
自動車メーカーにとって外部調達部品は品質とコストを満足してくれればサプライヤーはどこでもよい。 ただし、それが1社独占状態になると納入コストを支配されてしまうことになるので、2社以上の調達先を確保するのが常套手段であり、複数購買こそが自動車メーカーが食物連鎖の頂点たる所以である。
電気自動車用のバッテリーで韓国 LG化学がほとんどの自動車メーカーと購買契約を結び、1社独占供給メーカーとしてなり上がってきたのは、自動車業界にとって大変都合が悪い状態であるといえよう。
リチウムイオンバッテリーは正極、負極、セパレータ、電解液という4つの主要部材の組み合わせで構成され、それぞれにどんな材料を使うべきかは大体わかっている。 従ってLGの電池だけが特別な材料を使って特別に優秀な電池を作っているのではない。 現物を手に入れて解析すれば同じものを作ることは簡単。 特許についてもLG化学だけが出しているわけではなく、関連部材メーカーが権利を所有している場合が多いので、特許によってLGの電池が守られているというわけでもない。 また電池を構成する部材は日本の材料メーカーがシェアトップなのでLG化学だけが作れるものでもない。
3元系正極材(NMC)とセラミックコーティングされたセパレータがLG化学の電池の性能を決定づけているが、それに関する特許紛争が米国セルガード(のちに旭化成が買収)、韓国SKセパレータと繰り広げられ、和解によって解決している。多額の金銭でLG化学が早期決着をはかったのでしょう。
【素朴な疑問】
なぜLG化学が独占的地位を築けたのか?
調べていくと韓国メーカー特有の勝利の方程式が透けてみえます。
①圧倒的に安い納入価格で大量受注を確保し大量生産で利益を確保する。
(利益率は1%以下)
②納入先の多角化で安定経営基盤を確立
クルマ以外に、船舶、宇宙航空、ホビーなどあらゆる部門へ供給先を開拓
③徹底的な品質管理で利益を確保
不具合発生率が0.1%以下
④性能向上の速さ
誰にもまねができない速さで、最先端の技術、材料を活用した製品を展開
基礎研究力が強いわけではないが特許を買い取る速さでカバーしている。
自社技術にこだわらないことが、競争力の源泉となっている
⑤工場設置に関するコストコントロール
納入先に近い場所に工場を設置、建設費用はその国の補助金を活用。
⑥優遇税制の活用
戦略的技術分野を政府が支援する税制制度の存在
ひとつひとつの項目を取り上げれば、”そんなの当たり前”とも受け取れるが、これらをリソースを集中投下して同時かつ一挙に行うことができるのが韓国メーカーの強みなのでしょう。一言でいうなら社運をかけたトップダウン経営であり役員会や株主の合意が必要な日本では不可能なふるまいです。
また、自社技術で競争優位を獲得しようと努力する日本の会社とはまったく異なるアプローチであることがわかります。いい技術があるなら買ってくればよい・・・そんなドライな考えを誇り高い日本人エンジニアが受け入れることは難しいかもしれませんね。
自動車メーカの立場になれば、いくら性能が良くても1社独占では、将来納入コストを部品メーカが支配してしまうことになるので、なんとか別のメーカーにも頑張ってもらいたいところだが、パナソニックでも勝つことは難しいかもしれません。
半導体、液晶パネル、太陽光発電パネル、、、日本が韓国や台湾に負け続けるのをなんとか阻止して欲しいものです。
納入先が限定され数量が出ないAESCが生き残るにはバッテリーセルの自社生産をやめて、LG化学からセルを購入するしか道はない。 LG化学はバッテリーセルの生産に特化したような会社なので、システムアセンブリーメーカーは必要なのです。
ウルトラCとしてAESCのバッテリー製造工場(座間、テネシー州)をLG化学に買ってもらうという手がありますが、トップ同士と各国政府の合意が必要ですね。
政府がすぐに着手すべきことは、韓国からの自動車部品関税を撤廃すること。TPPの締結を持っている時間的猶予はないので、特定部品に関する2国間のFTA(自由貿易協定)を締結すべきと考えます。
Posted at 2016/10/17 15:44:51 | |
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