最近の車は様々な走行制御システムを取り入れているので、もはやテストコースでの走行実験だけではソフトウェアの開発とデバッグができません。今回のブレーキ問題もこうした背景があるのは明らか。
特にプリウスの場合は、回生ブレーキを極力効かせて”充電命”の仕様になっています。驚くべきことにABSが作動中でも回生制御が動作しているんですよ! ところが、設計者がちょっと心配になったのか、低速で左右の車輪速に差が発生したときには、回生を1秒間停止するという、パッチ当てのような奇妙な制御を織り込んでしまった。制御は限界領域でこそ連続的でなければいけないという大原則を無視したのがまずかった。それでも、あらゆるシミュレーションパターンを作って、机上でテストしておけば事前に不具合が発見できたはずなのに、シミュレーションパターンを作り損ねてしまった。上記のような制御が入っていることを、シミュレーションパターンを作る人に教えていなかったのでしょう。結果として、まずい制御パターンがあることを見落としてしまった。複数のユニットを数社で分担して設計し、非常に多くの開発者がかかわっているので、その全容を把握し、確実な動作を保障できる人なんていないのです。シミュレーションパターンの作り損ねが、命にかかわる大問題になるとは、誰にも想像できなかったことでしょう。
シミュレーションソフトの代表格にMATLABというのがあり、多くの自動車メーカーが採用しているのですが、トヨタだけは圏内メーカーで独自開発している点も見逃せません。技術を囲い込みたいという思いがあるのでしょうが、業界標準からはずれたものを使った場合、思わぬ落とし穴があるものです。一番痛いのは、そのソフトウェアを使える人が限定され、知見の積み上げが不足しがちなこと。
トヨタお得意の統合制御VDIMも、結果としてできたものは、まだまだ制御機器同士の連携が不足していて、限界領域でスムーズな運転を邪魔するような制御が顔を出します。、もっとシミュレーションパターンを増やして、システムの完成度を高めないと、そのうちもっと危険なことが起こるはず。開発期間の短期化とコストダウンに重点をおいたものづくりから脱却しないと、Windowsみたいにバグだらけの商品を世にあふれさせることになりますよ。
今回の事件は、シェアと利益至上主義に陥ったトヨタへの警鐘だと思う。心を入れ替えて、安全第一の車作りに徹してくれることを願うばかりです。
Posted at 2010/02/04 01:01:33 | |
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