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2015年02月09日

マツダコネクト物語:第十四章

マツダコネクト物語:第十四章 ※この物語はフィクションです。登場する人物、企業、製品、団体等は実在するものとは全く関係ありませんww

第十四章:最後の難関

2014年12月某日、とある居酒屋の個室で田中、小峰の両技術者が上司の松本を待っていた。この店は今から約13ヶ月前、三人が密談したあの場所である。マツダコネクトの日本向けナビに大きな不安を密かに抱えていた彼らは、市場に出来るだけ早く日本市場に合った国産ナビを投入する事を画策し、約一年の奮闘の末、来月の正月明けに発売する大幅改良したCX-5、アテンザへの塔載に漕ぎ着けたのだった。松本はこの日もやや遅れて現れた。生ビールを頼んで、先ずは祝杯を上げる。

松本:年明けにはいよいよナビPLUSの発売だ。二人ともこの一年、本当に良く頑張ってくれた。ありがとう。まだ最後の難関が残ってはいるが、今日のところはこれまでの二人の努力を労わせてくれ。

田中:小峰君は良く頑張ったよな。

小峰:田中さんが影の功労者ですよ。ボクなんかより何倍も大変だった筈です。


三人はお互いを労い、この一年の苦労話に華が咲いた。しかし松本の言う「最後の難関」が三人に影を落としており、自然と話題がそれに及んだ。

田中:やはり、一筋縄ではいきませんかね。販売してしまったアクセラとデミオのオーナーさんたちへの対応は。

松本:先月の役員会でも話題にはなったそうだが、結論が出るには時間が掛かりそうだな。

小峰:マツダコネクトは!『古くならないシステム』という画期的なコンセプトを掲げてるんですっ!!一年経って国産ナビが出来てっ!「アナタのマツダコネクトはもう古くなっちゃったんで、このナビは使えないんです」なんて有り得ないでしょー!!!

松本:ちょっ・・・落ち着け!小峰君(苦笑)

田中:酔っ払ったか?(苦笑)

小峰:よっぱらってなんかいまへん!

田中:古くならないシステムがコンセプトと言っても、ナビプログラムを刷新することまでは、、、(苦笑)

松本:H/Wの交換も想定外だしなぁ。。。(苦笑)

田中:それがネックですか。。。

松本:いや、我々の素案に対して別に誰かが反対しているとか、そういうワケではないよ。色々とクリアしなきゃならん問題があるってことだ。

田中:じゃぁ、何がネックになっているんです?

松本:我々の素案は5月にやったのと同じサービスキャンペーンだが、そもそも今回の問題はリコールとかサービスキャンペーンには本来、該当しない。販売した車両は基本的にオーナーの所有物であって、メーカーが後からどうこう出来るモノではない。しかしメーカーの製造物責任に照らして、安全性に問題がある場合に法的根拠を与えて改善を行うのがリコール制度だ。今回の
(マツダコネクト・ナビの)問題は、クルマの安全性に直接関係しないからな。5月のサービスキャンペーンはある意味、異例の措置と言える。

田中:やはりそうですよね。もっとも、それを前例というか口実に、今回もやってしまおうという確信犯的な案だった筈ですが、、、

松本:今回、5月と決定的に違うのはナビソフトが全く違うモノになるという事だ。カタログ上も異なる製品ということになっている。こういった変更がリコールやサービスキャンペーンの内容として妥当なものなのか?という話。

田中:やはりダメ、、、ですかね。

松本;今、法務部が確認中だ。先ずは彼らの回答を待たなければ、サービスキャンペーンとして処理できるかどうかがわからない。

田中:他の部門からは何か言ってきていますか?販売部門とか。

松本:営業は基本的にサービスキャンペーンを歓迎してくれているが、異論も出ている。販売の現場ではお客様から相当にお叱りを受けていたからな。使い易いナビに無償で交換出来るならそうしたい、という声と、公平性に問題がないかを懸念する声だ。

田中:公平性・・・ですか?

松本:例えば既にアクセラやデミオを購入されたお客様のCMUやSDカードを無償で交換するとしよう。以前のSDカードは\36,000で、ナビPLUSより\12,600安い。一方で、ナビPLUSが使えるようになるまで待ってデミオやアクセラを購入したお客様がナビPLUSを使おうとすると、、、

田中:なるほど。\48,600払わないとナビは使えない。既にオーナーの方々が得をすることになりますね。じゃぁ差額をお客様に負担して貰うとすると、、、

松本:お客様に費用負担をお願いする時点で、リコールにもサービスキャンペーンにも該当しなくなる。であればナビPLUSへのアップグレードキャンペーンのような形にせざるを得なくなる。ただそうすると、希望しないお客様が出てくる可能性が出てくる。

田中:我々が懸念していた事態になってしまいますね。旧ナビが市場に残ることに。

松本:N社には引き続き製品サポートをお願いせざるを得なくなる。

田中:彼らはもう、撤退モードなんですか?

松本:それは無いよ。田中君なら良く解っていると思うが、彼らは社員も会社も誠実だよ。市場に製品を出した限りは、必要なサポートというか、義務を彼らの側から放棄する事は無い。ただ、今のバージョンに対して3年間の地図更新とバグフィックスはしてくれても、機能改善はもう難しい。

小峰:だからぁ!アクセラやデミオを購入されたお客様にも新しいナビをぉー!!

松本:落ち着け!小峰君(苦笑)

田中:こりゃ飲み過ぎたな(苦笑)

松本:この一年、ソフトの改善に努めてきた彼らだ。日本市場の評価も受けた。今後の可能性という意味では彼らなりの判断があるだろう。以後の新モデルのオプションリストに載せないことになった以上、市場に残る製品が全てナビPLUSに置き換わってしまえば、彼らも新たな利益を生まない製品を保守し続ける義務から解放される。先日発表があった新商品に(人的)リソースを集中出来る。こうなってしまった以上、市場から彼らの製品を回収してしまえれば、彼らにとってもメリットがある。

田中:なんとかお客様にご納得頂く形で、全てのナビを置き換える方法はないですかね?

松本:そもそもナビはオプションだからな。SDカードを購入していないお客様も少数ながら居るらしい。彼らに有償で交換をして貰うのは困難だろう。SDカードを購入したお客様でも、有償と知った瞬間に抵抗感を覚える人は居るだろうしな。

田中:感情的に「不良品を掴ませた上に、まともにするために更に金を払えだと?」なんてね。

松本:我々としても耳が痛い話だ(苦笑)。

田中:細かい話になりますが、有償交換を希望しなかったお客様の車両が数年後に中古車市場に流れて、それを購入したオーナーがナビPLUSを使いたい、となったらどうするんだ?とか。

松本:そういった細かな点をひとつひとつ詰めていくより、確実に該当車種を手当てしてしまうためのサービスキャンペーン案だったからな。

田中:他に障害になりそうな話は出ていますか?

松本:本社の財務部門は基本的に難色だよ。会社の業績に関わる話だから当然なんだが(苦笑)。

小峰:目先の利益を優先して、お客様満足を考えないなんてケシカラーン!これだから間接部門はっ!

田中:小峰!えーかげんにしろ!!

松本:やれやれ(苦笑)。サービスキャンペーンとなれば会社の利益に影響するからな。半期決算で過去最高益を記録したとはいえ、量販車種であるアクセラとデミオにリコールなりサービスキャンペーンとなれば、相応の負担は避けられない。

田中:ただ、小峰君じゃないですけど、会社の利益を守るために顧客を切り捨てるかのような発言をする人が居るとしたら、ボクも面白くは無いですね。

松本:ははは。誤解しちゃいけないよ。財務部門の連中は会社の業績に責任を持って職務を行っている。それ故の発言だよ。仮に今期末時点のアクセラ、デミオの国内累計出荷台数が10万台だったとして、1台当り5万円の費用負担が生じれば50億円。10万円なら100億円だ。部品代だけじゃなくサービスマンの工賃だってあるしね。会社の半期決算の経常利益がいくらだったか覚えているかい?

田中:あ、、、いえ(汗

松本:株主に業績見通しを発表している以上、下方修正は極力避けたいというのが彼らの思考だよ。これが本当に製品の安全性に関わる問題なら躊躇無くリコール費用を出してもくれるが、今回は我々開発部門の、言ってみればチョンボによる異例の対応という事になる。彼らからすれば、品質の悪い製品の販売に踏み切った挙句、異例の顧客対応で更にお金を使いたいって「ナニ考えてんだ?バ●ヤ●ー!」という話だな(苦笑)。

田中:ハハハ・・・返す言葉がございません、ってところですね(苦笑)。

松本:ひとつ聞かれたのは、実施は来期に入ってからではマズイのか?という話。4月以降であれば、こういった費用負担はこれから来期予算に組み込めるし、今期の業績に影響を与えない。

田中:あぁ、なるほど、そういう話ですか。

松本:そもそもこの話は、アクセラとデミオのオプションをナビPLUSに切り替えた後じゃなければ実行に移せない。サービスキャンペーンにしろアップグレードキャンペーンにしろ、製品を売った傍からキャンペーン適用というのも変な話だし。

田中:そうですね。

松本:財務部門が難色といっても、最終的に費用負担を決断するのは役員会であり議長のCEOだ。財務部門は彼らの観点で役員に対し判断材料を提供するに過ぎない。費用を掛けてお客様のために何かをし、それが巡り巡って会社のためになる、という判断が出来ればGOサインも出る。一方で、費用は掛けたが効果は限定的、多くのお客様が納得いかないというのでは、折角掛けた費用も無駄になる。要するに、何が最善かを判断する材料が、まだ揃っていないってことなんだ。

田中:なるほど。会社の中でも立場が違うと色々な意見というか、観点があるんですね。結論が出るまでもうしばらく掛かるってことですね。

松本:そういうことだ。

田中:まぁ、最低でもCMUを交換してSDカードを買えば新しいナビは動きます。小峰君がそこだけは守ってくれましたからね。

松本:そうだな。もし希望されるお客様はご自身の負担で、となれば不満を漏らす人たちも出るだろうが、そうならないように全力を尽くそう。ん?小峰君は轟沈か?(苦笑)

田中:みたいですね(苦笑)


座椅子の背もたれに寄りかかって首を垂れている小峰を見て、二人は微笑んだ。

エピローグにつづく
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Posted at 2015/02/09 12:14:22

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