
先ず最初にお断わりしておきますが、ボクはトヨタが嫌いです。よってもってレクサスも好きではありません。しかしながらそれ故にレクサスの新型に難癖を付けているという低俗なブログではない(つもり)なので念のため。
ちなみにトヨタは大キライですが、豊田社長の大ファンではあります。是非、彼にはトヨタのクルマ造りというか、トヨタという会社、そしてトヨタの社員を変えて欲しいと応援しています。そういう意味では、このブログは豊田社長に対するエールと言えるかもしれません(^_^;)。大袈裟ですが。
レクサスというブランド、既に米国では十分に成功していると云っていい状況にありますが、欧州では今ひとつ、日本に於いても期待値には届いていないようで、2013年に豊田社長が自ら
「他のブランドにあって、レクサスにないものは歴史とストーリー」と語り、
ご自身が担当される事を決めたという事実もあります。
当時の彼曰く「
それ(レクサスが今後、どういう方向に行くのか)が(私にも)解らないから(笑)私がやると決めたんです。」
レクサスというブランドに歴史とストーリーが足りないというのはやや抽象的ですが、それ"も"頭の片隅に置きつつ、ボクが最新型のRC、特にRC Fの登場で感じた残念さから、レクサスの課題がボクなりに見えました。なるほどココか、と(^_^;)。
先ずRCとRC Fですが、クルマ自体の出来は大変素晴らしいようです(苦笑)。
自動車評論家のニューモデル試乗記は多分にご祝儀評論が多いので内容をそのまま鵜呑みには出来ませんが、特にRC Fの仕上がり具合は素晴らしいようで、それは評論家の試乗記の
書きっぷりから伺い知れます。要すれば、お定まりのご祝儀評論なのか、マジに「コイツは凄い」と思って書いているのかは「XXが素晴らしい」という同じ表現でも、試乗記全体の行間に滲み出るモノが異なるんですね。RC Fの運動性能に関しては、歴史やストーリーのある(笑)、MやAMGと肩を並べるところまで行ったのでは?と勘ぐって間違いなさそうに感じます。
また、そのクルマ造りへのアプローチも見るべきものがあって、開発者二名が語るその内容からも、従来のトヨタ/レクサスとは異なる何かを感じさせます。
レクサスRC【開発者インタビュー】 (2014.11.6)
レクサスRC F【開発者インタビュー】 (2014.11.19)
特にボクが感銘を受けたのが、RC Fの開発者、矢口幸彦氏が語った「「M」も「AMG」もベンチマークじゃない」というくだり。そして「僕たちはIS FとかRC Fを作っているのではなくて、「F」を作っているんです。」という言葉。
これって実はもの凄く重要な点で、例えば市場に出てしまえばRC FなどはBMW MやメルセデスのAMG、アウディのRSなどとどうしたって比べられてしまいます。ライバルを見て性能の優劣だけでクルマ造りをしてしまったのでは、結局のところこれらの先行するブランドに勝つことは出来ません。性能でライバルに劣らないことはこの手のパフォーマンスモデルでは非常に重要ですが、仮にその優劣を横に置いたときに、それでもライバルに互していける世界観を持っているかどうか?という点。
矢口氏が「我々はFを作っている」と語っているということは、彼らの中でレクサスのFという世界観が少なくとも確立されていることを物語っています。
それがMやAMGを凌駕できるかどうかはまた別問題なのですが(^_^;)。
というワケで、ここまで読めばRCもRC Fも大変素晴らしい出来で今後が楽しみ!チャンチャン!!なのですが、実は本題はココからです。
レクサス(トヨタ)は今回、相当に頑張ったんだろうという事を感じつつも、RC Fのスペックを細かく見ていくと"むむむっ、こ、コレは!?"という点が散見されます。先ず真っ先に目に留ったのが車両重量。RC Fって1,780kgもあるんですね(・・;)アララ
慌ててライバルのスペックを確認してみると、最新のBMW M4が1,640kg、先代のメルセデスのC63 AMGのクーペが1,800kg、現行アウディS4が1,800kgといったところ。なんとなくBMWのM3って1,500kg台だった記憶があって、RC Fのあまりの重さにビックリして再確認したところ、結果的にライバルに対して極端に重くは無い(むしろBMWが軽い)ことが解ったんですが、いずれにしても走りのパフォーマンスを売りにするクルマの割には決して軽い方ではないことは事実です。
ちなみに日産GT-Rの2014年モデルが1,750kg。
アウディのS4やGT-RはAWDですから車両重量的には不利ですし、そういう点から見ればメルセデスのAMGは重いクルマで、RC Fも同様に褒められたモノではありませんね。
そして次に目がいったのがエンジン。
欧州勢は軒並み、ダウンサイジング過給エンジンにシフトしようというご時勢に自然吸気の5L、V8です。ちなみに
ボク個人は自然吸気エンジン志向ですからRC Fのパワーユニットは
個人的には好感が持てますが、そういう次元の話ではありません(^_^;)。低負荷時にアトキンソンサイクル運転するモードはあるようですが、今どきアイドリング・ストップも無くJC08モードは8.2km/L。
ちなみに最新のBMW M4のJC08モードは12.2km/L。先代M3のDCTモデルが9.3km/L。メルセデスのC63(6.2LのV8)モデルが7.1km/Lだそうな。
車両重量だ、エンジンだ、しかもこの手のモデルに対して燃費の数字を持ち出して、コイツ一体ナニが云いたいのか?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが(^_^;)、ボクが云いたいのはこういった細かな数字を目にしたときに感じた"残念さ"です。
RCは「レクサスのイメージを変える!」という使命を帯びて生み出された、今後のレクサスを占うモデルの筈です。コイツには豊田社長の云うレクサスに足りない「歴史とストーリー」をこれから造り上げていくために先頭に立ってもらう、云わば数を売るという意味での基幹モデルでは無く、ブランディングを担うという重責を課せられた基幹モデルであると理解しています。
そのモデルの象徴ともいうべきRC Fのスペックを見た時にボクが感じた素直な感想は、
ライバルに対しての周回遅れ感です。
RC Fを単独で見れば素晴らしいクルマであろうことは解りました。時代性を横に置けば自然吸気の5L V8はボクにとっては魅力的です。しかし視野を広げて世間を見渡せば、BMWはV8 NAからお家芸と言える直6に回帰する一方でダウンサイジング過給という最新技術を投入して環境性能を飛躍的に向上させています。メルセデスも今年もう直ぐ6.2LのV8から4L V8ターボというダウンサイジング過給エンジンにスイッチした新生AMG C63をリリースするんです。
そんなライバルたちの動向から再びレクサスに目を転じ「レクサスのイメージを変える!」と謳うRC Fが旧態依然としたV8 NAを目の当たりにしたときの残念さ、これはもう如何ともしがたいモノがありました(^_^;)。大体、これで歴史とストーリーを作っちゃってイイんでしょうか?という懸念(苦笑)。
では全く逆の視点から、RC Fがどんなパワーユニットを塔載すれば良かったのか?と考えると、それはもうハイブリッドしか無いんです。
レクサスというブランドが他のプレミアムブランドとは決定的に異なり、かつ強みに出来る点はラインナップに広くハイブリッドパワートレインを持っている事です。このレクサスのハイブリッドはトヨタのソレ、そのもので自然吸気エンジンとモーターの組み合わせ。そして
トヨタがFIA世界耐久選手権(WEC)を自然吸気エンジン+モーターのハイブリッドで戦っている点とも整合性があります。
つまり、RC Fのパワートレインのあるべき姿とは、自然吸気エンジン+モーターのハイブリッドであり、それを積んだハイパフォーマンスモデルであったならば、BMWやメルセデスがナニを出して来ようが怖れるに足りず!・・・だったんハズなんです。。。
ここでレクサスの課題が見えてきましたd(・・)。
RCにもハイブリッドはあります。300hに塔載している直列4気筒DOHC 2.5リッター+THS II。しかしこれはそもそもRCの最量販ユニットであって、ハイパフォーマンスモデルには荷が重い。
GSが積むV6 3.5リットルエンジン+THS IIもシステム出力は348psに過ぎません。
LSが積む5L V8+モーターがシステム最高出力445psとようやくそれらしいパフォーマンスを持つものの、実際にRC Fに塔載される5L V8の477psに劣ることからも解るように、そもそもLSのパワーユニットはパフォーマンス志向のソレではありません。
更に、5L V8NAエンジン塔載で既に1,780kgもあるRCのボディに、LSのパワートレインなぞ積もうものならモーターとバッテリーの重量が加わる事からも、一体どのくらいの車重になってしまうのか?という大きな問題もあります。
■レクサスには歴史とストーリーが欠けている。
◎それら欠けたピースを埋めていくにはカッコイイクーペモデルも必要。
◎ISとGSの間を埋める、全く新しいRCというモデルを造って、それを足掛かりにレクサスのイメージを変えたい!新たな歴史とストーリーをスタートさせたい
○レクサスらしい(=他社には無い、他社とは違う)歴史やストーリーを紡ぐにはハイブリッドのパワートレインが理想的。
×ところがRC Fに似合う、相応しいハイブリッドパワートレインが現状存在しない。
▲(止む終えず)旧IS Fの5LのV8を全力でリファインして搭載した。
△結果的に出来上がったRC Fは決して悪くない仕上がりではあるものの、ライバルを見渡してみると、、、
とまぁ、こんな感じにボクは受け止めているワケです。
実際RC Fが上記の通りにレクサスのあるべき姿とは異なるプロフィールを持ったが故に、最量販の300hなどとは、特にパワーユニットのフィーリングに於いて落差というか、一貫性に欠いている節もありますし。(参考インプレ:
レクサスRC300h“バージョンL”(FR/CVT)【短評】 (2014.12.29))
ボクは別にハイブリッド信奉者ではないですし(そもそもハイブリッドを買ったことも無いし欲しいとも思わない)、レクサスのファンでもありませんが、豊田社長が先頭に立つこの日本発の高級車ブランドの成功というものには、純粋に日本人として、クルマファンとしては期待しているものがあります。
そのレクサスがやはり強みとすべきパワートレインは当面、ハイブリッドが最適だと確信する一方で、量販するユニットは豊富なれど、ブランドイメージを牽引するようなユニットが今のレクサスにはありません。環境性能を売りにするのではない、RC Fのようなモデルに塔載してパフォーマンスを誇りつつ、環境性能も素晴らしいというハイブリッド・パワートレインを持たなければ、BMWでもメルセデスでもない、レクサスならではのブランドを確立するには今ひとつ、パズルのピースを欠いたままのように思いました。
ただ逆に云えば、この欠けたピースさえ埋めてしまえば、未来は明るいのでしょうけど。
RCの出来うんぬんもそうですが、矢口氏が「僕たちはIS FとかRC Fを作っているのではなくて、「F」を作っているんです。」と語れるくらい、少なくとも製造の場は変ってきているのだろうと感じさせます。後はそこから生み出される商品(クルマ)にストーリーを語らせ、歴史を刻ませることさえ出来れば、、、ねd(^^;)