書き記しておきたいくらい大きな出来事があったので、場違いを承知で、もう一度だけピンボールのエントリーを。長くなってしまいましたが、ご容赦を。
ピンボール熱に浮かされていたのはもう10年から20年くらい前のことで、近年は「昔の趣味のいい思い出」くらいの距離感になっていました。
アメリカ旅行もここのところ東海岸(と海上)が中心でしたし、NYCにも無くはないのですがやはりピンボールの本場は西海岸の感は否めません。大きなミュージアムも西海岸に多い気がします。
この前ピンボールのブログエントリーを書いたことで懐かしくなって、昔買っていた台で遊ぼうか…とiPadで久々に Pinball Arcade を起動すると、
目を疑うようなニュース が目に飛び込んで来ました。
いわく、「Pinball Arcade の Far Sight Studios が Williams と Bally のライセンスを失効し、2018年7月1日以降は両ブランドのピンボール台のタイトルを販売できなくなる」というもの…
ピンボールメーカーは今や風前の灯で、ワールドワイドでサービスを行なっているのはStern社しか残っていないような状況ですが、歴史を紐解いてもメジャーと言えるのは Gottlieb、Williams、Bally、データイースト、セガ、Sternくらいなものです。Williams は一時代を築いた Pinballジャイアントであり、Bally は硬派でスタイリッシュなデザインでファンも多いメーカーです。Pinball Arcade が支持されていたのはそういった歴史上重要なピンボール台の名作を安定感を持ってデジタルで再現したことにあったので、この2社の台が使えなくなるというのは…とにかく大変な事態なのです。
ここはみんカラですから無理矢理クルマに例えるとすれば、ルノーディーラーからカングーとルノースポール車を奪ったような状態です。いや、割と本当に、そんなかんじ。
その数じつに、96台中の63台!(チューハイ飲みながら指で数えたotaken調べ)
ルノーからルーテシアも奪わなくてはいけないかも…
まごうことなき、危機的状況です。
案の定、5chのピンボールスレを覗いて見ると阿鼻叫喚。みな慌ててシーズンパックを買い漁っています。(シーズンは7つ出ていて、それぞれ11から18台がパックになっています。パックで買うと1パック3600円くらい。一台ずつだと1台600円くらいです。すべてパックで買うと25000円くらいになります。)
もちろん、このごたごたがFarsightと権利管理団体の八百長という可能性もあります。PAにも一時期ほどの勢いがなくなり売上が落ちていたのも事実でしょう。ライセンスを新会社に転がすことで駆け込み需要と新規ライセンシーへの移転需要で二重に取ろうという話になっている可能性も、ないとは言い切れません。ですがプレイヤーとしては、確実でない賭けに乗るわけにはいかない理由があるのです。
まずは何と言っても、ピンボールファンは実機が目の前のゲームセンターから消えていくのを目の当たりにしてきた、ということです。なんとなればゲームセンターごと消えることも最近は珍しくありません。デジタルへの移行で「もうこれでいつでも楽しめる」と安心しきっていたらこれです。また居場所を失うのか、という悲嘆がネット上のピンボールファンからはひしひしと伝わってきます。
次に、Pinball Arcade の出自というか、実機移植ピンボールならではの特殊な事情があります。
Pinball Arcade が登場するまで、ピンボール実機のデジタル移植と言えば Visual Pinball という MAME 上で動くフリーソフト(VP MAME)が主でした。(MAMEはPC上で動くゲームのプラットフォームだと考えてください)
フリーソフトゆえに無料で遊べたのですが、有志が作成してくれた台の出来不出来に天と地ほどの差があり、バグも多かったですし、実機をきちんと再現しているのかどうかが怪しい台があることもしばしばでした。そして、もちろんライセンスなんか取ってる訳はないので海賊版に近い存在です。実機そのものではないので著作権的には微妙なラインですが、商標の面からは完全にアウトでした。
そんな中、正式なライセンスを獲得して、VP MAMEの最高のクオリティを誇る台と同程度かそれ以上の品質を以てひっさげて登場したのが Far Sight Studios であり、彼らが最初に送り出したPinball Hall of Fame シリーズであり、その後継のPinball Arcadeだったのです。
当時すでに Zen Studios の Pinball FX シリーズや古くはセガの KAZe などもデジタルピンボールとして存在感は持っていましたが、瞬く間に実機ピンボールのデジタル移植なら Far Sight、という名声を強固なものとしました。
つまり、Far Sight 以前には実機台ピンボールのデジタル移植を商業的に成功させたソフトウェア会社は存在していないのです。
そのため Far Sight がライセンスを失効してしまうと、次にライセンス管理会社と利用許諾契約を結ぶスタジオが出てきたとしても、PAと同じ再現度は望めないのではないかという恐怖感が根強くあります。
そんなようなわけでピンボールファンは恐慌に陥っていました。
PCからスマホ、XBOX、PS4、Nintendo Switchまで幅広くマルチプラットフォーム展開をしているので、どのプラットフォームで確保するかは悩みの種です。さんざん考えた結論として、僕はダイレクト感と手軽さ、継続性を重視してiOS(iPad)で欲しいものを全部、画質重視でXBOX ONEでもシーズン1だけ確保することにしました。今までに買っていた分は除いて、占めて15000円くらいの臨時出費…痛い…お財布が痛い…
買ってしまったことで、この後 iOS アプリ版 PA が僕のiPadで起動する限り、あるいはXBOXが後方互換性を維持してくれる限りは大丈夫、という心の安心を買うことができました。ぎりぎり。
しかし、これから後初めてピンボールに触れる人たちが、かつての名作を良い環境で遊ぶことができないという事態は憂うべきだと思います。
考えてみると、ピンボールの何にここまで惹きつけられるのでしょう?
誰もが好む娯楽ではないのは、確かです。嫌っている人こそ知りませんが、興味がないという人がほとんどではないでしょうか。
大きなブームのようなものも日本では起きたことがありません。
しかし、一度好きになると虜になりがちな、不思議なゲームです。
ひとつ思うのは、最初の取っつきの悪さがあるからか、ピンボールの「遊び方」を知らない人が多いということがあります。もともとはバーの片隅で酔っ払いのコインを吸い込むゲームですから、初心者には意地悪な面もあります。しかしピンボールの説明書やルール、ちょっとしたコツを知っている人は、その意地悪さは回避でき、その先にはメーカーが意図した演出や達成感が隠されていることを知っています。一台一台丁寧に練られた「プレイヤーを楽しませる仕掛け」が、あのテーブルの中には満載されているのです。それらが決められた手順を追って条件を満たすと発動するので、それを追い求めていくのが全体のゲームプレイになっています。
それを知らない人は、ピンボールを「ボールを落とさないことを競うゲーム」だと思っています。もちろんそれはベースにありますが、実はスコアはさほど大事ではないのです。ルールを知っている人は、「ボールをコントロールして狙った場所に放り込んでいくゲーム」をプレイしています。
それから、実機台の持つ歴史的な文化風俗とのリンクも見過ごせません。
たとえば、Creature from the Black Lagoon(1992)というBally社の台は50年代の同名映画をモチーフにしています。
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湖畔のドライブインシアターで映画を見ながら、車内でキスをするカップル、そして美女を狙う半魚人…という構図がピンボール台の上に展開されます。92年では既にドライブインシアターは絶滅寸前だったと思いますが、ジョージ・ルーカスの名作「アメリカン・グラフィティ」にも通じるノスタルジーが香ります。
WilliamsのTaxi(1988)にはマリリン・モンローやドラキュラ、ロボット、サンタクロースに混じって、ミハイル・ゴルバチョフが「ゴルビー」というキャラクターとして登場します。
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ゴルビーがニューヨークで「ヘイ、タクシー!」とイエローキャブを止める。冷戦が終わりそうな気配がしていた80年代後半という時代を思い出させてくれます。それまではあり得ないと思われていたが、もしかしたら実現するかもしれない、明るい未来でした。
プレイヤーはタクシーの運転手、ピンボール玉はタクシーに見立てられ、ハイウェイや下道を走りながらニューヨークの街のそこここでタクシー待ちをしているキャラクターたちを順々にピックアップしていきます。
他にもDinerとかスペースシャトルとかいろいろ好きな台はありますが、基本的には「あの頃憧れたアメリカ」を体現してくれる存在として、僕は捉えているようです。別に子供のころ憧れていたわけではないのですが、輝いていたころのアメリカにはやはり惹きつけられるものがあります。
東京ではもうまとまってピンボールに触れるのは無理…と思っていたのですが、久々にYouTubeで
基板大好き を見てみたら、お台場のデックスにけっこうあるらしいというのを知りました。
台場一丁目商店街 一丁目プレイランド
営業時間は21時まで。こんど行ってみようかな~
心斎橋にあるという
THE SILVER BALL PLANET も行ってみたい!!