
先週に引き続き、試乗車をお借りしました。毎度のことながら、寛大なディーラーさん、営業さんに感謝。今回は991カレラS。991型の911は
昨年借りたカレラ4カブに続いて2回目です。
まず前提として、私は歴代の911経験と言えば993ターボ(MT)、997カレラ2(前期Tip)位でして、しかも上記2台はほとんどチョイ乗り程度であったため、997以前の911における所謂911の味がどうのという経験が全然ありません。従って以下のインプレは「911としてどうか」という話よりは「スポーツカーとして乗ってどうか」という話であるとご理解下さい。
今回借りたカレラSは昨年2月に試乗車に下ろされた個体で、マイレージは16,000kmほどを刻んでいる結構使い込まれたクルマです。おそらく相当な数の方がこのクルマに試乗されたことがあると思います。
走り関連の仕様としては、RHD, PDK, PASMスポーツシャシー、20インチカレラSホイールという仕様です。電子制御アンチロールバー=PDCCは装備されておらず、デフはPDK仕様には電子制御LSDがPTV Plusというブレーキングによるトルクベクタリング機能とセットでカレラSに標準装備です。また、この個体の特徴としてパワーキットという純正オプションでエンジンパワーを上げるキットが装着されています。
このキットは、ピストン、カムシャフト、可変吸気システム、スポーツエギゾーストなどによるパワーアップの他、スポーツクロノパッケージも装備され、さらにフロントのスカート形状が微妙に変更され、リアの可変ウイングの角度設定が変更されるというキットです。これによってノーマルの400psから430psにパワーが引き上げられています。
こういった仕様なので、相当複雑な制御がされていて、シャシー関係だけでもPASMによる可変ダンパー、スポーツクロノによるエンジンマウント硬度の変化、PTVによるヨー制御とLSDによるトラクション・・・とまぁ、走っていておよそ何がどういう効果なのかが分かりにくいです。ここまで色々と制御をされると素人にとっては
「凄い料理で美味しいのは分かるけど、食材が何でどんな調理なのかさっぱり分からない・・・」
ということになってしまいますね。
さて991カレラS。以前試乗したカレラ4カブと、ここまで別物のクルマとは正直驚きでした。カレラ4カブは高いスポーツ性を持ちながらもGT性能が非常に高く、200kmでのクルーズですら緊張感なく快適にこなせるようなクルマでしたが、このカレラSは全く違いました。。。
まずエンジンですが、3.8リッターから430psですから、GTSとまではいかないまでも結構なハイチューンですね。それでも2.7はもちろん3.4リッターと比べても明らかに太いトルクでゆとりがあります。そして圧巻は高回転域。4000rpmを境に2次曲線的にパワーを増し、といってもオーバーシュート感はなく先を読めるパワー感で、レッドラインに至るまでにトルク落ちを感じさせることなく非常に気持ち良く回ります。これぞ高回転型NAの真骨頂。もちろんこの時のレスポンスはターボでは望むべくもないレスポンスで、スロットルの1mm・・・というより「気持ち」に正確に反応します。そして音がまた抜群です。(例によって爆音ですが・・・)絶対的なパワーもM3のS65と10ps差とは思えないほどあり、250kmまでは加速が頭打つ感覚もなく速度を乗せていきます。
タダのカレラSのエンジンが(タダの・・・じゃありませんが)こんなだなんて、GT3ってどんなエンジンなのでしょうか。。。
そしてシャシー。PASMスポーツシャシーはボクスターのスポーツシャシーと比べてもかなり固めで、ガタピシと音を立てるばかりか、ギャップでは進路を乱され、ストロークが短いので超高速ではギャップを超えると離陸します。(汗) ガタピシ具合のイメージ的には20年以上前くらいの脚をイジったAE86やEGシビック、NAロドスタと同じような。ちなみに一緒に峠を走っていた古くからの友人は「なんか馴染める」と言っていました。w
従ってカレラ4のように超高速を安定して快適に走ることは出来ず、結構緊張感を強いられます。これは近年の911はGT性能を磨いてきたとばかり思っていた私には結構な驚きです。オプションとは言えディーラーから新車で買える吊しのクルマ。何も考えず20mm低くなるというだけでこの仕様を選ぶ客もいるだろうに、こんな男前の仕様にしちゃってクレームが来ないんでしょうか。
そんなわけで街中や高速移動は、得意じゃないどころかはっきり不快です。ボクスターのスポーツシャシーのように1日に600kmでも700kmでも走れる、というのとは全然違います。
ということは・・・。そう、ワインディングへ行くとフォーカスがピシっと合ってきます。エンジンのレスポンス、リニアなパワー、ボディ剛性の高さにエンジンマウントの硬さまで加わって凄く精度が高い走りです。直線からブレーキング、絶妙なABSの制御を感じながら鋭くターンイン。ここでボクスター/ケイマンならヌルヌルとリアが出てくるところですが、911は踏ん張ります。ここでパーシャルにするとアンダー傾向になってしまうので、もう少しスロットルを入れるとLSDが効いてトラクションがかかりながら前後とも軽くスライド、「もしかしてオレって上手い!?」と勘違い出来る非常~に気持ち良い旋回が出来、もう抜群に楽しい!ただし、この時に不意にギャップや落ち葉、センターラインなどを踏むとスパッとリアが流れ、ステア半回転くらいのカウンターを瞬間的に当てなければならないくらい挙動が速いです。
タイヤは先週のボクスターGTSと同じピレリのPゼロ20インチですが、よりグリップが高いイメージで、実際に1.3Gほど出ています。
また、おそらく固めの脚が理由ですがステアリングへのフィードバックもノーマルより豊富で、油圧式や重ステレベルとはいかないまでも、Gのかかりに応じた重さの変化も含めて良いと思います。
素晴らしい回り方をするエンジンとパワー、ガタピシだけどスポーツ走行でフォーカスが合うサスペンションと限界の高さ。どこかヴァーチャル感が伴うPDK仕様のノーマル911とは明らかに異なる走行感覚、「走らせている感」の強さ。なるほど、これがスポーツカーか。911なのか。
・・・と、簡単には納得いかないのはつまり、街中や高速との両立が出来ていない点に尽きます。簡単に言ってしまえばバリバリに演出の効いた排気音も含め、なんだか街のチューニング屋で作ったクルマみたいなのです。
911の本分が通勤にも使えるようなヴァーサティリティと高いスポーツ性の両立にあるとするならば、結局バランスを崩してスポーツ性を上げた仕様の完成度は評価すべきなのか?そう考えるとノーマル脚のカレラ4の方がより911らしいような気がするのです。
911にお乗りの方はどう思われるのか、興味ありますね。
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Porsche | 日記
Posted at
2015/03/01 14:45:43