
久しぶりにバイクの試乗というものをしてきました。前回のブログで挙げたうちの1台、トライアンフのストリートトリプルRSと、KTMの790DUKE。前回ブログへ挙げた1台は新型の890DUKE Rというモデルですが、これは790DUKEのエボリューションモデルのようなものなので、ベースモデルがどうなのか乗ってみたのです。
この2台は俗にストリートファイター系と言われるカテゴリーに属するバイクなのですが、バイクの基本構成が全く違います。トライアンフの方は、スーパースポーツのバイクからカウルを取り去りアップハンドルを組んだだけのようなモデルで、KTMの方は最初からストリート向けの設計で、同じファミリーでアドベンチャーモデルなどもリリースされています。
まず最初に乗ったストリート・トリプルは、事前に期待していた通りのバイクでした。スーパースポーツの車体に600クラスより一回り上のトルクを持つ気持ち良いエンジン。バイクは各部の細かいところまで質感が高いですね。RSはサイクルパーツもオーリンズやブレンボなど良いものが使われてます。メーターのTFT自体は悪くないのですが、タコメーターのデザインが最悪ですね。どこまで回ってるのか回せるのか、とにかく分かりにくい。跨るとシート高が高めで、サスも硬め。バーハンドルですが軽く前傾姿勢になります。とは言えもちろん全くキツくはありません。上手く荷重しやすいくらいの前傾。スタートするとまずエンジンの扱いやすさと気持ち良い音が嬉しい。それから何しろ車体がスーパースポーツ(DAYTONA675)と基本的に同じなので、乗り味がスーパースポーツ風。重量は軽く、車体もサスもカチっとしていて、どこかで乗った風な・・・と思ったらウチにいた848EVOでしたw。あれもミドルクラスのスーパースポーツですから、ポジションやエンジンの違いはあれど、乗り味の方向性に似たものがあるのは当然ですね。
ギアボックスは精度感が高く、シフトがカチっと決まります。まぁ空冷BMWのミッションが特別精度感が悪いんですけどね。大味というか旧車風というか、シフトストロークは長く、ギア一つ一つがデカくて遊びが大きそうなタッチなんです。ストリート・トリプルはBMWと比べなくても良いギアボックスです。ただしシフターはまだ熟成不足ですね。上手くシフト出来るシチュエーションの方が少なく、だめな時はミッションが「痛っ」って言ってそうな感じが乗ってて辛いw。なので試乗のほとんどでクラッチを使っていました。
試乗コースはある程度自由にさせてくれたので、ちょっと街中を走ってから首都高に上がったのですが、まぁエンジンの気持ち良いこと。音が最高。ノーマルマフラーとは思えない気持ち良い吠え方で、乗ってて気分が上がります。中間トルクがあり追い越し加速が気持ち良いです。ただハイパワーなリッタークラスに乗り慣れてれば不足を感じるでしょうね。あっという間に180を超えますから全然遅くはありませんし私には充分ですが。コーナリングは適当に乗っても気持ち良く曲がれますが、しっかり荷重移動するとさらに気持ち良く曲がり、この辺もスーパースポーツです。そういう車体なので、一番うれしいのは人馬一体感があること。超高速領域のコーナリングも試しましたが、車体剛性も充分ありバネレートの選択も適切、ダンパーとリア車高さえイジればもっと良いバイクになると思いました。見た目の質感も高く、スーパースポーツだけどポジションはラクで人馬一体感もある。スポーツライディングが好きな方にはお勧め出来るバイクですね。
とは言え私にとっては良い意味でも悪い意味でも意外性はなかったですね。こうだろうな、という想像通りのバイクでした。そしてKTMには本当に驚いたのです。
KTMは前回書いた890DUKE Rというのが候補で、これはまだリリースされていないので790DUKEというベースモデルの試乗です。正直全く期待していませんでした。KTMはオフロードをメインとしたメーカーで、スーパースポーツも作ってはいますが基本的なエンジンは様々な排気量の単気筒と1300Vツインのみでした。それがミドルクラスへパラレルツインエンジンを新開発し、フレームもスチールのダブルバックボーン形式を新たに作って完全なニューモデルとしてリリースしたのが790DUKEです。乾燥重量169kg、105psというスペックでポジションはモタードとネイキッドの中間くらい。これってもう安いNUDAじゃん、てバイク。
とは言え安いだけにサイクルパーツは特にショボく、サスはフロントは調整不可、リアのプリロードのみ調整可能というシンプルなもので、ブレーキはマスターもキャリパーもスペインのJ-Juanというブランド。だから廉価版的な印象が否めません。フレームはトレリスにすると幅が広がってしまうため、あえてダイアモンド(ダブルバックボーン)とのことですが、あまり太くないメインチューブが2本だけなので剛性も低そう。スタイリングはキスカデザインによるもので、他のDUKEと見分けがつかないwいかにもDUKE。DUKE自体相当変わったデザインだと思いますが、それにしたってあまりカッコ良くないw。ロボットアニメ風?特にヘッドライトはもう少しなんとかならないんだろうか。それにミドルクラスという日本では人気のないクラスなので存在自体が相当地味で、世の中的にあんまり注目されていないバイクだと思います・・・多分。私も期待値はかなり低め。サイクルパーツがショボいので上質な乗り味は期待出来ないし、モタード的なポジションでは一体感が得られにくいので。
見た感じでは、とにかくエンジンが小さい。ほんとにパラツイン?800もあるの?というくらい小さい。なのでエンジン周辺が非常に凝縮感のあるコンパクトさで、この辺もオフロード車をイメージさせます。跨ると相当スリムです。シート高はそれなりにありますがスリムなので足着きも良し。ハンドルバーは近く幅が広い。バーが近いので上体は起き、やはりオフ車に近いポジションといえるでしょう。試乗をスタートして数10mで「軽っ!」「トルクとレスポンス凄っ!」そして数100mも走れば「うわ〜、これは楽しい!!」とすぐに好印象。もうとにかくヒラヒラ感があって軽快そのもの。250ccクラス・・・とは言い過ぎでしょうが、それにしても軽い。そしてトルクがあってレスポンスが凄いので、ちょっとした加速がまぁ楽しい楽しい。75°クランクを採用しているのでパラツインながらパルス感があるのですが、バランサーシャフトをクランクとヘッドで2つも設けているので振動がとても少なくエンジン自体はとても滑らか。なのでゆっくり走っても案外快適でした。
同じように第三京浜から首都高へ入ったのですが、ロール方向はヒラッヒラだし、とても105psとは思えないほどトルクとピックアップも凄いから自由自在感が凄い。体感的にはストリート・トリプルよりも速い。それから結構フロントの接地感が高いのですが、これはポジション的にフロントホイールが近いせいもあるでしょうね。ただしやっぱりサスはダメで動きがシブく、ギャップの吸収性が低い。せっかくストロークが長いのに活かせていない感じ。中高速コーナリングは軽いことと接地感が高いおかげもありあっけないくらい速いです。フレーム剛性はもう少し欲しいですが、リーンも軽く旋回性も高いです。そして意外だったのは一体感があるんですね。ヒラヒラと動けてトルクがありレスポンスも鋭いと、もう全てが本当に思った通りに動く。さすがに超高速域でのトルクやパワーはリッタークラスには敵いませんが、これだけ自由自在で楽しければスペックなんてどうだって良い。もう目からウロコ。全然理屈とか要らない。あぁ、バイクってこんなにも楽しい乗り物だったんだな、ってあらためて感動してしまう、そんなレベル。
シャシダイのデータを見ると790DUKEはパワーは出ていないがトルクは圧倒。乗った印象は正にこんな感じ
ここまで私が衝撃を受けたのは私の今までのバイク歴が・・・というのも大いにあると思います。峠小僧として高校時代を過ごしw、オフ車(DT200R)も何年か乗っていましたが大人になってからはレース用マシンを除けばCBR1100XXやR1200GSなど重いバイクばかり。だから軽量クラスに乗っている人はそこまで790DUKEに感動しないかもしれませんね。でもこれは食わず嫌いをせずに是非一度乗ってみて欲しいバイクです。
そして890DUKE Rではサイクルパーツが全てアップグレードされ、サスは前後ともWPのAPEXとなりフルアジャスタブル。トリプルツリーは790DUKEのスチールからアルミ製になり、ブレーキはマスター、キャリパーともブレンボに。エンジンは排気量が900ccとなって15ps以上も上がって121ps、さらに3.5kgも軽量化されます。デザインは未だにどうも気に入らないけど、今はこれに気持ちがすっかり傾いています。
そういえば、欲しいバイクの条件に「ゆっくり走っても楽しいこと」というのがありましたが、撤回します。試乗含めて走り回って再認識したのは、「自分はバイクでゆっくり走ること自体が楽しくない」ということでした。(爆) なのでゆっくり走るのが楽しくなくても良いです。
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バイク | 日記
Posted at
2020/02/24 21:43:58