
1954年のメルセデス・ベンツ・300SLが初めて採用。
ガルウィング式ドアの本来の導入意図は、クローズドボディの車体でボディ剛性を確保するためにサイドシル部を非常に太く設計すると、通常の横開きドアでは、乗降性が非常に悪化する。そのため、ルーフ部まで開口する、ガルウィング式ドアが採用された次第である。
ルーフ部まで開口する事で、低車高の車に乗りやすくするというメリットもあり、通常の横開きドアだが、高いサイドシル、低車高でルーフまで開くというとFord GTが有名である。デメリットとしてはルーフを下にして車体が裏返ると、物理的にドアが開かなくなるという点がある。
AZ-1の採用に当たってはデザイナーの作ったプロトタイプが乗り込めない為にガルウィングドアに決定したという。しかし一般的には最初から商品マーケティングとしてガルを採用したのではないかと勘ぐられている。どちらでもよいが、AZ-1/CARAの大きな特徴を位置づけているのは間違いない。派手ではあるが、ドアを開ける為に必要とするスペースは控えめで、その空間はわずか320mmである。
取り付けはルーフ部に支点を設ける純然たるガルウィングドアであるが、見た目の構造の簡単さとは裏腹に、工場での組み立てでは非常に苦労したという。二人がかりの作業でも位置決めが難しく、専用の治具の開発して対応したが約1年がかりだったとのこと。
AZ-1/CARAのガルウィングドアはガスダンパーによって支えられているが、このダンパーはカヤバ製のAZ-1専用品で-20℃~40℃の範囲で安定して動作するように設計されている。しかし、温度調整バルブは持たないので、気温による開閉感覚が大きく異なる。また、ガスダンパーは消耗品の為、劣化してくるとドアを支えることがでなくなり、乗降には苦労することになるが、経験的にドアの開閉頻度の多い運転席側の方が劣化が早い印象がある。屋根付きガレージを持つオーナーの中には、ガレージ内ではドアを開けて保管している人もいるほどだ。
このダンパーは現在では1本11900円(マツダ部品番号 P10058720A ステーフロント ドアダンパー スズキ部品番号 81850-69DA0 ドアダンパ)程で純正部品が手に入る。2本、もしくは4本必要となると金額的な問題も大きいが、冬に苦労したことも春と共にドアが開閉しやすくなる為、なかなか交換に踏み切らないオーナーが多い。冬はヒーターを付けることで車室の温度が上がり、走行後はダンパーが暖められたことによって復活することも交換を後回しにする理由だと思われる。ドアは片方23kg(ダンパー含まず)の重量があるので、ダンパーが支えきれなくなってドアが落下すると非常に危険である。オーナーの中にはドアを軽くすることで対応しようと、大きなサイドシルを持つゆえ他車より必要性は低いとの判断からサイドインパクトビームを取り外す人もいる。なんにしても「ドアに食われた」オーナーは相当数に上るはずである。
このダンパーはアフターマーケット品や代替品は存在せず、過去に4ローターRX-7で有名なスクートスポーツにて、ガスダンパーにバルブをつけてガスの補充が可能となる加工を行っていたが現在は受け付けていない。
ボディ側ダンパー取り付け部のボールジョイント部分は、ボディ側に点付け溶接で止まっているナットによってネジ込まれている。前部のこのナットはドアを開けた状態でショックを与えると溶接が取れる可能性があり、取れてしまうとダンパー交換時に共周りしてしまい、最悪はフレームの中へナットが落ちてしまうことになる。できるだけドアを開けた状態でクルマを動かすことは避けたい。特にバックで駐車する時にドアを開けて行うオーナーは衝撃を与えないように気を配るに越したことはない。
なお、AZ-1/CARAのオーナーはオフラインミーティングなどで駐車場にクルマを止めた際、ドアを開けっ放しにするオーナーが多いが、あれは自慢しているわけでも、目立とうとしているわけでもなく、開閉が面倒だからである。
ブログ一覧 |
キーワード | 日記
Posted at
2008/01/12 23:19:42