
ふと思い立って、先日改良された最新型のアテンザに乗ってきました。現行GJ型のアテンザは2014年のデビュー直後に一度、それから数年後(?)に軽い試乗をしているのですが、それ以来しばらく乗っていませんでした。先日クラウンに乗って、そういえば最近の日本車の現状って分かってないな、と思ったんですね。今の日本車ってどういうレベルなのかと。いや、レンタカーで乗るようなクルマは結構乗っています。フィット、スイフト、ヴィッツ、ノート、カローラ・・・とか。要するにCセグ以下ですね。でもDセグ以上という大きさの日本車は全然乗っていなかったんです。スバルに至っては、何とBGレガシィに乗っていた時以来、もう20年近くディーラーに足を踏み入れてませんからw。
もちろん単なる興味だけではなく、将来どうするかのヒントです。今の行き過ぎた振り子の振れ幅wを是正していくとなると、やっぱり4気筒も考えざるを得ないので・・・。
そんなわけでアテンザを借り出しました。夕方に借りて翌朝返すという、いつものパターンです。借りたのは最上位グレード、XD L packageのFF仕様です。2.2リッター直4ディーゼルは先日の改良でエンジンにも手が入り、燃焼室の設計変更の他、VGターボも採用されているようです。パワーは190ps、トルクは450Nmになりました。
外装はマシーングレーという色にアイボリーのレザー内装。ドアの内張やインパネにはウルトラスエードという人工バックスキンが貼られていて上質な雰囲気です。GJアテンザのデビュー時は内装の質感もデザインもどうにもショボくてがっかりしましたが、事務的なレイアウトではなく魅せるようなデザイン、マテリアルに変わってきましたね。ようやくゴルフよりは上になった感じがします。これならドイツ系輸入車から乗り換えても満足出来そうな感じ。
意地の悪い言い方するとアウディっぽいが・・・
シートはナッパレザーで、サイズは座面長が長く幅も適度にあって良いのですが、どうも背中のフィット感がイマイチでした。ヘッドレストからすると寝かせ気味にするとフィットするのかな・・・。それからヒーターに加えてベンチレーションまで付いてました。ドライビングポジションですが、最近マツダが拘るだけあってすんまり決まる・・・んですが、結構Aピラー太いですね。ミラーはドアパネルに付けられているのでミラーとピラーの間の視界はあるのですが、根本的にピラーが太いです。
とりあえず箱根に向かいます。街中でまず印象的なのはやはりエンジン。マツダのディーゼルはそもそも低圧縮の高回転型。CX-5では大トルクを強調するようなセッティングでしたが、アテンザでは大トルクというよりスロットルに対してリニアなのがまず好印象です。パワーこそサチュレートしますがこのエンジンは結構上まで回るんですね。ただ回すとトルクは落ちていくので息の長い加速というわけにはいきません。しかしこのリニアなトルク特性は非常に気持ち良いです。街中から高速まで、動力性能的にはこれで充分以上でしょう。トランスミッションは普通のトルコン6速。基本的に走行中はロックアップされているので多少のダイレクト感もあるのですが、基本的にハイギアに固定したがるのと、キックダウンのレスポンスはあまり良くないかな・・・。
ワインディングも高速も一通り走ったところ、シャシーについては少し考えさせられました。いや全然悪くはないです。乗り心地はダンピングが適度に効いた乗り味で悪くないですし、コーナリングも気持ち良くスっとノーズが入り、限界は高く・・・。ハンドリングはもちろん基本的にはアンダー傾向ですが、フロントの追従性が高く、GVCの効果もあるんでしょうが回り込んだコーナーで切り増すような状況でも素直に入っていけます。基本的にバランスの良いセッティングになっていると思います。ステアリングは切る、戻す、そういった過渡領域のタッチは剛性感がありスムーズでとても良いですが、センターの作り方に違和感がありました。またフィードバックが豊かというインプレを見ましたが、そこまでじゃないという印象でした。ギア比は比較的スローな方で、シビアじゃないという点で良いのですが、例えばタイトなヘアピンだと両手でステアして切り込んだら舵角が足りませんw。で、それより気になったのは・・・どうも進入時の舵角が決めづらいことがあるんです。コーナリング自体は、初期ロールを綺麗に潰してGを穏やかに発生させて溜めるようにして入っていけば気持ち良く決まるんですが、ブラインドが連続するようなケースでは何か決めづらい、違和感がある・・・。GVCが悪さしているのか、単に腕の問題かw分からないのですが・・・原因かどうかは別としても、端的に言ってフロントサスの剛性が足りないように感じました。ストラットの限界なのかもしれませんが。また、ボディ剛性はワゴンということを抜きにしても上屋は充分な剛性なんですが、フロア剛性が足りない感じなんです。大きめのギャップでタイヤを叩かれるとブルブルと振動が残ります。19インチではなく17インチなら緩和されるのでしょうけど、でも根本のところは足りない感じがします。
全体的な印象としては、悪くないクルマでした。クラウンなんかより余程気持ち良く走ります。エンジンはもちろんディーゼル感はあるけどトルクの出方、回り方も悪くない。シャシーも乗り心地とハンドリングが良いバランスになっているように思いました。ただ・・・。これはやはりVWやオペルのレベルで捉えれば良く出来ている、ということであって、プレミアムレベルかというとそれはやっぱり違ったな、と。クラウンは流石にもっと剛性がありましたし。そう考えると立ち位置的には欧州フォードに似ているように思いました。欧州フォードは内外装の質感などはアテンザよりも全然ショボいのですが、シャシー、足回りはもっと気持ち良い出来です。アテンザのトータルバランスはもう少しコンフォート寄りで、かつ内外装や動的な質感を意識しているのだと思います。
マツダは、シェア2%で充分として良いクルマを分かって貰えるニッチな層をターゲットにしていくようですが、それを狙った質の向上については道半ばという印象です。もちろんこのアテンザは初期型とは見た目の質感は別物レベルでした。ただ、ここから上のレベルへ行くにはもっと基本のところを変えていかないと表面的なことでは難しいように感じました。例え気持ち良く走っても走りの質感レベルではまだ詰めるべき点がある。メルセデスのような剛性感からは一段落ちますし、荷重移動、ステアフィール、トラクション、やっぱりあのクラスがリア駆動なのには理由があるということですね。もちろん価格帯が全く違うので今のアテンザにそこまでを求めるのもどうかと思いますが、だとしても欧州フォードは同じ価格帯でシャシーで一歩上を行っています。メディアの情報では次期アテンザは上級移行して6気筒FRになると言われています。マスを狙ってコスト競争に巻き込まれるのではなく、独自の魅力を作っていくというマツダの路線には凄く賛成ですし、次期アテンザには期待していますが、まだ目指すものと出来上がっているもののレベルに差があるように感じます。
この辺がやっぱり現在の日本車なのか、と。クラウンにしてもレクサスやマツダにしても、色々な開発ストーリーを公開して大層なことを謳ってみても、実際に乗るとやっぱりまだ・・・という感が拭えない。でも一昔前よりは私が求めているものに近づいているのも確かです。
今後に期待したいと思います。
追記:
蛇足なので最後に書きますが、ドライバーアシストもまだまだ熟成が必要ですね。レーンキープアシストは相当センシティブで介入が多過ぎます。ちょっとしたライン取りでいちいち抵抗するので切りました。アダプティブクルーズコントロールはカーブに差し掛かると隣のレーンのクルマに反応して減速したり。この手のセッティングは、単に熟成とかじゃなくサスペンションやシャシーのセッティングと同様に見識が求められるレベルになっていると思いますが、それがまだなのかな、と。もしくはこの辺のセッティングはあくまでソフトのエンジニアであってドライバーとしては素人がやってるとか。N-BOXよりはマシですが、いずれにしてもレベルが低いです。

Posted at 2018/10/29 21:29:05 | |
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日本車 | 日記