オイルの在庫が無くなったので新しいオイルを物色していたところ珍しいオイルを発見!
早速購入してみました。

Mobil1 ESP X2 0W-20です。
海外ではESPシリーズは0W20、0W30、0W40、5W30とラインナップがあるのは知っていましたが日本で入手出来るとは!
国内のカタログラインナップは今のところ5W30のみです。
プジョーでもESP 5W30を使ってます。

VWの新しいアプルーバル VW508 00、VW509 00も取得していますね。

そして驚いたことにEMGルブリカンツ合同会社のシールがあります。
ボトルがEUボトルですが国内向けに輸入したってことですね。
普通のMobilシリーズは国内製造ですし。(スチール缶)
このオイルをプジョーでそのまま使うには柔らか過ぎるので5W30と半々で使用する予定です。
混ぜて平気か安全データシート(SDS)を見てみたら見事に沼にハマって昨日からずっとオイル関連の検索をしてます。。
安全データシート(SDS)は化学物質又はそれを含有する製品に対して取り扱い方法などを明示している資料になります。
以前はMSDSと呼んでました。
このSDS、本来とは違った使い方をすると面白いことが判ります。
その前にエンジンオイルのカテゴライズを少々。
エンジンオイルは鉱物油、部分合成油、合成油、化学合成油などの表記がありますが、API(アメリカ石油協会)のベースオイルのカテゴリーには硫黄分や粘度指数順にグループIからグループVまでカテゴリーがあり、グループIII以下が鉱物油、グループIV以上が化学合成油ということになってました。
なってました、と過去形なのは現在はグループIIIのオイルも精製度が上がり合成油と遜色ないレベルまで達したのでグループIIIも合成油でいいんじゃね?
と言った見解が一般的になってしまい、今ではグループIIでも合成油表記のものが出てきてしまいました。
VHVI(化学合成油)と書かれているものはグループIIIを示しています。
厳密に言うと化学合成油では無いけれど相当のパフォーマンスがあるオイル。
ただ、APIもJISも原油由来のGrIIIが鉱物油という見解は今も変わってません。
グループIIIの話の発端は、90年代にカストロールがグループIIIのオイルを合成油として売ったところ「それ嘘じゃん!」とエクソンモービルが訴えたらしいのですが、カストロールが勝訴してしまったことからグループIIIが合成油を名乗っても不問となり以降ダブルスタンダードが定着しています。
今ではエクソンモービルもグループIIIを合成油として売ってます。
昔のMobil1はグループIV以上でしたから確かに組成だけ見ると「昔の方が良かった」と回顧主義に走るオジサンも間違ってはいません(笑)
ちなみにグループIVはポリαオレフィン(PAO)、グループVはエステル系、アルキルナフタレン(AN)などがあります。
高級オイルだとPAO+エステル100%化学合成油なんて表記ありますよね?
PAO+エステル100%化学合成油なんて書かれているとグループIVとVの混合油だと思いません?私はずっとそう思ってました。
ところが今回オイルメーカー各社のSDSを見て判ったのですが、PAO+エステル100%配合のオイルなんて殆どありませんでした。
実際良く考えてみればわかる話ですが、PAOにせよエステルにせよそれだけでエンジンオイルが成立するわけはありません。
その他の添加剤がそれなりに入ってるので、「PAO100%」ってのはベースオイルが100%PAOって話だと思います。残りはグループIIIとか添加剤とか。
エステルの表記も同様でベースオイルが何かでエステル添加って話ですよね。
中にはエステルがベースオイルの商品も存在するにはするようですが…
グループIIIにエステル配合の例だと、トヨタ。
トヨタのSDSサイトを見てみると0W20のエンジンオイルだけで何と8種類もあります!
この中にはサーキット用のオイルや耐久用、ディーゼル用など用途別に0W20があるのですが、それぞれの配合が全然違います。

GRモーターオイル エンデュランス0W-20。
GRヤリスや最近のトヨタ車向けのハイパフォーマンスオイルでエステル配合の表記もあります。
Amazonでも4Lで1.1万円以上と超高額オイル。
このオイルのSDSがこれ

成分および含有量のところはメーカーによって表記が異なるので参考になりません。
その下の57条の2、通知対象物に「鉱油60質量%以上70質量%未満」と書いてあります。
成分および含有量のところでは何かいてあるか判らないですが、57条の2に記載によれはこのオイルは鉱物油が60-70%含まれていることを示しています。
4Lで1万円以上するオイルが実は鉱物油メインだったらガッカリしませんか?
エステル配合って書いてあるからそれなりの組成かと思ったらグループIIIにエステル配合ってことですね。(PAO含有は不明)
日本メーカーのSDSは不親切極まりないので潤滑油基油と添加剤の鉱油の割合しか判りません。
この「鉱油」がVHVIかどうかも判りません。
VHVIでもリッター500円切るレベルですけど、実はグループII以下の鉱物油が入ってる可能性もありえます。
このオイルのレビューは
コチラ。酷評。
グループIIIでも原油ベースで精製された物以外に関しては「鉱油」では無いので、この57条の2に該当しないものもあります。
シェルやモービルが天然ガスから作るGTL(Gas to liquid)オイルをベースオイルで使用していますが、こちらは合成炭化水素と呼ばれ何故か「合成」油なのにグループIIIにカテゴライズされています。
API(アメリカ石油協会)が無理やり「天然資源がベースだからIIIね!」とカテゴライズしたのかも?
石油じゃないから本来カテゴリー外じゃないのかな…
閑話休題
次のSDSは同じくトヨタ純正 C5 0w-20シンセティック、
ACEA C5認証オイルですが、トヨタ車はディーゼル専用だそう。
Amazonでペール缶(20L)の価格は上のGRエンデュランス4Lとほぼ一緒。

鉱油の該当量が5-10%しかありません。
ベースオイルは「重質蒸留物(C-18-50 )-分岐、環状、直鎖」が70-80%で、
これが先ほど書いたGTLに該当します。
APIカテゴリーっぽいものではGrIII++とか表記してることもあります。
GrIII+:原油ベースで粘度指数が130以上とVHVIの中でも粘度指数が高いものVHVI+
GrIII++:天然ガスやシェールガス、石炭などから精製されるオイルで鉱物油由来では無い。粘度指数はPAO以上、シェルはXHVIの呼称。
天然ガス由来だとGTL(Gas to liquids)が一般呼称。
SDSでは合成炭化水素と記載されてます。
GrIII+とかGrIII++とかはAPIの定義では無いのでオイルメーカーが勝手に付けているみたいです。
化学合成油や合成油表記も何の定義も無いので意味が無いですね。
一部で見かけるHIVIはVHVIの下なので注意。(GrII)
先ほどのトヨタの二種のオイルはどちらの方が良さそうですかね?
添加剤の違いがあるので一概には言えませんが、ベースオイルだけで言えばC5の方が良さそうです。
C5ディーゼルのコスパ相当良さそう。
トヨタ車はディーゼル専用と書いてありますが、ACEA C5取得してるようなのでガソリン車も行けそうですね。
このオイルのレビューは
コチラ。
ちなみに「Toyota Genuine Motor Oil SN 0W-20 C5 for GR Toyota Supra」というスープラ専用オイルもあるのですが、こちらの鉱油表記も1-10%未満。
SDSに詳細書いてないのですが、少なくともグループIII由来の鉱油をベースには使ってない時点でGR 0W20エンデュランスより良いですね。BMW用そのままかな?
そして5Lで8900円と何故かこちらの方が安いという…
GRヤリスに乗ってたらこのオイル入れると思う。
(後日調べたところシェル製なのでGTLベースですが、LSPI対応を謳ってないのでGRヤリスは避けた方が無難です)
GRオイルにはこれらの他に0W-20サーキットと銘打ってるオイルもあるのですが、こちらはポリマー入り。
しかも、ポリマー入りの方はGRヤリス非適合という紛らわしくて確信犯的なラインナップ。これもエンデュランス程では無いけど高い。
GRヤリスに使えない「サーキット」って何?
ポリマーにも色々あるみたいですが、トヨタ自らポリマーはダメって言ってるようなものではないか…
確実に言えるのは良いポリマーが入ってる訳じゃないってことですね。
ポリマーにもピンキリありますから、ターボに使えないポリマーが入ってると。
あとトヨタさん、白缶と黒缶の違いが判らずに0W-30とか5W-40をGRヤリスとかGRカローラに使っている人居ますよ。
GRオイル(黒缶)は柔らかいし心配だ→粘度の高いオイルにしよう→G16E-GTS非対応のGRオイル(白缶)を入れてしまう。
GRエンデュランスはVHVI+ベースと想像しますが、高価なVHVI+を使う位ならGTLかPAOベースでもっと極めて欲しかったです。
恐らく製造委託先がJX(エネオス)前提だったのでGTLが入手出来なくてこんな組成になっていると想像します。
トヨタはエクソンモービルとも取引あるのだからそちらで作っていただいた方が宜しかったのでは…
C5シンセテックみたいな良いオイルもあるし、トヨタの良心が良く判りません。
トヨタのオイルはSDSを確認してから買うべし。
(GRオイルのレビューは
コチラ。)
あと、SDSを見る場合の注意点ですが、鉱油含有量は57条の2、通知対象物を見てください。
成分及び含有量の項目に書かれている鉱油の含有量は添加剤としての含有量を表記している場合があります。
潤滑油基油80%、添加剤10%、鉱油(添加剤)10%と書いてあっても鉱油10%とは限りません。潤滑油基油や添加剤に鉱油が含まれている可能性があります。
鉱油を判断したい場合は鉱油含有量は57条の2、通知対象物を見ればオイル全体に対する鉱油含有量となるのでベースオイルが鉱物油かどうか判断出来ます。
上でも少し書きましたが、この「鉱油」はVHVIでもグループII以下でも全部鉱油です。
なのでVHVIを装っていて実はグループIIも半分入ってます。なんてオイルもあると思います。
4Lで8000円のオイルだからVHVIかVHVI+でしょ?と思いたくても性善説に頼るしかない…
エネオスのオイルが嫌いなのはこの辺に由来します。
(実際にハズレを引いたから余計不信感)
SDSを公表すらしてないメーカーは推して知るべし。
話は戻ってMobii1のESP 5W-30(今使ってるオイル)のSDSを確認してみました。

Mobil1でしかも高額なESPですら今や鉱物油が10-20%入ってます。
一番上がPAOですが5%未満でベースオイルは先ほどのGTL「重質蒸留物(C-18-50 )-分岐、環状、直鎖」が30-40%とのこと。
足し算しても100%にならないのは表記不要な成分がその他ってことなんでしょうけど、いったい何が入ってるのか?
(CAS#で定義されてない物性は表記不要なのかな?)
下3項目が鉱油で5%ずつなので何か添加剤(ポリマーとか?)を溶かすためのオイルかな?
こちらはESP X2 0W-20のSDS

鉱油表記がありませんが、組成の最後に書いてある高度水素化重質パラフィン系油蒸留物はグループIII(VHVI)だと思うのですが5%未満だと記載されないのですかね?
※セクション3に鉱油記載が無い場合、セクション15に記載があります。
Mobil1はPAOか上のC-18-50***をベースにしている場合が多いですが、VHVIも数%添加している場合が多いです。
PAOでは潤滑性能が弱いし、DPFやGPF詰まり対策でリンや硫黄も入れられないので潤滑剤として入れているか、粘度指数向上剤を溶かすための溶剤代わりなのか。
書いてない組成は判りませんが、ESP5W30と0W20の組成が全然違うオイルでは無いことは判りました。(ESP 0W-30もちょうど中間位の組成)
あとは粘度が適正なら混ぜても行けるはず?
ここまで調べて結局オイル混ぜるのかよ!、と私自身も思うところなのですが、混ぜてみたい気持ちもあるのでやってみることにします。
昔から有名な高級オイルも組成を調べてみると面白いですよ。
PAOが高騰しているらしくて意外な組成もあるかもしれません。
以上長文失礼しました。
SDS関連など昨日から24時間で調べたことばかりで誤りなどありそうです。
指摘事項ありましたらコメントいただけると幸いです。
HIVIはGrIIIだ!という書き込みが散見されるのですがソースご存じの方いらっしゃいましたらご教示願いします。
HVI、HiVI、HIVIは同じものだと認識してるのですが…(Gr.II)
【追記】
ESP 0W-20と5W-30を混ぜて使ってみたところ、残念ながら0W-30っぽい雰囲気にはなりませんでした。
ESP0W-20は使用感がイマイチMobil1っぽくないのですが、混ぜてもその傾向は一緒でした。
よく見たらPAOも違いました。(ESP 0W-20のPAOはホモポリマーじゃない)
混ぜて使うと組成の悪い方に寄るみたいです。
【追記2】
このページが一番PV伸びるので追記しますが、VHVIが悪い訳ではありません。
VHVIもVHVI+の更に上のクラスになると本当にPAO並みか以上のパフォーマンスがあるものも実際にあります。
VHVIが困りものなのはGrII寄りのキリからピンまで全部VHVIで表記されてしまうこと。
加えて言えばエネオスの様にCAS#を記載しないSDSだとGrIからVHVI+まで全部「鉱油」ですから何が入っているのか見当も付きません。
そういったオイルの良否の判別は実際に使うしかありません。
ここでGTL推しなのは確実に「中の上」以上のベースオイルを選択出来るからです。
このブログの続編あります。0W-20シリーズ
その2
0W-20オイルの比較検証 エントリー編
その3
0W-20オイルの比較検証 失敗編
その4
0W-20の作り方
その5
0W-20オイルの比較検証
その6
0W-20オイル 粘度指数
番外
エンジンオイルのSDS CAS#一覧