火災

　全国紙・読売新聞が運営するニュースサイト「YOMIURI ONLINE」の配信記事から『認知症の夫が火災「妻に重過失なし」…和解』に注目。
　　　
　認知症を患う老人が原因となる事故については、高速道路の逆走多発や、鉄道敷地内に侵入して轢死→列車の運休・遅延に因る損害発生等々が報じられており、一部は家族への賠償請求を認める判決が出ている。
　　
　恍惚状態で外を出歩くことも危険であるが、日常生活を送る家庭内での事故や、冒頭記事のように火の不始末から火災に至る例も少なくないのだろう。



　隣家へ類焼したとして、家屋や家財の損失はある程度火災保険で補償されるだろうが、無辜の隣人か焼死或いは大火傷を負ってしまった場合、「ヴォケてましたから過失は無いです」が罷り通るのか。
　マッチやライターなど火気を遠ざけるのは勿論、ガス台や風呂も着火できないよう元栓から閉塞するなと、家族にも相応の配慮と責任が求められるように思うのだが。

　　 　
　
　また、安易に痴呆症患者を免責してしまうと、事故当事者以外へも大きな影響が及びかねない。
　殺され損ではたまらないと若年住民が退去し、近隣に老人世帯が多い地域がスラム化したり、所有物件の毀損や価値低下を懸念する大家が、老人世帯の入居や契約更新を拒否する事態が考えられる。

　私自身も一軒家の自宅を構え、加えて店子さんに所有物件を貸している立場なので、リアルに身につまされる問題である。

　
　
　とは言いながら、痴呆症患者だけでなく、特定の属性を殊更に論って排除するような世の中になってほしくない。
　個々人の財産や尊厳を護りつつ、あらゆる世代・立場の人々と共存できる街であるべきだ。


　そのためには、老人世帯を含め自立(律)した暮らしができるよう、そして近隣住人が不安に慄くことなく安心して暮らせるよう、最低限の防火対策など各々の尽力に加えて、手厚い社会的なバックアップが必要だろう。


　福祉予算を削った結果、治安維持に要する経費が膨らんでは元も子も無い。
　安全保障関連法案の混乱が収まった暁には、国民生活の安全保障にも抜本的な改革を図ってもらいたい。