
SKYACTIV-DRIVEは、マツダのSKYACTIVテクノロジーの一翼の担うトランスミッションで、大別されるトルコンAT、CVT、DCTのメリット/デメリットを十分に検討し尽した上で、全てのミッションの良い所を集約した画期的なトルコンATです。
ボク自身、これの存在がキッカケでマツダ車オーナーに戻ったばかりか、既に2台目のオーナーとなっていますし、これの出来には概ね満足しています。
その出来は間違いなく世界のトップレベルと信じているワケですが、ライバル各社も日々優秀なトランスミッションの開発を続けているわけで、座して進化を止めた瞬間に、アッという間に置いていかれてしまう恐い世界でもあります。
さて、SKYACTIV-DRIVEの課題です。
ボクは度々指摘しているのですが、1-3速と5-6速が非常にクロスしている一方で、そのどちらとも離れている4速というやや特異なギヤ比です。要は4速の守備範囲が広いという事になるんですが、これがどうも実用燃費や40~60km/h辺りのドライバビリティの足を引っ張っている節があります。
先日、
BMW320iの8速AT車を試乗する機会を得たのですが、普通に発進加速、巡航などをする上では全く遜色なく、
マツダの技術者が「(多段ミッションという)記号性以外、実用上の不利は無い」と公式には発言している通りと思ったものの、これが50km/hの速度を中心とした加減速の頻度が高い市街地走行となると、明らかにBMWに一歩ドライバビリティで譲りました。更にBMWの320d(ディーゼル)が実用燃費で15~16km/Lを叩き出すのに対してアテンザ、CX-5のXDが15km/Lを下回る事、一方でXDのMT車が17km/L以上である点を鑑みると(いずれも
カーライフナビのデータ)、SKYACTIV-DRIVEが足を引っ張っていると推察せざるを得ません。
なぜ1-3速と5-6速が非常にクロスしている一方で4速だけが離れているのか、真相はマツダの技術者に聞かなければ解りませんが、BLアクセラの後期モデル(つまりボクの前愛車)から市場に出たSKYACTIV-DRIVEの、ギヤ比の設計が必ずしも最適では無くSKYACTIV-G、そしてSKYACTIV-Dの実力を引き出し切れていないという
問題意識は、今のマツダ開発陣
にはあるのかもしれません。
なぜそんなことが解るのか?と思いますよね(^_^;)。
イキサツはこうです。
ボクはBLアクセラを購入当初、意外に伸びない実用燃費を不思議に思い、
かなり徹底的に好燃費運転を検証したことがあります。この結果解ったことは、
5速1200rpm(50km/h)、6速1200rpm(60km/h)での巡航燃費が意外に良くない
これを
5速1300rpm(55km/h)、6速1300rpm(65km/h)に上げてやると燃費が劇的に改善する
というもの。
50km/h、もしくは60km/hというのは日本の法定速度ではもっとも多い制限速度であり、そこに燃費効率の良い回転数が合わないというのはつまり、ギヤ比が日本の道に合っていないということになるワケですが、これは果たして日本の道路事情にだけ依存する問題なのか?
ちなみに一般的にはエンジンは回転数を抑えてやればそれだけ燃費には良好です。自動車メーカー各社がトランスミッションのワイド化、巡航ギヤのハイギヤ化を推進するのは高速巡航時のエンジン回転数を低く抑えたいのが理由です。
ではなぜ、SKYACTIV-Gは1200rpmより1300rpmの方が燃費が良いのでしょうか?これはSKYACTIV-Gの低燃費技術の一つである「遅閉じミラーサイクル」運転モードの特徴です。
SKYACTIV-Gは、巡航状態などの低負荷時には吸気バルブを遅く閉じるミラーサイクルに移行して燃費を稼ぎます。つまり2000ccの排気量ですが、吸気量を1800ccとか1600ccくらいまで減らして燃費を稼ぐんですね。このモード変更は完全自動で行われるためドライバーはほとんど体感することが出来ません。
しかし、トルクの大きなSKYACTIV-G2.5では僅かに体感出来る瞬間があります。
1500rpm前後でほとんどアクセルを踏まずに巡航していると、瞬間燃費は30km/L弱くらいを示しミラーサイクル運転をしている様子が伺えます。このときは2500ccの排気量に対して、もしかしたら2000ccくらいの吸気量に絞っているかもしれません。
ここでアクセルをジワッと入れてやります。つまり低負荷から高負荷に移行させるわけですね。
エンジンは遅らせているバルブタイミングを即座に適正なタイミングまで早めます。つまりそれまでの吸気量2000ccを2500ccに戻すんですね。この燃焼する吸気量の増加がまるでターボが利いて排気量が増えるようなフィーリングで、フワッとトルクが膨らみます。非常に特徴的で、他のNAエンジンではなかなか味わえない独特のフィーリングです。
話が逸れましたが(^_^;)、このミラーサイクル<->オットーサイクルの自動切り替えが、エンジンに掛かる負荷によって変化することから、エンジン回転数が低過ぎてトルクが細ると、SKYACTIV-Gはちょっとした負荷の増加で簡単にオットーサイクル運転に切り替わるため燃費は悪化、一方トルクに余裕があればミラーサイクル運転となるため燃費が良くなります。つまり1200~1300rpmで燃費が逆転するのは、SKYACTIV-Gがミラーサイクル運転出来ないためと推察できます。
というワケで、SKYACTIV-DRIVEは日本で比較的利用頻度の高い50km/h、60km/hというピンポイントの速度域で意外に燃費が良くないというギヤ比で、ここを若干外してやると燃費が好転するという性格だったんですが、、、
だったんですょ(^_^;)
なぜ過去形かというと、昨年11月のアテンザの年次改良で25SのJC08モードが15.6km/Lから16.0km/Lに改善しています。何が改良されたかというと、最終減速比を4.056から4.325と若干ローギヤに変更しているんです。最終減速比を低くすると、同じ速度ならエンジン回転数が
上がります。この最終減速比4.325というのは、アテンザ20Sと同じもので、4.056というのはBLアクセラ20Sとアテンザ25Sのものでした。
そしてBMアクセラ20Sの最終減速比も、
4.325となりました。。。(苦笑)
つまり実用上、SKYACTIV-Gのスイートスポットを若干外していると、
マツダでも遅まきながら気付いたということになります。で最終減速比というのはもっとも安直(笑)な手段ではありますが、6.6%ほど全体のギヤ比を下げました。そうするとこの1000rpm強のエンジン回転数の速度域で、丁度100rpmほど回転数が上がるんですね。
本当は全体のギヤ比を見直せばもっと色々と解決策があるのでしょうが、そうなると大改造でお金も掛かります。一方でアテンザ20Sの最終減速比に他のモデルを合わせるだけであれば、さほどお金も掛からず、かつ効果的です。
しかしもっとも大きな問題はやはり、その特異なステップ比が示す通り6速ではギヤ数が足りないということ。もう1速、段数に余裕があれば5速、6速の減速比の選択自由度も高かったでしょうし、4速の守備範囲が広がったが故の実用域の燃費悪化も防げたでしょう。またSKYACTIV-Gは最終減速比の見直しで効率を改善出来ましたが、SKYACTIV-Dにはこの手は使えません。
やはり7速化は時間の問題なのでしょうが、当然現行の6速の投資回収がある程度進まなければ次のステップには進めません。この辺が自社開発の辛いところですが、即座に改善しなければ全く競争力が無いというほど酷いミッションではありませんから、さほど悲観する必要もないんですけどね(^_^;)。
アテンザ25S、そしてBMアクセラの最終減速比をアテンザ20Sと同じ4.325にした件、なんで開発・テストの段階でそっちの方が良いと気付かなかったのかは勿論解りませんが、もし
ボクのブログの燃費運転検証がマツダの関係者の目に止まり、それが気付きとなってマイナーチェンジの改善に繋がっていたとしたら、ちょっと誇らしい気分ですね(^-^)。
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Posted at
2014/02/09 01:26:43