いかにもなクロスカントリーSUVということで、だれでも知っているであろう、Jeep。
試乗してきました。
なぜ唐突にJeepかといえば、やはりMINIに乗っていて思うこと。
いくらスキーに行けますといえど、気を使って行っているのは確かです。
車中泊をやってみれば全然眠れず。
最初はそれでいいと思っていたのですが、いざできないとなると、気になるもの。
小さな車に乗っていれば大きな車が欲しくなるのも必然(?)で、気になったのはSUV。
いろいろなSUVを見ているうちに、目についたのがJeep WRANGLER。
もともと私はこういうアイコニックな車が好きになる質なのか、気になる車だったのは確かです。
ただし目を向けていなかったので、あまり意識はしていませんでした。
そこへ、なんとなく訪れた、SUVいいなぁという感覚に気づいた時には、一気に気になる車になっていました。
家にやってきたCX-5の影響なのか、最近家族がやたら話題にするランドクルーザーのせいなのか...。
一気にラングラーに引き込まれたのは、その価格が手の届く範囲だったということ。
輸入SUVは高いもの、なんていう固定観念にはまって、勝手に雲の上の存在だと思っていました。
WRANGLER UnlimitedのベースグレードであるSPORTは、実は本体価格400万を切る価格帯。
そしてその上のグレード、SAHARAになって400を超えますが、その違いは、主に見た目のところ。
外装のどでかいフェンダーが塗装されているだとか、サブウーファーが搭載される程度の違いらしく、選択はほとんど見た目の趣味の世界。
未塗装樹脂のフェンダーがかっこいいと思えばSPORT、きれいな塗装されたフェンダーに、サブウーファーがほしいなと思えばSAHARAといった具合だそうです。
詳しい方はご存知、最上級グレードのRUBICONは日本には通常ラインナップとしては入ってきていません。
残念。鹿バンパーだめだものね。
さて、試乗前のイメージとしては、やはり硬派なクロスカントリーであるゆえに、ガサツといえば言葉は悪いですが、ラフな作りなんだろうなぁというところでした。
例えば、ドアが簡単に外せるようになっているため、ヒンジはむき出し、ストッパーはなし。
ルーフがまるごと取り外せる。雨漏りしそう...。
フロントウィンドウすら倒してしまうこともできます。
最近はやりの先進装備もなし。
となると想像できるのは、完全にオフロードで遊ぶための車。
走りだせばゴツゴツした足回りに、騒音だらけの室内...そういうイメージが出来上がっていました。
カタログの写真を見ても、内装のチープさが伝わってくるようです。
そしてこの価格。完全に「その程度」の車だと思っていました。
気になったのは何かの縁ということでカタログを請求すると、地元のディーラーからもご丁寧に車種別カタログが送られてきました。
なかなかの良い対応に、一度見に行ってみるかということで、見に来たわけです。
こちらから申し出なくても試乗のお誘いを頂き、気持よく試乗させてもらいました。
試乗したのは、WRANGLER UNLIMITED の SAHARA グレード。
SPORTよりも上のものです。
写真はありませんが、フェンダーは塗装されており、室内の配色も若干の違いがありました。
まずドアを開けて思ったこと。
「あれ、このドア思ったほど安っぽくないじゃん。」
確かにドアのストッパーはないので、プラーンという感じで開くのですが、ドアそのものやヒンジの見えている感じは、上手に"それっぽさ"を演出しているのですが、決して安っぽいものではありませんでした。
乗り込んでインパネを眺めてここでもまた、
「あれ、思ったよりかなり上質に仕上がってる。」
Jeepのカタログは写真写りが悪い。そう実感しました。
思ったより全然上質なのです。
メーターのサイズ感やフォントも整然としており、シンプルでまとまりを感じます。
さすがに先進装備などもなく古臭い感じは拭いきれませんが、決して安っぽいものではありません。
いいなと思ったのは、メーター内に表示されているデジタルコンパス。
スピードメーターの下に、アルファベットで進行方向の方角が常時表示されています。
写真は店内展示の"SPORT"
運転席から眺める視界も、車格にしては小さめのボンネットに、角度の立ったフロントガラスということで、"それっぽさ"全開。
Jeepは、"それっぽい"のではなく完全にその道なんですけどね。
エンジンはV6 3.6L クライスラー製ペンタスターエンジン。
SPORTとSAHARAで排気量などの差はありません。
こういう設定にも心惹かれます。
キー差し込んでひねってかけるタイプです。
始動した感じはまさにV6のそれですが、驚いたのはそのエンジン音が想像より室内に入ってこないこと。
前述しましたが、いかにも"そういう作り"に見えるので、もっとノイズとともに入ってくるのかと思えば、かなり高級感のある感じです。
走りだして更に驚きました。
足回りや乗り心地も、想像以上にマイルドで、まさに高級SUVのそれです。
もっと軽くてぴょこぴょこした感じかと思えば、思いの外どっしりしています。
V6 3.6Lエンジンは、パワフル感こそありませんが、もたもたするとかそういう感じはありませんでした。
そして、タイヤのノイズに関してはほとんど室内に入ってきません。(試乗したSAHARAはオールテレーンタイヤ)
見た目からは想像のつかない乗り心地の良さに、イメージががらっと変わった瞬間でした。
オートマチックトランスミッションも、制御はわるくなく、アクセルを緩めればギアを上げてくれますし、輸入車に搭載のATにしてはなかなか良い第一印象でした。
運転してみて残念だったのは、足下が異様に狭いこと。
センタートンネルがやたら大きく、フットレストが無いどころか、左足の置き場に困るほど狭かったです。
さらにはブレーキとアクセルのペダルクリアランスが十分にとれておらず、安全のためか、前後にかなり大きくずらされています。
このため、アクセルペダルからいつもの調子でブレーキペダルに足を移そうとすると、ブレーキペダルの裏側に引っかかる程度。
これの不満が多かったのか、試乗車にはアクセルペダルをブレーキペダルと同じくらいまで手前にオフセットするオプションがつけられていました。
これがいけない。 もともとペダルクリアランスが狭いので、ブレーキを踏んだ時にアクセルペダルも踏み込んでしまい、非常に怖い思いをしました。
このオプションはだめだなぁ。
逆にいいなと思った装備はこれ。(写真は室内展示車で非動作中)
これ、液晶モニタなんですが、日本の保安基準を満たすために、フェンダーミラーの代わりに取り付けられているもの。
死角のモニターです。
例えばマツダのCX-5だと、インフォテイメントの液晶の横に、サイドビューカメラのボタンがあり、押すとカメラの映像が映し出されます。
ラングラーのはこの液晶。
なんと何も操作しなくても、ずっとここにドアの向こう側の映像が写っています。
おもしろいですね。
CX-5にのっていても、意識した時にボタンを押して確認することはあれど、平常時はわざわざボタンを押しておいたりはしません。
ここに液晶があると、側方確認のついでにちらっと確認できるので、とてもよかったです。
ちらっと写っているミラーは、ヒーター内臓で、ヒーターは室内のヒーター連動だそう。
外気温連動だけじゃないのは良いかもしれません。
トランスファーも試してみました。
ラングラーの四輪駆動システムは、センターデフなしの直結、パートタイム方式。
通常は後輪駆動の状態です。
2Hと4Hの位置間は走行中でも切り替えられます。
トランスファーレバーがあまりにも硬くて、レバーが折れてしまいそうで怖くてためらいましたが、営業さんに、大丈夫です、やっちゃってくださいと言われておもいっきり操作したら切り替わりました。
こんなもんだそうです。
硬さはともあれ、ランクルやパジェロでさえも電気仕掛けになってしまったトランスファーの切り替えが、いまだにレバーでガコガコできるのは、いいですね。
SPORTもSAHARAも、この部分にも差異なし。
ただしRUBICONになると、スウェイバーをアンロックするシステムや、リアデフロックを含む、ロックトラックと呼ばれる四輪駆動システムになります。
これが欲しかった...
そして気になるリアシート。
リアシートはこのように倒れます。
ヘッドレストはシートを倒せば勝手にこちら側に折れ曲がります。
ヒンジ部分に大きな溝ができるものの、マットを敷けば快適に車中泊ができそうです。
さすがに見た目通りのすわり心地で、あまりよろしくはありません。
車格にしては狭い方のような気がしますが、窮屈という感じはしませんでした。
ただし長時間は無理でしょうね。
そもそも、フェンダーがだいぶ張り出しているせいで、室内は思ったほど広くありません。
雨漏りについてはルーフが取り外せる構造上やはり避けられないようですが、ポタポタ落ちてくるほど雨漏りはしないそうです。
ただ、横殴りの雨や洗車、雪解けなどの時は、ボディーを伝って足元が濡れることがあるらしいので、要注意ですね。
しかし、ラングラーはもともと室内が水洗いできるようになっていて、排水口もあるらしく、普通の車ほど心配しなくてもよさそうです。
総合的に見ると、写真の見た目よりもずっと上質です。
乗ってみてガラッとイメージが変わりました。
完全なる遊び車だと思っていたので、次期車候補にまではならないだろうなと思っていましたが、余裕で日常使いできますし、十分な次期車候補です。
ガソリンエンジンであるゆえ、気温も気にせずスキーに行けますし、完璧じゃないですか。
ということで、一気に気になりまっくすな、Jeepさんでした。