今回はちょっと毛色の違う話題で、ボクの個人的な考えを紹介します。
(1)で国沢光宏氏の記事を紹介しましたが、彼の意見として、或いはマツダの中にも、今のマツダの方向性に異論があるとのこと。じゃぁどんなのが彼らの言うところの「商品力がある」とか「華がある」クルマなのか?それはどうも、かつて存在したマツダスピードのようなスポーツモデルの事を言っているようです。
(2)で紹介した通り、今のマツダがそっちの方に行かない理由をボクは知っています。しかしながら国沢氏が「大本営に忖度してヨイショ」と言うもんだから(苦笑)、そういう人たちと一緒にされるのはシャクなので、ボク個人は何で大本営wの方針を支持しているのか、具体的な理由を述べておきましょう。
平たく言えばボクが今、
マツダスピードみたいなスポーツモデルは作るべきではない、更に言えばマツダスピードなど
絶対に作っちゃダメ、と考える理由です。
理由①:絶対に売れないから(苦笑)
営利企業が売れないモデルを作ってはイケない(笑)。極めて単純明快な理由ですが、なぜ売れないのか?そう考える理由をきっと聞きたいですょね?d(^_^;)
先ず過去にアクセラ、そしてアテンザのマツダスピードを作りましたが、結局売れずに引っ込めることになりました。

マツダスピードアテンザなど、本当に全く売れなかったそうです(苦笑)。その理由はボク的には明らかなのですが、ここでは新しいMAZDA3にマツダスピード(或いは海外ではMPS(Mazda Performance Series))を設定したとして、なんで売れないのか?について解説します。
今のマツダがMAZDA3にマツダスピードを作ろうとしたら、SKYACTIV-G2.5をチューンしてi-ACTIV AWDを組み合わせて、という感じになるでしょう。エンジンの馬力はどの位、出せるか?レギュラー仕様で
230ps、ハイオク仕様で
250psが出るのは解っていますが、
更にハイチューンが必須です。
なぜか?
だって、、、
Cセグメントのライバルを見渡すと、
VW Golf GTI 230ps / 350Nm
アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェ 240ps / 300Nm
VW Golf GTI Performance 245ps / 370Nm
VW Golf GTI TCR 290ps / 380Nm
ルノー メガーヌ トロフィーR 300ps / 400Nm
BMW M135i xDrive 305ps / 450Nm
VW Golf R 310ps / 400Nm
ホンダ シビック Type R 320ps / 400Nm
アウディ RS3 スポーツバック 400ps / 480Nm
メルセデス A45 S 4MATIC 421ps / 500Nm
こんな感じに強力なライバルがズラッと揃って居るワケですょ。2.5Lハイオク仕様で250psなんて、自慢になるどころか最低ラインで、
ハッキリ言えばGolf GTI TCR以降のクルマたちに対してはライバルにすら成れません(苦笑)。
スピード(速さ)で勝負にならないモデルを出して
マツダスピードって「ナニ言っちゃってるの?」と云われるのがヲチでしょう(^_^;)。
「いやいや、単なる速さじゃなく別の価値で勝負しては?」という意見があるかもしれませんね。考え方(企画)としては勿論、その可能性を否定するものではありませんが、そういう人にボクは逆に聞きたいです。
「だったら今のG2.5(190ps)やX(180ps)じゃ、なんでダメなのさ」
とね(笑)。
結局、この手のモデルのスペックとかパフォーマンスというのは「必要」だからではなく「アクセサリー(箔)」として求められる類のモノなのです。それ故にメディアなども比較試乗などと称して速さ比べの舞台に必ず引っ張り出します。そしてそういう場面では
どんなに優れた何かを持っていても、結局
速さで勝てなければ高い評価は得られません。それはそのままクルマの評判になり、そしてブランドの評判になります。マツダスピードは速くない・ライバルより遅い、という評判が立ってしまえば、この手のモデルとしては致命的で、結局は消えゆく運命です。
(ホンダがシビックR復活に際してニュル最速に拘ったのにも意味があるのです。)
実際、マツダスピードアクセラも、アテンザも消えましたよね?
これはマツダのロードスターを欧州各社が追随し、結局生き残れずに無くなったのとは全く逆の現象で、このハイパワー・ハイスピードの価値観で勝負を挑んでも、欧州(特にドイツ)のライバルに伍して戦っていくのは極めて難易度が高いのです。
藤原副社長が「彼らの土俵でいくら頑張っても結局は後追いに終わる」と悟ったのが正にコレであり、もしやるなら単発のモデルではなく、十年単位、数世代のモデルを作り続けてGTIやAMG、Mといったブランドに並び立つ覚悟で始めなければ、絶対に成功しないでしょう。
結局ね、メディア含めて「マツダスピードが欲しい」と言っている連中って、その性能を使い切る腕も、度胸も、コースに出て行って腕を磨く気概も無く、単に馬鹿力が欲しいと考えているスペックオタクの類が大半です。普通の仕様のクルマより高性能なクルマを手に入れて、それで自分が偉くなったような気になって優越感を得ることが目的なのです。
だからメーカーも「そういう顧客の琴線に触れるクルマ」を作って出す必要があって、そのためにはカタログスペックに始まりライバルを凌駕するパフォーマンスは、後発メーカーには絶対に外せません。それが出来なければ、商品として成功しないどころか、不評を買って撤退になるのがヲチです。
じゃぁパフォーマンスで上回れれば彼らの勝てるのか?そんな単純な話じゃありませんA^_^;)。しかしフルチェンジ、改良の度に馬力やパフォーマンスで抜きつ抜かれつを繰り返しながら延々と開発を続けて行って、モータースポーツシーンで好成績を収めて・・・みたいなことを十年単位で続けてやっと、という世界ですよ。そこまで出来ないのであれば、結局は売れるモデルには成れないのです。
理由②:日本メーカーでスポーツブランドを成功させた例が無い
実は意外にこの点は
盲点だと思います。メーカーがこの手のスポーツモデル(スペシャルモデル)を出す意味は、商品として売れることと同じくらい、ブランディングの効果が求められます。
要するに
スペシャルモデルを出すことによって、標準モデルが売れることです。
この点、欧州メーカーは非常に上手いです。BMWのM、メルセデスのAMGなど、標準モデルにMのエンブレムを付けたり、AMGパッケージなどのオプションを付けたなんちゃってモデルwが人気になったりしています。
日本のメーカーもそれに倣って同じように標準モデルの販売を牽引出来れば万々歳なのですが、どういうわけか、そういった商売上の効果を得られた事例がほとんどないどころか、スペシャルモデルが大人気になったが故に、標準モデルが売れなくなる逆効果が頻発しています。
代表例はホンダのTYPE Rです。これをNSXでやったときには成功したのですが、インテグラ、シビックといった大衆車に展開したところ、標準モデルが売れなくなって、最終的には絶版に追い込まれました。
シビックはグローバルモデルであったために近年、リバイバルしましたが。
どういうことか?というと、素晴らしいスペシャルモデルが市場で非常に高い評価を得ると「シビックを買うならTYPE Rだ!」という風潮になってしまい、標準車に乗っている人たちがTYPE Rオーナーに対して劣等感を持つような事態に至ります。しかしTYPE Rというのは非常に尖がったモデルであるため、普通の乗用車として使うには極めて不適切(苦笑)な上、そもそも一般道のみで走らせていたのでは宝の持ち腐れです(^_^;)。
まぁ利用形態はオーナーの自由なのでそれは良いのですが、スペシャルモデルがどんなであれ、それの人気があまりにも高まってしまうと、相対的に標準車のブランドイメージが下がるという、メーカーにとってはもっとも嬉しくない事態に陥ります。
これはホンダに限らず、スバル(インプレッサWRX)、三菱(ランサーエボリューション)、日産(スカイラインGT-R)などでも程度の差こそあれ、似たような事態に至りました。
スバルはWRXをインプレッサから分離してなんとかしましたが、日産は同様にスカイラインからGT-Rを分離したものの、今のスカイラインにかつての人気車の面影は全くありません。三菱もランサーは既にカタログ落ちですが、最終モデルのエボXが現役だった頃、標準車のランサーの人気ってどうだったか、記憶している人は居ますか?(苦笑)
ってな具合で、少なくとも日本メーカーはこの手のスポーツモデルを商品単体として成功させた事例はいくつもあるものの、ベース車の販売向上に繋げた例はほとんどなく、全く逆に標準モデルの不人気に陥り最悪、絶版にせざるを得ない事例が非常に多いのです。
だから変な話ですが、マツダはかつての
マツダスピードが成功しなかったが故に、アテンザもアクセラも絶版にせずに済んだ、とすら言えるのが、
日本メーカーの歴史なのです(^_^;)。
ボクはこういった歴史を知っているので、今のマツダに「間違ってもマツダスピードなんて作ってはダメだ」と言いたいのです。マツダスピードが思うように売れないか、標準車が売れなくなるか、どっちに転んでもマツダにとっては嬉しくないでしょ?
理由③:今のマツダとしての仕上げの難しさ
理由の①と②でもう既に説得力(というかボクの主張)は十分だと思いますが(^_^;)、極め付けはマツダスピードとしての仕上げの難しさです。好むと好まざるとに関わらず、ライバルの欧州車と比較されて優劣を付けられてしまうため、程度の差はアレですが速さ(パフォーマンス)をバッサリ捨ててしまうというワケにはいきません。しかし250ps以上、300ps級のCセグメント車がサーキットみたいな所でパフォーマンスを十分に発揮させるには、足は或る程度は固めざるを得ません。
ライバルとのパフォーマンス差は取り敢えず横に置いたとしても、、、
或る程度、足を固めてしまえば一般道の日常域で足は動かなくなるので車からのフィードバックは減ります。一方で速度域が低ければスイートスポットは広くなって、誰がどう運転してもソツ無く走りますが、マツダが大事にしている人馬一体感は希薄になります。
一方で標準車はこれまで同様の人馬一体ですから、スイートスポットが外れると「おっとっと」となるのですが、それは
(2)でも述べた通り、クルマが悪いワケでも性能が低いワケでもないのだけれど、一般のドライバーは絶対に「標準車は性能が低い。マツダスピードは性能が高い」と思い込みます(苦笑)。
そうならないためのマツダスピードの仕上げ(セッティング)の塩梅は無茶苦茶難しいと思います。少なくともボクには「こういうサジ加減だったら大丈夫」というイメージは全く思い浮かびません(^_^;)。
以上がボクがマツダスピードなどのハイパフォーマンスモデルを作るべきではないと考える理由ですが、恐らくマツダの大本営wは似たような考えなんじゃないかと思います。
聞いたことはないけど(爆)。