
先日試乗したアバルト595の持つ蠍の毒に比べると147GTAの蛇の毒は随分マイルドに感じられるわけです。アバルトのボーイズレーサー的な感じは同じホットハッチと分類される147GTAとは世界観が随分と異なる。振り返ってみると、ツインスパークの155とバルケッタ、ミトとチンク(確か4気筒エンジンの)の組み合わせでそれぞれ同じ日に運転することが過去にありました。ツインスパークはとても軽く回るエンジンではあったけれど、バルケッタの方が実は好印象だったと記憶しています。フィアットエンジンの方がちょっと雑味のある回り方をするのだけれど、トルクの出方、パワー感が足回りのセッティングと相まって街中での運転がとても楽しかった。ミトと500も同じような印象を受けました。アルファの方がよりスムーズに回るという印象を持ちますが、楽しさではフィアットの方が上なのか?とずっと思っていました。それが147GTAのエンジンと出会ってそれまで4気筒エンジンしか経験したことがなかった自分に新たな世界を示してくれた訳です。これまでにこのブッソーネV6エンジンの魅力については何度もここで語っていますけれど、改めて思うに、やはりこれは歴史に残るV6のレシプロエンジンであるのではないかと。基本設計は1970年代。79年に発売されたアルファ・セイに初めて搭載されたこのV6エンジンはシングルカムからツインカム、排気量も2000ccから最終的には3200ccまで拡大され、GTAのそれは同時期に作られていたGTのV6エンジンと比べてもパワー感が明らかに異なる。アクセルを踏み込んだときの身を捩るようにしてパワーを絞り出していくその様はまるで生き物のようで、コンロッドの素材が柔らかいものを使っているのではないかと錯覚させるようなフィーリングがある。インテークマニホールドの輝きは見る者の心を奪い、現在の多くのクルマが樹脂製のカバーで覆われたエンジンを積むのとは対照的である。実際には新しいV6エンジンを開発するだけの余裕がアルファロメオになかっただけのことなのかもしれないけれど、このような味のあるエンジンが21世紀まで作られたことは神に感謝しなければならないかもしれない。初めて147GTAを試乗したとき、イモラナチュラルの内装、ノーマルの147よりもワイドとなったボディ、フロントとリアのちょっとした意匠の変更、そして何よりもその走りの楽しさ、フロントヘビーであることなど全く気にならないほどのインパクト。まさに一目惚れ。当時、プジョー106に乗ってわずか4年半しか経っていなかった。106も本当に運転が楽しかった。走りのバランスはGTAよりも優れていたと思う。でも、あれこそがまさに蛇の毒にやられた、という状態だったのだろう。まさかこんなに早く106を手放すことになるとはと自分自身が一番驚いていたように思う。そんなべた惚れな147GTAを手に入れて早10年の時が経とうとしている。現実なところであと何年乗れるのだろうかと思うところもある。昨年9月に試乗したマカンのインパクトも大きかった。全く新しいクルマの価値観を僕に示してくれた。この一年はSUVを中心に様々なクルマを試乗して、最終的に147GTAを乗り続けることに決めたわけだけれど、それでも気になるクルマはチェックしていこうと思っていて、今回の蠍印のこのクルマはSUVなんかやめとけよ!と言われているようだった。レヴァンテやこれから出ると言われているアルファロメオのSUVもかなり気になりますが、純粋に走りの楽しさを求めたら、アバルトのようなクルマになるのだろうな。蠍の毒は本当に強力だった。GTAの蛇の毒も霞んでしまう程だったから。そう考えると蠍の毒に対抗できる蛇は4Cしかいない。新車で手に入るクルマでは。価格は倍になってしまうけど。いや、家族で移動するクルマも必要になってくるから倍以上だな。後ろ見えないし、エキゾーストノートはちょっと品がないし(アバルトもそうだけど、、、)、街中ではエンジンの一番美味しいところを使って走ると法定速度内などすぐに越えてしまう(そういう意味ではアバルトは街中でも充分楽しめるというのはポイント高いよな)。でも、4Cかっこいいよね、やっぱり。まずカタチありき。そしてあの軽さ。ミッドシップレイアウトと軽さが生み出す運動性能の高さは、肥大化した最近のクルマの中ではとても魅力的に感じる。エンジンが既存のジュリエッタベースというものメンテナンスや燃費に於いてとても良いと思う。先週の休日、一日雨だったとき、息子とお絵描きを楽しんだのだけれど、自分が選んだのは4C。現行モデルの中では一番好きなクルマなのかもしれないなぁ。どうしたらうちの奥さんの首を縦に振らせることができるのだろうと思いつつも、俺は本当に4Cが欲しいのかと自問自答すると、これまたいろいろと雑念が生じてしまうのだな。その雑念についてはここでは省略。面倒臭いから(笑)。でも4Cは人生上がりのクルマとしてありかもしれない。そのくらい魅力的。うちの奥さんには今買えないなら退職金をつぎ込んででも欲しいから、と言ってある。果たしてそれまで作っているのか。
Posted at 2016/09/29 17:13:54 | |
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