
KTMのSuper Adventureがモデルチェンジされたので試乗させてもらいました。
1390 Super Adventure S EVOは、一見すると1290のマイナーチェンジ版にも見えるバイクですが、エンジンだけでなく実はフレームやサスペンションにも改良が加えられており、全体の印象よりは大きなモデルチェンジです。エンジンは1301ccから1350ccへと49ccUP、可変バルタイ・リフト機構が付いてスペックは 160ps/138Nmから173ps/145Nmへとパワーアップ。スペック上は発生回転域が少し上になったようです。
サスペンションは最新世代のセミアクティブ電子制御サスで、ストロークが前後とも20mm伸ばされて200mm→220mmになりました。フレームはパッと見では同じにしか見えないのですが、補強が入ったらしく17%の剛性UPが図られています。
そして、このモデルの何よりのトピックはAMT = Automated Manual Transmissionを搭載したことでしょう。このAMTはヤマハやBMW、ホンダなどのシステムと異なり、クラッチは電子制御ではなく完全な機械式。単純な自動遠心クラッチです。なのでシフト時もクラッチは電子的に制御されないので、シフト時は単に点火(と多分燃料)カットでのシフトです。
おそらく最も単純(つまり軽量)なシステムなのではないかな、と。オペレーションは、まずクラッチレバーがありません。しかし電気的なスイッチとなるペダルと、ハンドルバーの左スイッチにパドルがあります。その他、スロットルをOFFから反対側へ動かすとシフトダウンすることも可能です。この辺りは各社ごとに思想や設計が異なるのが面白いですね。
今回は長野のメルヘン街道(R299)〜ビーナスラインなど500-600kmくらい走らせたのですが、街中から高速はもちろん、かなり荒れた低中速ワインディング(メルヘン街道)から綺麗な中高速ワインディング、更にはゲリラ豪雨wと、相当色々な状況を味わうことになってしまいましたが、おかげでこのバイクのことがかなり良く分かりました。まず、全体の印象としては、全方位で進化した完成度の高いバイクというものでした。本当に全方位に進化しているので、相当凄い話です。AMTの件は後で述べるとして、まずはシャシーです。どのインプレを見てもほぼ触れられていないのですが、フレーム剛性が結構上がっています。これによって、高速道路でのハイスピードコーナリングでは捩れが少なくシャープなハンドリングに変わっており、シンプルに言えばラインを狙いやすく、さらにキープしやすくなっています。また、高速に限らずコーナーでギャップを拾うと進路が乱されていたところが、何事もなかったかのように安定して走れます。フレーム剛性の向上は切り返しなどでの車体ロール方向への追従性にも貢献してます。これらには新しくなったサスも大きく貢献していて、ストロークが延ばされた分、初期の動きを良くしたようで、細かいギャップの吸収性が上がり、乗り心地が随分良くなってもいます。かといって無駄にストロークもしないので、ダンピングの設定も良いのだと思います。このサスの動きの良さとフレーム剛性の向上で、快適性も上がっているしスポーツ性も上がっているのです。新型で何が一番驚いたって、このシャシーでした。快適でありながら、攻めれるシャシー。流石KTMという感じ。実際のところ、本当に速いです。あれほど荒れたメルヘン街道をギャップを全く気にすることなく寝かして開けて行けるバイクなんて、そうそうありません。そしてこうしたシャシーのキャパの大きさがのんびり走った時の快適性にも効いてます。NORMALモードでは実に乗り心地が良いセッティングですが、SPORTでも乗り心地はほぼそのままにピッチングが抑えられる印象です。ただ、実は今回不勉強でサスセッティングをどうやって変えたら良いか分からず(メニュー構成が1290と全く違う)、プリロードを変更してのハンドリングの変化を楽しめませんでした。リア車高を上げたかったのですが、最後までAUTOのまま。まぁスポーティに走っている時はかなり車高が上がっていて停まったら足が着かなくて焦ったりしたので、それなりのセッティングで走れていたようにも思いますが・・・。
余談ですがOEのタイヤが実に良かったです。1290のミタスは本当にダメなタイヤで納車後すぐに変えたくらいだったのですが、今回のダンロップはドライグリップも高いし、ケース剛性もしなやかさがあって接地感が高く、このバイクに合っていました。ゲリラ豪雨でも不安なく走れましたし、ハンドリングはMichelin Road6の方が少しケース剛性があってシャープですが、このタイヤも良いです。今まで履いたことのあるON/OFF系タイヤで一番良かった。多分GSなどに履いても良いのではないでしょうか。
Dunlop TRAILMAX Meridian。ケース剛性が適度に低くプロファイルが穏やかなので、Super ADVのバンク角でも端まで使うけど安心感は高い。Road 6は端まで使わない。良いタイヤだけど、どうやら日本ではアフターマーケット品としては販売されていない模様。
更なる余談としてはブレーキパッドが変更になったらしく、これまた1290での不満だった点が改良されていて、実際に効き自体が上がっていました。もちろんメタリカの制動力には及びませんが。
エンジンは、パワーが上がったよりもトルクが増えて中間加速が良くなった印象です。とは言え1290も相当速いので、大きな違いとまではいかない感じ。燃費は大差ないようなので、航続距離も同じレベルだと思います。それにしても本当にこのLC8というエンジンは素晴らしいトルクとパワーを両立していて、実に楽しいエンジンです。そしてAMTですが、この設計思想こそKTMという感じでした。何しろシフト時はクラッチを切らないのでダイレクト感が非常に強いです。シフトフォークをアクチュエーターで動かすのでペダルは機械的にトランスミッションには繋がっておらず、従来のクイックシフターとは当然感触は違いますが。スロットルが低開度の時は点火カットを長めにしたり快適性に配慮された制御なので、街中では多少のシフトショックこそあるものの思った以上に快適なシフトです。また、クラッチが遠心クラッチなわけですが、STREETモードでゆっくり走っている時は1速だけではなく2速や3速でも半クラッチを使ってシフトを減らすような制御だったりもします。機械的な遠心クラッチでしかないので、どれくらいの回転で繋がるかが一定なので分かりやすく、最初に感覚を掴めばUターンなども普通に出来ます。ワインディングでSPORTモードに切り替えると、非常にダイレクトでスポーティ。SPORTモードで飛ばしている時はAUTOモードでもシフトダウンでリアがキュッと一瞬スキッドするくらいダイレクトです。もっともこういう時はMTモードにして自分で操作した方が楽しめるし、リズム良く走れます。AUTOだと意図しないシフトがどうしても起こりますからね。全体としてはロングツーリングでの疲労を軽減出来、スポーティさ、ダイレクトさもあるので悪く無いシステムですね。
あらためて色々振り返りつつ考察してみると、
⚫︎クラッチ操作が無い方が圧倒的に楽
⚫︎AUTOでシフトされるのは意図しない動きなので嫌。自分でシフトしてリズムを作りたい
この2点になるように思いました。停止時にクラッチを操作しなくて良いこと、Pレンジがあることは(BMWのようにブレーキホールドが無いので)非常に便利で、もっと細かいことを言えば信号待ちで左足を着いてNで停止中に、ギアを入れるために右足に着き直して1速に入れることなく、そのまま発進出来るのも楽です。(Super ADVはシート高がそれなりにあるので、路面の傾斜次第では右足を着くのが怖いor無理)遠心クラッチなので1速のまま待っても良いはずですが、Pに入れれば動かないので坂でもブレーキから手足を離せます。こんな感じで考えれば考えるほどクラッチ操作が無い方が地味に楽なシーンはたくさんあります。半クラッチ自体を自分で操作したいケースも無くは無いですが、それは1日の中でもあるか無いかくらいの頻度でしかないです。
一方、自動変速はもちろん楽なシーンもあるけど、意図しない動作になることが気になるケースもあるので、MANUALモードの方が気持ちに合います。というかクラッチ操作さえ無ければシフト自体は積極的にマニュアルの方が良い。(これってホンダのe-クラッチという仕組みですね)
つまり、AMTと一言で言ってしまっていますが、クラッチの自動化とシフトの自動化は分けて考えるべきということですね。そうなると、私はクラッチの自動化には大賛成だけどシフトの自動化は要らない派、という感じです。本当の意味での機械との対話がしたいというよりは、自分の意図から外れる制御が嫌で、意図した制御なら楽な方が良い、という。だからクイックシフターはレースで使ってもwelcomeだった。
先日のGRヤリスのMT/ATでも分かりましたが、クルマについても基本的に同じで、ATはどうしても意図せず高いギアで低回転をキープしたがるので、パッと加速したい時にキックダウンしないといけないとか、やっぱりあるわけです。走行中はある程度のトルクバンドはキープしていたい。ましてやGRヤリスは結構な大きさのターボでしたから、街中ではアンチラグなんて効かないのでターボラグもある。それなのにアイドリングのすぐ上くらいの回転で走行しているのは小さなストレスを生むことがちょいちょいある。
話を戻すと、KTM 1390 Super Adventure S EVO はバイク全体としては非常に完成度の上がったモデルチェンジでした。それじゃ買い替えか・・・!? というとそこは悩ましい。1390 Super ADVの完成度自体はこれまで書いた通りで文句無いですし、現実的な話、今の1290のサイドケースやトップケース、ヒーテッドシートなども流用出来そうなのでお得感もあるのですが、今は快適性やタンデム適性、荒れたワインディングでの走破性を多少犠牲にしてもフロント17インチ+ショートホイールベースのハンドリングが欲しいのです。なので来年リリースされるというSuper Duke GT待ちかな・・・。
こうして並べると結構違う。1390の方がタンク周りのボリュームがあって大きく感じるし、ハンドルバーが30mmワイド。ステップの幅も広がっているらしく、跨った感じも1290の方がコンパクトに感じる。
Posted at 2026/08/09 17:50:50 | |
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KTM | 日記