我々のようなオイルマニアがSDSで読むべき項目はいくつかあります。
第3項 組成及び成分情報(ベースオイルや添加剤の成分)
第15項 適用法令(通知対象物である鉱油割合の表記あり)
第3項と第15項以外にもう一つ読むべきところがあります。
それがタイトルの第9項 物理的及び化学的性質 です。
これはペンズオイルプラチナム 0W-20のSDSです。

見るべきところは引火点、密度、動粘性率です。
引火点は通常220~230℃くらい。
鉱物油の方が引火点は低いですが、粘度も関係あるので相対比較用。
見るべきとは言ったものの基本スルーでいいです。
250℃を超えると危険物扱いでは無くなるのでそんなオイルがあるのか?
もしあったら連絡くださいw
次の密度、これは結構重要です。(100度動粘度4cStの例)
鉱物油は密度が高いです。だいたい0.84g/cm3(15℃)以上
GTLは密度が低いです。だいたい0.81g/cm3以上
PAOも低密度で0.82g/cm3以上
エステルは高密度で0.90g/cm3以上
添加剤でも密度はあがります。
鉱油は低粘度になると密度が下がります。
ここが話をややこしくする。
上のプラチナムのSDSは鉱油割合10%以下で密度が0.84g/cm3です。
鉱油割合が10%で0.84g/cm3ならGTLっぽいと推測出来ます。
一般的なVHVIベースの0W-20なら0.85g/cm3程度。
次のSDSはレクサス純正0W-20 SNです。
先日のブログでPAOベースなのか!と喜んでいたやつ。

密度(=比重)が0.85g/cm3もあります。
第3項でPAOが50%入っていることは判っています。
鉱油割合は10-20%です。
PAOの密度を0.82、VHVIを0.85としてもVHVIは20%以下ですから、このオイルの0.85には届きません。
鉱油は最大でも20%なので仮にGr.II鉱物油(密度0.87程度)が2割入ったとしても密度は最大0.84程度しか上がりません。
と言うことは?このオイルはエステル添加の可能性が高いと言うこと。
鉱油割合10-20%と言うのは丁度DIパッケージの溶剤の量と同じなので、添加剤溶剤の鉱油以外に残りエステル入ってるかも!?
なんて、煽ってますが、実はこのSDSには答えが書いてありました。
第3項の成分を見るとアジピン酸アルキル(エステル)が10%未満添加されています。
恐らく溶解剤と油性向上剤として添加していると思います。
エステルなので高密度です。0.95以上あるかもしれません。
このオイルはエステルの記載がありましたが、エステル添加の記載が無くてもベースオイルと密度からエステル添加有無を予想することが出来ます。
次に動粘度です。
先ほどのレクサス純正0W-20 SN品は
40℃動粘度 35.6cSt
100℃動粘度 8.4cSt
から粘度指数は225と計算出来ます。
つまりポリマーがかなり添加されています。
PAOベース、低粘度、高レスポンスオイル、しかもエステル添加。
SDSからここまで読み解くことが出来ます。
こんなに高性能オイルなのに当時全然宣伝していなかったのが謎ですね。
これは転売せずに自分で使うことにしますw
以上は私が勝手に編み出した読解法です。
鉱物油の場合、精製度や粘度によって密度が変化するので上記読解法は使えません。
鉱物油は分子量によって何故密度が変化するのか?
鉱物油は分子量増大とともに環状構造(ナフテン・芳香族)の割合が増え、強い分子間力で凝集します。このため、高粘度になるほど密度が上がります。
低粘度の場合、分子間力は小さく環状構造が少ないので小さくまとまらない、低密度となります。
なので低粘度鉱物油をベースにポリマー添加した0W-20だと上記ペンズオイルと同等の0.84程度の鉱物油があるかもしれません。
鉱物油が入ってくると話が難しいのはそのため。
対して、GTL・PAO・mPAOの場合、
枝分かれ構造(イソパラフィン)が「スペーサー」として機能し、分子同士が一定以上に近づくのを物理的に防ぎます。
分子量が増えても隙間が維持されるため、高粘度でも密度が上がりにくいです。
スラックワックスを異性化した鉱物油(VHVI+とかWBASE)はイソパラフィンなので鉱物油とは言えこちら側です。
最後のエステルはシンプル
エステル基(-COO-)は重い酸素(O)を含み、かつ電気的な極性によって分子同士を強固に引き寄せます。
重い原子と極性によって炭化水素より高密度な構造となります。
密度が変化しやすい時点で鉱物油は不安定ということは言えそうですね。
PAOやGTLは低密度のまま高分子化出来るので分子量の割に増粘効果が高い。
調べれば調べるほど鉱物油はどこまで行っても鉱物油ですね。
逆にワックス異性化鉱物油だけは鉱物油の領域には居ないことを再認識。
【余談】
カストロールの10W-60の国内流通品は二つあります。
ひとつはVHVIベースです。密度は0.858 g/cm³
もう一つ10W-60があってそちらは密度が何と1g/cm³です。
PAOが添加されているようなことは書いてない、鉱油割合が10-20%なのでもしかしてエステルベースの10W-60なのかもしれません。
コンプレックス化すると重くなるのでコンプレックスエステルなのか??
ロマンですねw
普通に売ってるEdge10W-60はVHVIベースで、特殊ルート(BMW純正とか)の10W-60がエステルベースなのでしょうか?
VHVIベースでもBMW M-Modelsは認証取れてるようですし…
密度が全然違うから缶の重さを測るのもありかも?
4000*0.858=3432g(VHVI)
4000*1=4000g(エステル?)
缶の重さは360~400g程度なので4kgを大きく超える10W-60なら当たり。
金属缶じゃない可能性大なので上手く行かない気はしますw
【余談2】
エネオスのSDSは40℃動粘度が20.5cSt以上としか書かれていません。
不親切極まりない記載なのですが、これは第11項の有害性情報の対策のようです。
11項の中に「誤えん有害性」があります。
ペンズオイルの記載はこれ
「40℃の動粘性率が20.5mm2/s以下の炭化水素には該当しない。その他の情報はなし。」
40℃以下で20.5cSt以下の動粘度だと揮発性が高く、揮発ガスを吸い込む可能性があるためこのような表記があるようです。
なので20.5cSt以上と記載して「誤えん有害性は無い」ということです。
普通に動粘度書いてくれれば済む話なんですけどね。