
データシステムのHIT7700という地デジチューナーは、性能的には何の不満もなく優れた製品だと思うのですが、カタログスペック上唯一PANAのTU-DTX600に負けている機能がありました。それが系列局サーチで、関東圏から外へ出るような長距離の移動をしない限り必要のない機能ですが、競争社会なので負けているのは良くないと判断したのでしょう。ついに系列局サーチ機能を無料でインストールしてくれるキャンペーンが開始されました。
【HIT7700バーションアップキャンペーン】
本体を外して郵送しなくてはいけないのが面倒ですね。バージョンアップしても系列局サーチを行うような長距離の移動はしないだろうし、そもそも手動で選局すればよいので、バージョンアップはしない予定ですが、もしされた方がいらっしゃいましたら、ぜひ便利度合いをレビューしてください!
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HIT7700を装着してからまもなく1ヶ月。装着直後のパーツレビューでは書ききれていないことを、ここでまとめておきます(長文です!)。
【画質】
コンポジット出力を車載TVに接続しているため、地デジ本来の解像度は実感できていません。この製品はせっかくD端子出力があるので、それを接続できるモニターを別に用意することをおすすめします。
ただし、コンポジット出力でもアナログTVやワンセグよりも圧倒的に綺麗だし、画面上の小さなテキスト文字もちゃんと読めます。 輪郭の部分をよく観察するとリンギングや色ずれがあるので、デジタル信号⇒コンポジット信号の変換におけるチューニングが少し甘いと思われます。
【受信感度】
東京・神奈川を走行している限り、ほとんどフルセグ受信可能で、ワンセグに落ちることはめったにありません。ワンセグに落ちるのは山間部とかトンネルの中で、そのときにはワンセグでも受信不能に陥るので、結果としてワンセグの荒れた画像を見ることはごくまれです。フロントエンドモジュールがシャープ製、アンテナが専門メーカーの原田工業ということですが、良い部品を使えばよい商品ができる
ということを証明してくれています。4つのチューナーを切り替えて使っているのではなく、位相を
あわせながら信号を合成するという高度な処理を行っているので、受信データの欠落がほとんど
発生しません。復調でこの高度な処理を行っているのは、まだ限られたメーカーしかないはず。
自社技術にこだわらず、良い部品、良い技術を集約したら、大手家電メーカーの製品より
良いものができてしまった・・・という商品です。
【音質】
クリアです。デジタルですから当たり前ですがノイズ感はまったくありません。放送曲の送信する音声をそのまま受信し再生しています。これは通常は誉め言葉になるのかもしれませんが、実はそうではありません。聞き易く、心地よい音にするためのチューニングは必須なのですが、この製品はそういったことをまったくやった様子がありません。
具体的には再生音域が中高音に偏っているので、もう少し中低域を充実させたい。400Hz~1kHzあたりを、もう少し持ち上げるとバランスが取れると思います。そのくせ、50Hz以下の超低域をストレートに再生するので、音にならない地鳴りのような超低音が耳を圧迫するときがあります。特に生放送でマイクが風切り音を拾ったときに怖いくらいの音圧を感じます。これはスカイラインのBOSEシステムの超低音の再生能力が通常のカーオーディオの2倍以上あることも関連しています。TVの音声に超低音は不要なのでハイパスフィルターで減衰させたほうが良いと思います。オーディオは再生帯域が広ければ良いって訳ではないのです。適切なエンベロープ特性を設定できるオーディオの技術者は、現役世代にはいないのかもしれませんね。
【機能】
・中継局サーチ
通常はその機能が働いていることをまったく意識することはありません。
切り替わったことを、画面のどこかで表示してくれたら面白いと思います。
すべての中継局からの受信ができなくなったときに、90秒後に”中継局サーチ中”というつまらない
画面が出てなんだか残念な気持ちになります。白黒のテキスト画面にしたのは、コストの問題
なのでしょうがもう少しおしゃれな画面設計をできないものでしょうか?
・TV番組表(ブログ画像)
小さいモニターで利用することを考えたのでしょう。2chずつしか表示しないので、
家庭用のように、一覧することができません。また番組表のCH切り替えに時間がかかるので
結果として、番組表を使う方がかえって面倒です。また画面デザインが貧相で寂しい。
番組表を使って録画予約するようなことがない車用の地デジチューナには不要な機能
かもしれません。
・受信感度表示
おもしろいけど、だから何? というようなオマケ機能。
・リモコン
付属の赤外線リモコンはボタン配置などがいまいち。小さいボタンがならんでいて見ずに
操作するのが極めて難しい。操作感は節度がなくてペニャペニャしてます。
赤外線受光部がでかくて嫌だな・・・と感じていたのですが、バージョンUPと同時に小型化。
別売り2000円だそうです。
・ステアリングリモコン対応(オプション)
とにかく便利です。これが可能なことがこの商品の最大の特徴でしょう。
・AVセレクター機能
外部入力端子をもっているので、iPODの動画とか再生できます。
・緊急警報放送(EWS)対応
この機能が運転中に起動しないことを祈るばかりです。
【欠点】
・データ放送に対応していない。ただし、家庭のTVでもほとんどDボタンは押さないし
そもそも走行中にデータ放送を見るのは危険なので、非対応でOKと思います。
・チャンネルスキャンがやや遅い。
・メニュー画面が貧相。またメニューの操作レスポンスなど、
全般的に動作がとろいのはマイコンのコストをケチったからでしょう。
【その他】
・機器の小型化とのトレードオフですが、電源コンデンサーの容量が小さいようです。
ACC電源の瞬断に弱く、ACCがドロップすると本体が再起動します。
自動車メーカーの要求する1秒は不要ですが、せめて0.5秒くらいの瞬断には
絶えられるような設計にすべきだと思います。
(通常の利用では問題ないのですが、アイドルストップからクランキングする毎に
リセットがかかるので、ちょっと残念)
・ファンレス設計なので、外形が非常にコンパクトで消費電力も小さいです。
カーペットの下とか風通しを気にせず配置できるのが良いですね。
色々書かせていただきましたが、全般的には満足できる商品で、コストパフォーマンスが高いと思います。特にステアリングSWでチャンネルを切り替えることができるので、純正品のように使い勝手が良いです。マイナーなメーカーの割りに国内大手家電メーカーの製品を凌駕するような出来となっていることに感心しました。