
一週間ほど前にマツダが開発中の、巷では
SKYACTIV2と呼ばれる第2世代のガソリンエンジンについての妄想を書きました。
要点をまとめると、
・第1世代SKYACTIV-G(ガソリンエンジン)は低負荷時にバルブ遅閉ミラーサイクル・中高負荷時に高圧縮比(13/14)で昨今流行りのダウンサイジング過給と同等の性能を自然吸気エンジンで実現した。
・中高負荷時は高圧縮比が効いて引き続き優位性を保てる(とマツダは考えている)が、現状カタログ燃費等に影響する低中負荷時はダウンサイジング過給に負けていて、ここが今後の改善ポイントである。
・低中負荷時の効率改善にはHCCIが有効と判りこれの実現に向けた開発を進めているが、どうやら低中負荷時は圧縮比18程度でHCCI、中高負荷時はバルブ遅閉で圧縮比13-14程度としてSI燃焼させる方式らしいという噂がある。
・そうすると第2世代SKYACTIV-Gは、中高負荷時の出力が第1世代より少なくなるため排気量を増やす必要が生じるが、この仮説は最近人見さんが発信している「ダウンサイジングよりアップサイジング」という話と符合する。
・そうすると、現状最大排気量となるSKYACTIV-G2.5の後継エンジンは3-3.5Lくらいが必要になるが、四気筒でこの排気量は現実的では無く六気筒が妥当となるものの、マツダはどうするつもりなのか?
というところまで、でした(^^;)。
なぜマツダが3LオーバーのV6を作ることが難しいのか?開発自体はさほど困難は無いでしょうが、
問題は十分な数が売れるか?です。
昨今のマツダは身の丈にあった事業戦略に絞り込んでいて、アテンザ/CX-9クラスを上限と定めています。もし3LオーバーのV6を作るとなれば、搭載車種はアテンザ、CX-9のみ、地域によってはCX-5までといったところでしょう。しかもこれらの車種でも全量に搭載されるワケではありません。少なくとも欧州や日本では2.2Lのディーゼルの方が競争力があるものの、ガソリンの3-3.5L V6を積んだとして更なる競争力強化に繋がるかは微妙。しかし悩ましいのはディーゼルに競争力の無い重要な市場がいくつかあって(代表は北米とロシア)、そこには現状ガソリンの2.5Lを展開してるものの、これの後継エンジンは絶対に必要、という一種のジレンマですね。
無論、コスト高(=低利益率)を承知で作るという決断(経営判断)も出来るワケですが、ここいら辺の事情を想像している無責任な外野(笑)としては、マツダがどのような決断を下すのかが興味深かったりします。個人的には3.5~3.7LのV6で15-17km/Lくらいの性能のクルマが出てきたら面白い、なーんて期待してたりしますが、、、(^^;)。
そんな無責任な妄想に拍車を掛ける事実があります。例のトヨタとの業務提携ですd(^.^)。
ちょっと脱線しますが、巷では「マツダがトヨタに食われる?」みたいなお子ちゃまな反応をした大人が多かったよーですが(苦笑)、両社トップが合意書を交わした例の会見で「これから検討委員会を立ち上げて具体的な中身を決める」と言っているワケですから、外野が余計な心配をしても始まりません。その両社の思惑ですが、マツダは明確、トヨタは???って感じで、ボクはこう見ています。
マツダの思惑は間違いなく「電動化技術の製品化」に向けて、云わば「時を買いたい」というところでしょう。SKYACTIVで既存の内燃機関の効率改善に全開発リソースを集中している筈ですが、電動化技術に全く手を付けない、というワケにはいきません。こんなことを書くと「マツダには是非、内燃機関一本で頑張って欲しい!」なーんてお子ちゃまな意見を言う人が必ず居るんですが、
こちらの記事でも紹介されているようなZEV規制などといった話が目前に迫っています。重要市場のひとつである米国で「企業規模に応じて一定割合はZEV車を販売する義務」が生じ、これを果たせない企業はクルマの販売が出来なくなる、なーんて話ですから、好むと好まざるとに関らず、ZEVを早急に準備せざるを得ません。そう、マツダに選択の余地は無いんです。となればアクセラHEVで協業したトヨタは格好のパートナーで、先ずはトヨタの技術でZEV車(PHEV?)を開発して目先の課題をクリアしつつ、そこから得たノウハウと、第2世代SKYACTIVの環境性能を組み合わせた独自のZEV車開発の足掛かりにしたいハズです。
一方のトヨタですが、ハッキリ言ってトヨタ開発部門はマツダのSKYACTIVなど「別に欲しくなんか無い」って思っているでしょうね(苦笑)。例の業務提携が発表になった後、一ヶ月ちょっとしてまるで測ったかのように
新型ディーゼルエンジンを発表したあたりは、まぁトヨタのエンジン屋のプライドでしょう。「マツダのSKYACTIV-Dなんぞに頼らなくても、その気になればクリーンディーゼルなどいつでも出せるぞ!」と。ガソリンエンジンだって既にデミオのG1.3の向こうを張れる高効率エンジンを市販済みです。
開発部門が「別にマツダの技術なんか欲しくない」と思っているとしたら、じゃぁトヨタの思惑はなんなのか?
極めて個人的な予想(邪推w?)ですが、恐らく豊田社長がトヨタの社員に「昨今のマツダのクルマ造り」を見せたかったんじゃないかと(^^;)。豊田社長が「もっと良いクルマ造り」を掲げて随分と経ちますが、一方でマツダはCX-5以降の「第六世代商品群」で、かつての一発屋の汚名を完全に払しょくしました。クルマ好きがワクワクし、オーナーが「運転するのが楽しみになった」と言い、それが次々と出るクルマに見事に連鎖しています。そして実際のクルマ(商品)もオーナーはもとより専門家からも高評価を得ています。業務提携の会見で豊田社長ご自身も述べてますが、恐らく彼が目指しているクルマ造りの姿を今のマツダが体現しているように見えていて、なぜそんなことが出来るのか?マツダの社員は何を考えてクルマを作っているのか?そんなマツダの技術者とトヨタの技術者がコラボすることによって、なんらかの気付きだったり刺激を与えたいのではないか?つまり具体的な技術や商品(エンジンetc)ではない部分に魅力というか、価値を見出したのではないか?と思っています。豊田社長が謳う「もっと良いクルマ作り」って、クラウンをピンク色にしたり、アニメキャラをモチーフにした特別仕様車(シャア専用オーリス)を作ることじゃないでしょ?という話(苦笑)。
ただね(^^;)
もしそうだとしたら豊田社長の意図は痛いほど解るものの、結構難しい話だよなぁ、とも思います。
ホンダとトヨタの違いって「クルマ好きの技術者がクルマ好きを喜ばせるためにクルマを作っている」ホンダに対して「優秀なエンジニアが社会に求められている優れたクルマを作っている」トヨタってのがが根っ子にあるとボクは考えているのですが、じゃぁ今のマツダは?といえば「クルマ好きの技術者がマツダ好きを喜ばせるためにクルマを作っている」ってくらいにターゲットを絞り込んでます。逆に言えば「クルマが好きでもマツダが好きじゃない人にまで買って貰おうとは思わない」というくらいの割り切りですょ(^^;)。そもそもトヨタにそれは出来ないワケで、この業務提携がトヨタにどんな利得をもたらすかは懐疑的と言う個人的見解を含めて興味深く見ています。
で、随分と長い前置きになってしまいましたが、ここから本題に戻ります。
第2世代SKYACTIV-G(ガソリン)エンジンがアップサイジング必須となった場合、2.5Lを超えるエンジンは必要なのだが4気筒では限界があり6気筒にせざるを得ない。しかしマツダ単独では、車種ラインナップもそのエンジンが競争力を持つ市場も限定的で、作っても数が捌けません。限られた生産基数で事業採算を取ろうとすると、車両価格に転嫁する(販売価格を上げる)か、ギリギリ低採算でしのぐか(売れても利益が少ない)、という苦しい経営判断が迫られる可能性が高い、とボクは見ていると述べました。
ところが、、、もし、、、ですょ(・・)b
新規開発したオーバー3LのV6エンジンを、トヨタが買ってくれるとしたらどうでしょう?(^.^)b
具体的には北米仕様のカムリ、そしてレクサスESには現在、横置きのV6、3.5Lの自然吸気エンジンが載っています。ライバルの日産マキシマ、ホンダのアコードも同様に3.5L、V6エンジンを搭載していますが、最新の技術動向を鑑みればこれらの車種が次世代にスイッチする際には2~2.5Lのダウンサイジングターボに切り替わる可能性は十分にあります。カムリ、アコードに関しては既にラインナップに2~2.5LのNAエンジン+モーターのハイブリッドもラインナップしてますしね。
大排気量マルチシリンダーの自然吸気エンジンが過給器を付加した(相対的に)小排気量の四気筒に切り替わっていくのはトレンドで、トヨタ自身も欧州向けレクサスISには既に四気筒ターボを搭載しています。この流行りがなぜなのか?といえば、今後求められる環境性能を大排気量NAエンジンではクリアできないという純粋に技術的な問題があるのですが、各社は当然、各国の環境規制や市場のニーズに応えていかなければならないワケで、技術的な解決手段が無ければ背に腹は変えられない世界です。
しかし一方で、アッパーミドルと言うか微妙に高級車にカテゴライズされるこのクラスに於いて、ほとんどメーカーが4気筒エンジンに切り替わる中「ウチは6気筒、積んでます!」というのがどのくらいの「売り」になるか?という話です。
そう近い将来、自然吸気の大排気量マルチシリンダーで環境性能をクリアできるのは、マツダだけかもしれないのです。
現在のアテンザの年間生産台数は全世界で20万台規模ですが、エンジンは2L、2.5Lのガソリンと2.2Lディーゼルの三種類。つまり2.5Lガソリンエンジンは多くても7~10万台前後の規模となります。一方トヨタのカムリは北米市場のみで年間40万台を販売しています。エンジンが2.4L、3.5Lのガソリンとハイブリッドという3種類を擁しますが、これにレクサスのESが加わります。
もしトヨタが「北米、並びにアジア地域向けにSKYACTIVのV6が欲しい」となれば、マツダにとって懸案である生産基数の確保という課題は一気に解決することになります。Powered by SKYACTIV-G2って事ですな(^^;)。
勿論、こんなヨタ話はマツダの社員の一部の腹の中にもあるかどうか解りませんが(苦笑)、提携する業務内容を詰めている検討委員会でもしも遡上に上ることになれば、トヨタにもマツダにも双方にメリットがある上に両社にデメリットは何もありません。せいぜい一部のマツダファンが「トヨタ車にマツダのエンジンを載せるなんて!」と文句を言うくらいでしょうが、そもそもこの話が無かったらマツダはV6を作りたくても作れないかもしれんのです。ボクは次期アテンザに3.5L V6のSKYACTIV-G2が載るか/載らないか?の瀬戸際ともなれば、このエンジン供給話はWelcomeですね。
というところで、このヨタ話が本当にヨタ話で終わるか、或いはズバリ未来を言い当てた鋭い予想となるか、結論は2018年以降まで待たなければなりませんが、、、(^_^;)
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Posted at
2015/07/29 00:12:15