
ニュージーランドはワイン作りの歴史としては比較的新しい国なのですが、歴史が浅い分最新の技術や設備を導入することが出来たこともあってワイン作りは発展しており、近年では逆にフランスなどヨーロッパ各地から修行に来るほどだそうです。その一方、人口が500万人にも満たない国でもあるため、ワインの80%が輸出されるのだとか。ニュージーランドのワインはマールボローの生産者、クラウディ・ベイのソーヴィニヨン・ブランが評価されてから注目を集めて広がったこともあり、生産量の7割は今もソーヴィニヨン・ブランだそう。一方で今回バイクで周った南の地区ではピノ・ノワールを中心に生産されており、この2つの品種が代表的と言えます。しかしシャルドネやシラー、ボルドー系の赤の品種も多く生産されており、今では本当に多くの品種を見るようになりました。
また、歴史が浅いこともあると思いますが多くのワイナリーでCELLAR DOORを設けており、試飲や販売をやっているのも特徴です。以前ブルゴーニュを訪れた際はCELLAR DOORなんて全く見ることなく、ちょっとクローズドな雰囲気を感じたものですが、こちらは非常にオープンな印象を受けます。なのでワイナリー巡りが今回の旅の一つの楽しみでした。
バイクツーリングではセントラル・オタゴという主にピノ・ノワールが生産されている地区を周りましたが、クルマではNZ最大の生産地区であるマールボローと、その途中にあるワイパラを回ります。
クライストチャーチからマールボローの中心となる街Blenheim(ブレナム)までは約300km。高速道路がないので一般道です。もうひたすらState Highway 1号線で北上のみ。他のルート無し。
クライストチャーチを出てSH1号線で1時間弱、距離にして50kmほど、牧草地ばかりだと思っていたところで急に葡萄畑が広がり、そこがワイパラという地区。このワイパラも近年注目を集めている地区で、品種的にはリースリングで有名なところです。まずはワイパラの有名なワイナリー、ペガサス・ベイへ。
SH1を外れて5分ほどで到着。
これまた綺麗なセラードア。奥にはイングリッシュ(?)ガーデンがありとても美しいところです。
既に先客が2人ほどいましたが、それ以外には客はおらず(この日は木曜日)ゆっくりテイスティング出来ました。ここでは8種類をテイスティング。
おぉ・・・ここは・・・やはりどれも美味しい。白が中心ですが、青リンゴや洋梨、それに柑橘系を感じるようなものも。シャルドネはミネラルは強くなく、どちらかというと若々しい果実感。とするとやはりソーヴィニヨンとかリースリングの方が向いているところなのかもしれませんね。そして安い。この有名なワイナリーでも1本2000円から2500円程度で買えるのです。困った。1ワイナリー1本と決めていたのですが、もうバイクじゃないし良いや!ということでここではソーヴィニヨン/セミヨンのブレンドと、リザーブのドライ・リースリングを買いました。
そしてお腹が減ったこともあり、ガーデンで少し早めのランチを頂きました。(イギリス系の国ではパイを頼みがち)
さて・・・。この地区はあまり大きくないので、次のワイナリーもすぐ近く。クルマで10分ほどのテラス・エッジ・ワインズへ。
駐車場っぽいところでクルマを停めると、その辺にいた少し汚れた格好の足元のおぼつかない高齢の男性に「何しにきたの?」と声をかけられました。テイスティングをしに来たんだと答えたところ、「ついておいで」とセラードアの入口とは違う方へ向かいます。え?どこへ?・・・と思いながらついて行ったらセラードアのテラス側から中に入り・・・「5種類でいいかい?」 え???ここの人だったの??w 店のカウンターの中にはバーテンダー的な女性もいたのですが、その人と軽く話をすると私のところへグラスとワインを持ってきてくれました。そしてワインを注ぎ・・・ワインの説明をしてくれました。何とここのワイナリーのファウンダーだそうで。窓辺のカウンターに座り…客は自分1人だけ。
外を眺めながらワインを飲み、その説明を聞く。ここのワインも悪くないなぁ…というかドライ・リースリングは結構良い。なんかのんびりしたくなる状況だけど、次へ行かなくては。
ここではフレッシュさが印象的だったピノ・グリを買って帰ることにしました。さて次はどこへ行くか・・・。良いアイディアが無かったのでおじさんにお勧めのワイナリーがあるか聞くと、すぐ隣なんだけど良いから行ってみて、とテラス・エッジからクルマで2−3分のところにあるジョージズ・ロード・ワインズを紹介されました。
グラベルの農道を走っていくと畑の真ん中にポツンと建物が。そこが醸造所兼セラードアのようでした。セラードアに入り中にいた男性に声をかけると、外のテーブルどこでも良いから座ってて、と。
そこは本当にただの庭というか・・・醸造所の横の庭。横には葡萄を破砕する機械があり、目の前には葡萄畑、遠くには山が見渡せます。最高の天気の中、先ほどの男性が来ました。
「ちょうど今は収穫の時期でね、ちょっと忙しいけど良いかい?」
もちろん。
この男性がここの主人らしい。泥だらけの長靴と果汁で汚れたシャツを着た本物の葡萄農家。
「いや参った、ここ数日で収穫してるんだけど機械が壊れてしまってね。直るまで何日かかかりそうだ。」
少しすると奥様が来てワインを注いでくれ、主人が1杯目のワインの説明をしてくれる。説明を終えると
「せっかく日本から来たならゆっくりして行ってよ」
と言って機械の方へ歩いていって、他の従業員と話をしながら作業を続けます。
そうして2−3種類飲んだ頃、再び主人が今度は葡萄を持って来ました。
「これは昨日収穫した葡萄なんだ。食べてみてよ。何か分かるかな?」
・・・なんと。正直、ワイン用の葡萄なんて食べたことがないので比較のしようがないのですが、せっかくなのでもちろん頂きます。色からすれば赤ワイン用の葡萄なのは分かるけど・・・
甘い。物凄く甘い。巨峰のようなフレーバーがありつつ、糖度が高く風味豊か。何だこれ。食用だとしても物凄く美味いじゃないか。
「分かった?」
いや、正直ワイン用の葡萄を食べたことがないので分からないんだけど、でもかなり甘い。ピノ・ノワール?
「うん、そう思うよね。これはシラーなんだ。」
シラー!!!??? まさか!!! こんなに甘い葡萄があのスパイシーでタニックなシラー??
この地域でシラーはまだメジャーではないのだけど、トライしてるんだそう。今作ってるシラーはここのブドウが15%、Hawks bayのものを85%のブレンド比率。
少しすると、こちらも果汁だらけ・泥だらけの若い従業員の方が通りがかり、
「あ、シラー食べたの?どうだった?ボクはここのシラーが1番好きなんだ」
すごく美味いよ。ワインもシラーを買おうと思う。
それにしても・・・
最高の天気のワイナリーのテラスで葡萄畑と景色を眺めながら、ワインを作っている本人に仕事の合間に色々な話を聞きながらゆっくりとワインを味わう。。。これ以上のワイナリー巡りがあるんでしょうか…あまりに最高のシチュエーション過ぎる。
ブドウをつまみながら、もう今日はここが最後で良いや…なんて。そんなこんなで、何とここには2時間以上いましたw。今回の旅の話や日本でのニュージーランドワインについてなど、色々な話をしました。既に15:00近いのですが、しかし実は今日の宿泊地であるマールボロー地域の街、ブレナムまではまだ250kmも走らなくてはいけませんw。もうこの辺で泊まるか・・・いや明日のことを考えると移動しないわけにもいかない・・・。
そうしてクルマに乗り込みSH1号線をひたすら北上。ずっと直線のような道ではなく、山を越えるワインディングや海沿いも走る。幹線道路だから交通量こそ多いのですが、退屈しない道でした。しかしブレナムに着く頃には暗くなってきていました。今からレストランというのも・・・なのでこの日もスーパーで食材を買って自炊。
スーパーのワインの品揃えは素晴らしい
が、モーテルへ着いてびっくり。キッチンが超ショボいwww.
まともなキッチンナイフが無いし、ヒーターは火力が弱くてお湯が沸かず、パスタを茹でるのに最小限まで水を減らしてようやく沸騰。何とか作ってスーパーで買ったワインで乾杯。
いや〜、良い1日でした・・・。
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クルマ旅 | 日記
Posted at
2024/05/16 13:16:52