バイクにアドベンチャーバイクというカテゴリーがあります。ここ15年くらい人気のカテゴリーで、ざっくり言えばパリ・ダカールラリーに端を発するオフロードも走れる大きなツアラーのことで、私が所有しているBMW R1200GSが典型的なバイクの1台です。元々は大型のオフロードバイク、一般的にはビッグ・オフローダーと言われていたカテゴリーが、長距離の旅に適するように分化・進化していった形です。世界的な火付け役となったのは2004年(だったらしい)から放送されていたBBC制作のドキュメンタリー番組シリーズで、ユアン・マクレガーとチャーリー・ブアマンによる世界一周ツーリング「ロングウェイ・ラウンド」です。
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イギリスを出発し、ユーラシア大陸をヨーロッパからロシアへ、カザフスタン、モンゴルなどを通りそしてシベリアへ。そこからアラスカへ渡ってNYまでバイクで旅をします。
サポートクルーや撮影スタッフがいるのでバイクだけの旅ではありませんが、しかしそれは冒険心に満ち溢れた本当に素敵な旅でした。そこらのロードムービーよりよっぽど面白かった。多分日本でオン・エアはなかったと思いますがDVDがリリースされました。この旅で使われたのがBMWのR1150GSアドベンチャーでした。(ちなみに続編として地球を縦に降りていく「ロングウェイ・ダウン」というのもあります)
自分では出来ないけれど、こういう旅に憧れる。そういった背景でアドベンチャーバイクは世界的に人気となっていきました。レースに出ることは出来ないけれどスーパースポーツに憧れて乗るのと同じような図式だと思います。しかしスーパースポーツと違ったのは、アドベンチャーバイクが本当に万能性を持っていて魅力的だったことです。例え本当にオフロードへ行くことはほとんどないとしても、アップライトなポジションは見晴らしが良く、ワインディングでも見通しが効きます。ストロークの長いサスは荒れた路面でも乗り心地が良く、荷物もたくさん積めてタンデムでも余裕があるゆとりの車体。しかも大柄ながらワインディングでも速く、スーパーバイクの車体やパワーを持て余すライダーはアドベンチャーバイクに乗った方がよっぽど速く走れます。安定しているので単純に乗っていて恐くないからです。そこもまた魅力の一つ。車体が大きく重いのでとっつきにくく、ビギナーが買うようなカテゴリーではありませんが、少しキャリアを積むとアドベンチャーバイクの魅力に気付く・・・。そんな感じでしょうか。
一時期の大型バイク市場では世界的に一番売れていたバイクが(単一車種として)BMW R1200GSだったほどで、そのマーケットを狙って各バイクメーカーとも参入、隆盛していきます。その隆盛は今も続いており、各社2世代目、3世代目のバイクをリリースしています。そして今年このカテゴリーで注目のバイクがリリースされます。
1台目はハーレー・ダビッドソンがリリースするその名もPan America。なんとストレートで素敵な名前でしょう〜w。ハーレーもビジネスを広げるために遂にこのカテゴリーに参入することになったのです。ロールズがカリナンを出したりするのと同じようなイメージですねw。
Pan Americaの発表ムービーを見ると、ハーレーが興された100年前は舗装路なんてほとんどなく、基本オフロードだった。だからハーレーはオフロードバイクのメーカーだったんだ、なんて詭弁を弄しているのが笑えますw。それはともかく、実際に出来上がったバイクを見ると思いの外ハーレーらしさを感じる素敵なデザインです。ヘッドライト周辺はロードグライドのシャークノーズフェアリングを思い起こさせるデザインで、エキゾーストの取り回しもクルーザー系のハーレーと似た感じ。そして何より重要なのはBMWのGSと似ていないことです。
ハーレーはこのバイクのためにエンジンもシャシーも新開発。クルーザー系のアイコン、45°Vツインとは完全に異なる水冷60°Vツイン 1250cc。ヘッドはDOHCで何とVVTまで装備。また、バランサーシャフトがクランクとヘッドに設けられています。出力は152ps / 128Nmというハイパワー。フレームは我が家の空冷GSと同じようにエンジンからフロントとリアへフレームを伸ばす方式、サスはフロントもリアも一般的なテレスコピック/リンク式モノショックという構成。しかしそこにセミアクティブサスペンションをPan America Special仕様に用意。これは荷重状態や走行状況に応じて動的にプリロードやダンピングを調整するほか、何と停止時にプリロードを抜いて足付きを良くするというシステムまで。(欲しいw)
デザインもカッコ良いし、価格はBMW R1250GSと同等。これは売れるかも、と思っています。
もう1台注目すべきアドベンチャーバイクはドゥカティの新型ムルティストラーダです。ムルティストラーダは2003年にリリースされた時はオンロード・ツーリングバイクだったのですが、2010年に2世代目となった際にGSのようにオン/オフとも行けるアドベンチャーバイクになりました。そのムルティストラーダがフルモデルチェンジして3世代目としてリリースされます。トピックはいくつかあるのですがまずはエンジン。スーパーバイク・パニガーレV4に端を発する新型V4エンジンなのですが、ボアを2mm拡げて排気量を1103→1158ccへと拡大、そして何とバルブ駆動にドゥカティの特徴であるデスモドロミックを使わず、普通のバルブスプリングを使用しています。そしてこちらも当然のようにVVT。これは多分エミッション対策なんでしょうね。出力は170ps / 125Nmというこちらも凄いスペック。
シャシーはエンジンからフロントにアルミフレームを伸ばし、リアにサブフレームを伸ばす構成。これはパニガーレと似たような構成ですが、メインフレームと呼べるものがないというのはPan Americaや空冷GS同じです。(最近の流行りなのか!? )サスペンションは一般的な構成で、S仕様ではプリロードやダンピングが電子制御されます。
そしてムルティストラーダの大きなトピックは遂にバイクにも搭載されることとなったレーダーシステム。アダプティブクルーズコントロールとブラインドスポットモニターです。BOSCHと共同開発のこのシステム、BMWのR1250RTやKTMの1290Super Adventure Sでも搭載が発表されていますが、おそらくリリースはムルティストラーダが一番最初と思われます。アダプティブクルーズコントロールの出来は非常に良いらしく、快適性や安全性に大きく寄与しそうです。因みにACC中にクイックシフターを使ってシフトが可能でクルーズコントロールはキープされるそうです。(クラッチを切ったらOFFになる)
そんなわけで速さを競うスーパースポーツが進化していくのと同様に、アドベンチャーバイクも他のカテゴリーに先駆けてハイテク化され、どんどん進化してきているのが現状なのです。バイクの世界のハイテクをウォッチするには、スーパースポーツとアドベンチャー。そう言い切れます。一方その重装備化で車体が重くなっていまして、今や我が家の空冷GSより20kg前後重くなっています。価格も300万円前後するのが当たり前 (@@;) いやはや・・・。
GSを買い換えるつもりはないのですが(今のところ・・・w)、リリースされたらこの2台は試乗してみたいと思います。
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バイク | 日記
Posted at
2021/02/27 23:33:46