
さて、折角数日の運転経験が持てたので、
プロの試乗記のことは横に置いてボクなりの
CX-8の試乗記を書こうと思ったのですが、、、
実はもしかしたら
自分は当初の想定外の貴重な体験をしたのではないか?と思い至り、これは是非紹介しておこうと思いました。マツダが最近公表している次世代商品に適用していく新しい考え方。それは「人間の潜在能力を活かす」クルマ造りだそうで、SKYACTIV Vehicle Architectureと共にここ1年半ほど、メディアでも度々紹介されてきました。ボクも2本ほどブログを書いていますが、、、
スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャに驚愕 2017年10月10日
SKYACTIV Vehicle Architectureの注目点 2018年04月09日
ただその考え方に基づいて作られたクルマは、第7世代商品である新型のMazda3が登場するまで、体感する機会は無いと思っていました。実際はこの考え方を一部取り入れた改良CX-3、改良アテンザが昨年登場しているので、これらに乗ればマツダがやろうとしていることの片鱗くらいはわかったのかもしれません。しかしマツダが6.5世代と云う通り、基本的に第6世代のH/Wに第7世代の考え方を一部投入したとしても、その効果がどこにどう出るのかは想像がつきません。
ましてやCX-8は一昨年の暮れのデビューで、当時はSKYACTIV Vehicle Architectureの一部導入が謳われていた記憶も無かったため、まさか今回の25Tを借り出して「もしかしてコレがその効果か?」なんて思い至るなど、全く考えていなかったワケ(^_^;)。
そのビックリな体験を時系列で順を追って説明したいのですが、
もしかしたらボクの思い過ごし・勘違い・ただの気のせい、かもしれません(爆)。
いや、きっとそうじゃないと思うからこうして書くんですが、これを読んだマツダの人たちが「そうそう!それです!」と膝を叩くか、「それはCX-8にはまだ入ってないんだよね~」と苦笑いするかはわからないので(^_^;)。
やや冗長な試乗記になりますが(いつもかw)、興味のある方はお付き合い下さい。
きっとMazda3の発表後のマツダの説明は相変わらずチンプンカンプンwwだと思うので、このブログの情報が予備知識となって、読者が第7世代マツダ車を理解する助けになれば、ってことで。
というのも、、、ボクも愛車のアテンザとの
違いが、
最初の二日間は全く解らなかったので(自爆)。
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アテンザの代車にCX-8の25Tを借りられたのは全くの偶然でしたが、折しもお友達が紹介してくれた
試乗記と
問題提起があって、CX-8の乗り心地、特にライターが指摘した「忙しく揺れる」について、それが本当か?を意識しつつCX-8のハンドルを握りました。
パッと
乗り出した直後の印象は、ぶっちゃけアテンザとほぼ同じ乗り心地というもの。路面のインフォメーションは常に伝えてくれること。それに伴う「揺れ」は基本的に一発で収束するので、フワフワ余韻が残ることは無いこと。印象としては「若干固めの乗り心地」となること。直進性には基本的に問題は無いものの、どっしりという安定感よりむしろ「軽快感」を伴う乗り味である点など。車高が高くヒップポイントも高いから当然、目線も高い、しかし違いはそれだけで、本当に普段走らせているアテンザと概ね変わらない運転感覚だと
最初は思いました。
ライターが「常に揺すられる」と書いていたので該当する揺れは路面のインフォメーション、つまりフィードバックのことだろうと走り出して5分と経たずに思い至るのですが、そうやって気にして運転していると、確かに頻繁に揺れます(笑)。しかしこれは道路がそうなっているワケだから仕方がない(^_^;)。この乗り味に慣れているボクにとっては「オレンジジュースを飲めばオレンジの味がする」くらいに当たり前のことwだから気にも留めていませんでした(笑)。
そこに改めて意識を集中し、その揺れは有ってはならないものか、不快なモノか、もし無くなれば快適になるのか?自問自答しながら走らせますが、普段から別に不快に感じていないから無くしたら快適になるかも良く解りません(苦笑)。
仕方がないのでその判断を妹や妻に委ねたのですが、2人とも道が凸凹してればクルマは多少は揺れるモノ、くらいの認識で、やはり不快感は無いと云います。ここで一日目が終了。
二日目。取り敢えず揺れは有るが不快ではない、という確認が取れたので、ブログにどう書こうか?と頭に文章を考えながらハンドルを握ります。これでも一応真面目に「揺れることは不快(悪)なのか?」とか「揺れるけど不快に感じないのは『揺れ方』にもポイントがるのか?」など、色々と考えを巡らせながら、説得力のある説明文を考えます。前日もそうですが、この日も走らせながらフェンダーの稜線とガードレールの位置関係にチラ見したり、揺れの頻度と揺れ幅には気を配っていました。しかし実際には記事の文章からイメージする揺れの頻度も揺れ幅も、半分どころか1/4~1/5程度の印象です。
場所は首都高湾岸線の直線だったのですが、ここでふと「なんで不快じゃないのかな?」とか根本的なところまで遡ったりしたとき、車体が揺れているのに目線がほとんど上下にブレないことに気付きました。目線がブレないのは頭が動いていないからなのですが、定期的に生じる継ぎ目段差の「トンっ」という車体の揺れは、視界や身体に感じる振動なので知覚はしています。しかし遠くに置いた目線は全くブレません。
この状態をどう説明したら理解(イメージ)して貰えるかを30分くらいw考えて、思い付きました。
自転車に乗って不整地を走る場合、サドルにお尻をドカッと載せていては路面の衝撃がダイレクトに伝わってしまいます。そんな場面で人は、ペダルの上に立って尻をサドルから浮かせ、立ち漕ぎの姿勢を取ると思います。ペダルを前後水平にして立ち、漕がずに惰性で不整地を通過する場面をイメージして下さい。自転車の車体は路面の凹凸に応じて激しく揺れ、ハンドル・ペダルからそれを知覚はするが、頭、というか目線はほとんどブレずに進むことが出来るのではないでしょうか。アノ状態です。
もし「あぁアレね」とイメージ出来た人は、ちょっと考えてみて下さい。
例えば目の前に大きな凸があれば、意識して膝を柔軟に曲げ伸ばしてショックを吸収しようとします。
では砂利道のような場所を走る場合、貴方は意識して膝の曲げ伸ばしを行なっているでしょうか?
ボクが思うに、膝を真っすぐ伸ばして突っ張ってしまえばショックが身体にダイレクトに伝わってしまいますからそうはせず、しかし膝を曲げるとか伸ばすなんてことは全く意識はせず(否、間断ない振動にイチイチ意識して膝を動かせない)、両手両足の下で自転車を柔軟に遊ばせながら、その上でバランスだけを取ることを意識しているのではないでしょうか?
この状態が、CX-8に乗っているときに自分の腰の下wで起こっていることに近いと感じたのです。
しかしこれはとっても不思議な感覚です。なにしろ身体はシートの上にドカッと腰かけているだけです。そのシートはボディにガッチリ固定されており、自転車のペダルの上に立っている状態とは明らかに違います。違うんですが、段差を超えたときの「トンッ」というショックをハンドルを通して手に、シートを通して腰が受けるんでしょうが、その車体の揺れは頭まで届かずどこかで消えてしまう(笑)。結果、頭はブレず、視線もブレません。
これがマツダが云っている「人間が本来持っているバランス保持能力を活かす」ということなのかな?と思い至るワケですが、この仮説を念頭に半日くらい走り回っていたら、メディアで読んだ様々な説明が段々と腹に落ちてきました。
〇人間の移動の原点は歩行である。だからクルマが走るということは歩行をどれだけエミュレート(模倣)できるかということになる。
〇人体の基本は骨盤と背骨である。まずは歩行時の背骨の形状を運転時にも再現すること。
●背骨と骨盤の性能が遺憾なく発揮できる姿勢を崩さないことこそシートに求められる性能だ。
池田直渡「週刊モータージャーナル」
1.バネ下(タイヤ)からバネ上に伝わる力の波形を滑らかにする/衝撃を緩和する
2.伝わる力の方向をブレずに単純化/集約して制御しやすくする
3.4輪対角の剛性変動を抑える/4輪対角での遅れをなくす
A.バネ上と一体で動くシートの開発
B.遅れなく力を伝達するボディの開発
C.バネ下からの入力を滑らかにするシャシーの開発
Carwatch:次世代車両構造技術「SKYACTIV-Vehicle Architecture」採用車インプレッション
虫谷:今回、現行車(アクセラ)と次世代モデルを同じ18インチのタイヤで乗り比べていただきました。おそらく次世代のほうが乗り心地がよくなったと感じられたと思います。でも実は、データを取ってみると入力のレベルというか、刺激のレベルはむちゃくちゃ大きいんです。
日経ビジネス:「人の潜在能力が…」マツダは何を始める気?
つまりこういうことだと理解しました。
マツダが拘る乗り味(運動性や操縦性)に最適な足回りのセッティングは、乗り心地(快適性)とはトレードオフの関係にあります。したがい乗り心地に配慮すれば乗り味にはどうしても妥協せざるを得ず、しかし乗り心地を無視するワケにはいきません。、第6世代の各車は、それぞれにそのときのマツダが考えた最良の妥協点で市場に出されたハズですが、当然、改善の余地はありました。
具体例としてGJアテンザは、最初期モデルでは運動性能は好評ながら、乗り心地には厳しい評価でした。後ろ足には何度か手が入り、2015改良モデルでは大きく快適性を向上させました。しかしこちらの記事のように、失ったものがあるという指摘もありました。
「Be a driver」をうたうマツダは、スポーティな走りを重視する。ところが、アテンザのようなフラッグシップモデルでは乗り心地の洗練度も同時に求められる。15年の商品改良では、この乗り心地改善を頑張りすぎて、タイヤが路面をつかむ感覚のフィードバックが希薄になっていた。他媒体で書いた過去記事をひも解くと「筆者はこれも必ずしも新しい方が良いとは思わなかった。確かに振動やショックは減っている。ただ、旧型のあるものをあると素直に伝えるサスペンションもそれが欠点になるほどのものではない」と書いている。エンジニアが狙った通りの乗り心地改善はできているが、その狙いで失ったものもあるのだ。
池田直渡「週刊モータージャーナル」
この池田氏の指摘に対して、15商品改良の足を3回も卸ているwボクは個人的に同意しかねる部分があるのですが、話が脱線するのでここでは割愛(笑)。問題は
マツダが目指す理想の乗り味を追求するには、相反する乗り心地の問題をブレイクスルーしなければならない点。
そこで彼らは「そもそも・・・」と発想の転換を行って、ブレイクスルーする方法を見つけたようです。

ボクが体感したのは乗り心地に関する効果だけですが、当然それ以外にも期待は出来ます。人間が持っているバランス調整機能が上手く働くようにしてあげることで、従来乗り心地のために施さなければならなかった路面からの入力のピークを抑えること、そのために妥協せざるを得なかった運動性への影響が無くせるなら、快適性を損なわずにより運動性を追求することが出来るワケです。
きっとそういうことなのかなぁーと、独りで納得してもう数日走り回り、金曜日に代車を返したのですが、愛車のアテンザを引き取って乗り出してみると、
更なる驚きが待ってました(*_*)。
冒頭述べた通り、アテンザ⇒CX-8に乗り換えた直後の乗り心地に対する印象は、両車に顕著な差は無いというものでした。その後に新世代SKYACTIV Vehicle Architectureの効果に気付いたとしても、それで揺れの頻度や揺れ幅が減るワケではありません(笑)。
と・こ・ろ・が、、、(^_^;)
CX-8⇒アテンザに乗り換えて走りはじめると、
身体が揺れる(爆)。その揺れに伴って頭も動いて、目線も上下にブレるのを感じます。つまり身体のバランス調整機能が働かない(^_^;)。
そりゃボクのアテンザは第6世代なので当たり前なのですが、そもそもアテンザ⇒CX-8に乗り換えたときに違いを感じていなかったため、逆方向に乗り換えて違いを自覚するとは思っていませんでした。
そして白状してしまうと、2015アテンザのこの乗り心地を指して例のライターが
CX-8の試乗記で書いたような指摘をしたら、流石のボクをもってしても説得力のある反論は難しいかも(爆)、とか思っちゃいましたょ(^_^;)。
もっともこの感覚は翌日以降には直ぐに薄れて、慣れれば問題ないレベルなんですけどね。しかし一連の経験を経て改めてCX-8の、少なくとも乗り心地に関してはボクのアテンザ(つまり2015年当時)から確実に進歩して良くなっていることと、しかしその進化の度合いは、旧型⇒新型と乗り換えても意外に気付かないもの、ということが判りました。
因みにこのことは、日経ビジネスの
この記事で著者が
「
まず現行アクセラのAT車に乗せていただき、改めて、よくできたクルマだと感じました。
そして試作車に乗りかえて……。 (中略) 「違うと言われれば違うのかな……」という感じでした。」
とも符合します。
しっかし、従来のクルマの乗り心地って「如何にして不快なショックをクルマが吸収して乗員に
伝えないか/
減らすか」みたいな考え方だったと思うのですが、全く逆に、乗員に伝わる時間的な遅れを無くし、方向を単純化し、時間軸で滑らかにして
伝えることで乗り心地が向上するとは。。。
発売に先立つ
先行試乗会で大絶賛のMazda3ですが、SKYACTIV Vehicle Architecture恐るべし、というところでしょうか。今から試乗が楽しみですが、何も考えずに乗ると今回のボクのように「旧型とあまり変わらない」と感じるようなので、「違いの判らない男」と言われないよーに、皆さん、心して試乗しましょう(笑)。
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以上がCX-8でボクが感じた乗り心地に関する次世代技術の効果ですが、すっかり長くなっちゃったので、CX-8の乗り味やSKYACTIV-G2.5Tの印象など、普通の試乗記wは、、、もう一本書かないとダメそうね(苦笑)。