ROE(株主資本利益率)を重視する日産ゴーンCEOが、損失額が確定てきていない三菱自工の救済を短期間で踏み切ることができたのはなぜか? 最大1兆円にも膨らむであろう三菱自工の損失を取り戻すのはおそらく10年以上かかるはず。
通常自動車メーカーは長くても4~5年で投資回収する仕組みなので、今回の決断は例外中の例外である。 日産にとってこれほど大きな投資をしたことは過去に九州工場を設立したときくらい。 そのときの投資失敗によりルノー傘下となってしまった忘れられない過去があるので、日産の経営陣に今回の巨大な出資(2000億円超)が決断できるはずがないし、企画部署としては収支計算ができない状態では役員会議への提案資料の作成すらできない。 また短期的な収益を期待する大株主(ルノー)に説明するのは難しいであろう。
わずか2週間前にゴーンCEOは下記のように語っていました。
「全容解明待つ」(16/04/26)
せめて三菱自工の損失額が確定できてから出資判断をするのがまともな経営判断であるが、これだけ前倒しに動かざるをえなかったのはなぜか? おそらく三菱重工など三菱グループが救済に難色を示した時点で、経営破綻あるいは自主廃業が短期間に起こりうる切迫した状態であったことは容易に想像ができる。 三菱商事などの役員クラスからの救済要望もあったでしょうが、決断が性急すぎる印象はぬぐえない。三菱自工の株価がほぼゼロになったところで買収するのは韓国の現代グループかな?とひそかに想像していたのですが、それよりも早い段階で日産が火中の栗を拾うことになったのはなぜか?
考えられる唯一の神の手は経済産業省上級幹部(審議官クラス)の鶴の一声。かつてロシアの最大手の自動車メーカのアウトバズ社が破たん寸前に、ロシア政府要人からの要望によりルノー日産の傘下に組み込んだときと状況が似ている。
政府要人に依頼されたらゴーンといえども簡単にNOとはいえない。 政府に貸しをつくることでその後有形無形の政府の援助が期待できるから。 結果としてゴーン在任中にルノー日産グループが世界第4位からトップスリー入りとなる道筋が出来上がった。日産が弱い国内と東南アジアを埋め合わせてくれる可能性があるのでアライアンス相手としては都合がよかったとも考えられる。ただ、こういったことは後付けでついてくる理屈であり、投資効率から考えればペイしない。 縮小する国内市場に多すぎる自動車メーカーが経産省主導で整理されたと推測します。
2000億円もあったら新型エンジンを開発したり。トヨタに対抗してすべての車種にハイブリッドを設定した上、グローバルに新車を数車種展開できる 短期的な利益を追求するなら自社商品の強化が堅実なマーケティングのはず。 今回の巨額な投資により岡崎に勤務する数万人の雇用を守ることができたことはなによりだが、日産ルノーアライアンスとして成功するか否かはこれからの努力次第です。
個人的にはテスラを買収してくれた方が嬉しいのだが、自動車メーカーの買収としては最小限の投資で済んだのでお買い得だったといえましょう。経営的に心配なのは、日産本体はかなりリストラを進めてしまったので経営能力のある部長クラスの人材が足りないこと。 三菱自工へ送り出すのは課長クラスの女性だらけになってしまうかもしれませんが 女性ユーザーが多い軽自動車メインならそれでよいのかもしれません。
Posted at 2016/05/12 16:14:49 | |
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