕方4時頃には山小屋に入るスケジュールをたてるものだ。
夏山は午後になると、気流が乱れて雷や夕立が来る可能性がある。その天候の危険度を避けるためには、午後の早い時間には、その日の行動を終える(安全を確保する)のが基本である。
特に雷は、山の稜線や、富士山のような逃げ場がない山では最悪、死を意味する。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」と同じ行為のバスツアーでの午後から登る富士登山は、はっきり言って半分客の安全を最初から放棄している様に私には思えてならない。
しかも、7合目ぐらいまで登って、2,3時間程仮眠を取って、夜中にまた登り始めるのだから、山小屋で1泊といっても、体を少し休めるだけで、しっかり眠って翌日の体力を回復するにはほど遠い。
私からいわせれば、インチキ宿泊料を取られて登る「半弾丸登山」と同じであろう。
なぜ、そんなバスツアーが主流になっているのかといえば、ツアー費用の抑制と、富士山の山小屋の利益確保が合致して、登山者のためのツアー登山出はなく、業界の利潤のための富士登山になっているからだ。
まあ、富士山の各山小屋は、年間営業日が60日から75日程しかなく、1年の利益をこの2ヶ月ちょっとで稼がなければならないという現状も背景にはあるのだろう。
しかも台風や悪天候の日は登山客がかなり減るので、利益が出る日は、年間60日は無いはずである。
入山規制や入山料の徴収など、いろいろ議論されたりしているようだが、そんなことをすると、そんな規制を逃れようと、登山道以外を登る馬鹿がうようよ出て来そうで、もっと深刻な問題が起こりそうな気がしてならないと感じるのは私だけではないはずだ。
大混雑の富士登山 (現実のイメージ)
登山規制の現実私案はあるが、それは次回とする。
そんな富士登山の季節が、今年ももうすぐ始まる。7月1日には、富士山の山開きだ!!
富士山入山増どう対応 8合目大渋滞や弾丸登山…課題多く 山梨
夏山期間の深夜の富士山8合目付近の様子。登山道から山頂へと急ぐ登山者があふれる(富士吉田市提供)
富士登山人気はすさまじく、毎年7、8月の夏山期間には山梨県側北口登山道から約25万人が山頂を目指す。“山頂でご来光を拝みたい”という登山者が夜明け前に8合目から山頂直下を埋め尽くし大渋滞。登山道から逸脱する人も多い。5月の国際記念物遺跡会議(イコモス)勧告では「来訪者の増加は斜面の流亡に問題があり、検討を要する」と提言した。県や地元市町村でつくる富士山安全指導センター運営協議会がこの問題で議論を始めた。
◇
富士吉田市の環境美化センターで開かれた協議会。県や市町村担当者が打開策を協議した。「混雑時の8合目付近に誘導員を集中配置して、登山規制をかける方法があるが、法的根拠がみえない。北口登山道5合目上には18軒の山小屋があり、宿泊キャパが計3040人。この数を超えたら登らせないのはどうか」(富士吉田市)と入山規制をにおわせた。「25万人とは5千人×50日。山小屋のキャパを超えている。安全で楽しい登山に何人が適当か」(山中湖村)。「東京で富士山写真展を開催した際に、来場者から『入山予約制にしてほしい』と要望があった」(忍野村)。「法的に根拠がないが、入山許可証の発行はどうか」(富士河口湖町)との案も出た。
この会議では山小屋を利用せずに5合目から一気に山頂を目指す“弾丸登山”も議題となった。登山者をかき分け、登山道外を登る。本人に高山病の危険があると同時に落石を引き起こす危険もある。5日に弾丸登山の自粛を求めて横内正明知事らが井出憲文観光庁長官に関係機関への周知徹底を要請した。弾丸登山を含め登山道渋滞の解消には入山予約制、入山規制、許可制などの案が浮上してきた。イコモスは来訪者管理戦略が緊急に必要だとしている。
以上 産経新聞より転記