
「高い、高い!」と揶揄される、MAZDA3の日本市場に於ける価格設定について、ボクなりの視点で書いてみようと思います。
ただ最初に断っておきますが、これから書く内容がどうであれ、価格設定が妥当であったかどうかを決めるのは市場(マーケット)です(苦笑)。
つまり値付けにいかような理由があろうとも、最終的に商品が狙い通りに売れず、その理由が価格設定にあったのなら、その値付けは妥当では無かった
(価格に見合う価値が無かった。価値を認めて貰えなかった)、という結論になるワケ(^_^;)。
しかしそれってMAZDA3のモデルイヤーが終わる5年後?に初めて判る話なのでね。どうしてこういう値付けにしたのか?マツダのプランナーになったつもりで考えてみました(^_^;)。
さてMAZDA3の価格については過去に一回、
ブログを書いていますが、ファストバックの一部グレードを旧型であるアクセラの同一(或いは類似)グレードと比較すると、こんな感じです。

ザックリ、15Sは21万~12万高、20Sは18万~8万高、XDは38万~21万高。
お初のXは旧型の22XD対比で32万~21万高。但し
税抜きの車両本体価格ね。
消費税2%アップは結構大きく利いています。
低いグレードの方が値上りが大きいのは恐らくCASE関連で、旧型ではオプションだった各装備の標準搭載化が進んだため、と考えらます。
そういう目で見るとフル装備で揃えた新旧比較では
15Sは12万高
20Sはなんと!8万高
XDとXは21万高
となって、価格上昇は意外に大きくない?ようにも見えますね(^_^;)。
しかも内装の質感、標準オーディオの性能、静粛性はちょっと隔世の感があるくらいに良くなっています。マツダに限らない日本車のフルモデルチェンジで、旧型からここまで品質が上がった新型の登場は、過去の歴史の上でも稀有じゃないの?という感じなので、マツダの皆さんが「クルマの出来を見て、それでも"高い"って言っているの?」と愚痴りたくなる気持ちも良~く解ります(苦笑)。
ただ上記はL-Package相当の価格なので、金額の絶対値は当然上がります。
しかしここで言う「高い」はあくまで絶対価格の話(100円より150円は高いwよね)です(苦笑)。
そしてMAZDA3はそれらの装備レスの低価格モデルが「無い」となると、商品の品質向上と価格上昇がセットになって、消費者に「高級路線」と誤解が広がったのは、マツダにとっては不本意だったでしょうが、まぁ致し方がありません(^^;。
でわここで改めて値付けを見ていくと、15Sと20Sの価格設定は、新旧の品質差、装備差などあらゆる点を勘案すれば、
むしろお値打ち価格とすら言えます。
ボクがもしアクセラ20S L-Packageのオーナーだったら「10万以下の価格アップでこんなに良くなっちゃったの?」状態で、むしろ「旧型のアクセラの価格はなんだったんだ?(割高じゃねーか!)」と文句を付けたくなるでしょうね(^_^;)。
一方、もしボクが15XDのオーナーだったら、まぁ納得出来なくはないけど高い。何しろPROACTIV比較で38万アップですから。L-Package比較なら21万高で辛うじて許容範囲と思いつつも、20Sが8万高で済むのに「XDはなんで?」ってなりますわな。旧アクセラの15XDに対して20Sと同様に20~10万アップに止めておけば、、、と言いたいところですが、実はこの手を採れません。
なぜならば、そうすると20Sとの価格差が無くなってしまうのでA^_^;)。
続いてXの値付けの前にちょっと脱線しますが、お友達が
欧州の価格表を引っ張って来てブログを書いています。欧州仕様のGとXの価格差が小さい理由はGもM-Hybridを搭載している(つまりXが安いのではなくGが高い)からなのですが、並んでいるXDの価格も勘案すると、日本の各モデルと比べて
価格差は圧縮されています。
何で欧州と同じような価格差に日本では値付けをしなかったのか、、、の前に(笑)
欧州でこういう値付けになる理由に
CAFE規制の存在が考えられます。要は95g規制をクリアできない場合、規制値オーバー分が販売台数に応じてクレジット(ハッキリ言えば罰金)を課せられるって話なので、メーカーからすれば
燃費性能が劣るモデルが沢山売れると困る(爆)。
極端な例になりますが、もしXの価格設定をガソリンモデルより大幅に(利益率も)高くして、販売台数が少なくてもガッツリ利益を稼ぎ出せたとします。しかし価格が高くてXが買えない客が燃費性能に劣るGの購入に大量に流れてしまうと、
折角Xで稼いだ利益が罰金で消えることになります(苦笑)。
こういう背景があると、高付加価値・高価格、したがい高利益率を狙いたい最新型エンジン搭載車に、無邪気に高い値付けってワケには行きません(^_^;)。
また、燃費性能に劣るグレードがあまり売れないようにw、割高な値付けをしてモデル全体で販売台数が下がっても困ります。
な~んてことを勘案していくと、客が心理的に燃費性能の高いXに流れるような、価格戦略も有り得ます。要は利益と罰金の最適なバランスポイントを狙った価格戦略、とでも言いましょうか(苦笑)。
実際にマツダがそういう考え方で欧州仕様を値付けしたかは知りませんが(爆)、まぁ背景を考えると想像することは容易です。
想像出来なかった肉体派の人も居るでしょうがww
さて、日本国内向けのMAZDA3のXの値付けです。
エンジンラインナップはG1.5、G2.0、D1.8、X(2.0)ですが、今回は旧型アクセラで途中廃止したG2.0を復活させた上で、これを最量販グレードにしたいところ。因みに旧型アクセラでもっとも売れたのはG1.5だったようです。
なぜ旧モデルで引っ込めたG2.0を最量販にしたいか?と言えば、G1.5はMAZDA2の主力に据えたいというラインナップ戦略があります(^_^)b。
絶対価格との兼ね合いでG1.5を廃止するのは難しいですが、出来ればアクセラ15Sに乗っているお客さんはMAZDA3 20Sに買い替えて欲しいとすると、新型のベースアップを織り込みつつ、20Sの価格上昇を抑え気味にして、結果的に15Sに対してお買い得感を演出たいところです。
という感じで15Sはグレード展開を絞りつつ、20Sは旧型比で価格アップを抑えて、15S Touringと20S PROACTIVの価格差が18万弱、20S PROACITV Touringの価格差を28万としました。L Packageが更にプラス5万強ですが、これは旧型の20S Touring L Package対比で僅か8万高です。
こうして見ると、大幅価格アップどころか、極めて戦略的な最小限度の価格アップに見えます(^_^;)。
15S、20Sの価格をこう定めたとして、次はXDです。
マツダのラインナップではディーゼルモデルはガソリンモデルより上級に位置付けられますから、
値付けは高くしなければなりません(苦笑)。
旧型アクセラの場合、20Sと22XDの価格差は33~49万。15Sと15XDの価格差が35万でした。
そう考えるとXDを20Sの価格+30~35万に設定するのが素直なやり方なんですが、新型のXDはD1.8です(苦笑)。旧型15XD対比で20万高にすると20Sと価格差が無くなってしまいますし、新型20S比で35万高だとボッタクリになってしまいます(爆)。というワケで落とし処は20S比で25万アップに留めました。
整理すると、裸仕様で15S:旧型比20万アップ→プラス25万で20S→プラス25万でXD。
15S Touringからプラス35万で20S L-Package→プラス25万でXD L-Packageです。
で、問題のXです。
ところでエンジンの開発・製造にかかるコストという観点から見ると、Xって一体どの位のコストなんでしょうか?当然マツダの社内機密なのでボクは知る由もありませんが、、、(^^;
SKYACTIV-Dは当然SKYACTIV-Gに比べてコスト高でしたが、第6世代の頃はXDの方が利益率が相対的に低かったと言われています。初代CX-5の最初期の価格設定は20Sの220万に対してXDが258万と値付けは38万円高でしたが、売値の利益率を下げていたということは、
実際のコスト差はもっと大きかったということ。
そしてこれも聞くところに拠れば、ですがXのコストはDとGの間らしいという話です。勿論、丁度中間なんて話は無くて、過給機や気筒内圧力センサーなんかを鑑みれば、SKYACTIV-Dに近いコストと考えられなくもありません。
そう考えると、もしXをXDと同じように利益率を下げて売ろうとすれば、20S比で30万円高くらいにはなると想像できますが、既に述べた通りで20Sはどうも10万程度安めに値付けしているっぽいので、MAZDA3の20S対比で+40万高という感じでしょうか。
で、ここで問題。「Xは出来るだけ安く値付けして大量に売りたい」んでしたっけ?(苦笑)
実は2013年にアクセラが登場したときのXDは2.2LのL-Packageしかなくて、その価格差(値付け)は20S+49万でした。もしかしたらGとDのコスト差を素直に反映すると、値付けは50万くらい高くなるのかもしれません。
そうするとGとXの価格差は+40万くらいが適正で、しかし20Sが10万程度低い値付けをしているとすると、やはり20S+50万くらいがXの適正価格ということになります。ホントか?(笑)
じゃぁ20S+50万の値付けをするとして、その妥当性を一応w検証しなければなりません。XDとの価格差は+25万となるのでまぁイイでしょう。
しかしその値付けで消費者は買ってくれるのか???(苦笑)
ここで、Xをいくらに値付けして「誰に買って貰うか?」という点が非常に重要になってきます。20Sがお買い得グレードで、15Sはお値段重視、XDは経済性重視といった分担だとして、じゃぁ「Xを買うのはどんな人?」という話。
第6世代のマツダの販売実績に照らすと、結構外車を検討するような人たちがマツダの顧客になってくれた実態があります。MAZDA3で云えば、メルセデスのAクラス、BMWの1シリーズ、VWのゴルフを検討している人たち、なんかですね。
もしそんな人たち「にも」積極的にMAZDA3を選んで頂こうと考えたときに、然るべき値付けっていくらなのか?
もしこういう視点で考えると、値段は「安ければ良い」とは必ずしも言えない場合があります。プレミアムとは文字通りエクストラな価値って話で、そこには価格(値段)も含まれますから。まぁ価格は車格の一部ってことです。ここは非常に難しい人間の心理wの領域に入ってきますが、例えば貴方が
「懐具合には余裕がある。Cセグメントのクルマが欲しい。価値を認めれば価格が多少高くても構わない。とにかく納得がいく良いクルマが欲しい」
と考えて、外車を含めて検討していたとします。
勿論、商品の価値に納得しつつ、それが思いの外お安く手に入れば嬉しいに違いはありませんが、あんまり安過ぎるとどうでしょう?高級車というのはブランド品であって、そこには「高価なクルマに乗っている」という自己満足も含まれます。
如何に自分が納得していたとしても、以前400万円のクルマに乗っていた人が、今回250万のクルマに買い替えて「今回はお安い国産車にしたんですね」と周りに思われるのは嫌だな、とか(^_^;)。
こういった顧客も取り込みたいなら、価格は安ければ安いほど良い、とはなりません。しかしそんな豪気な客wばかりでは無いんだから、無邪気に高ければ高いほど良い、なんて考えるワケにもいきません(苦笑)。
最終的にXは20S比で62万高、XD比で37万高の値付けになったワケですが、税込み価格はPROACTIVが320万弱、L-Packageが338万となりました。税率10%はそのまま20S比で6.2万円、XD比で3.7万円の税金上乗せwに繋がるワケですが、競合を外車と定めて比較するとどう見えるか?例えばメルセデスのAクラスが334万~406万、BMWの1シリーズが334万~413万。価格は税込みです。実に微妙にこいつらのボトムの価格と被ります(^_^;)。
こうなると、外車を検討するような顧客に対して
「あっちの一番お安いのと同じ価格で、ウチの最上級グレードが買えます!」
と言って売り込めます(苦笑)。
当然「それで本当に大丈夫なのか?」の議論はした筈ですが、かつてのXDが戦略的な値付け(利益率を下げて価格を抑える)であったのなら、今回はそうしなかった、、、のかもしれません。
理由は、
①それで外車のボトム価格と丁度バッティングすること。
②欧州のような安くしてでも売らなければならない事情が日本市場にはないこと。
③それでも旧型のアクセラ22XD L-Package対比で20万円アップに止まること。
④世界初の次世代技術搭載車なんだから適正な価格で売りたい(安売りはしたくない)。
なんて感じでしょうか。
こんな風に考えると、何のかんのと色々言われていますが、意外に素直な、そして結構、
絶妙な値付けなのかもしれません(^_^;)。
ただ、、、
先日ディーラーで担当営業が、ボクの趣味趣向を咀嚼しつつ勝手にw、CX-30 XD L-Packageの見積りを参考に作って見せてくれたんですが、価格が400万をちょっとだけ出ていて
「うわぁ、高っ!」と思ってしまいました(爆)。
だってXは更にざっくり+40万でしょ?(^_^;)
素直に「マツダ車は高くなったなぁ~」って、思ってしまいましたとさw。