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2015年01月31日

マツダコネクト物語:第五章

マツダコネクト物語:第五章 ※この物語はフィクションです。登場する人物、企業、製品、団体等は実在するものとは全く関係ありません。事実じゃありませんww

第五章:役員会緊急議題

アクセラ発売から丁度3ヶ月になろうとする2月の下旬。定例の役員会の議題にマツダコネクトに関する最新状況を報告する場が設けられた。販売の現場に寄せられるお客様の声、コースセンターへの問い合わせ、ウェブサイトに投稿されたオーナーズボイス、その他、マツダコネクトに関わる様々な事象を各部門が報告することになる。製品の主管部局の担当責任者である松本も、製品の保守担当である田中から詳細な情報を入手して報告書をまとめることになった。

田中:・・・以上がこれまでの動きと関連する資料一式です。

1月下旬に役員会が緊急議題としてマツダコネクトを取り上げる旨、通達が出てから直ぐ田中は松本からの指示を受けて報告のネタを準備していた。

田中:いよいよですね。第一関門。

松本:想定よりひと月早い展開だな。勿論これは嬉しい誤算というヤツだが、、、

田中:頑張って下さい!

松本:あぁ、これで道筋を付けられなければ田中君の苦労が報われんし、小峰君の出番が無い。しかしこの短い時間によくここまで状況を整理してくれた。この2ヶ月は大変だったと思うが。

田中:ウチのチームには今、「女神さま」が居ますからね♪(^_-)-☆

松本:めがみさまぁ??(・・;)?


田中の言うめがみさまが、12月中旬に田中のサブである大島から相談されて起用した派遣社員の女性である事に、このときの松本は思いが至らなかった。

事前に想定してたのは3月の役員会であったが、それを1ヵ月前倒す形で松本は国産ナビ開発の道筋を付ける機会を得た。松本にとっての最初の戦場である。

担当部門としてマツダコネクトの問い合わせ状況、不具合の対応状況や課題を整理して報告するのは勿論だが、松本は役員会を仕切る経営企画部門に働きかけて、役員会当日の議事進行を練った。報告を上げて貰う他部門の報告内容にも、他車種(例えばCX-5やアテンザ)とときとアクセラの対比を必ず盛り込んで貰うことなどを提案し、密に連携しながら準備を進めた。

自動車会社としては小さな規模のマツダではあるが、他の業種業態を含めて見渡せば、十分に大企業である。役員会は当然、会社の舵取りを担うわけであるが、過去の投資、現在の生産と販売、今後の開発、生産に関することなど、役員が決済しなければいけない重要事項は多い。そういった数多くの案件を役員会という短い時間で処理していかなければならない。

経営企画部門の手腕が問われる場である。

出席する役員に如何に案件のポイントを短時間に正確に理解して貰うか?その上で、何を選択することが会社にとって最善の選択かを諮り、GO/No GOを判断頂く。役員会に「困りました。どうしましょう?」などと問い掛けても無益だ。上申する主観部門が明確な意思を持って「これが会社にとって最善だからやらせて欲しい」と訴え、許可を得るのが役員会の場である。そういう意味に於いては、マツダコネクトの問題は最近の会社にとっての重要案件ではあったが、数多く存在する案件のひとつに過ぎないこともまた事実であった。

そう、役員会の議題として取り上げてもらうことにはなったものの、緊急議題に上がる以前から戦いは既にはじまっており、役員会当日までの準備如何で勝敗のすう勢は決まる。当日の審議は無論、勝敗を決する正念場ではあるが、万全の準備をして臨みたい松本であった。

2014年2月某日:役員会当日。

マツダコネクトに関する報告は松本の思惑通りに進行した。先ず販売部門、そして顧客と接点がある各部門からその"異常ぶり"が次々に報告された。特に各部門が一様にCX-5、アテンザの両車種との対比を示したのが効果的だった。アテンザは発売後に減速エネルギー回生という新機構の中核部品に欠陥が見つかってリコールを行っているが、そのときの状況が良い比較材料になったのだ。緊急の出荷停止措置を行ってからリコールの発表までの半月間、販売店やコールセンターには多くの問い合わせが殺到して混乱状態となり、リコール発表後、数ヶ月の対応期間を経て収束しているのだが、それが実質的に大きな問題が何も無かったCX-5との違いとして顕著に現れていた。そしてアクセラは、アテンザのリコールで生じた混乱に近い状況が、発売開始後の間もない時期から生じていて、それがほぼ常態化している様がハッキリ表れていたのだ。
それらの報告を受ける形で最後に商品本部から、マツダコネクトの担当として松本が問い合わせ対応の状況と原因分析、今後の見通しを報告した。役員会の場に集う顔ぶれの中にあって、かかる事態を招いた張本人とも云える松本だが、報告内容は客観的、かつ説明口調も分析官とも評論家とも云える冷静なものだった。問い合わせはナビを中心にシステムの広範囲に及ぶこと。システムの再起動が度々起こり、不安定なシステムという印象を与えていること。日本市場向けナビは特に不具合と思われる問い合わせが多いこと。日本以外の仕向地のナビには意外に同様の不具合報告がないこと。日本向けナビの不具合修正に時間が掛かっていること、など。

松本の報告が終わった後、役員のひとりが呟いた。

役員A:或る程度覚悟はしていたが、予想以上だな、これは。

役員会のメンバーは当然、マツダコネクトの開発にGOサインを出したことも、アクセラの市販を目前にして日本国内向けのナビに大きな不安がある事も、そのナビが今回日本市場に初めて投入されるN社製のソレである点も承知していた。全てこの場で、このメンバーが決めたことだから。

役員B:ナビの不具合対応の見通しは?N社の対応は開発時点から変化はあるのか?

松本:マツダの担当者からお客様の声を併せて粘り強くコミュニケーションを取り続けた結果、少なくとも現場レベルでは開発時とは動きが変りつつあります。しかし目に見える結果には残念ながらまだ。。。


このやり取りは、役員が開発過程で苦戦をした経緯も、N社側の対応が必ずしもマツダの期待通りではなかったことも承知していたことを物語る。

役員C:私はアクセラを発売するまでは、マツダコネクトのようなシステムやナビの出来が、クルマの評価にこれほど大きな影響を与えるとは、正直思っていなかった。スタイルも乗り心地も燃費も、大変満足していると仰っている(ユーザーズボイスの)お客様が、ナビの不具合でアクセラを買ったことを後悔しているとすら仰る。しかもひとりやふたりじゃありません。恥ずかしながら、認識が甘かったと認めざるを得ませんね。

他の役員は黙っていた。しかしこれは、他の複数の役員も同様であったことを物語っていたのかもしれない。長く既製品のディーラーオプションに甘んじていたマツダの、初のシステムであった。それが顧客満足度に与える影響は、調査会社のリサーチレポート等で知識としては理解していたかもしれないが、実感が伴っていなかったとしてもやむを得ないことかもしれない。しかし商品を購入した顧客からすれば、当然仕方が無いでは済まされない。

CEOが口を開いた。彼はマツダコネクトの開発にGOサインが出た後にCEOに就任していたが、それ以前の経緯にも当然関与はしていたし、かかる事態を如何に収拾するか?について全責任を負う立場だ。

CEO:過去の経緯に思いを致しても仕方が無い。我々として反省すべき点は素直に反省するとして、問題はこれからどうするかだ?ナビ以外の部分の品質改善は可及的速やかに実施するとして、ナビに関しての見通しは?やはり国産の投入は避けられんか?

スクリーンには発表資料の最後のページ「今後の課題」が投影されている。そこに掲げられた課題の最後のひとつに「国産ナビ開発の検討」と記されていた。松本が応じる。

松本:現行ナビプログラムの改善は継続します。お客様の不満を解消するにはもっとも早道です。N社にも事態の重要性を正しく認識して頂くよう、願わくば会社名で品質改善の取り組みを加速するよう申し入れをお願いしたい。

役員D:それは直ぐに出そう。開発担当の私と、調達関係のEさんの連名で。

CEO:いや、私の名前で出そう。事の重要性に対するマツダの認識を示す意味でも、その方が良かろう。

松本:ありがとうございます。担当としても全力を上げます。それはそれとして、両社の努力がお客様の期待に届かないリスクに対して、コンテンジェンシープランは必要と考えています。これ以上の改善策が見付からない手詰まりに至ってから国産化の検討を始めたのでは、市場投入は更に先になってしまい、解決までに多くの時間を要します。

CEO:よろしい、私は国産の検討を許可したいと思う。上手く品質改善が果たせれば良し。期待に届かなくても代替策の準備があれば問題解決の目処もたつというものだ。皆さん、異論はありますか?


他の役員から異論は出なかった。CEOはマツダコネクトを含めた商品開発を束ねる役員の方を向いて述べた。

CEO:うむ。では早急に国産ナビの検討を開始し、来月の役員会に申し立てるように。そこで開発の是非を判断したい。

役員D:わかりました。


CEOは役員から松本に視線を移すと続けた。

CEO:検討結果は来月の役員会に必ず間に合わせるように。開発期間、コスト、事業計画への影響、数字は多少粗くても構わない。開発は半年なのか一年なのか。コストは2割り増しなのか倍なのか、マツダコネクト事業は赤字になるのかならないのか?今回に関しては正確性よりスピードが大事だ。材料が全て揃わなければ判断が出来ない。その点を十分に留意して検討結果を持ってきてくれ。

松本:承知しました。ありがとうございます。


松本は席を立ち、役員たちに向かって深く頭を下げた。

最後にCEOが付け加えた。

CEO:但し国産ナビの検討開始は、当面極秘だ。N社はグローバルには大切なビジネスパートナーであり、日本以外の仕向地に対しては引き続き同社の製品の提供を受けることになる。両社の関係に余計な亀裂が生じないよう、くれぐれも配慮を怠らないように。

松本:了解しております。それは、もう。


日本市場向けの国産ナビ開発具体化に向けて、会社から正式な許可を得た瞬間だ。これで小峰技術者は自由に動けるようになるが、与えられた期間はたった1ヵ月。そこで国産ナビの市場投入の実現性と、それが今、我々が抱える問題の解決策に成り得ることを役員たちに認めて貰う必要がある。

松本と小峰の戦いは、ここから最初の山場を迎える。
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Posted at 2015/02/01 11:55:14

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この記事へのコメント

2015年2月1日 12:08
こんちはっす!

ヤキモキしてました。
然るべきところからなんかあったのかなー、なんて。
ああ、よかったぁー♪安心しました。

てなところで、これからじっくり♪
タッチ_さんの世界を堪能させていただきます(⌒‐⌒)
コメントへの返答
2015年2月1日 12:51
こんにちわ。

> ヤキモキしてました。
ハテ、ナンのことでしょう?(゜゜)☆\ポカッ

一日一本という宣言通り、ちゃんと1/31分として投稿してますょ♪

なぜか投稿日付が2/1ですけど(爆)。
2015年2月1日 12:59
あっ!ホントだ!
さすが押さえるべきところゎ抜かりなく
しっかり押さえていらっしゃる(笑)

そろそろiDM先生ネタ書きたくて
ウズウズしてきてませんか?タッチ_さん!(笑)
コメントへの返答
2015年2月1日 21:49
ワタシをダレだと思っているのだ?<(`^´)>
(笑)

> そろそろiDM先生ネタ書きたくてウズウズしてきてませんか?

別に…(苦笑)
ボクのブログネタは別にi-DMだけじゃないんで、、、(^_^;)
2015年2月1日 22:09
話の分かるCEOで良かったです (*^_^*)

いよいよ小峰君の出番ですね♪

タッチさんの登場はまだでしょうか

それから1つ質問が。。。
奥様のお名前は『香織』さん?? (*^m^*)
コメントへの返答
2015年2月2日 2:01
この展開で、決断出来ないCEOじゃぁ、会社が傾くでしょう(^^;)。

タッチ_さんの登場はまだまど先ですねぇ(笑)

かおりさんには見事にフラレました(苦笑)。

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「@くりんきー さん、これはボクも知りませんでした😅」
何シテル?   08/20 13:50
意のままに、思い通りにクルマを操ることに興味があります。 ドライバーの意のままに反応するクルマが好きです。 そんなクルマの技術的背景、メーカーのクル...

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