
みんな大好きオイル添加剤
エンジンオイルに最初から入っているもの、後から添加するものありますが、ここではエンジンオイルに最初から入っている添加剤について書いてみます。
アフター品の添加剤の話はちょっとだけ最後に書きます。
まず、添加剤にはパッケージとコンポーネントがあります。
パッケージはそのままベースオイルと混ぜれば所定の規格に適合するオイルが出来る添加剤。
コンポーネントは個々の成分別に販売されている添加剤。
例えばベースオイルにSP認証パッケージ添加剤を規定量混ぜるとSP規格適合オイルの出来上がり。
このパッケージメーカーと言うのは世界に四社しかありません。(中国除く)
アフトンケミカル、インフィニアム、シェブロンオロナイト、ルーブリゾール
コンポーネントメーカーは
沢山あります。
パッケージ添加剤は日本でも四社とも購入出来るみたいですが、工場があるのはシェブロンとルーブリゾールの二社。
ということはこの二社の添加材が安いのかな?
インフィニアムはエクソンとシェルの添加剤メーカーが合併した会社。
API認証オイルを販売するにはAPI認証を通った(試験した)パッケージ添加剤とベースオイルを指定割合で配合する必要があります。
SP認証品を作りたいならSPパッケージとベースオイルを混ぜる。
その他粘度指数向上剤(ポリマーとかPAO)を添加する場合などは指定割合の最大量を超えないように添加します。
ここで言うPAOは添加剤としてのPAOなのでドロドロのやつ。(mPAOが多い?)
どのオイルと添加剤をどう混ぜたかAPIに書類申請すればAPI認証マークが使えます。
エンジンオイル誰でも作れる説はこういうところから。
API認証オイルの申請は年額$5500払えば何種類でも認証申請出来るみたいですね。
EOLCSのライブラリでAPI認証オイルは検索出来ます。
余談ですが、APIの認証マーク(ドーナツ)が付いてないオイルでSPとかSNとか書いてあるオイルは認証品ではありません。適合品。
パッケージ添加剤を使用しないでAPI認証品を作ろうとするとAPIの試験を受けることになってしまい、これが超高額で普通はオイル単体では試験は受けないと思います。(数千万?)
なので独自ブレンド品はSP相当品とかSP適合品が流通することになります。
(適合品はその規格に合格する性能を有するという意味。認証品とは違います)
トヨタのGRオイルもAPI SP相当品。GR規模でもそれ。
さすがに自動車メーカー純正オイルはAPI認証品が多いですが、ホンダのように独自規格のオイルもありますよね。
なので国内石油元売りのオイルでも韓国製VHVIに海外メーカーが認証取った添加剤を混ぜてるだけ。
という場合が往々にしてあると思います。
中国製のベースオイルや添加剤もあるのでこの限りではありません。
国産鉱物油もありますよね。
下記は中国某社のSP品の添加剤の割合です。
総質量に8%添加でppm換算しています。
SP品にしてはCa少し多め目、BもMoも少ないですが、Mg多め。
これ、Mobil1とかPennzoil(シェル)とか海外大手のハイエンド品に近いフォーミュレーションですね。
Caを少し減らせばシェルヒリックスウルトラにかなり近い。
これだけ見ると中国製も良さそうな気も?
Ca 1216 (清浄剤)
Zn 816 (酸化防止能,腐食防止能,耐荷重性能,摩耗防止能)
P 728 (耐摩耗剤)
B 168 (固体潤滑剤)
Mo 26 (固体潤滑剤)
Mg 400 (清浄剤)
N 776 (窒化化合物、金属不活性剤)
SN規格まではCaは2000ppm程度入っていましたが、LSPIがCaとカーボンに反応して発生してしまうことからSN Plus、SP規格からCaは半減しました。(1500ppm未満)
代替清浄剤はMgですが、Mgは高いらしいですね。
あとはMoを添加するとLSPIを抑えられるってことでMoとB添加でそれを補うような手法も(日本はこれが多い?)あります。
MgとMoは一緒に入るとLSPIが増加する傾向があるので配合比率は重要そう。
トヨタ純正は積極的にMgとMo入れてくる傾向ありますが大丈夫なのかな?
余談(個人の感想文)
後入れのオイル添加剤ですけど、例えば有機モリブデン(MoDTC)ってありますよね?
有機モリブデンが壊れて境界潤滑面に二硫化モリブデンの被膜を作って云々ってやつ。
エンジンオイルに界面活性剤や分散清浄材入ってますけど効果出ますか?
オイルの清浄剤はモリブデン被膜とスラッジ被膜を区別して洗浄出来ますかね?
分散剤はスラッジが塊になるのを防ぐ役割です。
スラッジが大きくならないように分散させるのですが、モリブデンの効果がキチンと出るのか。
被膜になる前に取ってしまうのでは…
また、エステルが添加されているオイルの場合、エステルの極性が強いのでモリブデンが被膜を生成する間もなくエステルが吸着します。
モリブデンが仕事をするには大量に入れる必要がありそう…
(極性の弱くモリブデンと喧嘩しにくいエステルもあります。)
有機モリブデンが二硫化(MoS2)モリブデンになるにはSをどこからか持ってくる必要があります。
ZnDTPはSが含まれているのでここからSを取るのでしょうが、鉱物油ならSが残留してますから鉱物油の方が有機モリブデンの効果がより出そうな気もします。
鉱物油の方がより効果が出るとしたらよりカモにしやすいですよね…
これらもエンジンオイル製造時に添加していれば各々が喧嘩しないように配合出来ますけど、後入れ添加剤はその辺配慮されていますか?
後入れ添加剤を入れるくらいなら最初から高いオイルを買った方が良いと思うのはこういうところから。
誰とも喧嘩しないアルキルナフタレンは別ですが。
また、上の添加剤のところでも少し書きましたがMoとMgは一緒に入るとLSPIが増える配合があるのでGRヤリスなど直噴ターボ車は注意が必要です。
(ソース)
モリブデンはエステルとも喧嘩する場合があるのでエステル配合オイルも注意。
水素フリーDLCとも喧嘩するのでピストンリングが水素フリーDLCコートだと危険。
これらの理屈は後付けです。
良いオイルを入れてると後入れ添加剤(MoDTC)が全然効かないってことがあります。
実体験から上の理屈が納得できた次第。
逆に言えば後入れ添加剤が効くってことは、入れてるオイルが…ってことかなぁ?
さっきのS(硫黄)の話もあるし。
固体潤滑剤って結局効果が無くなるとオイル中でゴミになりますよね?
有機モリブデンは油溶性ですが、二硫化モリブデンになって被膜が剥がれる時に効果を発揮し、その後はゴミになる。
粘度指数向上剤のポリマーと同じ最期を辿るのでは?
ZnDTPの入れ過ぎも同様。
ロングドレインのオイルほどMoとかBとか入ってません。
最初は良いけど…って感じじゃないのでしょうか?
入れ過ぎると逆に抵抗になりますしスラッジになった後はどんどん塊になります。
廃油の時にデロンデロンになった様を見て何も感じないでしょうか…
微量のMoやBは酸化防止剤なので用途が別です。
結局文化の差(宗教観)なんでしょうかね。
日本のオイルは短寿命で良いって発想だから固体潤滑剤や粘度指数向上剤にポリマー(これも個体)を入れてオイルの性能を出そうとするけど長くは使えない。
最初だけ良いけど1000㎞もしたらグズグズ。
対して海外メーカーは1万マイルを基本に設計するからオイルに「異物」を入れたがらない。
オイルの寿命が来る前に固体潤滑剤の寿命が来てゴミが循環することになるから。
と想像しますが実態はどうでしょうか?
詳しい方、ぜひご教示ください!
後入れ添加剤って量が少なくてクソ高いので商売的にラクですよね。
ZnDTPを調べていてZP(ジンクピー)を思い出しました。
硫黄が入ってないジアルキルリン酸亜鉛。
ベースオイルが化学合成油だとベースオイルにも硫黄が入って来ません。
そこにMoDTCを添加してもMoS2を生成するための硫黄が居ない。
高いオイル程MoDTC効果が無いのはそういうこと??
識者の方、ご覧になっていましたら是非コメント頂きたいです。