
R1250GSはフラットツインを搭載したGSシリーズの最新版。我が家の2009年型R1200GSは2010年型でマイナーチェンジ、エンジンをSOHCからDOHCに変更。2013年に水冷フラットツインへフルモデルチェンジ、さらに2019年に1250へとモデルチェンジしました。R1250シリーズは基本的に車体は水冷R1200シリーズと共通で、エンジンと外観デザインの小変更なのでマイナーチェンジと言えるかもしれません。
さてウチの2009年型から見て3世代分進化したR1250GS。借りた個体はプレミアムスタンダードというローダウン仕様でした。まだ下ろしたての新車でODOは800km弱、タイヤはブリヂストンのA41を履いていました。ローダウン仕様は日本向けを想定した仕様のようで、サスペンションストロークを短くした上でシートも薄めのシートになっているようです。BMWによればローダウン仕様と通常仕様の販売比率はデータ上ほぼ半分半分らしいですが、身長173cmくらいを境に変わるそうな。シートは高さを2段階でセット出来るのですが、低い方にセットするとローダウン仕様では166の私でもかなり足が着きます。なるほどね…。確かに安心感があるけど、低過ぎてライティングポジションを取ると膝の曲がりが大きく疲れそうなので高い方にセット。それでも我が家のGSの低い方にセットした時よりも足着きは良いくらいですね。一方でハンドルバーは相変わらずかなり広い。広過ぎる。そしてシート形状は前後の自由度が高くなく、後ろの方はエッジが気になります。更に気になるのはハンドルのスイッチです。ウインカーが一般的になったのは良いのですが、左側はインフォテインメントを操作するホイールがあります。
これが操作しづらい。上下に転がすだけならまだしも、選択したり元に戻るのに左右に倒す。左右に倒すなんて論理的に使いやすい設計とは全く思えない。ソフトのメニュー、構成とも併せて非常に分かりにくい上に使いにくい。しかもホイールがあるおかげでウインカースイッチが遠くなってしまっている。そんなわけでやはりBMWのエルゴノミクスは相変わらず私には合わないですね。購入したらまたエルゴノミクスは全部変えることになりそうです。スイッチはどうにもならないですが。。。
初見からあまり印象が良くないのですが、走り出すと良いのがBMW。この日は1日借りているので、中央道で河口湖を経由して伊豆方面を目指しました。街中ではトルクの太さと適度なレスポンスが印象的。KTMのスーパーアドベンチャーSと同じくらいトルクがあると思いますが、SASがガツガツ来る角のあるレスポンス、トルクの出方なのに対して比べマイルドにトルクを出します。おそらく相当クランクマスやフライホイールが重いのではないですかね。湿式多板になったクラッチは最新型ならではの軽さで半クラも扱いやすい(というか普通)。なので全体的に非常に乗りやすいですね。ただステアリングヘッド周りに重さというかマスを感じます。ステアリングダンパーが効き過ぎてるのかと思いましたが多分マスですね。重さを感じます。この辺がウチの空冷と20kg違うところかも。(※6/19追記:重さはステアリングダンパーのようです。。。)
高速に入ると素晴らしい安定感と快適性に膝を打つ思い。ビシっとした直進性の高さとロールの軽さの両立はフラットツインならでは。単に重心が低いだけでなく縦置きクランクのジャイロの小ささを感じます。トルクが太く谷も無いので追い越しなどは非常に楽、かつ思い通り出来て気持ち良いです。また振動が極めて少ないのも特徴でしょう。空力(防風性)が非常に良いのと併せて速度を上げても快適にクルーズ出来、この辺は流石の完成度。未だに一つ抜けてる感があります。走りながら片手で高さを変えられるスクリーンも操作性が良くて良いですね。一方でパワーの面はどうやらまだ全開になっていない?ようで頭打ち感がありました。最初の点検を受けるまでは何らかの制限が入ってるようですね。
一般道路に降りて伊豆の山を目指すと、ここまでで薄々感じてはいたのですがかなり路面のギャップを拾うのが気になります。GSの脚はオフロードを想定した長めのサスストロークを持っていて、しかもテレレバーとパラレバーはサスが良く動くので荒れた舗装でも何事もなかったかのようにギャップを吸収するのが特徴で、そこがGSで1番気に入っているところ。しかしこのローダウン仕様ではその良さがかなり減ります。普段GSではギャップを気にせず躊躇なく寝かして行けるところが、吸収しきれず底付きしてしまい暴れるので行けない。。。サスストロークが短い分、切り返しなどは「よっこらしょ」感が少ないのは良いのですが、コレじゃ普通のロードのバイクとほとんど変わらないじゃないか…。おそらくストロークが短いだけじゃなく、プリロードがかなり低い。動的車高が低いのでバンク角も浅く、簡単にブーツやステップを擦ってしまう。更に悪いことに装着しているブリヂストンA41のドライグリップが低く、深めに寝かすだけで前後とも滑り始める。そこから開けるとアンダーステア気味に前後とも滑りそのまま開けると最後はオーバーステア。穏やかな滑り方だしバランス的には安全ではあるのですが、開けていけない。そんなわけでワインディングはちょっとストレスが溜まりました。端的に言って楽しめなかったのです…。
これならGSじゃなくても良いじゃないか…。車高を落としてオフロードや荒れた舗装が苦手になってしまったランクルやレンジローバーみたいなものだ。。。もちろん、短いサスで充分という人もいるでしょう。でも私はロングストロークならではのどんな状況でもガンガン行けるGSのオールラウンダーぶりが気に入っていたので、そこが無くなると魅力半減なのです。
それにしてもストロークは短くてももう少しやりようがあるんじゃないか。短いとは言え普通のバイクよりはストロークは長い。せめて前後ともプリロードを適切にかけたい。しかしフロントはプリロードを変えられない。リアは電動でプリロードをかけられますが、これもAutoかMinかMaxしか選べない極端さで、Maxにするとリアのプリロードは目いっぱいかかってフロントはかからないので前後バランスが崩れてしまいます。まぁプリロードをかけたら足着きは悪くなるわけで、そうなったらローダウン仕様の意味がないんでしょう。それにGSはサスペンションだけで3つの仕様が選べるわけで、ローダウンが嫌なら選ばなければ良いだけ。しかし、試乗前は実はローダウン仕様に少し期待していたのです。私の使い方としては酷道と呼ばれる狭くて荒れた舗装路を良く走るものの、オフロードには入らないのでオフロード対応のサスまでは必要ありません。ロード寄りのオールラウンダーとしては意外にローダウン仕様が合うのではないか、と。しかし結論としてはローダウン仕様はそういう方向性じゃなかったようです。
というわけで試乗した個体はエンジンはまだ慣らし段階でシャシーはローダウン仕様でしたが、しかしR1250GS全体のイメージは掴めました。いくつかのポイントを挙げるとこんな感じです。
●エンジンは好印象。充分なトルクと振動の少なさが良い。空冷よりかなり元気なキャラにはなったけど、それでもまだツーリング向き。
●縦置きクランクのロールの軽さ
●シャシーは剛性が高いが適度なしなやかさもある
●重量はやはり気になるが、思ったほどではなかった
●ツーリング向きに良く考えられた快適装備の充実度が良い
●信頼性が高い
●デザインがカッコいい
●ライディングプレジャーはやっぱり少なめ(それもまたGSの個性か)
●エルゴノミクスは相変わらず自分には合わない
真っ当に進化したんだな、と思いました。オールラウンドツアラーとして完成度が高く穴が少ない。相変わらず売れているのも納得です。
ただ・・・
R1250GSは今や300万。300万出して今のGSから乗り換えたとして、何がどう変わるんだろう・・・。多分少し快適になる。少し疲れにくくなるかもしれない。かなり速くもなるから、快適性と併せて考えればより長い距離を走れるようになるかもしれない。それでもツーリングの楽しさ自体は多分それほど変わらないんじゃないかとも思う。そう考えるとなかなか踏ん切りがつかない。実用車なだけに、「楽しい!」「カッコいい!」「これ乗りたい!」 ・・・とかならないのよね・・・。それにSuper Adventure Sという選択肢もある。DUKEは乗った瞬間楽しい、これ欲しい、と思ったし、CBは見た目と音でこれ欲しい、とこれまた直感的に思ったんだけど・・・。
ブログ一覧 |
BMW | 日記
Posted at
2023/03/14 20:26:09